深海側の提督となった大道克己は、全ての深海棲艦にこのような指示を出した。
寝返ったからには目的をハッキリと定める。
そう、自身を裏切った人間たちへの復讐を兼ねた侵攻だ。
「押され気味の戦局を拮抗状態まで巻き返す」
「しかし、それ以上は許さない」
彼は言った。日本及び、全世界を武力のみで深海棲艦が制圧するには途方もない時間と労力が必要だと。
それこそ永遠に戦い続ける羽目になる。そう、血を吐くマラソンのように。
「だから、戦局をまずは拮抗させる。拮抗状態が続けば、焦った人類は一大攻勢に出るだろう。それを叩き潰せば勝ちだ。手打ちを向こうから申し込んでくる」
攻め込まれている今だからこそ取れる戦法であった。イケイケムードな人類側は、ひたすら粘り耐えなければならない拮抗状態の辛さを忘れている。そこを突くのだ。
何も完全に押し返す必要はない。戦局を拮抗させれば良い。
轟沈させられなくても、中破ないし大破撤退させて少しずつ前進。攻略された海域を必要分だけ取り戻したら、後はひたすら追い返すだけ。
これまで、ただ殲滅だけを戦法にしてきた深海側には、この提督の意見は非常に快く受け入れられた。
戦法に不安を抱いた者も無論存在した。しかし、提督がロストドライバーとガイアメモリを使用した際の強さを実演してもらい、すぐさま戦法の有用性と確実性を認めるに至った。
だが、戦力を増強しなければ始まらない。提督は早速、受け取ったロストドライバーとガイアメモリを使った戦闘訓練を行った。何度もボロボロになり、その都度最愛の艦娘である加賀に窘められたのは割愛する。
二週間近く、様々なガイアメモリをロストドライバーに挿しては変身。そのまま戦闘を試した結果、最初に手に取ったエターナルメモリを使用するのが最適解とした。
エターナルメモリが格別強いメモリということもあるのだが、何よりも他のメモリと比べ、提督との適合率が異様なほどに高かったのである。
さて、使用メモリがハッキリとしたところで、提督は本格的な実戦訓練へと入った。
一番最初に変身した姿は真っ白なボディを基調としており、腕のみに真っ赤な模様が入るシンプルな見た目であった。ところが、何度も変身するうちに姿形が大きく変化。腕の模様は蒼色へと変化し、全身のあちこちにはガイアメモリを挿して能力をフルに発揮させるマキシマムスロットが。背中にはマントが生えたのだ。
変化はそれだけに留まらない。専用の武器までもが生成され、彼の戦闘能力の底上げに一役買うことになった。ちなみに専用武器はコンバットナイフとして生成されたのだが、偶然にも提督が最も得意としていた武器である。
ダメ押しと言わんばかりに、深海側の科学陣も提督専用の兵装を用意した。まず、エターナルメモリを使用して変身した姿の左腕がガラ空きなのに着目し、左腕へ装着する中折れ式の12㎝対物ライフルを開発したのだ。
そして海上移動のため、完全自動操縦の水上バイクまで与えた。全ては深海側の勝利のために。
ちなみに水上バイクを与えられた提督は、「バイクに仮面。さしずめ仮面ライダーといったところか?」と洒落た冗談を口にしている。その発言が元となり、深海側では提督が変身した姿は“仮面ライダーエターナル”と呼称するようになった。
仮称“仮面ライダーエターナル”として全ての装備を手にした提督は、深海鎮守府へ運ばれてから三週間が経過した水曜日の昼頃。遂に彼は、深海鎮守府に所属する全ての深海棲艦を集めると、出撃の命令を出したのだ。
様々な海域に主力艦隊と援護艦隊を送り、提督自身は深海装備を受け取った加賀と共にE海域と称された場所よりも少し手前に陣取る。
そこからの戦いは、まさに圧倒的であった。
連日訪れる艦隊を姿すら見せずに大破撤退に追い込み続け、最終的には最強の戦艦大和を含む艦隊までを引き摺りだしたのだから。
「あなた。今日の艦隊旗艦はあの戦艦大和よ。編成は駆逐艦と軽巡が二隻、重巡一隻、そして大和ね」
「遂にお出ましか。いよいよ本気で、俺たちを潰しに来たな」
戦艦大和が現れても、提督は全く余裕を崩しはしない。
大胆不敵な笑みまで浮かべ、彼はエターナルメモリを手に取った。
「今日は最前線で戦う。君は援護を。軽巡以下を牽制ないし中破させてくれれば良い」
「了解。気を付けて」
行ってらっしゃいのキスを交わすと、提督はメモリのボタンを押して起動させる。
「エターナル」
「……変身!」
姿を変えると、水上バイクを駆って水面を駆け抜けていく。
『あなた、聞こえる? 艦隊はあなたから距離15000の位置を北北東に進んでいるわ。索敵機は発見されたみたいだけど、あなたのことはまだ存在を認知していなさそう』
「そうか、分かった。索敵機は引っ込めて、第一次攻撃隊の発艦準備をしておけ」
提督の頭上を、加賀が発艦させていた索敵機が通過する。その腹を見ると、装備していた小型の爆弾を投下していたことが分かった。
『駆逐艦に命中させておいたわよ。良くて小破だろうけど、これで少しは楽になる』
常に提督が想定する戦果よりも、一段上の戦果を叩き出す加賀。彼は死人となった今でも、また彼女に惚れ直すこととなった。
加賀の完璧な索敵を受けた提督は、艦娘たちが彼を補足するよりも遥かに早く、自身の武器の射程圏内にまで踏み入ることに成功。そのまま攻撃を開始する。
「さて、まずは先制攻撃だ」
「アクセルマキシマムドライブ!」
「加速する弾丸。口径は小さいが、弾速は超高速。直撃すれば艦娘でも耐えられるかな?」
対物ライフルに挿したメモリが吠えた音声を捉え、ようやく艦娘たちは何者かが現れたことを悟った。しかし、音声を捉えてから行動をするのでは、提督からすればあまりにも鈍重すぎる。
何故なら、艦娘たちが射撃用意をする前の段階で、対物ライフルからは超高速の弾丸が発射されていたのだから。
陣形の都合上、先頭を走っていた駆逐艦の艦娘に弾丸が飛来。そのまま頬を掠めるようにして通り抜けていく。
「外したか。まあ、遠距離からの射撃だったから致し方なし。本題はここからだ」
ようやっと提督の姿を捉えた艦娘たちは、その無機質な姿形に戦慄を覚えた。
どうやって見ても、提督の変身した姿は死神に見えたのである。その理由は立ち振る舞いからなのか、それとも雰囲気なのか。
分からない。分からなかったが、旗艦を務めている戦艦大和は、即座に目の前に佇む仮面の戦士を撃滅することを決定。真っ先に牽制の副砲射撃を開始する。
そして巻き上がる撃鉄音に引っ張られるように、随伴艦たちも雷撃や砲撃を開始した。
しかし、提督は余裕の態度を一向に崩さないままである。
「無駄だ」
黒いマントで飛来した砲撃を受け止めたのだ。回転しながら撃ち出された弾丸は、一瞬にして勢いを失い海中へと落ちていく。
目を見開く大和たち。まさか砲撃を、あんなにも簡単に。しかもマントで受け止められるとは思わなかった。
動揺する艦娘を気にすることなく、水面を這う魚雷に関しては、提督が巧みに水上バイクを動かすことで全て回避しきった。これで初動の攻撃は、全て完封したことになる。
「どうした。終わりか?」
無言で大和は、自身が持つ世界最大の主砲の照準を提督に向けた。それに倣い、他の艦娘も主砲を提督に向ける。
副砲だから弾かれたのだ。流石に主砲なら。特に大和の主砲ならば、確実にダメージは与えられるだろう。
そう信じて、大和たちは気合と共に己が装備してる全ての主砲を一斉射した。
副砲とは比べ物にならない轟音。そして巻き上がる粉塵。
掠めるだけでも大打撃を普通は負う主砲の一斉射撃。それなりのダメージを期待して煙が晴れるのを待った艦娘たちは、大きく後悔することになった。
煙が晴れるまでに接近し、更なる連撃を叩き込むべきであったと。
「ウソ……!?」
何事もなかったかのように、提督は煙から現れた。かすり傷すら負わずに。
原理はさっきと全く変わらない。マントで受け止めた。それだけだ。
思っていたよりもマントの性能が高いことに驚きつつも、提督は加賀と連絡を取る。
「加賀」
『あと五秒ぐらいよ』
心の中で提督が数えて五秒きっかり。空を覆わんばかりの航空機の大群が姿を現した。
まさか航空支援があるとは想定していなかった大和たちは、抜けない動揺を更に深めていく。
「た、対空射撃用意!」
「駄目です、間に合いません!」
その動揺が足取りとなり、対空射撃が遅れてしまった。
薄い対空砲撃を難なく抜けた航空機は、悠々と爆弾や魚雷を投下してはその場を立ち去っていく。
提督から「沈めるな」と命じられていることもあり、航空攻撃の殆どは至近弾で済んでいる。だが、艦隊の統率を乱すには十分すぎる働きを果たしていた。
「隙だらけだぞ」
別のガイアメモリを手に、提督は突貫を開始した。
手にしたガイアメモリ。それは、疾風の記憶を宿す「サイクロンメモリ」だ。
それをコンバットナイフ──加賀はエターナルエッジと名付けていた──のスロットに挿入する。
「サイクロンマキシマムドライブ!」
「オラァ!」
エターナルエッジを提督が逆袈裟から切り上げる。すると、剣閃をなぞるようにして猛烈な竜巻が発生した。
海面の水を巻き上げながら猛進する竜巻。あまりにも非現実的な光景で、艦娘たちは動きを止めて硬直する。
天候を自在に操る光景。そして、いきなり目の前に生まれた巨大竜巻。どちらも艦娘たちは見たことがない。
マトモに受けては死にかねないと判断し、各々が必死に回避行動を取るが、艤装が少なく重量も軽い駆逐艦の艦娘は大きく弾き飛ばされてしまった。
咄嗟に軽巡洋艦の装備を持つ艦娘たちが助けに行こうとするが、それを提督は目ざとく発見して妨害しに入った。
「おいおい、パーティーから逃げるなよ」
艦娘が何か受け答えをする前に、提督は二人の軽巡の主砲を直接、次々と斬り裂いた。無論、マキシマムドライブの効力が失われていない状態で。
超至近距離から竜巻を発生させれば逃げられはしない。足掻くことすらも不可能だ。
ド外道と言われても否定できない攻撃を受けた軽巡洋艦の艦娘は哀れ、発生した竜巻によって巻き上げられた後に海面へと叩きつけられて大破寸前のダメージを負った。
「あとはデカブツだけか?」
残ったのは重巡洋艦と戦艦大和。
駆逐艦二隻は中破。軽巡二隻はほぼ大破。この時点で撤退を開始しなければ、艦隊の全滅もあり得る。
そのため、大和は屈辱と悔しさを噛み締めながらも撤退を開始しようとした。
だが、提督が逃さない。
彼の思惑としては、戦艦大和だけは何としてでも傷を入れておきたかった。元提督であるが故、戦艦の修理時間は甚大かつ資材も食うから。
「逃さねえよ」
エターナルエッジと対物ライフルからメモリを引き抜いて懐にしまい、更に新たなガイアメモリを取り出す。
撃鉄の記憶「トリガー」と灼熱の記憶「ヒート」を取り出した提督は、トリガーを対物ライフルに挿入。そしてヒートはベルト横にあるマキシマムスロットに挿入した。
「トリガーマキシマムドライブ!」
「ヒートマキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ! マキシマムドライブ──!」
「ハハハハ……! フッハッハッハッハッ! ハァーッハッハッハッ──!!」
体は紅蓮の炎に包まれ、対物ライフルの銃口からは超高熱の光弾が見え隠れしている。
狂ったように「マキシマムドライブ」と連呼するヒートメモリ。そして全身を包む炎。
そんな状況下においても、提督は高笑いを続けていた。
「さあ、地獄を楽しみなぁ!!」
対物ライフルのトリガーが引かれた。
放たれるのは、太陽なのではと錯覚するほどの炎の弾丸。
通り道の海を一時的に蒸発させながら進む太陽に、大和たちは動けずにいた。
太陽は彼女らの足元に着弾。大爆発を引き起こす。
何も言葉を残すことなく、大和たち二人は艤装をメチャクチャに破壊されながら吹き飛ばされた。
「ふんっ……」
鼻で笑いながらサムズダウンを送った提督は、もう興味はないと言わんばかりに背を向け、その場から立ち去るのだった。
ツインマキシマムのツッコミはなしで。26連マキシマムできるエターナルで、かつネクロオーバーの克己ちゃんなら負担も気にせず行けるでしょってお話です。
対物ライフルは世界観の問題もあって取り入れました。あとはシンプルにエターナルへポン付けしたかった。漆黒の中折れ式対物ライフルが装着されてるエターナル、絶対にカッコいいし違和感も少なさそう。
ちなみに折れるのはバレル部分。弾丸はメモリって扱い。肘から先にライフル装着してると考えれば無理ないはず。
チートマントやチートナイフも相変わらずです。特にマント。ツインマキシマム中でもマントだけ燃えないのはちょっとシュールだけどね!