これは決して交わらないはずのエージェントとマフィアのボスが交わった時の話―――




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史上最強のリコリスとボンゴレ十代目

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

 

ある日の昼。雰囲気が良さそうなとある喫茶店にて1人の少女の声が響き渡る。

その声の主は金髪で髪の左側を赤リボンで縛っている赤色の和風の制服を着た少女のものであった。

少女の名前は『錦木千束(にしきぎ ちさと)』。

明るく、親しみやすさがあるため彼女を目当てでくるお客さんも少なくない。

彼女はこの喫茶『リコリコ』の看板娘を自称しているがそれはありがち間違いないだろう

 

「……ご注文は?」

 

千束と対照的に愛嬌がない黒髪でツインテールの青色の和風の制服の店員の少女が客から注文を聞いていた。

その顔はどこか不満そうだったが、流石にお客の前の為か露骨には出さなかった。

彼女の名前は『井ノ上たきな(いのうえ-)』。

普段からクールな態度をとってあり、とある事情でこの喫茶に来てたが本人的には不本意の為かその気持ちが態度に出ていることが多い。

流石に仕事なのは分かっているのかやることはやっているが……。

 

「はいはいはーい!ちょっとお待ちくださいね!」

 

そして前の2人と違って一回り年齢が上そうなクリーム色のウェーブ髪の眼鏡の大人の女性が忙しそうに動いていた

彼女もここの店員で黄緑色だが和風の制服を着ていた

彼女は『中原ミズキ』。十代後半の千束とたきなと違って彼女は20代後半である。

いつもはこの時間帯は酒でも飲んで飲んだくれているのが多いのだが、今回は流石に客が多いためか彼女も接客に駆り出されていた。

 

普通に見たらただの喫茶店の日常……なのだがここにはとある事情が存在する。

そもそも千束とたきなはDAに所属するリコリスである。

 

DA(正式名称『Direct Attack』)は警察・公安とは異なる独立治安維持組織であり、政府と協力関係にありながら指揮下に置かれず強い特権を有している。また、その存在は世間一般には非公開とされている。

そしてリコリスとはDAのエージェントにして実行部隊。

教育を施し育成した、高校生程度の少女たちによって構成される。

構成員は全員孤児であり戸籍を持たされておらず、『制服姿の女子高生は日本でもっとも他人に警戒されない姿であるため』という理由で、ユニフォームは学校の制服のような外見になっている。

 

喫茶『リコリコ』はそんなDAの支部。ただし、DAの組織からはみ出た者の島流し先、いわゆる左遷支部扱いとなっている。

他の支部とは明確に気風が違い、リコリスとしての任務こそ請け負っているものの、大抵は町内の手伝いが主となっている。

そんなこともあって、こういう依頼がない時はただの喫茶なのである。

 

元々、リコリスは少女ばっかりでDA支部であるここも女子の店員ばっかり――――なのはずだが今は違った

 

 

 

「獄寺君!おはぎセットって何番だっけ!?」

 

「15番っすよ!…沢田さん!」

 

 

 

茶髪でツンツン髪の頼りなさそうな少年と銀髪で顔が整っている少年が和風の制服を着て、慌てながら注文の仕事をしていた。

その雰囲気からただの一般人としか見えないだろうが……彼らはイタリア系マフィア『ボンゴレ』の人間であった。

そしてただの構成員ではない。銀髪の少年、獄寺はボンゴレ十代目の守護者の1人でそしてツンツン頭のツナは――――

 

 

 

 

 

――――ボンゴレ十代目、その人であった。

 

 

 

 

 

 

彼らがなぜこの喫茶『リコリコ』で働いているかというと話は3か月程に遡る―――

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―数か月前、並盛町(なみもりちょう)―

 

 

「ったく、リボーンのやつ急に呼び出してなんだよ…それに獄寺君と二人なんて」

 

「確かに沢田さんと二人っきりなんて珍しいっスね」

 

冬頃、ツナと獄寺はリボーンに呼ばれてリボーンがいる部屋(と言ってもツナと寝部屋を共有しているためにツナの部屋でもあるのだが)に向かっていた。

少し頼りなさそうな雰囲気の少年は、ボンゴレファミリーの次期ボス候補である校生『沢田綱吉(さわだ つなよし)(通称:ツナ)』で、銀髪で整った顔をしているが不良の雰囲気がある少年は、ボンゴレ嵐の守護者『獄寺隼人(ごくてら はやと)』であった。

二人はこうして呼ばれることは珍しくないが2(・)人(・)だ(・)け(・)というのは最近では稀であった。

 

因みに獄寺は、昔はツナのことを「十代目」と呼んでいたが周りの目や場所や時によってその呼び名は周りに聞かれたら危ないために少し前から矯正されて「沢田さん」と呼ぶようになっていた。

……しかし、癖というものは簡単に直るわけでもなく、偶に「十代目」と呼びそうになってしまうのはご愛敬である。

 

そしてこれは余談だが直す際にツナが「『ツナ』でいいよ」と彼に言ったのが「十代目を名前で呼ぶなんて恐れ多い!」と頑なに首を縦に振らなかったために色々と話し合って「沢田さん」呼びにすることになったという経緯がある。

 

「リボーン、入るぞ」

 

「失礼します」

 

「ちゃおっす。時間通りに来たな。これで一分でも遅れていたら撃っていた所だぞ」

 

「物騒なこと言うなよ!!」

 

入ってきたツナ達と物騒なことを言うのはボルサリーノを被り、黒スーツを着て胸元に黄色いおしゃぶりをつけたツナの家庭教師であり最強の殺し屋(ヒットマン)である子供「リボーン」その人である。

マフィア界最強の赤ん坊『アルコバレーノ』と呼ばれていた7人のうちの1人で晴のアルコバレーノだった。

リボーンは元々大人だったのだが、アルコバレーノの呪いによって赤ん坊の姿(大体2歳程)にされており、ツナの家庭教師になったときも赤ん坊の姿だったのだが、約2年前にツナが中学2年生の時に起こった「虹の代理戦争」の際、ツナや大勢の人々の手助けにより、他のアルコバレーノ共々呪いを解くことに成功したのだ。

それ以降身体が成長するようになっており、通常の2倍の速さで成長していた。そのために現在は5歳ぐらいまで成長している。

 

「なんで俺と獄寺君が呼ばれたの?大した用じゃないなら出かけるよ?」

 

「せっかちだな。それだと将来、禿げるぞ?」

 

「余計なお世話だよ!いい加減にしないと――「『アラン機関』って知っているか?」

 

「えっ?」

 

いきなりリボーンの口から言われた『アラン機関』という言葉にツナは面を食らった表情をする。ツナはその単語をどっかで聞いたことがあったが思い出せなかった。

とりあえず、獄寺の顔を見て「知ってる?」という表情をしてみると獄寺は意図を察したのか頷いた。

 

「最近、テレビとかでやっているあれですよね。謎の支援機関で、スポーツ・文学・芸能・科学などあらゆる分野の天才を探し出し、無償の支援を行っている……っていう」

 

「そうだ。きちんと日常の情報を仕入れているな、獄寺」

 

「たまたまですよ……」

 

「…それに比べて、ツナ。オメーは日常での情報さえきちんと取り入れてねーのか!」

 

「ギブギブ!!」

 

獄寺の日常での情報を手に入れていることに褒めながらツナがそのことさえ知らないことを怒り、片手でツナの方でを捻じっていた。

当然、ツナは痛みを訴えるがリボーンのおしおきは10秒近く続いていた。

 

「……ハァハァ……結局、おまえは何が言いたいんだよ?」

 

「『アラン機関』――獄寺が言ったように謎の支援機関だ。100年前から存在するのにその実態は謎に包まれている」

 

「ふーん……でも無償で天才の支援しているならいい機関じゃないの?」

 

「ふぅ……学校の成績は良くなっても本当にお前はダメツナだな」

 

「なんだよ、それ!?」

 

明らかにに自分をバカにした言葉にツナは苛立ちを覚える。

実は虹の代理戦争が終わった後にリボーンのスパルタな教えにより学校の成績は前よりずっと上がっていた。

当然、体育の成績もずっと挙がっており、死ぬ気モードでもない状態でもかなり動けるようになっていた。

もう中学校の頃のように「ダメツナ」と呼ぶものはいなくなっていた。

とはいえ、ツナの本質や性格は変わっていないためにパットわからないが。

 

「いいか、いくら無償で支援とするとしたらそれには裏があると勘ぐるが普通だ。この世の企業っていうのは利害関係でできている。ボンゴレも怪しんで『アラン機関』を調べた」

 

「へぇ……それで結果は?何かわかったりしたの?」

 

 

 

「…………何もわからなかった」

 

 

 

「は?」

 

「ボンゴレが何度も『アラン機関』にスパイを送り込んだが……結果誰も帰ってこなかった」

 

「なっ……」

 

リボーンの言葉に2人は絶句した。

『ボンゴレ』といえばイタリア系マフィアの中では一番の規模の組織であり、人材も鍛えられたかなりの技能の持ち主が揃っているはずだ。

それなのにそのボンゴレの諜報部員は誰も帰ってこれていないということはそれだけ『アラン機関』のやばさが分かるということだ。

ツナはその話を聞いて、恐ろしさを感じつつ嫌な可能性が浮かんだ。

 

「……まさかだと思うけどリボーン、俺と獄寺君をそこに送り込むつもりじゃないよね?」

 

「流石だな――と言いたいところが違う。お前らにはとある喫茶店で働いてもらうぞ」

 

「「はぁ!?」」

 

流れ的に自分達がその団体にスパイとして送られると思っていた2人はリボーンの提案に声を合わせて驚愕する。

昔からリボーン突拍子もないことを言うことはよくあったがここまで脈略がないことを言うのは珍しい事であった。

 

「どういうことスか!?スパイの話をいきなり喫茶店に働けだなんて……」

 

「そうだよ!全然意味が分かんないよ!!」

 

「まあ、落ち着け。2人ともこれには理由がある」

 

混乱してリボーンに対して声を荒げるがリボーン本人は慌てることなく落ち着いた態度でコーヒーを飲んでいた。

その態度に拳を握って怒りたかったツナだが、言っても無駄なのはこの3年程で知っているのでぐっと堪えた。

 

「『アラン機関』に直接行ってももダメなら少し遠回りだが関係者からあたった方がいい。

そこでそこに関連する人間の1人がとある喫茶店近くに目撃されているのを発見された」

 

「つまり、俺らはその男をとある喫茶店の店員になって探ればいいんスね?」

 

「ああ。ちなみにその喫茶店のマスターは俺の昔からの知り合いで話を通しているから安心しろよ」

 

「何の安心だよ!」

 

リボーンのとんちんかんな言い方にツナはツッコミを入れる。

勿論、ツナの渾身なツッコミはリボーンからは聞き流されてしまうのだが。

 

「ともかく、お前の任務はその喫茶店に近くに目撃されている男について探りを入れることだな。写真とかあとで見せてやる」

 

「なんだよ…その任務。スパイが次々に消されているのに知ろうと俺達に。しかも遠回り的なやり方で探れって……」

 

「まあ、お前らの調査スキルを上げるためのちょっとした任務だ。お前らの実力なら消されることもないだろう。軽い気持ちで行って来い」

 

「そんなお使いみたいな感覚で言われても!」

 

昔からリボーンの感覚はツナ達と価値観が違うためか会話の時に違和感が発生する。

わざとか本気なのか不明だがそのためにツナは指摘するのだが、これもわざとか本気なのかわからないがスルーされていたりする。

 

「もし危険と感じたらすぐにでも引き返えせ。相手の戦力や規模が分からねー以上は深追いは禁物だからな」

 

「だからってこの任務危険すぎない?獄寺君も何か言ったら……」

 

「……感無量です!まさかじゅ…沢田さんと2人で任務だなんて……!」

 

(しまった!この人、任務の危険さより俺と2人っきりの任務の嬉しさが勝ってる―――!!!)

 

リボーンの横暴な考えにツナは獄寺に同意を求めようと声を掛けたのだが、獄寺は憧れているツナと2人だけの任務ということで興奮と嬉しさに溢れていた。

 

「でもまさか2人だけの任務なんて……山本やお兄さん(了平)がいないのは潜入任務は向いていないからだよね?」

 

「そうだ。よく分かったな、流石超直感だ」 

 

「茶化すなよ!そんなの超直感なしでも分かるよ!!」

 

ツナが挙げた2人はボンゴレ雨の守護者『山本武(やまもと たけし)』とボンゴレ晴の守護者『笹川了平(ささがわ りょうへい)』のことであった。

2人とも野球とボクシングでそれぞれの分野で活躍しており、ツナは出来る限りボンゴレの関連で巻き込みたくなかった。

またリボーンが触れていた『超直感』とは物事の本質を見抜く事ができるボンゴレの血筋にある能力である……が、ここで流石に使っていなく、リボーンも分かっていてからかっただけだと思われる。

 

「まあ、いいよ。山本やお兄さん(了平)が試合に出れなくなったら困るし……」

 

「分かればそれでいい。ただ、お前らが働く喫茶店『リコリコ』は『リコリス』の支部で2人ほど店員としても働いているから気をつけてな」 

 

「ま、待ってください!あの『リコリス』の支部なんスか!?」

 

獄寺はリボーンの話を聞いて信じがたかった。

『DirectAttack(通称:DA)』は日本に存在する治安維持組織でそのやり口は治安維持の為とはいえ、外部からあまり良い印象持たれていなく、そのDAの下で動く『リコリス』という存在も出自的に嫌悪感を持たれていることが多い

ボンゴレはヤクに手を出していない所謂『白マフィア』ではあるが、所詮反社会組織である。

穏健派の9代目の下である今のボンゴレといえどもDAからしたらただの犯罪組織でしかないために例え、ボンゴレが協定を結びたいと言ってもDAは応じずに射殺するだろう。

それほどリコリスとボンゴレの関係は良くなく、ボンゴレ関係者がリコリスの近くにいるのは死と隣り合わせだという状況と言っていいだろう。

 

「あっ、沢田さん。説明しておきますけど『リコリス』っていうのは……」

 

「大丈夫。知(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)よ(・)」

 

「えっ」

 

「心配するな、獄寺。ツナは1年前にとある任務でリコリスと接触したことがある。とはいえ、こちらがいた証拠など全て消してあるから『ボンゴレ』の存在は気が付かれていないだろうが」

 

「そうだったんスか……初めて知りました」

 

「まあ……言っていなかったからね」

 

ツナがDAについて知らないと思い説明しようとしていた獄寺だったが、意外にもツナが知っていると知り、声を上げる。

リボーンからとある任務でリコリスと接触したという話は初耳だった。

ツナはそのことをあんまり触れて欲しくないのか少し苦い顔をして、獄寺が何か聞く前に話題を振った。

 

「それにしてもこの町周辺にリコリスがいない理由が驚かされるよ……まさか雲雀さんが並(・)盛(・)に(・)い(・)る(・)リ(・)コ(・)リ(・)ス(・)を(・)排(・)除(・)し(・)て(・)い(・)た(・)せいなんて……」

 

「えっ、そうなんスか……?」

 

「まあな。DAは初めはリコリスを排除した雲雀の奴を排除しようとしたが……何人も返り討ちにされて考えを変えたらしい。雲雀を排除するのに力を入れるより放置して雲雀もとい風紀委員会に並盛の周りを守らせた方が効率がいいと気が付いたらしい」

 

「とはいえ、本来は排除するまで力を入れてくるはずらしいから雲雀さんの力があっての力技だよね……しかも俺達と出会う前からそうだったらしいから」

 

「相変わらず、末恐ろしいスね。雲雀は」

 

2人の会話で雲雀がとんでもないことを腕を組みながら頷く獄寺。

ボンゴレ雲の守護者『雲雀恭弥(ひばり きょうや)』…彼は並盛中学校の風紀委員長でありながら、群れを嫌い、不良の頂点に君臨する学生である。

彼には謎が多く、了平の並盛中入学時には既に風紀委員長だったこと、ツナ達の進級時に『僕はいつでも自分の好きな学年だよ』との発言などから年齢すら不明である。

 

そして一番謎なのはその権力である。並盛中学校の生徒だけではなく教師や校長までも彼の言いなりであり、病院の先生でさえ彼の言うことを聞いてしまう。

並盛町は彼が裏から支配していると言っていいだろう。

その強さはリボーンがボンゴレに引き入れる前から中学生とは思えない強さを持っており、 

リコリスが彼の排除をしようとしたが何度も返り討ちにして結局、断念したという話を彼らが信じるのも当然であった。

 

「そもそもリコリスが働いているの俺達がそこに働いていいんですか?もし俺達の正体がバレたら…」

 

「まっ、心配するな。俺の知り合いの奴は1流だ。お前らがバレないようにうまくフォローしてくれるぞ」

 

「……獄寺君。リボーンがこういうだから信じるしかないよ」

 

「沢田さん……わかりました」

 

リボーンの言葉に納得がいかない獄寺だったがツナは抑止した。

基本的にリボーンが意見を変えることがないことが分かっての行動だろう。

 

「話が逸れていたな。それじゃあ、潜入捜査を行うまでにお前らに色々と訓練を受けてもらうぞ♪」

 

「はぁーーーーー!!?聞いていないよ!!!」

 

「今言ったからな。マフィアになるんなら覚悟を決めろよ、ツナ」

 

「嫌だよ!!そもそも俺はマフィアにならないって何百回も言っているだろ!?」

 

いつの間にか任務のために訓練を受けることになっていてツナは悲鳴が混じった抗議をするが勿論、スルーで何百回もしたマフィアになるかならないかの言い合いになってしまうのであった……。

 

「本当に我儘だな、お前。折角、9代目に頼んでネオ・ボンゴレⅠ世(プリーモ)と改名頼んだのに結局、ボンゴレX世(デーチモ)に戻したしな」

 

「それは元に戻すよ!なんだよ、ネオ・ボンゴレⅠ世(プリーモ)って!まだ十代目の方がいいよ!」

 

リボーンが言った『ネオ・ボンゴレⅠ世(プリーモ)』とは「虹の代理戦争」の後にボンゴレのボスになるのを嫌がるツナの事を配慮し、リボーンが呼び名を変えたのだが……残念ながらツナには通じず(というか「そうじゃない」) 結局、ツナへの要望で『ボンゴレX世(デーチモ)』に呼び名が戻ったのだった。

 

「とにかく、訓練はネッチョリとやるからな」

 

「ネッチョリはやだーーーーー!!!」

 

リボーンの今後の方針を聞いたツナは悲鳴のような叫び声を上げるが空に木霊するが儚く消えていく……。

それから3か月の間、ツナと獄寺は厳しいボンゴレ特別訓練を受けるのだった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―現在、喫茶『リコリコ』―

 

 

「はぁ~~~~!!!やっと終わったーーーーーーー!!!」

 

 

喫茶『リコリコ』の接客の仕事を終えて、ミズキは畳に座り込んだ。

今日の店のお客さんはかなり多く、休む時間もあまりなかったために店員全員は疲れ気味だった。

 

「みんな、お疲れさまー!!」

 

「…お疲れ様です」

 

「おつかれーっス……」

 

「お、お疲れ様」

 

外は夕日ですっかり赤く染まっており、従業員おのおの千束の声でお疲れ様の挨拶をした。

1人元気な千束を除き、その声は弱々しい方であった。

 

「おつかれー……あー、腰が痛ーい……早くお酒飲みたーい……」

 

「あはははっ……」

 

すっかり疲れてダルそうな雰囲気ほ出すミズキ。まるでおっさんである。

その姿に流石に千束も乾いた笑いをするしかできなかった。

 

「……そんなこと言うから結婚できんじゃねーのか?」

 

「ご、獄寺君!それは言っちゃだめだって!」

 

仕事終わりとはいえ、普段から「結婚したい」と愚痴っている女性の態度とは思えないために獄寺は小声でミズキに対して辛辣な言葉を聞く。

近くにいたツナは獄寺の台詞が聞こえていて、獄寺に小声で注意するのであった。

 

 

 

 

「ああん!?なんか言ったかぁ!!?」

 

 

 

 

「ひぃっ!何にも言ってませんよ!!」

 

獄寺の言葉が完全ではないが聞こえて自分の悪口だと察したミズキはキレた。

事実だが、それを認めた事態が更にややこしいことになるためにツナはビビりながらも必死に否定するのだった。

…なお、それを見ていた千束は楽しそうに見ていて、たきなは呆れた顔で見ていた。

 

「そこまでにしたらどうだ」

 

「店長!だって……」

 

ミズキの怒りがヒートアップする中、口に挟んだのは歩行用の杖を携帯している和装を来た黒人の男性だった。

彼の名は『ミカ』。この喫茶『リコリコ』の店長であり、元DAの訓練教官である。

 

「みんな疲れているんだ。失言の1つや2つは見逃したらどうだ?」

 

「……はーい。わかりました……」

 

「よろしい」

 

(店長、スゲー!)

 

ミカに諭されてミズキは渋々したがって怒りを収める。

そんな場面を見て、ツナは凄いと素直に感心していた。

そもそもツナ達と出会った当時から実かと言う人物は落ち着いて心が広い人物であった。

 

 

『君達がボンゴレ十代目と嵐守護者か』

 

『君達のことはリボーンから聞いているよ』

 

『……アラン機関のことを調べているようだがあまり首突っ込まない方がいい。ヤバいと思ったら引き下がるのも場合によっては必要だ』

 

『…とはいえ、昔から世話になりっばしのリボーンから珍しい頼みだ。私もできる限りのことはやらせてもらう』

 

『ああ、言っておくが君達の正体はこの店内だと私しか知らない。彼女達は元DA職員や現役リコリスばかりだ』

 

『君達のことは外部からDAの補助する組織の一員としてある。くれぐれも店の人間に正体がバレないように』

 

 

初めてツナと獄寺が店に訪れた時にミカはそのようなことを言っていた。

元DAで他とは違う雰囲気があるとはいえ、DAの支部を任されている人間として反社会組織と繋がりがあり、しかも書類などを偽ってそいつを支部に働かさせている……これがバレならミカは確実にDAによって始末されるだろう。

そんなリスクを抱えながらミカはツナ達のことをバラさずに協力してくれているのだ。

 

(店長、良い人だけど……なんでそこまでしてくれるんだろう……リボーンに世話になったと言っていたけど、あいつ一体何をしたんだよ!?)

 

ここまでやってくれているミカに対しての感謝を思いつつ、どうしてここまでしてくれるかという疑問をツナは思っていた。

リボーンが凄い殺し屋なのは分かっているが出会った頃の「赤ん坊」の姿の印象が強いためか中々、そういうイメージができないでいた。

 

 

「はいはーい!ごたごたはここまでにして仕事終わりにラーメンを食べに行こうと思います!!」

 

「おっ、いいじゃねぇか!代金は言い出しっぺの千束、お前のおごりな!!」

 

「ご、獄寺君……」

 

「アンタねぇ……同年齢にそれはないでしょう……」

 

争いごとは一段落落ち着いて、千束は仕事終わりの夕食にラーメンを食べに行くことを提案する。

それを聞いた獄寺は恥じることもなく、千束に自分達のを含めた全額払わせようとしていた。

流石の図々しさにツナとミズキは引いているのだった……。

ツナがこれは悪いと思い獄寺を注意しようとするが―――

 

「図々しいと思わないんですか?同い年の人にせびって」

 

「ああん?文句あんっか」

 

(ああ!思っていた矢先に!!)

 

獄寺の発言にたきなが反応して物言い付けた。

ツナはこういうことが起きないために注意しようとしていたが一歩遅かった。

 

「文句というか……あなたの行動に問題があるから言っているんです」

 

「食べに行くと提案したのは千束の奴だろ?」

 

「確かにそれは言いましたけど、別に奢るとかは言ってませんでしたよね?どさくさに紛れて奢ってもらおうとするなんて卑怯じゃないんですか?」

 

「………」

 

たきなの反論に獄寺はなんとも言えず顔を反らして眉間にしわを寄せていた。

ポケットにあるものを取り出そうと一度は考えたが、場所が場所なのを思い出して出すのをやめる。

獄寺はイライラしながらもたきなの方に顔を向けてる。

このような言い合いが獄寺とたきなが喫茶『リコリコ』に来てから何度も行われていた。

 

「チッ……うるせーんだよ!折角、そのままの流れで奢ってもらうと思ったによ!」

 

「……はぁ、あなたっていう人は…恥ずかしいと思わないんですか?人に奢らせるようするのに」

 

「別に。奢ったやつが人が良いだけだろう」

 

(言い切ったーーーー!!!!)

 

獄寺は自分が奢ることけしかけようとしたことを悪びれることもなく、言い切った。

その言葉を聞いてたきなの目は冷たいものに代わっていく。

 

「……呆れてものも言えません」

 

「う゛お゛ぉい!?テメェ、もう一度言ってみろや!!」

 

「はい!口喧嘩はそこまで!!ラーメンは私のおごりでいいから!!!」

 

呆れて返っているたきなと彼女の態度にイラつきを見せる獄寺。

また口喧嘩が始まろうとしている間に千束が入り込む。

彼女は2人の口喧嘩を止めるために自分のおごりすることで争いを終わらせようとしていた。

 

「よっしゃあっ!」

 

「ちょっと千束さん!それでいいんですか?こんな男の思惑に乗ってしまって」

 

「たきなが私を心配してくれているのは嬉しいけど、このままお互いに喧嘩したまま話が終わらないよ?」

 

「私は別に……」

 

「まあまあ。私のお金の心配はしなくっていいからこれでも結構懐は潤っているし」

 

自分の思惑になって喜ぶ獄寺。

たきなはその獄寺を横目で一瞬見ながら千束に心配そうに声を掛ける。

千束は大してにしていないことをたきなに伝えた。実際、問題仕事があるたびに事故処理をしてくれる『クリーナー』という組織に頼んでいるのでお金はそこまでないが、ここまで喧嘩問題に発展してしまったら仕方がないと思っていた。

その光景を見てツナは重い腰を上げた。

 

「はあ……獄寺君。ここまでお騒がせした謝罪しようか。俺も一緒に謝るからさ」

 

「そ、そんな!じ…沢田さんのお手を煩わせるには……」

 

「獄寺君を止めなかった俺にも問題あるし……そもそも、獄寺君謝れる?」

 

ツナは獄寺に皆に謝ることを催促する。

自分が一緒に謝ると前置きをしておくことで謝るハードを下げた。

ツナに迷惑かけると獄寺は躊躇するがツナはそんな獄寺に冷静に「皆に謝れるか」と冷たい口調で問い詰める。

これには煽って獄寺自身に謝らせるように誘導させる作戦であった。

 

「そんな!俺が謝ることができないみたいな言い方……」

 

「………………」

 

「うっ……わかりましたよ」

 

 

ツナに言われたことを否定しようとする獄寺だったが、彼の自分に向ける目つきで黙ってしまう。

そして求めていることを察して獄寺は実行に移す。

 

 

 

「お騒がせして申し訳ありませんでした!!!」

 

 

 

大きな声を出してツナ以外喫茶『リコリコ』のメンバーの方に向かって角度90度で頭を下げて、獄寺は謝罪を行った。

 

「……ということで本人も深く反省しているので許してもらえませんか?」

 

「いや、許すとか許さない以前に私はそもそも怒っていないし……」

 

「…まあ、本人が頭下げて謝ったので許しましょう」

 

「そもそも私は迷惑掛かっていないし、別に……引いてはいたけど」

 

「言い争った同士が納得しているならそれでいいだろう」

 

周りに反省している獄寺の咎めないように周りに頼むツナ。

当の千束はそもそも気にしておらず、喧嘩相手だったたきなも獄寺がきちんと謝ったので少し考えたが許すことにしたようだ。

大人組は喧嘩していた2人で話が終わったためにそれでいいスタンスであった。

それを確認したツナは獄寺の方を見て顔を上に動かして合図を送った。

 

 

「ありがとうございます!!!」

 

 

獄寺は今度は45度の姿勢で頭を上げて周りに礼を言う。

そうしたことでやっといつもの雰囲気に戻っていった。

 

「……ってなわけで気を取り直してラーメンを食べにいこ―!!!」

 

「結局、ラーメンですか…というかこの後にリコリスとして仕事があるんじゃ……」

 

「仕事の前はきちんと食べておかないと力が出ないよー?」

 

「だからってラーメンはないでしょう……」

 

「あはははっ……」

 

落ち着いたところで千早は再びラーメンを食べに行くことを提案する。

ラーメンに拘る千束に呆れるたきなだった。

そのやりとりを見ていたツナは微笑するしかなかった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―とある廃墟地区―

 

 

「ふー…食べた食べた」

 

「食べ過ぎですよ。千束さん」

 

「いやいや、これでもまだ腹八分目だってー」

 

「あれでですか……」

 

あれから約一時間後、千束、たきな、ツナ、獄寺は今では廃墟ばかりになっている地域を歩いていた。

勿論、仕事の為である。喫茶『リコリコ』はリコリスの支部であるが、本部を含む他の支部とも違い、リコリスとしての任務こそ請け負っているものの、大抵は町内の手伝いなどといった地域に根ざした活動が主になっている。

ちなみにラーメンの代金は割引(ミズキと店長含む)で終わった。

 

「そういうたきなはさぁ、全然食べなかったよね?ラーメン」

 

「当然ですよ。任務の前にラーメンとか割に合いませんから。しょっぱいものを食べた後に水を欲しくなって水を大量摂取した時に起きる『水太り』という状態のせいで一時的に水によって体重が……」

 

「あー、そういうのなし!折角食べた後の余韻が悪くなる!」

 

「はぁ……わかりました」

 

あまりラーメンを食べなかったたきなに千束は質問するがそこから水の摂取にする体重の増加に触れられたので話を中断させた。

乙女にとって体重増加は禁句なのだ。

 

「あいつ(千束)の奴、ラーメン3杯ほどと餃子を食ってませんでしたっけ……?」

 

「あの体のどこに入るんだろうね……最後にアイス食っていたし……」

 

「聞こえてるよ!そこ!!あとアイスは別腹だからね!!!」

 

「ひぃっ!すいません!」

 

(……って怒る所そこー!?)

 

たきなと千束より少し離れた後ろで静かに会話していたツナと獄寺は小声で千束が食べていた量について話し合っていた。

ラーメンは3杯食べた(ちなみに餃子1人前も)あげくにデザートにアイスを頼んで食べていたのだ。

そのことを話していると地獄耳なのかたまたまなのか聞いていた千束がアイスは別腹と怒っていた。

条件反射で謝ったが直ぐに怒る所がズレていることを感じていた。

 

「…バカなことやってないで着きましたよ。ここが噂になっている幽(・)霊(・)騒(・)動(・)の廃墟です」

 

「へぇ、ここが噂の幽霊廃墟かぁ……」

 

 

たきなが立ち上がり見上げた先には1つの年季が入った3階の廃墟のビルがあった。

千束はたきなに続いてそのビルを下から覗く様に見る。

彼女らは最近この廃墟で起こっている『幽霊騒動』について調べるためにここまで来たのだ。

ここのビルは昔自殺したものがいるという話でその話を興味を持った人々が怖いもの知らずで探検などしていたのだが、最近『幽霊の声を聞いた』『火の玉』を見たという目撃情報が見せられていた。

そういう目撃情報を警察で寄せられていたが警察は動くことはできず、リコリスの支部の『リコリコ』に仕事が回ってきたということだ。

 

「よーし!早速、幽霊退治と行こうか!おー!」

 

「………」

 

「お、おー……」

 

「くだらねぇ……」

 

千束は仕事が始まり気合を入れるため周りに意欲を沸かせようとするが、周りはイマイチ乗る気はなく、ツナ1人が弱々しい声で返事してくれるだけであった。

 

「あれー?ノリが悪いぞー!もしかして幽霊に興味が無かったりする?」

 

「幽霊なんているわけないじゃないですか。何言っているんですか」

 

「興味がねぇよ。……UMAなら興味があるがよ」

 

「幽霊は……苦手だなぁ……」

 

(そもそも昔に本物の幽霊と出会ったことがあるし……)

 

 

なぜ自分が空回りしたのか分からない千束は皆に意見を求めるが、たきなは幽霊の存在は信じず冷たげな反応で獄寺はそもそも興味がなかった。

ツナは幽霊の存在に恐怖を持っており、そもそもツナは3年程前に仲間との肝試しで本物の幽霊(しかも悪霊)と遭遇しているために仕事で限りはこの廃墟には近づきもしたくなかった。

 

「みんなノリが悪いなー。ここは『悪霊退治だー!』ってみんなで鼓舞する所じゃないの?」

 

「何の話ですか?幽霊の噂の疑惑を晴らすのでは?」

 

「幽霊なんているわけねぇだろ。テメェ、何歳だ?」

 

場の雰囲気が悪いためにいつものノリで流れを変えようとするが、たきなと獄寺の態度は冷たいものだった。

 

「うー……みんなが厳しいよー」

「あはは……」

 

2人の冷たい度に千束は項垂れていた。

ツナはその姿を見て、乾いた笑いをするしかできなかった。

 

「バカやっていないで行きましょう。千束さん」

 

「わかったよ~…それじゃあ、お二人ともバックアップをお願いね」

 

「わかった。2人とも気を付てね」

 

「……チッ、行って来い」

 

「……あなたはなんでその態度なんですか」

 

話がこのまま進まないと思ったたきなは千束を任務に促す。

たきなに言われて千束も任務を行う気になったようで体を起こして廃墟へたきなと共に入っていく。

完全に建物に入り込む前にツナ達に連絡係として役割を伝えておく。

ツナと獄寺は外部組織からの協力者ということになっており、何かあった時の連絡係や戦いのサポートなどすることになっている。

なお、ツナは承知したが獄寺の態度は協力者とは思えない態度だったために思わずたきなは立ち止まって指摘した。

 

そんなやりとりしつつ、千束とたきなは幽霊がいるらしい廃墟へ入り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、行こうか。獄寺君」

 

「えっ?……行くってどこへ?」

 

 

 

 

2人が廃墟に入っていってある程度経って、ツナは獄寺に言う。

ツナの台詞の意図が読めない獄寺は思わず聞き返す。

 

「彼女達の後を隠れて追跡するんだ。嫌な予感がする…俺の超直感がいっている」

 

「あっ、待ってくださいよ!沢…十代目!」

 

超直感に従い二人の危険を察したツナはすぐに廃墟に向かいだした。

獄寺もその雰囲気に飲まれてつい「十代目」と呼びながらもポケットに入れておいたスマホを出して片手でいじりながらツナの後を追いかけた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―廃墟1階―

 

 

「それで結局どう思っているの?」

 

「何がですか?」

 

二人は調査のために廃墟に入ってゆっくり歩きながら1階を探索していた。

最初は無言で周囲を警戒していたが、我慢できなくなったのか千束からたきなに質問をしてきたのだ。

 

「とぼけちゃって~。ツナと隼人をどう思っているかだよ」

 

「ああ……別に千束さんが求めているようなものはないですよ」

 

ガールーズトークがしたのか千束は店の店員であり、協力者の距離が近い男の子二人、ツナと獄寺に対してたきながどう思っているか聞きたいようであった。

なお、当の本人は周りの注意に集中したいらしく、彼女からの質問を煩わしいと思っていた。

 

「いや~何かあるでしょう。特に隼人とは仲良いし」

 

「あれで仲良いとか思う千束さんはどうかしてます」

 

いつも言い争いになっている自分と獄寺を『仲が良い』と言う千束にたきなは呆れていた。

ちなみに獄寺を名前呼びするのは千束だけで最初のころは獄寺も名前呼びされることを嫌がっているが最終的には根気負けする流れで名前呼びを許した経緯がある。

 

「えー。よく言わない?喧嘩する程仲が良いって」

 

「確かに『お互い言いたいことを言い合える遠慮のない関係性である』という意味合いはありますが……私と彼はそういう関係じゃありません。ただ仲が悪いだけです」

 

「ふーん……まあ、いいや。そういうことにしておいてあげる」

 

「いえ、本当に千束さんが思っていることはなくってですね……ハァ…もういいです…」

 

よく言われる『喧嘩する程仲良い』という言葉をそのまま受け取っているため獄寺とたきなの仲を勘違いしている千束にたきなは訂正をするがそれでもわざとか勘違いしているのか訂正する気のない千束の態度にたきなは諦めた。

今はそんなことに考えを割くくらいなら周りに注意を割く方がいいと結論付けた。

 

「それでツナのことは?」

 

「沢田さんのことですか……正直、彼のことはよく分かりません」

 

「ほほう。そのワケは?」

 

「普段の態度や店の手伝いを見ても彼はドジで動きは悪くないですが抜けている所が多く、普通の店だと多分数日で首でしょう」

 

「辛辣だね~」

 

続けて千束はツナのことも滝永菊が彼に対しては辛辣な評価を上げる。

とはいえ、たきなが彼に対して辛辣な態度も理解できるほど普段のツナの店での行動を思い出すと納得なものであった。

店に入った当初のことだが、ツナは注文を間違えたり、転んで皿を割ったりのドジをしていたりしたからだ。

 

「ですが……そんな彼には謎の人を引き付ける能力という素質がある気がするんですよ」

「へぇ、そんなこと思っていたんだ」

 

「事実、あの獄寺さんも彼には慕っていますしね。……意味不明なくらい」

 

「確かに。隼人のあの態度は心酔っていう感じでちょっと怖い」

 

2人はツナの性質に触れつつ、その影響を受けているだろう獄寺について触れた。

獄寺からツナへの態度は普通ではなく、ツナのことを知っている人からいたら異常な心酔に近い忠誠心をしていた。

そのためにたきなも千束も獄寺のツナへの態度にはドン引きしていた。

 

「なんであそこまで沢田さんのことを慕っているか分かりません」

 

「前に気になって隼人に聞いてみたけど……『俺は沢田さんに命を救って貰ったんだ』って言っていた」

 

「命を救ってもらったって……一体何かあったんですか?」

 

2人は獄寺がツナを慕う理由が分からず2人で悩む。

現代社会に『命を助けてもらった』という状況はそこそこ想像できるが、あのツナが獄寺を助ける状況が想像できなかった。

結局、謎は深まるばかりだった。

 

「わかんない。それ以上は教えてくれなかった」

 

「……沢田さんが人を助けるシーンが浮かばないんですが」

 

「いやいや、もしかしたらやるときはやるタイプかもしれないよ。彼は」

 

「それはフォローしているつもりですか?」

 

獄寺から教えられた情報から何があったか想像してみようとしたものの普段のツナから想像できなかった。

そのために人を貶すいい方になってしまう。流石にあんまりだと思った千束はフォローするが全然なっていないためについ突っ込んでしまうたきなだった。

 

「まっ、とりあえず。ここまでかな」

 

「……今、何しました?」

 

たきなは手元の機械を持って動かしていた千束に疑問をぶつける。

凄く嫌な予感をたきなは感じていた。

 

「ん?ボイスレコーダーで今のところまで録音していた所だよ?あとでミズキに教えてあげようかなと思って」

 

「………は?何そんなもの持っているですか?」

 

「いや、もしかしたら必要な時があるかな……って、なんで銃を向けるの!?ストップストップ!!」

 

「今すぐ!録音を消してください!!今すぐに!!」

 

「分かったから!銃を置いてよ、たきな!!」

 

勝手に自分の2人に対しての印象を録音されているのにキレたたきなは千束に銃を向ける。

本気で怒っている目と本気で殺気出されているのを知り、弾を避けられる千束もこれには気迫に押されて、つい手を挙げて降参してしまう。

そして言われたとおりにボイスレコーダーの記録を消すのであった。

 

「…それで千束さんの方はどうなんですか?まさか私だけに聞いて終わりではないですよね?」

 

「んー?わたしはねぇ……2人は弟みたいなものだと思ってる」

 

「………は?」

 

自分ばかり聞かれて録音されそうになったのも癪に障るたきなは逆に千束に2人をどう思っているか聞こうとした。

だが、千束が答えた内容があんまりにも意外だったために素っ頓狂な声を出す。

 

「…もしかして面倒くさくって適当なこと言ってませんか?」

 

「えっ、まさかそんなこと思われていたの?これでも真面目に答えたんだけどなー!」

 

返事が適当に思えたたきなは千束に聞くが本人は真面目に答えたと言う。

……口調からして怪しいものだが。

 

「……なんというかさぁ、タイプじゃないというか私、あの2人をあんまり同性代の異性として見れていないかな。なんという心配な所が多すぎるって言うか……」

 

「ああ。それ、分かります」

 

普段の行動から見て皿を割ったりするなどの失敗が多いため2人を心配する気持ちは強く、それに対してたきなは同意見だったために共感する。

 

「だから、弟みたいな感じで見ちゃうんだ…私、弟居たことないけれど」

 

「だめじゃないですか」

 

「まあ、とにかく私からしたらあの2人は可愛い弟分なんだよ!分かった?」

 

「分かりましたけど……」

 

弟がいたことがないのに弟みたいに感じるのはおかしいと思うが、千束の強気の態度に押されて渋々従うしかなかった

 

「……じゃあ好きな異性とか今の所はいないっていうことで良いんですか?」

 

「うーん…好きな異性かぁ……気になる人はいるかな」

 

「えっ、いるんですか!?」

 

なんとなくいないだろうと思いつつ、千束に好きな異性はいるか聞くと返ってきた答えに驚くたきな。

別に出会ってからそれ程経っていないとはいえ、ここまで異性に興味があるように見えなかった千束が気にある異性がいると聞いて驚きを隠せなかった。

 

「そんなに驚かなくっても……」

 

「すいません……つい。……それでお相手は誰なんですか?店長ですか?」

 

「いや、先生はないよ。……名前も知らない人だけどちょっと前に助けてもらったんだ」

 

「そうなんですか……それでどこ――――」

 

千束が気になっている相手に対してもっと深く聞くために質問をしようと矢先、人の気配を感じて気持ちを切り替える。

戦闘態勢をとり、千束に声を掛ける。

 

 

「千束さん」

「たきな、分かってる」

 

 

現在の状況は千束も理解しているようでたきなと同じく銃を構えて警戒態勢を取る。

普段はノリが軽い千束だが『史上最強のリコリス』と言われるほどその強さはDAでお墨付きなほどの強さだ。

 

 

 

 

 

 

ギャアアアアアアアアァァァァァァァ

 

 

 

 

急に廃墟に謎の悲鳴が響き木霊する。

そして天井にはいくつかの青い火の玉が飛んで回っていた。

その現場にたきなは一瞬、目を見開いたがすぐに冷静さを取り戻す。

千束は逆に目を輝かしていて見ていた。

 

「……あまりにも唐突だったせいで驚いてしまいましたが……所詮、子供騙しですね」

 

「そう?私は見ていて面白いと思ったけどなー」

 

「真面目にやってください。今回の仕事は怪奇現象の原因を探って首謀者がいたら捕まえることなんですよ?」

 

「あー分かってるって!もうたきなは真面目過ぎるんだよ」

 

「千束さんが不真面目すぎるんですよ」

 

この状況を楽しむ千束にたきなは真面目に叱られて、千束は不平不満を漏らす。

叱られて、少しはやる気を出したのか銃を構える。

 

 

「それじゃあ、少しは仕事しますか」

 

 

千束がそう言い終えると持っていたゴム弾銃で自分達がいる場所に火の玉の周りを撃つ。 

そうすると火の玉は地面に落っこちる。光は本物の炎ではなく、電気だったようで地面に落ちても光ったままである。

線がつけられており、どうやら廃墟が暗いのを利用して上の階から釣るして動かしていたようだ(よく見ると天井に切れ目があるのが見える)

そして上の部屋の2階の部屋に人が去るような足音が聞こえている。

 

「たきな!」

 

「はい!」

 

たきなは千束に言われて他の部屋に走り出す。

そして音の発信源だと思われる場所に辿り着くと持っていた銃を構えて容赦なく撃つ。

撃った場所にCDプレイヤーがあり、弾が当たり機能が停止して同時に悲鳴の音は止まった。

 

「どうやらこれが悲鳴の元だったようですね」

 

「あちゃー…完全に破壊しているね。それにしても……人ってこんな安物でよく騙されるもんだよ」

 

「まあ、素人はビビって逃げ出すでしょうし……我々相手にはバレるのは折込済みなのかもしれません」

 

「ん?それって私達を誘き寄せる罠って言うこと?」

 

「……わかりません。ただ、警戒した方がよいのは確かです」

 

明らかに素人を騙す程度の偽造の怪奇現象に何かしらの意図を感じたたきなは千束に経過するように言いつつ、廃墟を警戒しつつ歩きだした。

 

だが、1階にも気配があらずに更に2階に上がるも警戒していたものの気配は全くなく、部屋に入るたびに銃を向けるが、結局空振り終わっていた。

 

「……おかしいですね。先ほどの足音から人がいたのは確かなんですが……」

 

「ゆーどうされているんじゃない?私達。この流れだと3階に」

 

「誘導?何のために?」

 

「さあ?これに関しては黒幕さんに聞かないとねー」

 

ここまで人の気配が無いのは最終階に誘導するためと予想する千束。

彼女は疑問に思うたきなに軽く返しながら3階に向かう。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―廃墟3階のとある部屋前―

 

 

「ここが最後の部屋ですね」

 

「まさかここまで人がいないとはねぇ……」

 

あれから3階まで来た2人は警戒心Maxで3階の探索を行っていたがここまで一度も人と出会うことはなかった。

拍子抜けしながらも警戒心を怠らずについに奥の真ん中の部屋が最後となった。

 

「開けますよ」

 

「うん」

 

たきなの合図とともにドアは開かれる。月明りでその姿が照らされる。

そこには、金髪のロングでスリットが入ったサングラスをかけて手にはいくつかのリングを付けている黒スーツの男がガラスがなくなった窓に腰かけていた。

体格的に見てガタイはよく、かなりの長身であることが分かった。

 

 

 

「来たか……”リコリス”」

 

「「!?」」

 

 

 

男の口をした言葉に千束とたきなの2人は目を見開く。

なぜなら男が口にした『リコリス』という単語は一般的には花の単語であり、傭兵である『リコリス』のことは普通は知らないはずである。

なのに男は『リコリス』という言葉を自分達に対して言っている。

つまり、目の前の男は知っている理由はおいといてもリコリスもといDAにとって危険の存在なのは確かである。

 

「なんでその言葉を――――」

 

「へぇ…私達のことを知っているなんて私達って結構有名?あとおじさんの名前は?」

 

「ああ。お前らはこちらの社会ではかなり有名だからな。そして俺の名は…ファルソと名乗って置こう」 

 

「falso(ファルソ)ってイタリア語で『虚偽, 偽り』で本名じゃないでしょ!……まあ、名前がないのは呼ぶに不便だからそれで呼ばせてもらうけど……」 

 

(『こちらの社会』…?この人は一体、なんのことを言っている…?)

 

たきなが男に質問をしようとしたところで千束は彼女の前に腕を出して制止する。 

空いている手の人差し指を口に当てて『自分に相手の情報を引き出すのは任せろ』という。

意思を感じて、たきなは千束に男との会話を任せて自分は何時でも戦える準備をした。

……とはいは男の会話で男に明らかに偽名だが密かに男がイタリア系であることは引き出している。

その中で男の発した『こちらの社会』という単語が気になったがたきなに会話を任したので質問はしなかった。

 

「わざわざこんな手間がかかることしてまで私達を呼び寄せるなんて…もしかしてファン?」

 

「別にファンじゃねぇよ。それに興味があるのは『電波塔事件』で活躍したお嬢ちゃんだけだ」

 

「!」

 

(電波塔事件の真実を知っている……!?)

 

男は日本で起きた大事件の『電波塔事件』が千束が一人でテロリストから守ったことはあくまでDA内で広まっていることでそれ以外には情報がシャットアウトされているはすだ。

そのため外部の人間の目の前のファルソが知るはずなのが……。

 

「錦木千束…お前さんの能力は色んな所に知られていてな……そのお前さんの能力を知ってはお前さんを求めるものは多い」

 

「へぇ、お(・)じ(・)さ(・)ん(・)も(・)そうなんだね。1年前も同じような人達に狙われた気がするよ」

 

「……日本のような島国にまで人材を求めるのは珍しいからな。それだけ困っているわけだ」

 

(………今なんて言いました?『1年前も同じような人達に狙われた』?千束さんは前に狙われたことがあった?……千束さん、あなたは一体?)

 

ファルソは世知辛い世の中に嘆くように片手で頭をボリボリとかいた。

会話で千束は前にも個人で別の所からも狙われていたことを知るたきな。

たきなが頭の中で試行する中、千束とファルソは会話続ける。

 

「それでおじさんは私をどっかの組織に言われて狙って来たっていうこと?」

 

「そういうこった。理解したなら大人しくついてくれるか?」

 

「ヤダ!……って答えても意味はないよね?」

 

「勿論。力づくで連れて行くだけだ」

 

ファルソと千束は口調は落ち付いているか雰囲気はバチバチとやり合っている雰囲気を醸し出していた。

殺伐した雰囲気の中でたきなは周りを警戒して気配を探っていたが……全く人気を感じていなかった。

 

(おかしい……さっきからこの人以外の気配が感じない……)

 

「お嬢ちゃん、無駄に警戒しなくっていい。俺の部下は全員この廃墟から撤退させてある」

 

「!?」

 

(考えることが読まれた……?そもそもそんなこと私達に話すメリットは?)

 

ファルソは既に自分達の部下がいないことを自分からバラしてたきなは困惑した。

情報は何よりも重要で相手に誤認させておいた方が良い情報もあり、この場合たきな達に『仲間は周りにいるかもしれない』と誤認された方がプレッシャーになるはずだ。

だが、ファルソはお構いなくそれを簡単にばらした。それは自分に自信があるかそれともただのバカか……。

 

「そんなこと敵の私達の話していいの?それに残ったのがあなた1人だなんてよほど自信あるんだね」

 

「無駄に警戒させても何の意味もない。それに部下達じゃあお前らと戦わせても無惨にやられることは目に見えているからな」

 

「つまり、おじさん以外の人達は大したことがないって言うことだね」

 

「想像に任せる」

 

千束はここはチャンスだとファルソは質問をして相手の力量を窺おうとする。

どうやら彼らの部下は自分達2人と比べたら弱いらしく、狙っている組織は思ったより大したことがないのかもしれない。

だが、同時に1人で2人を相手にしようとするファルソという男はこちらが考えるよりは強いのかもしれないという考えがよぎる。

 

「……お喋りはここまでだ。これ以上、無駄に喋って情報探られるのも困るから」

 

「あっ、気が付いていたんだ。そのまま色々と口を滑らしてくれたら良かったのに」

 

「こちらもあんまり色々と口を滑らしてはいけない立場でな……」

 

(この男…リコリスを知っていて、どこかの組織で千束さんを狙っている……色々と知ってそうなこの男を捕えて本部に差し出せば本部に戻れるかもしれない……)

 

敵意剥き出ししている千束とファルソの会話を聞きながらたきなは自分の得になることを考えていた。

元々、たきなはDAの本部にいたがと(・)あ(・)る(・)任(・)務(・)で失敗をしてしまったため『左遷』の意味合いもあり、支部である『リコリコ』に送られてしまった。

そのため本部に戻るための手柄を立てるためためなら何でもする気で遭った。

ファルソという謎の男はリコリスの存在を知っていた。しかも千束のことも知っているとしたら一体何処から知ったのだろうか?

基本的にそういう情報はDAで留まっているはずのため情報を流している裏切り者がいるのかもしれない。

それらを確かめるためにもファルソという男を捕まえるのが最優先だと思い銃を構えて、動きを封じるために脚に狙いを初めて引き金を引いた――――

 

 

 

 

――――だが、脚を狙った弾は当たったと思われた瞬間弾は消えた。

 

 

 

 

「!?」

 

「何もしていないのに弾が消えた!?」

 

「お嬢ちゃん、狙い所は良かったが……生憎、俺にはそんなちゃちなもので狙っても無駄だぜ」

 

2人は脚に当たったはずのたまが何もしていないのに弾かれた事に目を疑った。

彼女らは暗闇でありよく見えなかったが―――男の手にはめられた指輪の1つに紫の炎が宿していることを。

そしてその炎がイタリア裏世界に伝わる『死ぬ気の炎』であることを知らなかった。

 

 

「ここから仕事をさせてもらうぞ」

 

 

ファルソは立ち上がり右腕を軽く上に上げる。

そして彼の右手の筋肉が膨張していく。膨張した腕は少ししていくと変形していき普段のよりかなり大きくなった巨大の腕に落ち着いた。

 

「腕が巨大化した……!?」

 

「ちょちょ!!?一体何が起きているの!?」

 

 

 

「教えてやろう。所詮、テメェらは小さな島国の井戸の中の蛙ってことをなァ!!!」

 

 

 

「たきな、伏せて――――」

 

 

 

次の瞬間、伸びて巨大化した腕は横に振られてビルを破壊していく。

千束はその動きを彼女の能(・)力(・)によって予測して自分と一緒にたきなを地面に伏せさせて攻撃を回避する。

その攻撃によるビルの破壊ぷりはまるで鉄球クレーン車で解体行為をしているかのように。

だが、これは1人の男の腕によって行われているのが現実だった。

 

「はぁはぁ………」

 

「…たきな、いくよ!!」

 

「ちょっと待ってください!!」

 

攻撃を終わったのを見計らって千束は起き上がり、たきなを腕を掴んで走り出す。

たきなも困惑しながらも千束に連れ出して走り出した。

 

「……さて、ゆっくりと調理していくか」

 

ファルソは逃げていく千束達を見ながらそう呟きながら巨大化した腕を元の大きさをに戻して2人を追う。

 

彼女らは知らなかったが彼の腕が巨大化したのは『死ぬ気の炎』の種類の一つの『雲属性』の特性『増殖』により筋肉量を増やしたためであった。

『死ぬ気の炎』…彼がいる世界――イタリア裏社会では今や誰もが普通に使っている高密度のエネルギーであった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―三階廊下―

 

 

「一体何なんですか!?あれ!!いくらなんでも普通じゃないですよね!!?」

 

「私も分かんないよ!!!流石の私もあんなの映画の中だけしか見たことないよ!!」

 

部屋から逃げ出した2人は走りながら先ほどのファルソがやった技について話していた。

リコリスはエージェントという日本では浮世離れした存在ではあるが、超常現象などには無縁である。

だが、先ほどファルソが行ったことは完全に超常現象の範囲である。人は簡単に腕は大きくならないし、ビルの一部を簡単に破壊するほどの威力持つはずがない。

リコリスもといDAは裏組織だが所詮。、裏の表。『死ぬ気の炎』など裏の裏のことを知るほどどっぷり使ってはいなかった。

 

「とりあえず、撤退しましょう!あんな規格外な相手、私達の手に負えませんよ!!」

 

「賛成!普段なら相手の隙を窺う所だけど、銃弾をノーモーションで弾いたり、腕が大きくなったりするビックリ人間相手は…ちょっと御免被りたいかな……」 

 

「とにかく、一時退却した後に本部に連絡しましょう!相手は普通じゃありませんし、千束さんを狙うなら増援を頼まなければなりませんね」

 

「正直、増援を増やした所で何とかなる気がしないけどね…」 

 

2人は慌てながらも今後すべきことを考えながら話し合っていた。

珍しく余裕がない千束であったが、彼女も流石に『人外』と呼べるほどの体を変形する相手と出会い戸惑っているようだ。

たきなは撤退したら増援を提案するがそれで対処できる相手かと千束には不安ではあった。

 

 

 

「悪いが逃がさねえぜ」

 

「えっ」

 

 

 

声が聞こえてたきなが横を振り向くととそこにはファルソが目の前に現れていた。

そして次の瞬間、たきなは雲属性の炎で増量されて鋼のようになった腕で殴られて吹き飛ばされる。

 

 

「たきな!」

 

 

あまりのことで千束は驚きを隠せない。

彼女は動体視力非常によく、相手の服や筋肉の動きを見て次の行動を予測することができるが基本的に自分に対してである。

仲間が狙われた時は状況によっては避けさせることができるが、今回は2人で逃げていた時でしかも完全にたきな狙いであったために発動できなかったのである。

 

「うぐっ……」

 

あまりの早さだったがたきなは瞬時に殴られたときに腕をクロスして体を守っていたために致命傷は避けていたようだが肺にもダメージを受けていたためか呼吸するのは苦しそうであった。

そんな彼女にファルソは近づき、死ぬ気の炎で巨大化した手で倒れているたきなを掴み握りしめる。

 

「悪いな。恨むならテメェの弱さを恨め」

「あっ…ぐがっ……」

「たきな!」

 

ファルソによるいたぶりにより苦しめられるたきな。

そんなたきなを見て千束はファルソに銃を向けて行動の抑止をするが彼は一方に止めようとしない。

 

「おっと、嬢ちゃんはバカじゃねぇから分かっていると思うがそんなもの向けても俺には効かねぇぞ?」

 

「たきなを離して……!」

 

「おいおい、最強のリコリス様は実力差を見せられて交渉力も落ちちまったかー?……こいつを離して欲しいなら分かるだろ?」

 

「………」

 

たきなを助けたい一心で冷静さが欠けている千束を煽るファルソ。

ファルソからしたらたきななど千束を自分達の方へ来させるための道具でしかなかった。

そのためにどれだけ痛み付けようが壊れてしまうが関係なかった。

 

「早くしねぇと相棒の骨が折れるどころかミンチになっちまうぜ?」

 

「あっ……ああっ……」

 

(考えろ…私、ここでたきなを助けられる方法を考えろ……!)

 

苦しむたきなの姿を見て千束は必死に今の状況を打倒できる方法を考える。

いくら自分が攻撃を避けることができても仲間を人質にされてしまったら何も意味がない。

『最強のリコリス』という言われる千束だがそれはあくまで彼(・)女(・)一(・)人(・)だ(・)け(・)の時のみのことである。

仲間の情など普通にある彼女からしたらこのような人質作戦は一番効く方法であった。

 

「ち…さと……さ…ん……」

 

(……たきな!)

 

千束が色々と思案しながら悩む中でたきなはファルソに苦しめながらも千束の名を呼ぶ。

そのことを聞いて千束は歯切りしながら必死にファルソに飛び掛かる気持ちを抑える。

だが、考えても考えるだけたきなが苦しむだけなのは目に見えていた。

このまま時間が過ぎるだけ――――

 

 

 

 

 

「彼女を離して貰おう」

 

 

 

 

 

――そう思われていた時に1人の黒フードの男がファルソの後ろに突然現れた。

 

 

「!?」

 

「!!?」

 

その場にいたもの全員が男に存在に驚愕する。

これは当然だった。先ほどまで存在さえ感じさせなかった男が目の前に現れたら誰でもそういう反応を起こすだろう。 

 

「テメェ、一体何モン――――」

 

ファルソが男に質問しようとした瞬間に男はファルソに回転蹴りを喰らわした。

ファルソは廊下の奥へ吹き飛ばされて激突し、大きな音が廃墟に響いた。

そして捕まっていたたきなは上空にほり投げられたが直ぐに男が抱きかかえる。

たきなを抱きかかえた男の態勢はお姫様だったが、不幸中の幸いか丁度たきなは痛みにより気を失っており、今の状態の反応はなかった。

 

「たきな!」

 

「……心配するな。彼女は大丈夫だ。痛みで気絶しているだけだ」

 

「そうか…良かったー」

 

たきなが心配になり、すぐに男がお姫様抱っこしている彼女の所へ向かう千束。

千束は息をしており、幸い男の言うように気絶しているだけのようだった。

男は身長は千束より少し高く、黒フードを被っており、服も黒服でフードを深くかぶっているために顔は見えなかった。

その全体黒色の男の手には違和感出るような赤色のゴツイ手甲がはめられていた。

手の甲には何かしらの紋章があり、その上には「×」印の紋章があった。

 

「……それでお兄さん?1年前に出会ったよね?」

 

「……さあな」

 

(声は分かりにくいけど、これって合成音だよね……そしてこの人、やっぱり……)

 

たきなは男の声を聞いて合成音だと見破る。並の者ならこの声が合成音だと気が付かない澄んだような大人男性の声。

これは千束の経験と勘による賜物である。

そして彼女は男を見て、一年前のある出来事を思い出していた――――

 

 

―

―――

―――――

――――――――

――――――――――――

 

~1年前、とある公園~

 

 

 

 

「さて、ここまでだよ!超常現象の正体さん」

 

 

 

リコリスの赤い制服の千束は誰もいない夜の公園で1人黒帽子の男はてなを追い詰めていた。

この時期は千束たちが担当する地域で『外に物が飛び回っている』『窓に赤い手が急に張り付く』など色んな奇妙な現象が起きていた。

その調査でリコリコの面々は問題を起こしているものを突き止めてた。

そしてその現状が今のような状態になっていたのである。

 

「錦木千束……君が我々に気が付いて追い詰めるのに予想より2日程遅れている」

 

「へ……?あなたの言っていることが分からないんだけど?」

 

「つまり、君が我々を追い詰めるのは予想の範囲内だということさ」

 

「あーのー…よく分からないけど、そもそも『我々』ってあなた以外の人がいないんだけど?」

 

「これを見てもか?」

 

次の瞬間、1人しかいないと思った場所から同じ格好の人物が十数人、唐突にまるで最初からいたかのように表れた。

 

「は?」

 

「これで分かったかな?1人だけだと思ったら我々は最初から複数いたんだよ」

 

(ウソ……!?ありえないでしょ……今までそこに存在していなかったのにいきなり現れたなんて……)

 

千束は自分の目の前に起きたことに信じられなかった。

少なくても自分の目に対しての自信……というかその能力の高さはわかっているために今までそこにいたり、集まったら見逃すはずはなかった。

それなのに現実はまばたきもしていないのにまるで最初からいたように手段で現れたのだ。千束が信じられなくっても仕方がない。

 

「それであなた達は一体何者なの?この幼気な少女を狙うなんて」

 

「知らないだろうが錦木千束…君の能力は色んな組織に目を付けられていてね…我々は君を狙って来たって言うわけさ」

 

「それは……ご苦労さんなことで……」

 

(なんで私のことがバレているの!?これってリコリスから情報漏れているって言うことじゃ……でもそんなことありえるの?)

 

男達の狙いは自分であることよりも千束は自分の情報が外部から漏れていることに危機感を持っていた。

なぜなら、DAには『ラジアータ』という優秀なAIがあり、DAがクラッキングなど受けてもラジアータが守っているために情報が漏洩はあり得ないはずだ。

…そう考えると可能性はDAには情報を外部に漏らしている者がいるということになるが、そんなことあったとしてもDAが気が付かないものだろうか……という懸念があった。

 

「悪いけど我々は手段を選んでいけないからね。さっさとやらせてもらうよ」

 

「させは――――」

 

「教えてあげる。この技は君の目でも無力だ」

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、千束は真っ白い空間に1人にいた

 

 

 

 

 

 

「え?何?ここ」

 

そこは本当に何も存在しない真っ白い空間であった。

千束は戸惑う中、彼女の体が段々透けていく。

 

(何が起こっているかわからないけど、早くここから抜け出さないと……)

 

必死にこの空間から抜け出そうとする千束だったが、段々体の感覚が無くなってくる。

 

(やばい!やばい!!足の感覚がなくなって来てる!!早く打開策を――――)

 

体が動かせる間に自分が出ることを探そうとしていたが同時に思考の自由に奪われつつあった。

 

(ああやばいもうなにもかも考えられなく――――)

 

千束の思考は最後まで続かなかった。まるで急に睡魔に襲われるように意識が失っていく

 

 

 

 

 

 

彼女の存在と思考はそれで途切れた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 

 

次の瞬間、千束は目を覚ました。彼女に映るのは夜の公園の風景。

先ほどの白い空間ではなく、現実にある空間で男達と会っていた場所である。

色々と気になることは遭ったが、まず彼女は自分が誰かにお姫様だったされていることに気づき顔を赤くする。

 

「目は覚めたか?」

 

「は、はい!」

 

男から心配する声に千束はつい驚いて大きな声で返事してしまう。

男…体つきと声から予想だがほぼ間違いなかった。

彼は黒いフードを被っており、顔は見えずに千束から見えるのは口元だけであった。

 

「貴様……よくも……」

 

「えっ?」

 

声をする方向に千束が見るとそこには先ほどいた男達が傷を負って地面に倒れていた。十数人いた全員がだ。

その内の一人がこちらを見て言ったために実行犯は自分をお姫様抱っこしている男だというのが分かる。

 

「これ……あなたがやったの?」

 

「……ああ」

 

千束は恐る恐る男に目の前の惨状について聞くと男は静かに答えた。

その声は落ち着いた印象で目の前のことを起こしたように思えなかった。

 

「あ、あなたは一体―――「眠れ」

 

千束が質問しようとしたとき、男は赤くてゴツイ手甲を千束の目の前に添えると千束の意識はまた夢へ連れていかれていく――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千束が次に目を覚めた時は、公園のベンチの上だった。

そこでは黒フードの男おろか倒れていたはずの男達の姿もなかった。

それどころか争った形式もなく、まるで男たちは最初からいなかったように――――

 

 

それから怪奇現象は収まり、千束からの依頼も取り消された。

あの時、千束が見たのは全て夢だったように……

だが、千束は納得できずにミカに調査を継続させて欲しいと頼み込んだが――――

 

 

「千束、お前が見たのは夢だったんだ。全部忘れろ!!」

 

 

ミカは千束の肩を掴んで顔色を変えて、有無を言わせない迫力で千束にこの件から離れるように言った。

反応的にミカは何か知っている様子だったが、流石の千束もその迫力には勝てずに頷くしかなかった。

…とはいえ、納得など千束ができるはずにミカに隠れて色々と調べようとしたが―――何も出かかりは残っておらずに途方に暮れていた。

 

そして忙しい日々にそのことについて記憶の隅に置いて行った。

だが、決して千束は忘れたわけでなかった。

きっといつか黒フードの赤い手甲の男性と再会できるのを信じて――――――

 

 

――――――――――――

――――――――

―――――

―――

―

 

 

 

「…やっぱり思い出してもお兄さんは1年前に私を助けてくれた人だよ」

 

「…………」

 

「答えたくないのならそれでいいよ。でも、私はずっと前からあなたを探していたんだから」

 

(今回は夢にならないようにキチンと証拠を残しておかないと……)

 

千束は1年前のことを思い出した後にはっきり目の前の黒フードの男が1年前自分を助けた男だと断言する。

男は答えなかったが千束は目の前の人物を1年前の人物と同一人物だと確信していた。

今回は夢にならないために証拠として残すためにポケットに入れていたボイスレコーダーのスイッチを押して記録を取る。

 

「色々と聞きたいことや言いたいことが山ほどあるけどとりあえず一つだけきちんと言って置くね」

 

 

 

 

「―――――たきなと私を助けてくれてありがとうございました!」

 

 

 

 

大きな声で千束は頭を下げながら千束は助けてもらったお礼を言った。

実は自分を助けて貰った時から言いたかったのだろう。

しかし、探す方法もなく困っていた千束からしたらやつと言えた言葉なのだ。

 

「……礼を言われるほどではない」

 

「またまた~。あなたがいなかったら私達やられていたって」

 

男はお礼を言われても謙遜した態度をとる。

そんな男に対していつものように明るい雰囲気で接する千束。これは緩い雰囲気で聞きたいことを聞き出すための前振りでもあった。

 

 

「うおおおぉぉぉぉぉいいいいいい!!!テメェら、俺を忘れているんじゃねぇ!!!」

 

 

 

先ほど回し蹴りを食らって沈んでいたファルソが意識を取り戻していた。

そして怒りを集わせて千束達に向かって来る。

彼は腕と足の筋肉量を雲の炎で増量していた。

 

「…チッ!まだ倒れてなかったか」

 

千束は向かって来るファルソに露骨に舌打ちしながら銃を構える。

だが、前に黒フードの男が立ち塞がり彼女が銃を構えるの静止する。

 

「何を……?」

 

「ここは俺に任せろ」

 

男はそう言うと抱えていたたきなを千束の方へ引き渡し、スピードでファルソに向かっていた。

そのスピードは普通の人の目からはまるで消えたかのように音がした瞬間その場に姿はなかった。

 

 

 

「終わりだ」

 

 

 

次の瞬間、ファルソに強烈なパンチを12発、ファルソに浴びさせた。

その動きを千束は全てその動きを目で追いついていた。

 

「ぐあっ…あっ……」

(なんていうスピード……目では追いついていたけれど実際、避けられるかはやってみないとわかんないわ……これ)

 

黒フードの男の動きを見えていたとはいえ、あまりの早さに流石の千束もあっけにとられる。

ファルソは呻き声を出しながらその場に膝をついて倒れそうになって、そこにトドメてツナは後ろに周りに首に手刀を喰らわさせてダウンさせる。

地面に倒れそうになったファルソを右肩に担いだ。

 

「お前には聞きたいことがあるのでな」

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

男を担いだままどこかへ行きそうな黒フードの男の前に立ち塞がる千束。

たきなは近くの柱にそっと寄りかからせて寝かせてある。

このまま彼を逃したらもしかして二度と会えなくなるのでは?という危惧があったからだ。

……だが、その焦りか彼女は周りに少しずつだが霧が立ち込んでいるのに気が付かなかった。 

 

「……どうした?」

 

「どうしたじゃないよ!このまま何も教えないで消えるつもり!?さっきも言ったけど、あなたには聞きたいことが山ほどあるの!」

 

たきなは男を逃がすつもりはなかった。

男には感謝しているが聞きたいことが沢山あるのは本当だ。

『何者なのか』『名前は何というのか』『その力は一体なんだ』…etc。

最悪、返答次第ではリコリスとして処理しなければならないからだ。

 

 

「…悪いがここまでだ」

 

「なにを――――!?」

 

 

男の言葉の意思を理解できずに聞き返すが、意思が混濁し、地面に膝をついて倒れる。

周りを見ると霧が立ち込んでおり、知識がない千束もそれが原因だと察することができた。

 

「や、やっと会えたのに……」

 

 

「Arrivederci(アリヴェデルチ)(さようなら)」 

 

 

意識を失っていく彼女に対して黒フードの男はイタリア語で別れを告げた。

千束は最後まで力を振り絞って男の方へ手を伸ばすが意識は完全に消えて彼女は動かなくなった。

男は彼女が動かなくなったのを確認した後に叫ぶ。

 

 

「ボンゴレの医療班はリコリス達の傷の手当てを!処理班は現場の跡を隠せ!」

 

 

彼がそういうと霧が晴れて、黒服の男達が突然現れる。

彼らは霧の属性の『構築』によって姿を消していたにすぎない。 

男達は黒パーカーの男に言われて、それぞれの仕事に取り掛かる。

その時、黒パーカーの男のフードが風によってめくれる――――

 

 

 

 

――――そこには額に橙色の炎を灯したツナの姿があった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―2日後、喫茶『リコリコ』―

 

 

 

「納得できません!!!」

 

 

たきなの声が店内に隅々に響く渡る。

今はまだ店は準備中であり、客の姿はないが千束、ミカ、ミズキの姿はあった(ツナと獄寺はまだ店に着いていない)

たきなの大声に千束とミズキは耳を塞いでいたが、ミカは気にしないような顔で見ていた。

 

「っ……たきなさぁ…朝っぱらから大きな声出さないでくれる?頭に響くわ」

 

「それはミズキが朝っぱらからお酒飲んでいるからでしょ?…それでたきなは何が納得できないの?」

 

「何がって…一昨日の心霊スポットでの依頼ですよ!!なんで…何(・)も(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)よ(・)う(・)に(・)なっているんですか!!?物が壊された跡も私達の怪我も私達に現れた男達も全部ですよ?まるで最初からなかったように痕跡も全部消えているって……こんなこと普通ありえないでしょ!!!」

 

たきなは本気で憤慨していた。それこそ声で頭を抑えるミズキの訴えを無視するほど。

それもそうだろう。確かに存在していて、自分達が交戦した奴らの痕跡がまるで最初からなかった様に『消(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)』のだから。

 

「たきな…気持ちは分かるけれど、少しは落ち付こうよ」

 

「これが落ち付いていられますか!!?千束さんは何にも思わないんです!?私は謎の男によって体を傷つけられた!それは痛みと共に記憶しています!……それなのになんで私には傷つけられた痕跡がないんですか!!?」

 

冷静になるように言う千束にたきなは腕をまくって見せる。

一昨日にたきなは確かにファルソという男の巨大化した手の中に包まれて強く握られていた。だが、たきなの腕にはその時の跡は全くない。

少なくても2日経っただけで跡がなくなるほどやわなものではなかったのは苦しめられたたきながよく分かっていた。

 

「訳が分かりません……」

 

「ねぇ……あんまり言いたくないけれど、全部あんたらの夢だったって言う可能性ない?」

 

勢い自分の想いを吐き出したたきなは少し疲れたのが肩を落とす。

結局、疑問を口にしたもののどこから答えが返ってくるわけでもなくたきな本人は疲れただけだった。

そんなたきなにミズキは誰もが思い浮かぶが口にするのが憚れることを言う。 

 

「はぁ!?何を言っているんですか!?ミズキさん、あなたは私達が任務途中で寝てしまって2人とも同じ夢を見ていた…って言うつもりですか!?それこそありえませんよ!」

 

「でもさぁ…次の日にすぐに現場で確認して破壊された跡も自分達がダメージ受けた跡も綺麗になかったんでしょ?流石に今の現代技術でも破壊されたビルを何もなかったように直せないし、痛めつけられたダメージを無くすことなんて出来やしないわよ。それなら夢でも見ていた方がまだ現実的よ」

 

「……それはそうなんですが……」

 

ミズキの言葉にたきなも最初は否定的だったが、彼女が指摘した傷や壊された跡が無くなっている事を聞くと黙ってしまう。

そうなのだ。現場で確かに廃墟は破壊されたし、たきなは傷をつけられた……だが、何事もないようになっていた。

ミズキが言うように現代技術で考えればそんなこと普通は不可能であり、それならありえないとしても2人共同じ夢を見ていたという荒唐無稽の方がまだ現実味があるという。

 

「…少なくても廃墟の外を見張っていたツナと獄寺は何にも見ていないと言うじゃない。……まあ、あの廃墟って出入口多いから場所的に出ていくのが目撃できなかったという可能性もあるけれど」

 

「それなら……!」

 

「でも、あんたの話が事実だとしてもさっき言った2つの問題を説明出来なきゃ夢物語よ?それにもしも廃墟が破壊されたというならツナ達が見たり聞いているだろうし、あの廃墟近くで破壊現場を目撃した人や建物を壊されたのを聞いた人はいないみたいよ」

 

「そんなバカな……あれだけの被害があって何もなかった……なんておかしすぎますよ!」

 

(ツナさん達が嘘を……いや、その理由がありませんし、そんなヤバい組織と繋がっているならそもそもDAの調査で判明しているはず……)

 

誰も廃墟で起きたことを目撃していなく、音でさえ聞いていないというミズキから伝えられた事実にたきなは信じられなかった。

リコリスも事件が何もなかったように処理するが、あそこまでの大規模な破壊があったなら何かしらの事故と報道して誤魔化するのが普通である。

それが正真正銘何(・)も(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)事になるというのは異常であった。

ツナ達が嘘をついている線も一瞬考えるがメリットやそんな組織と繋がっているならDAの調査で判明しているはずだと判断してたきなは否定した。

 

「千束さんもそうと思いませんか!?」

 

「確かに色々とおかしいけれど……証拠がないなら存在しないのと同じだよ」

 

「でも!」

 

「…実は私も1年前に同じようなことに遭っているんだ」

 

「…………え?」

 

必死に同意を得ようと千束に声を掛けるたきなだったが彼女からの予想外の返答に言葉が詰まった。

 

「とある依頼である怪奇現象を調べて犯人を追い詰めていたんだけど、よく分からない技を使われてピンチになった所を今回同じように彼に助けられたんだよね」

 

「あー…言っていたわね。首謀者と助けたくれた人の痕跡がなくなっているって」

 

「そうだったんですか……というか初耳ですよ!?」

 

「そりゃあそうだよー。だって、初めて言ったし」

 

「……あなたって言う人は……」

 

前にも同じようなことあったことを少し懐かしいように話す千束。

そんな重要なことを今まで黙っていた彼女にたきなは呆れていた。

まだ彼女と出会ってからそんなに日数は経っていないが千束のマイペースぷりには呆れていた。

 

「それでこういう時があった時の二の舞にならないようにボイスレコーダーを持って録音していたんだけど……見事にデータが全部消されちゃっていた」

 

「そんな…つまり、あれが現実だったという証拠がないということですか!?」

 

「まあ、そうなるね……私も舐めていたよ。これなら『イケる!』と思ったんだけどなぁ……」

 

自分の認識の甘さを噛みしめて苦い顔をする千束。

次かあると信じて証拠を残すためにボスレコーダーをポケットにいつでも忍ばせていたのだが……相手もその程度は予測済みだったので折角録音したデータはすべて消されていた。

 

「あんたらの話が事実だとしたらそいつ…もしくはそいつらは事件が起きたことを何かしらの理由で隠したいから『事件は起きていなかった』という風に隠蔽したんじゃないの?」

 

「それは…理由によりますが、まるで『リコリス』のようですね……」

 

「狐が狸に騙されたってか~?これが本部にバレたら大目玉ものじゃない?」

 

「そもそも本部が私達の今の話を聞いてくれるかな?たわごと扱いで終わりじゃない?」

 

3人は廃墟での出来事が現実であったことを観点になぜそうなったか話し合っていた。

まさか『犯罪者や犯罪を行うものを抹殺し、その痕跡を消す』リコリスが痕跡を消す所を目撃するなどとは思わないだろう。

DA本部でこの事を報告しても信じてもらえずに『休め』などと言われることが見えていた。

 

「話が盛り上がっている最中に悪いがそろそろ開店のための準備を手伝ってくれ。そろそろツナ達も来るだろうしな」 

 

「はーい!……ということでその話はここで終わりにしましょう。これ以上掘り下げても碌なことになりそうじゃないわよ」

 

「……分かりました。完全に納得したわけじゃありませんが、証拠がない以上は話しても無駄のようですしね」

 

「そうそう、考えても分からないことを考えても疲れるだけだよ~。今は仕事に集中しないとね」

 

3人が色々と思案している中、ミカの声により仕事に移った。

たきなはまだ納得いかない顔だったがミズキと千束の言い分を聞いてとりあえずは納得したようだった。

 

(たきなにはこう言ったけど……今でも私はあの人の事が気になっている……)

 

(お礼は言えたけど、結局名前や何処の人とか名に物とか色々聞けずじまいだったなぁ……)

 

たきなにはなんとかこの件についてなんとか納得させたが、千束にとってはまだ引っかかていた。

1年前に助けてくれた黒フードの男……彼の存在は千束の記憶中に残っていて忘れたことはなかった。

ポケットの中にボイスレコーダーももし次に会った時を考えて用意したものだった。

 

(でももう会えないって言うことはないだろうな……だって、私を狙う人は多いっぽいし)

 

(こんなことリコリスの人達に言ったら怒られるだろうけど……私を狙う人がいる限りはあの人に会えそうな気がする……)

 

(よーし!次は絶対に逃がさないぞ!!……覚悟しておいてね、黒フードの人)

 

千束は不謹慎だと思いながらも自分が狙う輩がいる限りまた黒フードの男と会える気はしていた。

その時になった今度は逃がさないと千束は心から決めるのであった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

―道中―

 

 

【それで結局、奴らはただのマフィアだったわけ?】

 

【ええ……ボンゴレが調べましたがそのようです】

 

 

千束達が一昨日の事件について話し合っているほぼ同時期、ツナと獄寺は喫茶『リコリコ』までの道中で同じようなことを話し合っていた。

だが、何も事実を知らない千束達と違って彼らは当事者で全て知っていた。

千束とたきなを襲ったのがマフィアで今、ツナは獄寺からボンゴレからの調査を結果を聞いていた所だ。

今回、千束達を襲った奴を含めて部下共々確保しており、ボンゴレのシマに手を出したことでそのファミリー本家も抑えていた。

ちなみに彼らは今、周りから会話が聞かれても分かるものがいないようにイタリア語で話している。

 

【はぁ……千束さんのデータだけがなぜリコリスから漏洩していて1年前に狙われたけど……未だに狙う輩がいるとはね……】

 

【まさかじゅ…沢田さんがその情報を得て1年前にこちらに来ていたことには驚きました】

 

実は1年前に千束が狙われた時も今回も彼女を助けた黒フードの男の正体はツナ、その人だった。

1年前の事件…日本で秘密裏に行動する組織のエージェントの情報が漏洩した事を知り、ツナはリボーンに言われてそのエージェントを守るように任務を言い渡された。

 

それが千束だった。

 

幸い、情報が拡散する前にボンゴレが抑え込みあまり広がらなかったとはいえ、ネットで広がった物を全部回収することもできずにいた。

とはいえ、ボンゴレがそのエージェントを助けたのは事実であり『あのエージェントを狙うとボンゴレが介入する』という噂が広まっており、手を出すやつはバカか戦力的にかなり困っている奴らだけだ。

実際、千束を襲ったファミリーは後者であり、千束をファミリーに引き入れて戦力を上げようと画策していたようだ。

 

【術師が千束さんを狙っている情報を得てリボーンに言われて助けに行くことになったんだけど……まさか今回の任務中も狙われるなんてね】

 

【偶然…っスかね?】

 

【分かんないよ……案外本当に偶然かもしれないけれど】

 

今回、本来の任務と関係ない事件が起きてしまったことに2人は悩み込んだ。

ツナは偶然かもしれないと言ったがこの任務をツナ達に依頼したのはリボーンである。

リボーンならこのようなことが起きることを知っていて敢えて、ツナ達の任務と被るようにしたかもしれない…という考えがよぎるが実際操舵としても本人が聞こうとした時に怒られて、ねっちょり課題を言い渡されるかもしれないと思うとツナにとって気が重くって聞けなかった。

 

【それにしても前回もそうだけど、ボンゴレのことやマフィアのことを千束さん達に知られないために大変だったよね】

 

【沢田さんの指示のもとで何とかスムーズに終わらせることできました。流石、沢田さん!】

 

【あははっ……前にリボーンに教わったことを思いだして実行しただけだよ……】

 

1年前も今回もツナはボンゴレ製のフードを来て正体を隠して千束を助けた。

あのフードは耐久性も言わずがだが、頭のフードをめくらない限りは外から顔と額の死ぬ気の炎は超えないようになっており、ボイスチェンジャー機能もある

ちなみにボイスチェンジャーの声はボンゴレⅠ世(プリーモ)の声に似せている(監修byリボーン)

 

術師やマフィアによって壊された建物はボンゴレの術師の幻術によって誤魔化しては人がいないときにボンゴレが修復を行っていた(今回の事件ではツナが廃墟に入った時点でボンゴレの下っ端は動いており、術者の幻覚で存在を隠して貰ってスタンバイしていた)

傷つけられた人は『死ぬ気の炎』の晴の炎の『活性』によって傷を治して『傷があったことさえなかったことにした』のだ。

ボンゴレファミリーもといマフィアには『沈黙の掟(オメルタ)』というものが存在しており、ファミリーで取り決められている掟であり、情報を外部に漏らさない…というものであった。

そのためにツナ達はボンゴレのことを隠すために荒いごとを自体をなかったことにするしかなかった。

リコリスは裏の世界に足を突っ込んでいるとはいえ、ボンゴレを含むマフィアは裏の裏だ。彼女達を更に深く関わらせるべきという考えはツナとリボーンも一致していた。

ちなみに現場でツナがボンゴレ関係者に指示していたのはリボーンの指導の元である。

 

【それにしても不穏っスね。まさか潜入中にマフィアが襲ってくるって……それほどあの千束という奴、凄いですかね?】

 

【さあ…少なくてもそこら辺のマフィアからしたら弾丸を避けられる能力を持つ彼女は戦力的に欲しいみたい】

 

相手の動体視力(または「観察力」)が非常によく、相手の服や筋肉の動きを見て次の行動を予測することができるため回避能力は高く、彼女の身体能力も高いために今の時点でもかなり強いだろう。

マフィアは彼女を手に入れて戦力上げようとする輩は多いようだが…ずっと人外と言えるほどの輩を見たり、戦ったりして来た2人からしたら千束はあまり強いように感じなかった。

…とはいえ、それは彼らの感覚がおかしくなっているだけで才能で言えばまだ剣士と目覚める前の『山本武』と同じほどはあるはずなので鍛えれば強くなるのは間違いないだろう。

 

【それにしても困るんだよね、まだアラン機関について何も調べられていないし】

 

【そこは忍耐勝負としましょう。リボーンさんも長くても1年くらいだって言ってましたし……】

 

【出来たら1年近くかからずに終わらせたいけどね……】

 

獄寺の言葉にツナをため息を交じりに言う。

リボーンから潜入調査のための特訓を受けさせてられた時に『期間は長くても1年』と伝えられた。

同時に潜入調査に集中するために普段、他の友達や仲間達に会うことや並盛町に帰ることは禁止されていた。ボンゴレ関係の仕事などによって仲間達と会うことは特例だと許されていたが。

ツナとしても並盛町の人間と会えないのはかなりつらい物なのであんまり長引いて欲しくないのが実情だった。

こんな状況を終わらせるためにも『アラン機関』の関係者であろう『吉松シンジ』と接触したいのだが……思ったより『リコリコ』に足を運ばずに会話しようともミカや千束が口を挟んでくるので中々話ししずらい。

前回初めて会ったときもとりあえず自己紹介が限度であった。

 

 

「色々と問題はあるけれど、頑張ろう。獄寺君」

 

「勿論です………沢田さん!!」

 

 

ツナは気持ちを切り替えては、イタリア語を止めて獄寺に笑顔で励ました。

それを見て獄寺は拳を握り、強い声で返事をする。

そうして2人は今、自分達が働く喫茶『リコリコ』に向かって走り出した。

 

 




以上で『史上最強のリコリスとボンゴレ十代目』は終わりです。
ここまでお付き合いありがとうございました。
リコリスを見て、一度はリボーンとのクロスを書きたくってこんな感じの内容になりました。
本当はもっと早く書きたかったけど、リアルが大変で遅くなってしまいました。
それでもアニメがやっている中で出せて良かったです。


本当は連載版とか書きたかったのですが、あまりのリアルの忙しさで当面はお預け。
時間が出来たらいつか連載版を書きたいな~と思ってます(ただ、その場合は今回のと違う感じになるでしょうが)


呼んでいる人は千束のデバフを感じた人もいるでしょうが強さ的にこれは仕方がないのです。
死ぬ気の炎を持たないリコリスでは死ぬ気の炎を持つものにダメージを与えるのは難しいでしょうし、そもそも幻術が目が武器の千束とかなり相性悪いのでやられても仕方がないというのが作者の見解です。


あと感想を書いていただける方はもしよかったら『リコリスキャラが合う死ぬ気の炎、匣兵器(というか生物)』が思いついたら書いていって欲しいです。
後に活動報告にも書いて置きますので気になったら案を書いてください。

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