治療を開始して10日間が経ちました。くいなも痛みに慣れてきたのか今では整体の時は、顔を顰める程度にはなって来ましたね。
「大分動くようになったんじゃない?」
「そうね、個人的には違和感はほとんどないし、こんなに動かせるだけでも夢みたい。それだけじゃなくてまた、剣豪を目指せるなんて」
「それだけだといいんだけどね……はーい、次の患者さんどうぞ!」
村人が列を作って私の整体を受けに来た。電気で凝りをほぐしたり、手でほぐしたりと、マッサージをする羽目になっていた。経緯としては、コウシロウさんに説明し、コウシロウさんから翌日、視てほしい人がいるということで、腰を痛めた老人の治療を行ったことを皮切りに、今に至る。ちなみに、ウタは村の子どもたちと遊び、カリーナも盗みの技術を活かした子供たちに手品を見せていた。
「大盛況ですね」
「コウシロウさん。すいません、何日もお世話になって……」
「いえいえ、気にすることではありませんよ。村の人達が貴女の治療を受けて助かっていますから。それに……娘の腕の治療をしてくれましたし。何とお礼を言えば」
「お礼なんていいですよ!私がしたくてした訳ですし!それに泊めさせて貰ってますから!それだけで十分ですよ!」
私達がシモツキ村に残っている理由はくいなの治療の為です。時間自体はあるので、問題は無いのですが、コウシロウさんの家に負担があると思うと少し罪悪感があったので……。そして、今日の分の治療が終わった頃にウタが入れ替わりで来る。
「カナン!治療の方は進んでる?」
「うん、順調だよ。後はイメージとのズレは本人が直す所だしね。寧ろここからが本番だと思うよ。そこに関しては、医者の領分じゃないしね」
クタクタになった腕を振りながら縁側に座る。のどかな雰囲気に思わず欠伸をする。いやぁ、本当にいい所だなぁ。
「カナン。あとどれ位で鍛錬に入っても良いのかな?」
くいなが尋ねてくる。そりゃ、あの激痛に耐えながら、日に日に腕が動くようになって、治療開始前と比べるとそりゃ見違える程にはなった。けど、
「出来ればあと1週間は無理はしない方がいいかな。慣らす程度なら問題は無いけど……やるなら全力でしょ?」
「そうね、私はあの日から一度も竹刀を握ってないし。ゾロには抜かれた所か置いていかれてるわ……その遅れを取り戻して、追い抜きたい」
冷静で頭が回って負けず嫌いで、向上心の塊が、無茶しないわけが無い。そんなくいなを見て、私は思わずため息が出そうなのを我慢して
「……私と一緒にするなら許可を出すよ。互いに剣士だし、一緒だと医者である私がストップかけれるし、鍛錬後のクールダウンも出来るし……。本来なら医者の領分外だろうけど、今回は特別サービス!」
「良いんですか!?」
「私の気が変わらない内に行きましょう!」
医者としてはダメなんだろうけど、なんと言うかこういう見ると、何とかしてあげたいと思ってしまう。甘いなぁ、本当に甘いわぁ……。
そして、私とのくいなは木刀による打ち合いを始める。
カナンside end
ウタ side
私の妹は優しくて、反応が面白くて、誰よりも他人の事を考えていて、自慢の妹だ。偶に、煽ってきたり、笑顔で怒ってくることもあるけど……大概のお人好しだと思う。
(ここに来て、もう10日目かぁ……)
私は子どもたちと遊びながらに空を見上げてそう思う。つい先日は新しい音楽の仲間のカリーナが加入した。それにより、歌を歌うのはより一層楽しくなったし、教えたり、参考にしたりと学ぶことも多かった。
実際に気が合う所も多く合って話してて楽しいし、カナンに出来ないような話をすることだってある。
「はぁ」
「どうしたんだよウタお姉ちゃん!」
「なんか悩んでるの?」
「え?ううん!何でもないよ!」
「あー!あっちの方見てた!ああ!お医者のお姉ちゃんの方見てたんだ!」
「確か、ウタお姉ちゃんの妹だったよね?」
「そうだよ。私の自慢の妹」
子供たちにこれを言うには少し恥ずかしいな。別になんてないはずなのに。でも、それを言うのが少し誇らしくも思う。今日の分の治療を終えるのを見て
「ごめんね、少し話してくるね!」
「いいよー行ってらっしゃいー」
私は子供達に送り出される形でカナンの所まで歩いて向かう。
「カナン!治療の方は進んでる?」
私がそう声をかけると、少し嬉しそうな表情で私の方を見て答えてくれる。
「うん、順調だよ。後はイメージとのズレは本人が直す所だしね。寧ろここからが本番だと思うよ。そこに関しては、医者の領分じゃないしね」
そう言うカナンだけど、何とかしたいと顔に書いてある。そういう所は小さい時から素直じゃないなぁ。
その後はくいなと打ち合いを始める。リハビリと言う一環でしているけど、カナンは手を抜いているし、くいなは少しつらそうに見える。話を聞くに何年ぶりの打ち合いらしいから仕方ない。そんな風に眺めていると、
「せいっ!」
「くっ!」
カナンがくいなの竹刀を弾き飛ばし、打ち合いを終わらせた。
「久しぶりって言う割には動けているよ」
流石だなぁ。小さい時からよく刀を振り回していたけど、大きくなったら余計に綺麗に見える。それこそ、思わず黙って見ているくらいには。私はそこでハッとして
「やりすぎじゃない?」
と言う。だけど、カナンが何も考えずにしているとはこれっぽちも思ってない。
「いや、確かめるにはちょうどいいはず。鈍っているだろうけど、完全回復してなくてこれだけ動けるなら上等じゃない?あとは、くいな次第だよ。と言っても、明日の整体でとりあえずは終了かな。そのまま明日船出いいと思うし」
凄いな、カナン、息ひとつも乱れてない。そりゃ、手を抜いていたと言うのもあるんだろうけど、息ひとつも乱れないのは凄いよ。そんな風に見ていると、村の人がやってきて
「先生!明日出港かいな!それなら宴をしよう!ここまでの面倒見てもらったんだ!良いだろう?コウシロウさん!」
「それは私が決めることではありません。ですから、カナンさん。感謝の為の宴をしたいとの事ですがどうですか?」
私はカナンの方を見る。カナンは一瞬キョトンとしたがすぐ様
「良いんですか?では、お言葉に甘えて」
「聞いたかぁ!宴するぞ!」
「「「おおおおおおおおおおおお!!!」」」
シモツキ村で宴がする事が決定した。私とカリーナはそれぞれ出し物をしたり、村の人の出し物を見て楽しみました。肝心のカナンは
「お、お嬢ちゃん、飲むのはもう、やめとけって……!」
「ぷはぁ!このお酒美味しいですね!もっと下さいよ!アッハハハハ!!!」
上機嫌になっていた。あんなカナン見た事ない。というか、カナンお酒飲めたんだ。
「ねぇ、ウタ……アレ止めなくていいの?」
カリーナが少し顔を顰めながらに聞いてくる。本人が楽しんでいるからいいとは思うんだけど、明らかに飲み過ぎに感じる。
「ほら、カナン!飲み過ぎだよ!普段からも飲まないのに!というか顔白いよ!?」
「へぇ?大丈夫、大丈夫だよ?というか……ウタがぁ……二人?三人にみえるよぉ?」
ダメじゃん!完全に酔って目が回ってる!そう思っている間にカナンはフラフラしてその場で横になる。
「……寝ちゃったなぁ」
「すまねぇな歌のお嬢ちゃん。オレたちが少し飲みたいというお嬢ちゃんを止めれないばっかりに」
「はぁ、うん、仕方ないよ。そういう時は何を言っても聞かないし。私も飲むとは思わなかったし。カリーナ」
「はーいって、案の定潰れた?」
「うん、案の定だよ」
カリーナもカナンの此様を見て溜息を着いた。でも、
「とりあえず、二人で運ぶ?ウタ」
「そうね、手伝ってくれる?」
「もちろん。船長で、命の恩人だしね。それに寝顔見れるのは役得じゃない?」
カリーナが面白そうにカナンの頬をつつきながらに言う。私は肩をすくませながら、カナンを立たせて腕を肩にかけさせる。カリーナも同じようにする。
「本当にいい顔で寝るよ私の妹は」
私達はそのままカナンを使わせてもらっている部屋に運び寝かせた。世話の係る妹の寝顔を見ながら私達も眠りについた。