あるところに、一人の男がいた。彼は提督だった。人類の希望となる艦娘を指揮し、滅亡に瀕した世界を救うための英雄となるはずの男だった。
男は優秀だった。どの提督よりも早く、そして正確な艦隊指揮を行えた。その神の如く素晴らしい手腕により、幾つもの難関海域を攻略していた。
仲間は数多く居た。人望もあった。彼のことを慕い、将来を添い遂げたいとまで思う者も少なくなかった。
群衆からは英雄扱いされながらも、一切慢心することなく人類の自由と平和を取り戻すために奮闘していた。
影では誰よりも努力を行って、一日でも早く平和な日常を取り戻すために戦った。普通の人なら投げ出す量の戦術書を読み漁り、時には自身で編み出して。ちなみに彼が書いた戦術本は、世界各国の提督が愛読するベストセラーにまでなっている。
心からお互いに愛し合う者とも出会った。戦いが終わったら、ゆっくりと二人で過ごすと約束していた。家はここが良い。子供は三人、いや四人欲しい。幼稚園はどこにあるだろう。小学校はここが良いだろうか。将来はどんなに素晴らしい希望を見せてくれるのだろうか。そんな事を時には笑い、時には顔を赤らめながらも幸せそうに話していた。
その絆は永遠とまで称される程、彼と艦娘は深かった。見る者に砂糖をゲロゲロと吐かせるぐらいには。
男の名前は大道克己。我々が知る彼とは異なり、生きていた世界も時代も異なるただのそっくりさんである。
そして艦娘の名は加賀。一航戦の片割れであり、幾星霜の時を得て魂を手にし、そして蘇った存在である。
そんな彼は、もうこの世には居ない。人類の平和のために戦い、魅力的な笑顔を常に浮かべていた提督は、既に消え失せた。人類の希望はどこにも残されていない。
何故なら彼は、浅はかな考えを持つバカによって謀られて殺されたのだから。
彼を慕う人間と同じぐらいの数だけ、彼を妬み恨む人間も存在していた。人望があり、実力もあり、常に幸せそうで。そんな彼を陥れたいバカが、それなりの数存在していたのである。
何も知らない提督は、ある日突然の死を迎えた。抵抗する間もなく、一瞬のうちに。
提督が愛した艦娘もまた、一瞬の不意打ちによってその命を討たれた。そしてその亡骸は、提督の遺体と共に海へと遺棄されたのだった。
こうして彼は死んだ。
これが“一度目の死”になるとは。そして、この死が悪魔の生誕を呼ぶとは。世界中の誰もが露知らず。
一方その頃。敵であるはずの深海棲艦が、海へ遺棄された二人の遺体に近づきつつあった……。
あらすじにもある通り、主人公は大道克己その人です。この日と以外がエターナルに変身をする未来が見えなかった。