私の意識は深い闇の中を漂っていた。最後の記憶は、父であるシャンクスの腕の手当てをして、その後倒れた。それが最後の記憶。私は……取り返しのつかない事をした。原作の光景を見たいが為、ルフィが後に海賊として海に出るため、その原点の出来事の為に、ヒグマの逃走を許してしまって、シャンクスの腕を近海の主に食わせることになってしまった。
(私の甘い考えが……シャンクスを……!シャンクスだけじゃなくて、皆を傷つけた……!)
責める、責める、責める。その場にいて、心はその場に居なかった自分を責める。なんて愚かなんだろうと、どうしてそこまで間違った選択をしてしまったのだろう。
見聞色の覇気もあれば能力は自然系のゴロゴロの実。こと、速さには上位に存在するであろう力をを持っておきながら、何も出来なかった……いや、しなかった……。
それは、観客席で劇を楽しむ観客そのものだと私は思った。真に舞台には上がれていない半端者で何かをする覚悟も無かった……。ただ、原作通りにシャンクスの腕を失わせて、ウタを傷つけて……回避出来るはずの悲劇を回避しようとしなかった。自分本位の為に……父を犠牲にして義姉を悲しませた。そんな自分に吐き気がするし、嫌になる。何度も消えてしまいたいと念じる。……どうすればよかったんだろう……。
気がつくと、レッドフォース号の自分の部屋に寝ていた。頭には水で冷やされたタオルがのっていた。顔は熱っぽく、頭はぼうっとしていた。身体は怠く感じていて、動くのも億劫に感じる。
(風邪……引いたのかな……バチが当たったね)
それでも私は起き上がろうとすると
「まだ寝てないと行けないわよカナン。気がついたばっかりなんだから」
自分以外の声が耳に入った。その声の主はウタだった。
「ウタこそ、風邪移るよ?」
「大丈夫よ。タオルを変えに来ただけだし」
ウタはそう言って私の額に乗っているタオルを水に浸してしぼり、私の額に乗せる。私は成されるままの状態である。そして、私は聞く
「ねぇ、父さんの容態は?」
ウタはひと呼吸おいてから話し出した。
「ホンゴウさんとカナンが治療したから、不便だけど大丈夫そうよ。もう、歩き回っているし。ただ、利き腕を無くしたから、ご飯とか生活に関しては慣れるまで大変だろうって……。でも、それより……」
ウタの話が途切れた。私はウタの方に顔を向けると、ウタは真っ直ぐこっちを見ていた。そしてため息を漏らして話してくれる。
「アンタが高熱を出して倒れたと聞いた時の方が慌ててたわよ。直ぐに見に行こうとしてホンゴウさんやベックマンさんに止められていたわ」
「そうなんだ……」
こんな私を心配してくれた。その事実は罪悪感を重くする。思わず溢れてきそうになる涙をグッて堪える。泣いてどうこうなることじゃない。私が選んでしまった間違った道。もう、後戻りは出来ない。そんなことを考えているとウタは立ち上がり、手を拭き部屋の入口まで行き
「……なんかさ、今のカナンって苦しそうというかさ、窮屈そう」
と零した。
「え?どういう……こと?」
私は思わずウタに聞き返す。
「……言葉通りの意味よ。今のアンタの顔酷いし、苦しそうにしてるもん。まぁ、風邪引いていて熱があるからあるからそう見えるだけかもしれないけど。じゃあ、私は行くから。しっかり寝て治しなさいよね。船医風邪ひいたってなったらカッコつかないでしょ?」
励ますかのように悪戯ぽく言うウタ。私は少し笑ってしまう。
「じゃあ、おやすみ」
ウタはそう言い残して部屋を出ていった。私はこれからどうするべきか考える。これから同様な場面に出会った時どうするべきかを…。しかし、答えが出ない。この世界に来たいと望んだのは自分だ、力を望んだのも自分だ、そしてあの結末を選んだのも自分全部自分だ。そう思うと吐き気が込み上げてくる。思わず起き上がり口元を抑える。
「はは……なっさけな……」
私の口から冷たく乾いた笑いが零れる。どうしたらいいのか、どうすべきなのか、私は分からなくなる。熱による体のだるさ、モヤがかかった思考で、私は風に当たりたいと思い、刀を杖にして外に出た。
夜の風が熱の出ている体に気持ちよく吹き抜ける。フラフラする足取りで甲板を歩き座り込む。
「……はぁ……しんど……」
外に出れば考えが変わるかと思ったがそんなことは無かった。
「何をしているんだカナン!?まだ熱があるんだろ!?」
驚いて私を心配する声が耳に入る。私は驚いてビクッとなる。その声の主は今一番顔を合わせずらい父さんことシャンクスだった。
シャンクスは慌てて私の近くに駆け寄り、右手で私の額を触る。
「まだ熱があるじゃないか……部屋に戻って休まないと……」
「大丈夫だから……夜風に当たらして……」
私はシャンクスの顔を見ながらに言う。こんな時にも我儘を言う自分を嫌いになる。
「……そうか、なら俺も一緒に居よう」
「風邪移るよ?」
「風邪に負けるほど俺はヤワじゃないさ」
そう言い、シャンクスは胡座をかき私を足の上に乗せる。
「ホンゴウから聞いたぞ。俺を必死に助ける為に処置してくれたって。あの時のお前は凄い形相だったらしいぞ。俺の為にありがとうなカナン」
やめて、私は礼を言われるような人じゃない。
「カナンのおかげで俺は助かった。そりゃホンゴウも感謝しないとだが、カナンの動きがかなり良かったと言うじゃないか。本当に自慢の娘だな」
やめて、その腕を失ったのは私のせいなんだから
「何に悩んでいて、苦しんでいるかは分からないが……。カナンこそ、もっと俺達を頼っていいんd」
「そんなこと言わないで!!!」
私は爆発したように言う。
「カナン……」
「シャンクスや皆が思うほど良い人じゃない!……私、知ってたんだよ……あの山賊が煙玉を使えば何処に逃げるか、シャンクスがルフィを助けに行けば腕を失うことも……!それでも!私は何もしなかった!私が動いていて先に方をつければ、こんな事に……シャンクスの左腕が無くなることは無かった……!」
気づけば私は泣いていた。大粒の涙を流して、シャンクスの服を掴んで泣いていた。溢れ出した感情は止まらなかった。
「私のせいで……私のせいで……父さんの腕が無くなって、ウタを悲しませて、みんなに迷惑をかけて……!私は……!」
消えてしまいたい。と言おうとした所で
「カナン」
シャンクスは片腕で私を抱きしめた。
「シャン……クス……?」
「その先は言わないでくれ。俺の腕の事でそこまで思い詰めるなんて、優しいお前は。俺の腕が無くなることを知っていたとしてそれを俺に教えていたとしても、俺はルフィを助けに行っただろうし、お前に手出しをさせなかっただろう」
「でも!」
「もっとお前は自由になればいいんだ。この数ヶ月見てきて、お前は色々と考えすぎに見える。海賊は自由だ、だからカナンももっと自由になっていい、お前がしたいと思ったことをすればいいんだ」
その時、母さんの言葉を思い出した。
『自由に生きなさい……!』
「あっ……あぁ……」
母さんが残した言葉……。父さんも同じことを……。私は涙を堪えようとしたが、次々に溢れてくる。
「ごめんなさい……!ごめんなさい…!」
「大丈夫だ。いくら泣いてもいい、いくら迷ってもいい。強くなって、自分のしたいことを、自由に生きたらいいんだ。海は広いし楽しんだ者勝ちだ」
私はこの日、転生して初めて心の底から泣いた。声を殺して、嗚咽を漏らしながらただただ、父親の胸の中で泣いた。その後、私は父に部屋に戻された。そのあとは、すんなりと寝れた。
そして夢を見た。
前世の姿の私と今の私が向かい合う夢だ。前世の姿の私は今の私に問いかける。
『それでどうするの?』
私は意味がわからず聞き返す。
「どうするって?」
前世の私は肩をすくませ少し笑いながら。
『これからの事よ。私は…あまり変えたくない。私達が変に動けば、私達が知る物語から乖離して収拾がつかないことになる。それは分かってるよね?』
何かを試すように言ってくる。ああ、本当にこういう時の私って嫌な奴だ。何かを考える時に、別の自分を良く作って脳内会議擬きをしていた。そして、相手は何時も理性。
「分かってる。だけど……」
そして主観の私は…感情。何時もは理性が勝つけど、今回は
「私はこの世界で自由に生きる……!強くなって、誰にも負けない……のは無理でも、自分の我を通して行けるくらい強くなって、進んでやる!これは私が選んだ世界で、私の道だから!」
我儘で論理的じゃなくて、滅茶苦茶だけど。私はそう決めたから。そのためなら、強くなる。誰に頭を下げる事になろうと、生死の境を彷徨い歩くことになろうとも、したいことをするんだ。
そういう覚悟で私が言うと前世の姿の私は
『ならいい。そうキメてあるなら、歩いていけばいいよ。その覇気と刀と能力で行ける所まで行けば良いよ。何時でも、力は貸すよ』
そういうと、前世の姿の私は…今の私と一つになる。ただ、考えがまとまっただけだが、充足感を感じていた。
私は……正真正銘この世界で生きる覚悟を決めた。
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6年後のカナンの強さ
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四皇幹部と同等 最高幹部相手は辛い
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四皇幹部に少し辛い 最高幹部相手は防戦
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四皇幹部に勝てる 最高幹部相手は辛勝