「し、シモツキ村?フーシャ村じゃなくて?」
「あ〜、多分あの海流に巻き込まれたからかなぁ。何となくそんな気はして……」
「どうしてそれを早く言わないのよ!バカ!」
ウタの無慈悲な拳骨が私を襲う。一応自然系の能力者なんだけど!?愛ある拳はなんでも行けるの!?しかも物凄く痛い!
「どうするの?船に戻るの?」
「もう日が暮れるんだからやめときな!そうだな、コウシロウさん所なら泊められるか?よし、着いてきなさい!」
村人が私達を案内する。村は穏やかと言うに相応しい雰囲気だった。まぁ、フーシャ村とはまた違った穏やかがあると感じたね。
「そうだ、ここで許可とって歌っても良いかもね」
「ここで?」
「うん」
「私はいいと思うけど……楽器はどうするの?」
カリーナが聞いてくる。それに対してウタは
「居るじゃない?運ぶのに適した人が」
私の方を見る。うん、でしょうね。
「まぁ、先ずは許可を取ってからの話だよね」
そして私達三人は道場に通される。コウシロウと言えばゾロの師匠で、ゾロの和道一文字の本来の持ち主のくいなが居た道場だよね。くいな……時期的には死んでるのかな?生きていたら或いはとも思ったけどなぁ。そんな事を考えていると道場に着き、
「コウシロウさん!居るかい!」
「どうしましたか?」
呼び掛けにすぐ答えて一人の和服の男性が現れました。その男性は温和な笑顔を絶やさない優しげな風貌をしており、丸眼鏡と後ろ結びにした総髪が特徴で、見間違えではないと思いました。この人が、ゾロとくいなの師匠であるコウシロウさんだと。服の上からでも鍛えられた体、歩き方から流石の実力者というのが分かる。
「おや、こちらのお嬢ちゃんたちは?」
「どうやら、フーシャ村に向かっていたそうなんだが、間違ってここに辿り着いちまったらしいんだ。それで、俺の家は狭いしで、コウシロウさんとこ、泊めてやってくれねぇかって……」
「なるほど、事情は分かりました。……良いでしょう。何もこれと言ってありませんが、上がってください」
突然の来訪なのにまさかのOKが下りた!?私は急いで頭を下げて
「あ、ありがとうございます!」
「「ありがとう!」」
「いえいえ、困った時は助け合いですよ」
そう言って道場を抜けて、コウシロウさんの屋敷と思われる所に通される。
「くいな、お客さんだ。挨拶しておきなさい」
その言葉と共に一人の女性が出てきた。少し青みがかった黒い髪。首元まで髪がかかる長さで、和服を着た女性が出てきた。整った顔と、その名前で私は内心驚いていた。それを他所に女性が頭を下げる。
「初めまして、霜月くいなです」
「私はウタ!よろしくね、くいな!」
「私はカリーナ。よろしくね!」
普通に挨拶をしている二人。うん、私だけがまだ追いつけていない。この時期なら階段から落ちて死んでいてもおかしくないはず……。でも、様子を見れば……何か違和感が
「どうかしましたか?」
「え?あっ!すいません!私はカナンと言います。一応船の船長やってます!」
「そうなんですね。それではお部屋に案内するわね」
そう言うとくいなは歩き出す。その後を着いていく。その時、違和感の正体がうっすらだけど見えた。それは右腕が動いていない事だった。その事は聞きたいけど、今は聞く時じゃないし良いかな。
「ここが今用意出来る部屋よ。布団は押し入れなの中にあるから、自由に使ってくれて構わないわ。また、夕食とお風呂の準備が出来たら呼びに行くわ」
「あ、ありがとうございます。突然なのに」
「気にしないでください、父が困っている人をほっとけないから。それでは」
そう言うとくいなが部屋から退出する。私は荷物を下ろした後、急いで道具の点検をする。
「船長どうしたのよ?そんなに急いで点検をして」
不思議そうな様子でカリーナが尋ねてきた。まぁ、そりゃ着くなり医療道具の点検をしていたら気になるよね。
「うーん、使う事があったらアレだから念入りにチェックかな。カリーナも盗みに行っていた時は道具の点検してたでしょ?」
「うんまぁ、してたよね」
「ウタも喉の調整とか、マイクや楽器の調子を確かめるよね」
「そうだね。一番のパフォーマンスをしたいし。全力を出して歌を届けたいよ」
ウタは真剣な表情で言う。この航海の目的の一つだ。ウタをデビューさせて歌姫への道を開く。そしてその仲間にカリーナを迎えたし、準備は整いつつある。でも、ウタが言うには戦闘員がもう一人欲しいらしい。その仲間集めと、世界を見るのも航海の目的だしね。だからこそ、今ここに困ってそうな人がいるんだけど、会ってすぐに言うのはデリカシーがないと言うかだから、きっかけが欲しいんだよね。
「だからさ、私も万全に準備をして何時でも対応できるようにしたいんだよ」
そう言って私は点検を終わらせる。その次は神楽と斬魔の手入れをする。医者としての私じゃなくて一人の戦闘員、剣士としての手入れだ。大層な目標は無いけど……誰が相手でも一度も負けられないとは思ってる。現状、私しか二人を守れないし。
「本当に綺麗な刀よね」
ウタが覗き込んでくる。私は嬉しくて少し笑ってしまう。
「私の愛刀達だしね」
そんなこんなで過ごしてると、夕飯に呼ばれ、夕飯を頂く。どれも美味しく頂きました。その後は中庭に借りて私は刀を振るう。
いつも通りにイメージをして刀を振るう。両手が健在だった時の父や師匠、まだ、直接会ったことがないけど、ビック・マムやカイドウ、そして最強の剣士、鷹の目のミホーク。一度は合間みえたいと剣士としては思うが、医者として船長としてはあまり勝ち目の薄い戦いは避けたい。両方とも自分のエゴい本音で思わず笑ってしまう。
最後に刀を振り息を吐く。見聞色の覇気で誰かが覗いているのには気づいていたから私はその人物に声をかける。
「そんな所で見てないでお話しませんか?」
「気づいていたんですか」
観念したのか出てくる。その人物はくいなだった。けど、その目は羨望と諦観が入り交じった目だった。今にも泣きそうで悲しそうな表情にも見えた。私とくいなは縁側に座る。
「すいません。突然の来訪だけでも失礼なのに中庭まで借りて刀を振り回しまして」
「いえ……でも、貴女も剣士だったんですね」
「はい、幼いときに母に鍛えられまして、刀も譲り受けました」
「母にですか。その人は今は?」
「病気で亡くなりました」
私は月を見上げながらに言う。くいなは
「すいません……!不躾でした」
「いやいや!気にしないでください!……私も不躾ですけど……いいですか?」
「なんですか……?」
少し警戒している様子で先を促すくいな。私は言う。
「それでは、昔、右腕痛めました?」
「っ!」
それを指摘すると驚いた表情をする。そして震えた声で
「何故……それを?」
「明らかに右腕が動いていませんし……でも、歩き方とかはズレがあんまりなくて綺麗で、昔……剣術してました?」
そこまで言ってくいなを見ると
「……そこまで言い当てられるなんて……ね……」
涙を流していた。それは悔しさから来る涙なんだろう。右腕を抑えながらに話し始めた。誓いを立てた次の日に階段から転落して右腕を骨折。それだけなら治ってから剣を振ればブランクは何とかなる話だが、原因不明で完治しても腕が動かなくなった。そして、和道一文字と剣豪の夢をゾロに託したと言う話をしてくれた。
「…でも!本当は私も剣を振りたい!剣豪を……目指し……たい……!」
夢を砕かれた少女の涙を私は放って置けなかった。専門では無いし、転生してから本は読んだが実践はしてなかったから自信なんてないけど
「少し痛いだろうけど、右腕と右肩触ってもいい?」
「え?はい」
「では遠慮なく」
私は触れて力と軽く能力を使い腕と肩の神経を調べる。
「あっ…くっ……!」
かなり力は入れているから苦悶の声がくいなから漏れる。痛いだろうけど我慢してね。そして何となく分かってきた……これなら
「離してください!」
くいなが手を振り払う。そして驚いた。
「右腕が……動いた!?なんでどうして!?」
もう一度くいなは動かそうとするが、上手く動かせない様子だ。私はそれを見て
「慌てない慌てない。今のは私の学んだ整体法にアレンジを加えたから、少し効果が出ただけだよ。腕が動かなかった原因は神経が圧迫されていたんだよ。階段からの際に腕以外も痛めていたんだと思うよ」
私は一息ついてくいなの様子を見る。その目は少し希望を持った様子で
「あ、あの!?右腕治るんですか?」
と質問してくる。私は立ち上がり手を差し出す。
「私は医者でもあるんだ。治療の意思があって求めるなら出来る限り手を尽くす。……その上で言うと、貴女の腕は治る、それだけは断言出来る。治してみせるよ、以前のように剣豪を目指せるようにね!」
それを聞き涙を流すくいな。私はにっこり笑って聞く。
「少し痛い治療になるけど受ける?」
くいなは左腕で私の手を握り
「お願いします!」
治療を受諾した。という訳で……
「じゃあ、早速今日の分をしちゃおうか!1、2の3で行くからね?」
「はい」
心の準備をさせてリラックスをさせる。そして
「1!」
最初の1のタイミングで力を入れる
「〜〜〜っ!は、話が違うじゃない!」
「この時が1番リラックス出来ていてやりやすいって父……じゃ無かった医学書に書いてあったからね。それと、電気も流していくから、結構厳しいよ?」
私はにっこり笑い最後に言う。
「まぁ、目指すんでしょ?剣豪。じゃあ、この程度は乗り越えないとね!」
そして整体を始める。声を殺して耐えるくいなに少し睨まれながら治療を続ける。
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