Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿) 作:osias
西暦1999年10月31日07:00
照りつける太陽
何処まで蒼い空
透き通るような海
そして死んでいる様な白い顔」
タケルはオリヴァーの顔を見ながらそう言い放つ
彼らは日本から南に位置するであろう無人島の暑い砂浜の上にいた
オリヴァーと武以外の面々は既に集合場所に向かっている
「オリヴァーさん、本当に大丈夫ですか顔色・・・マジでヤヴァイですよ・・・そしてその手に持っている多分寝不足の原因である資料はなんですか?」
眠気を覚ますように頭を振るうオリヴァー
「これは、香月博士に頼まれて、訓練校に来る前から書いていた設計図です。まぁどれも白紙から始めた物ではないし、一番難しかった奴でさえAE社の量産型計画をモデルにしています。どちらにせよ、何とかデッドライン(〆切)の今日までになんとか終わらせられました」
「睡眠時間は?」
「3分です」
「OH! NISS○N!」
「個人的には○王を押します」
「自分は○達が好きですね」
「え~麺○ですか?俺は古き良きカ○プヌードルですかね、あのチープさが堪らない」
「確かに・・・合成食材になっても味が変わった気配がありませんからね、アレは」
「「って貴方(アンタ)誰(ですか)?」」
そこには黒い国連軍のマークが入ったライダースーツを着ながらも汗一つかいていない、メガネの青年が立っていた。
「自分は帝国本土防衛軍帝都防衛第1師団、第1戦術機甲連隊所属、沙霧尚哉大尉です」
彼は軽く敬礼する
「私は帝国軍練馬駐屯地、国連軍衛士訓練学校で訓練生をしているオリヴァー=マイ臨時大尉です」
多少フラフラしながらも敬礼をする
「!!・・・同じく臨時中尉の白銀武です」
武は目の前の青年が沙霧尚哉と知って反応が遅れた。
それは彼が“知っている”『沙霧尚哉』より若く、一瞬分からなかったからである。
これで彼が沙霧尚哉に会うのは二度目、
一度目は『二度目のループ』での戦場で、米国贔屓になっていた日本政府に対してクーデターを起こした敵の首領として武は彼と彼が率いる部隊と戦闘している。
「・・・知っているよ、今話題にもなっているしね」
「我々をご存知で?」
「帝国軍内では有名だよ、新しい技術を国連に持ち込み、我が日本帝国とも交渉を行っている」
「「・・・」」
武達にとって自分達が有名になっている事は驚く所だった、ミノフスキー粒子の発表は数日前、そして交渉もここ最近の事である。
それが、既に目前の尉官は知っているという
狙った事とは言え些か早すぎる気もした
「武君、君は日本人だな?」
「はい」
「何故、帝国軍ではなく国連軍に・・・!!」
怒気を孕んだ沙霧大尉の質問に対し、武は答えに詰まる・・・
確かに日本人なら『特別な理由がない限り』帝国軍に志願するのが普通だろう
「・・・矢張り・・・あの『魔女』が・・・!」
「いえ、確かに夕呼先・・・香月副指令にスカウトされました、ですが自分から国連軍に入隊するつもりでした」
「なぜだ!君も日本男「自分の故郷は横浜です」・・・」
「君は我々(帝国軍)を怨んでいるのか、故郷を守れなかった我々を・・・」
沙霧も、BETAのハイヴにされ五次元効果爆弾『G弾』の餌食になった横浜出身者と知って、一瞬居た堪れない気持ちになるが沙霧はまた観察するように武を見つめた。
「いえ・・・怨みの感情はありません、強いて言うなら怒りです・・・何もできない自分への・・・BETAへの・・・そしてG弾に対しての」
「G弾か・・・」
「あれはあっちゃ行けません、撃たせては行けません、頼ってはならない物なんです」
「君の言い分は解かるが、それが国連軍と何の関係がある」
武は笑う、普通の兵士がオルタネィティブ4・・・G弾に頼らない、人類を生かす計画について知るはずも無いからである。
「あ~それはですね「おーい!白銀!オリヴァーさん!集合ですよ!」あ、はい!沙霧大尉、すみません自分達は演習があるんで、又今度!オリヴァーさん走りますよ」
武は叫ぶ水月に急かされオリヴァーを引っ張りながら走り去った
<ヒラ、ヒラ>
オリヴァーの手から資料が数枚落ちる
「白銀中尉!マイ大尉!」
沙霧は彼らを呼び止めようとするが、既に二人は遠くへ行ってしまった
「私を嘲笑うか・・・白銀武!!・・・己(おの)が死を隠し、己が意思で祖国を捨て、米国の犬となり、殿下の敵となるか・・・ならば討たせて貰おう」
そして沙霧は落ちている資料を拾う
「これは・・・戦術機か・・・?」
○○○○●
同日07:45
クルーザー内
威風堂々と胸の下で腕を組む夕呼の前に二人の帝国軍佐官が座っていた。
一人は灰色の長いライオンの様な髪型をした大泉純志郎(おおいずみ=じゅんしろう)。帝国軍内の意識改革や新技術の追求及び必要性を訴え続け、『革命の獅子』と謳われる男である。元々は小将であったが、1998年、国連軍と大東亜連合軍の朝鮮半島撤退支援を目的とした作戦、後に光州作戦の悲劇と呼ばれる彩峰中将事件のおり、最後まで彩峰中将が下した命令の妥当性を訴え、大佐に降格となり現在は日本帝国陸軍技術廠・第壱開発局部長を勤める。
もう一人は茶色い髪をオールバックにし、左のこめかみから口の左側まで伸びる傷跡を持つ巌谷榮二(いわや=えいじ)、日本帝国陸軍技術廠・第壱開発局副部長で、階級は中佐。過去に斯衛軍のテストパイロット(当時のコールサインは「ヴァンキッシュ1」)として82式戦術歩行戦闘機「瑞鶴(ずいかく)」の開発に参加していた。1986年に北海道・矢臼別演習場で実施された模擬戦で米軍のF-15C「イーグル」を相手に「瑞鶴」で勝利したほどの腕前で、「国産戦術機開発の礎を築いた『伝説の開発衛士』」である。
二人は一通り渡された書類に目を通した
そしてそれを確認し、夕呼は口を開く
「先ずは忙しい中、来て頂き有難うと言っときましょうか、約束通り、工場の手配も・・・(余り帝国軍の息がかかっていない御剣財閥の管轄、大空寺重工と御剣電工てのも考えてくれたもんだわ)今回の合同演習も問題なく進みそうね」
「この程度の約束を守るなど、大したことではない」
そう堂々と放つ大泉
「・・・お陰でスグにでも作業に取り掛かれるわ・・・で提供した技術に関しては満足頂けたかしら?」
「ああ、満足し過ぎて、斯衛にも睨まれるし、富嶽重工と遠田技術・・・後、光菱と河崎を説得するのも大変そうだ」
巌谷は資料を見ながら言った。
ミノフスキー粒子の研究発表をした人物が目前の女性の部下をしている事は知っていた。それでも核反応炉は驚くべき技術である。巌谷は開発局副部長として理論は理解できたが、そこへ行き着く事、それ自体に驚いた。しかしながら、現在の彼らにとってそれは価値が低い物である。燃料のヘリウム3が入手困難であり、全戦術機が核反応炉に換装するとして、その分を確保するにはハイヴが必要だからである。それに比べ、XM-3というOSは価値が高い。OSならば現存の戦術機にスグにでも換装が可能である。実用性としても、コンバットプルーフのみ行えば良いという完成品である。
そして次に驚かされたのはYMS-15K試作改良型ギャン、及びTSF-Type-MS-15K 鳥兜と名づけられた二機である。香月の言う所MSというのは新概念を含んだ戦術機で現在は試作機のみしかないという。嘘か真かは判断が付かぬ物の、資料だけをみたらこの試作機で新型のTSF-94不知火(しらぬい)とのキルレシオは軽く見積もって200対1である。そして装備のヒートサーベルと呼ばれる“熱した長刀”も新技術が注ぎ込まれている。ギャン自体、核反応炉を使うため現在の彼らには情報的価値以外はない、逆に提示されたギャンの戦術機量産型TSF-Type-MS-15K鳥兜(とりかぶと)は現在ある材料だけで作成が可能であり、将来的には核反応炉を換装する事も出来るため実用性が高い。そして何より日本人が好む接近戦型の機体なため多くの衛士に受け入れられるだろうと巌谷はふんだ。
一番の驚きはTSF-TYPE00Z武御雷改と書かれた設計図である。
TSF-TYPE00、00式戦術歩行戦闘機、武御雷(たけみかづち)は帝国軍のうち、将軍家直属である斯衛軍が、F-4J改-瑞鶴の後継機として現在開発中の純国産、第三世代戦術機である。今回の取引の一部として先に武御雷の設計図を要求されたがこの様な形で返されるとは大泉も巌谷も思っていなかった。
武御雷は94式戦術歩行戦闘機-不知火の開発によって培われた技術を応用し、富嶽重工と遠田技術によって共同開発が行われている。不知火よりもさらに進んだ第三世代戦術機であり、開発コードは『零式』。ずば抜けた機動性と運動性能を持つが、性能を最優先にしているため予定では年生産数が30機程度と非常に少なく、また整備性も良くない。斯衛軍以外は配備の予定が現在無いのもそのためである。
しかしTSF-TYPE00Z武御雷改は統合整備を視野に入れ、TSF-Type-MS-15K鳥兜の部品やコンセプトを取り入れた機体である。TSF-Type-MS-15K鳥兜自体が現存の部品と材料で作れるため、コストがオリジナルの武御雷とは比較にならない程安い。それでいて、性能はオリジナルの7~8割増しである。
「これら以外にも更に量産性の優れた機体を設計したのだけど、作った本人が資料を無くして、悪いけど今はないわ」
夕呼がそう足す
「いや、これで十分以上だ武御雷改だけでも来年下旬までかかるような仕事になりそうだからな!」
大泉は笑いながら答える
「そう言って貰えると助かるわ」
「しかし、問題はこれらが卓上の空論ではないと証明する事だな・・・」
「それなら問題ありませんわ、今日演習に当たっている者達が卒業した頃に、帝国の方では列島奪還作戦を決行する予定ですよね?それに彼らとこれらの試作機を投入します」
「・・・流石は『横浜の魔女』と謂われるだけある・・・知っていましたか」
巌谷は鋭い目で夕呼を見る
「しかし、香月博士、取らぬ狸の、とは言いませんが、彼らが今日の合同総合技術演習を問題なく終わらせるような言いぶりですな」
「この程度で躓かれたら人類を救えないわよ」
「人類を救うか」
大泉は夕呼の一言にうなずく
「大泉大佐・・・そろそろ」
「ああ、直に指示は出さなくとも上官として今日は監督をせねばならんのでな、香月博士・・・有意義であった!ありがとう!」
バッと出された手を咄嗟に夕呼は取り、大泉は強く握手をし笑いながらクルーザーの外に出行った。
「・・・香月博士、私からも礼を。丁度技術的に行き詰まっていたいたので助かった」
「ええ、こちらも必要な物が手に入ったし、等値交換よ」
「我々が頂いた物の方が遥かに価値が高い気もするが・・・そうしておこう」
巌谷は敬礼をし、船を後にした
「う~ん」
身体を思いっきり伸ばす夕呼
「さて、折角のバカンスだし、浜辺にいって白銀でもからかいましょう」
○○○○●
同日08:15
孤島北部、帝国軍指令本部キャンプ
黒いクルクルの癖ッ毛に小太りの男が帝国軍訓練生を前に激を飛ばす
「い、いいか!お、お前ら!勝利は卒業に関係ないと大泉大佐や巌谷中佐は言っているがな、僕は認めない!この川本実(かわもと=みのる)は断じて認めない!僕には敗北などない!」
しかし訓練生の多くは全く耳を貸す様子もなく各々に話している
「整れぇぇぇぇつ!貴様ら!上官が話しているんだぞ!」
川本の隣にいた女性が渇を放ち、今までダラけていた訓練生達は前を向き、直立不動となる
女性は茶色い長い髪をかきあげる
「フン、やれば出来るじゃないか」
訓練生の一人が手を上げる
「篁少尉」
「なんだ?」
篁唯依(たかむら=ゆい)は手を上げた太った長髪に迷彩バンダナとオープンフィンガーグローブを着けた訓練生を睨む
「い、いや。多少は仕方ないんだな。本部に大泉大佐、巌谷中佐。後方支援に星乃(ほしの)大尉と石沢(いしざわ)中尉。作戦指揮に川本少佐、沙霧大尉、篁少尉。それに我々訓練生43名。それに対して相手は国連軍訓練生8名です、我々の方がズバ抜けて有利なんだな」
「確かに人数では有利だ・・・訓練生名前は?」
「竹尾タケオ訓練生なんだな」
「竹尾訓練生!「ヒッ!」状況によっては数の有利などヒックリ返されるぞ!そこの訓練生、名と今回の作戦復唱!」
グルグル眼鏡を書けた緑色の短髪の女生が指された
「え、え。あ、天野原翠子(あまのはら=すいこ)訓練生です!こ、今作戦は島北東、ここより南東5km地点にある守備目標(ターゲット)へと進軍る敵軍を全滅させる事です!」
「そうだ!そして、今回の演習でのルールは何だ!」
今度は黒髪に赤い鉢巻きをした男性が指された
「え、お、俺?剛田城二(ごうだ=じょうじ)訓練生!今回はペイント弾を使います、当たった場合は死亡判定。尚、罠にかかる、ナイフアタックも死亡判定があります!俺達の場合は死亡判定後本部に帰還すれば前線復帰できます」
「そうだ、つまり我々は理論上無限に戦える。これだけ見ればこちらが有利だ。だが相手は目標さえ破壊すれば勝てる、我々の相手をしなくても別段問題ない」
「しかし篁少尉、それでも相手は訓練生のみです実戦経験のある衛士が数名ついている我々が負「そうでもないぞ」・・・沙霧大尉」
モトクロスバイク、両脇には刀を入れられるホルスターがついたCR500Rに跨った沙霧が会話に参加する
「さ、沙霧大尉、ご、ご苦労だった、調査の方はどうだった?」
「川本少佐、相手側には少なくとも実戦を経験した大尉と中尉が一人ずつ居ます」
<!!!>
周囲がざわめく
「聞いたな!訓練生!気合を入れてけ!」
「ふ、ふん、関係ないな、僕は勝つ!それだけだ!」
「所で、川本少佐。黒藤さん・・・黒藤少尉も来ていると聞いたのだが」
沙霧の質問にニヤリと嫌らしい笑みを浮かべる川本
「あっ、あ、あアイツは雑用を言い渡した。今は何処にいるか僕にも分からないな?それにあんな『道化』は邪魔なだけだよ」
「なっ!(この人は本気で言っているのか?あの人は歩兵部隊の出だぞ、この演習形式なら・・・)そうですか」
思う所もあったが上官なため何も言わなかった
「皆さん準備はいいか!」
通る大声が帝国軍キャンプ内に響き渡る
「大泉少将!」
「わたしは大佐だよ・・・沙霧君」
「準備はできたか?川本少佐」
「は、はい、巌谷中佐、大泉大佐と共に指令本部で良報をお待ちください」
「・・・そうか・・・」
二人は指令本部がある方に行く
「よ、よしお前ら!準備にかかれ!」
「各部隊!位置に付け!」
川本と篁の号令を皮切りに訓練生達は走り出す
沙霧はそれを見ながら一人考え込む
「・・・(隙あらばここで成敗してくれよう、白銀武!!)」
○○○●●
同日10:32
孤島東部草原
訓練生の小隊が草原を横切る
「全く影も形もねぇな」
「国連軍の奴ら本当にいんのか?」
「8人をこの島で探すってのは難しいぜ」
「誰だよ“ズバ抜けて有利”とかいった奴」
「ちげぇねぇな」
「それより、気合はいんねぇよな、上官がアレ(川本)じゃな」
「分かる」
無線が入る
『アルファ隊、応答しろ』
篁の声が骨伝導フォンを通し伝わる
『こちら、アルファ1』
『状況は?』
『敵影確認できず』
『そうか、貴様ら引き続き索敵、ポイントE-5まで到着したら引き返せ』
『了解』
「よし、皆もう少し進軍するぞー!佐藤!田中!遅れんなよ!」
「「「おーー!」」」
小隊は島を南下する
帝国軍訓練生の去った後、草が揺れる
<ガサ、ガサ>
「・・・行ったようだな・・・おぃ、嬢ちゃん達もう良いぞ」
「本当にバレないのね」
「凄いでござるぅー」
「・・・流石に下種な戦法は得意ね」
ギリースーツを纏ったケニー、あゆ、まゆ、モニクが立ち上がる
「何とでもいえ・・・傭兵の嗜みだ」
「ギリースーツを1時間で4着作るのを嗜みですます、ロンズ大尉も凄いですね」
顔に付いた土を軽く払いながらあゆは言う
「小僧も手伝ってたろ」
「・・・白銀中尉もそうですね、規格外です」
「戦闘技術だけじゃなくて、戦略、戦術を考え、何が何でも生き残る。新兵なんてのは戦場で生き残ってなんぼさ」
「たまに的確な助言をするな、ロンズ大尉は」
「ちっ、その口からは毒しか出ないのか?こんなんだったら技術屋に付いて来て欲しかったぜ」
「そうも、いかんだろ囮部隊と攻撃部隊に分けた場合、タケルの言い分を考慮するとこの分け方が一番利に適ってい「お前の旦那が言う所の“論理的”ってやつか」・・・そうよ」
ケニー達は戦力を考慮し部隊を二つに分けた。
ケニー、モニク、あゆ、まゆの攻撃部隊は隠れながら島の東を通り目標を破壊するルート。武、オリヴァー、水月、遥の四人は囮部隊となり島、中央から目標に向かうルートをとっていた。
「OK、作戦時間は72時間だが、出来れば今日中には相手の鼻先までは行きたいな、嬢ちゃん!ツンデレ!時代錯誤!行くぞ!」
「わかったわ、行きましょう」
「呼び方どうにかなんないの!?」
「御意」
○○●●●
同日16:26
孤島中央、基地跡
ボロボロに放置された基地内に、同じくボロボロになった武と水月は居た。
来た道に罠も無く、武にとって『前より速くここに辿りついた』。
「エリア、クリアー」
水月が手招きをしながら言う
「待て、まだ死んだ振りしている奴らもいるかも知れん、倒れた奴にも一発ずつ入れてくぞ」
隣にいた武は水月を注意する
「白銀、えげつないわね、そこまでする普通?」
<プシュ、プシュ>
基地内にペイントガンの音が響き、「痛!」やら「うっ!」などの帝国軍訓練生の呻き声が木霊する。演習のために改良された高圧高速のペイントガンは至近距離で打たれれば骨が折れる程に強い。
「速瀬さん、戦場じゃ油断した者から死んでいく・・・ん!?これで最後だ!!」
物陰に隠れ武達を撃とうとした最後の一人を撃つ
それを見て水月は息を呑む
「(何で白銀は敵がいる場所わかんのよ!)」
「よし、お前ら帰れ!武器は置いてってもらおう!」
そういうと帝国軍訓練生はゾロゾロと基地跡を出て指令本部のある北に向かった。
「何かシュールな絵ね」
そう、水月が帝国軍訓練生が去るのを見ていると、そこにオリヴァーと遥が合流する
「水月お疲れ様、基地内は完全に掌握できたわ。それと車庫にまだ使えそうな車を発見したわ」
そして会話を始める水月と遥の横を通り、オリヴァーは武に近づく
「(タケル君が言った通り、軍用車両を一両確認できました)」
「(どうです、『リヴァイヴァー』としては?何とかなります?)」
オリヴァーは笑う
「(可能です。パイプが壊れていて空気圧が逃げているだけなので、基地内の部品で代用できます)」
「(流石です、作業時間的にはどのくらいかかります?)」
「(部品さえ揃えば、60分標準偏差15分という所です)」
「(了解)、涼宮さん、速瀬さん」
「何「何ですか」?」
「オリヴァーさんが倉庫にある軍用車両直せるそうです」
「も、問題があったんですか?」
「ブレーキ部分にね、あのまま走ってたらそのまま事故ってましたね」
サーと遥と水月の血の気が引いた、二人は件の車を使おうと考えていたためである
「で、修理に最高75分、部品探しは・・・まぁー30分て所ですかね。涼宮さんどうしましょうか?」
一応分隊長としての経験を積ませるために今回の進軍は殆ど遥に任せていた
「そうですね、そうなると日も沈みますし、軍用車を使うと考えて基地内で敵を警戒しながらキャンプになりますね。夜の進軍は危険ですし・・・では私達は部品を探してキャンプの準備をしましょう」
「うん、それが良いと思う。ただ、僕は少し先に斥候をしながら罠を張ってくるよ」
「白銀、アンタそんな事もできんの!?」
「ははは、昔サバイバルに詳しい師匠に習ったからね・・・じゃ行って来る!」
武は辺りに散らばるペイントガンを何丁か拾い、脇に抱え走っていった
「・・・本当にこれが実戦を経験した衛士との差なの?」
多少呆れた様な顔をする水月
「うん・・・それに今日だけで3回は襲撃されたけど、全部白銀中尉が事前に敵を発見してたけど・・・あれ、どうやってるんだろ?」
自分に才能が無いのではないかと落ち込む遥
「二人共気にしてはいけません。元々貴方達は彼らから学ぶのが目的です。それにタケル君それにロンズ大尉は一流の軍人です。まだ、新兵にすらなっていない自分達と比べるのは間違っています」
オリヴァーは淡々と二人を慰める
「それに・・・彼はNT(ニュータイプ)かもしれませんし・・・」
「「NT?」」
「僕達のせ・・・戦場では勘がやたら鋭くなった人達・・・総して新人類・・・ニュータイプと呼んでました」
「白銀中尉がそうであると?」
「・・・いえ、忘れてください、世迷言を言いました、部品を探しましょう」
「ニュータイプ・・・」
水月は噛み締めるように呟いた
○●●●●
同日21:00
孤島北部帝国軍司令本部
<バン!・・・バンバンバン!>
川本は思いっ切り何度も机を叩く
「な、何だ!役立たずどもが!それでも帝国軍に入ろうとする兵士か!ふざけるな!たかだか8名、何で捕まえられない!それに何だこの白銀武という餓鬼は!化け物か!?こ、これじゃまるで僕が無能じゃないか!」
「「(確かにそうであろう[でしょ])」」
怒りをあらわにする川本を冷やかな目で見つめる沙霧と篁。
「やっているな!」
そこに大泉と巌谷が入ってくる
巌谷は報告書に目を通す
「中央部に向かった連中の被害がデカイな・・・そして東部を通り南下した部隊は消息を絶ったか・・・」
「ほう、やられているな。今日で半数以上が一度やられたか」
「唯依くん、どう見る?」
「やはり、実戦を経験のある兵士がついている事が戦果に影響していると思われます。我々も出るべきでしょう」
「い、良いこと言った少尉!そうだ僕が直々に出てやる!僕の顔に泥を塗ったこと後悔させてやる!そ、そうと決まれば僕はもう寝るぞ。大泉大佐、巌谷中佐先に失礼します」
「少佐!指揮の方は!?」
「き、君達に任せる、交代で休憩してくれたまえ、何だったらどっかで油売ってる『道化』に任せても構わない!と、ともかく僕は寝る」
そう言って川本はドタドタと足音を鳴らしながらテントを出て行った
「・・・はぁ~」
深い溜息を吐く篁
「疲れているね唯依くん」
「巌谷おじ・・・中佐・・・そう思うなら指揮をとってください」
「・・・それは出来ないな、元々これは君達下の者達を育てる意味があるからな」
「・・・巌谷中佐・・・篁少尉とは親類で?」
沙霧がそう言うと微笑む巌谷
「いや、唯依くんの亡き父とは親友でね」
「父が亡くなってから巌谷中佐には面倒を見て貰ってるの」
「なるほど」
「・・・所でくだんの黒藤のセガレは何処だ?」
大泉が回りを見渡しながら言う
「今回の合同訓練。形式を考えた張本人が司令部にいないとはな」
「大泉、大佐、黒藤さんなら川本少佐に雑用言い渡されて・・・現在位置は掴めておりません」
「なんと!」
「大佐、黒藤少尉が今回の形式を考えたというのは?」
「ふむ、篁少尉と言ったね。今回の合同演習の真意は何だと思う」
「真意ですか?訓練生の訓練成果を見、戦術機訓練に移れるかどうかを見るためじゃないのですか?」
「それは確かに正しい!だがもっと深い意味での理由だよ、彼らは、君達は何を学んでいるんだい?」
「・・・」
考え込む篁
「・・・唯依くん、ヒントをやろう。我々の真の敵とは何か?」
「BETAです」
その質問と答えに誰も見ていない所で沙霧は一瞬顔を歪める
「では、今回の演習何に見立てている?」
「!!!」
「分かったようだね」
「はい、国連軍はハイヴ進入、そして反応炉を破壊する事に見立てています。復活する兵士はさしずめ・・・BETA。私達は逆に防衛戦と殲滅戦です。現実では兵士級一体逃がしても生身の人間には脅威です」
「そうだ、それに君達の指揮訓練にもなるしね」
「それを考えた黒藤少尉とはどういった人なんですか?」
「奇妙で快活な冗談を飛ばす頭の回転の速い男だ」
そう大泉が答える
「光州作戦に参加した歩兵部隊の数少ない生き残りです」
と続ける沙霧
「技術科の変人だな」
と短くしめる巌谷
「???よく分かりません」
「さて!沙霧君、明日はどうすかね?」
「そうですね、自分は中央に向かいます、被害が一番大きいですし、何より自分が確認した大尉と中尉らしき人物がそちらにいると報告が来ています。川本少佐もこちらに来るでしょう。篁少尉には東部から南下してもらいます。そちらも怪しい」
「了解です」
「決まったようだね!なら君達は寝たまえ!」
「は、し、しかし!」
「大丈夫だ、ここはわたしと巌谷君が持とう、黒藤君も探して、朝までは彼に任せる!」
「・・・行きたまえ、大泉大佐がこう言い始めたら聞かん」
「分かりました、では私達は失礼させて貰います」
二人は敬礼をしテントを出る
<・・・>
「・・・巌谷くん、香月博士は中々面白い部下をお持ちのようだね。そしてそれに付いて行ける国連軍の訓練生も中々だ」
「そうですね、局長。元々その訓練生ももっと早い段階で正式な衛士になってた筈の人材だと聞きます・・・彼らが我が帝国軍にも良き風を持ってきてくれると願います」
「持って来るさ、言うならば香月旋風」
●●●●●
同日23:00
帝国軍キャンプ内
<ガサガサ>
物陰で何かが動くの見て止まる黒藤
「・・・こんな時間に武器庫に誰が・・・?」
「ククク、こ、これだよ、実弾もあるじゃないか・・・白銀武・・・君は僕の出世には邪魔だ・・・ふふふ、出世して今度こそ、まりもと・・・」
咄嗟に身を隠す黒藤
「(川本・ザ・ストーカーか・・・また面倒な事になりそうだな・・・)」
○○○○●
11月1日08:21
国連軍クルーザー前、浜辺
キワドイ黒のビキニを着、パラソルの下、ビーチチェアーに優雅に寝そべり、小さなテーブルにはフローズンダイキリを置いた夕呼の隣でソワソワと落ち着かずウロウロするまりも。
「も~、何まりも?あの子達の事が心配?少しは落ち着いたらどう?見てるこっちが落ち着かないわよ、アンタも少しはバカンスを楽しみなさいよ」
「・・・昨日夜中の11時くらいに悪寒があって、それから余り寝れなかったのよ」
と言いながら自分の肩を抱くまりも
「何?勘とかいう非科学的・・・って事でも『もう』ないわね。兎も角そんなん気にしてんの?もう始まっちゃってるのよ?結果出るまで私達は何も出来ないわ。私は今回全部、帝国軍に任せちゃったし」
「うぅぅぅー」
「まりも、いい加減に諦めて南国の島を楽しみなさい」
「・・・涼宮、速瀬、大空寺、玉野・・・無事に帰ってきなさい・・・オリヴァー大尉、モニク大尉、ロンズ大尉、白銀・・・彼女達を頼みます・・・」
○○○●●
同日09:22
孤島中部~北東部
ジープ型のオープンな軍用車両がオフロードを疾走する
操縦席にはオリヴァー、
ナビゲーターシートに身を乗り出した武、
武側は急な斜面になっている
武の後ろ座席に遥
その横に水月
二人とも武と同じく身を乗り出している
<パシュ、パシュ、パシュ>
武が放つペイント弾が遠くの帝国軍訓練生に当る
「本当に卑怯よね、相手は当るか分からない距離で撃ってこないけど、こっちは確実にその距離で当てる奴がいるんだもん」
「そんな事ないですよ速瀬さん、俺も三発撃ってますから」
「私が撃ったら三発とも外れるわよ!」
「でも、このまま行けばまゆちゃん達を待たずに私達が目標を破壊できるか「そうでも無いようです」・・・」
オリヴァーが遥の台詞を切る
「ああ」
オリヴァーと武が見つめる先に砂塵を巻き上げ近づく一台のバイク
武は無言で銃を構え撃つ
<パシュパシュパシュ>
しかし、それを読んでいたかのようにバイクは避ける
「流石、沙霧大尉!!涼宮さん!銃を渡してくれ!」
武は今度は二丁拳銃でバイクを撃ち始める。
左手の銃で位置を誘導し、その位置に数発叩き込む。
高速移動するバイク上で低姿勢を保つ沙霧には当らなかったが何発か前輪部分に当り。
バイクはコントロールを失い、大きく左に曲がってから・・・
「突っ込んでくるわ!」
水月が叫ぶ
バイクに乗った沙霧はそのまま両脇の刀を鞘事とり、バイクからジャンプし、武に目掛けて蹴りを放った
「そんな!マジか!」
咄嗟に銃を交差して蹴りを受けるが、
バイクと蹴りの衝撃で武は車両の外に弾かれ、
それを見た遥が武に手を伸ばし・・・
掴む
が
<ガタン!>
コブシ大の石を蹴った車両が大きく傾き二人を弾き飛ばす
「遥ぁぁぁぁぁ!白銀ぇぇぇぇ!」
水月の叫びが広がり
武は遥の頭を抱えながら、斜面を転げ落ちていった
急ブレーキとドリフトでオリヴァーは車を一旦止める
「速瀬訓練生。この車じゃこの斜面は無理です遠回りですが下に行く方法を探します。前に座ってください。飛ばします」
冷静でも、熱くオリヴァーが水月に命令する
「クッ・・・」
唇を噛み締め水月は助手席に座り込む
○○○○●
同日09:45
孤島中央~北東部、崖下
「・・・や・・・さん・・・す・・みや・・ん・・・涼宮さん!」
遥は武の呼び声に目を覚ます
「涼宮さん、良かった気がついたみたいで」
「私はどれくらい寝てた?」
「数分です大した事ありません、足は大丈夫ですか?」
「白銀中尉、敵は?」
「それより!足は!足はどうなんですか!?」
やたら足にこだわる武を不思議に思ったが、言われた通り足を動かし確認する。
「痛みもないし、問題なく動くわ」
「よ、よか「白銀くん後ろ!!」分かってる!」
サバイバルナイフを抜きながら後ろを振り向き、沙霧の袈裟切りをソレで受け流す
「沙霧大尉・・・!!」
沙霧の目は真っ直ぐ武の目を捉え放そうとはしなかった
それは武に彼が自分だけを狙っている事を確信させた
武は横に走り出し、遥から距離をとり始める。
それを追うように沙霧も走る
やや開いた場所に出た瞬間、沙霧は速度を上げ武に切りかかる
<キン>
一合
<キン>
二合
<キン>
三合し沙霧は距離をとる
「・・・まさか、これ程の腕前とはね」
素直に関心する沙霧
「アンタに褒められるとはね、マジで嬉しいよ」
笑顔を見せるが内心、武は焦っていた
「成らば敬意を表して正々堂々と戦おうじゃないか」
そういい沙霧は右のベルトに付けていた刀を取り武に投げつける
それを空いている手でとり、一旦サバイバルナイフをしまい、刀を抜く
「真剣・・・何でこんなもんで・・・・何で俺を狙う!まさか!夕呼先・・・香月博士(が仕組んだ事か!?)」
緊張の余りカラカラになった喉は最後まで武の台詞を言わせてはくれなかった
前回も前々回のループ時も夕呼は総合技術演習で危険な罠を張っていたため今回も沙霧や帝国軍を使い自分達を襲うように言ったのでは無いかと武は睨んだ。
「・・・(自分が牝狐を狙っている事も知っているのか、面白い!)そうだ」
<ゴク>
唾を飲む武
「(やはり、又こんな死に直結したような・・・!!)そうか・・・アンタら(クーデター派)には(前ループでの)借りもある容赦はしない!」
「!!!(帝国軍への怒りは本物か!やはりこの男は殿下にとって・・・危険!!!)なら、かかって来い白銀武!!!」
飛び出す沙霧
「言われなくても!」
真っ向から唐竹に斬る
「甘い!」
それを横に避ける沙霧
武は剣を返し避けた沙霧を追う
「チッ、やる!」
右手で鉄製の鞘を抜き受け止める
左手の刀をそのまま武の首を目掛け振り下ろす
しかし姿勢を下ろし、首を横にし避ける
<パラパラ>
武の髪が何本か斬られる
武は乾いた唇を舐め、刀の刃を横にし沙霧を押し距離を取り、そのまま沙霧の足、アキレス腱を狙い斬る!
沙霧は足を上げる事で避け、後ろに跳ねる
「貴様・・・どういう事だ!(白銀の剣には確実に斯衛軍に伝わる無現鬼道流剣術の太刀筋がある・・・内部にも敵がいると言う事か!)」
「(驚いてくれているな、まさか無現鬼道流剣術を現政威大将軍、煌武院悠陽[ほうぶいん=ゆうひ]の妹、御剣冥夜[みつるぎ=めいや]とその師、紅蓮醍三郎[ぐれん=だいさぶろう]中将に教わったとは思うまい)・・・戦い方は身体が覚えているか」
刀を左手で突く武
「(身体が覚えている!?それ程長く戦ってきた?いや元々将軍家に関係する者か?)なめるな!あたらなければ!どうという事はない!」
それを武の右に避ける
「そこ!迂闊だ!」
武は既に右手にサバイバルナイフを持ち突きを放っていた
「チィ!」
刀を振り上げる沙霧、それを戻した左手の刀で受ける武・・・だが受けきれず軽く左肩を斬る。
沙霧は右わき腹を押さえ距離を取り、息を荒くする
「当り所が悪いとこういうものか!」
「沙霧大尉・・・引いてはくれませんか?」
武の黒いタンクトップの左肩は更に濃い黒へと血で滲む
「引けんな!こちらにも引けぬ理由がある!」
「・・・(夕呼先生、どんな脅しかけたんだよ。マジの殺し合いになってんぞ!)」
「それにな!帝国軍大尉としての意地もある!行くぞ白銀武!オオオオオオォォォォォォ!」
沙霧の雄たけびが大気を振るわせる
右手に刀をかかげ、左手に鉄鞘を逆手に持つ
「俺はまだ死ねない!!純夏を!仲間を!世界を救うまでは!!」
武は刀を右手に持ち替え、サバイバルナイフを左手に持つ
「白銀武ゥゥゥゥゥ貴様はここでぇ!!!!!」
素早いに袈裟斬りに武は右手の刀で受け止めようとするが、
刃を横にするタイミングが遅れ、
沙霧の刀が武の刀を根元から斬り、
武の右ひじの皮を斬る。
咄嗟に武は柄の部分をひっくり返し、柄の底で沙霧の鞘を弾く。
そしてそのまま左手のナイフを沙霧の首元に振るう
この瞬間、両者の思考は高速化する
「(・・・ここで沙霧大尉を斬っていいのか?何故この人はここまで俺を殺したがる??)」
一瞬の迷いが生じる
「(・・・白銀の動きが遅くなった!?今だ!)」
沙霧は時計回りに回転し、右足で回し蹴りを放つ。
それを胸に受けた武は吹っ飛ぶ
後方に回転し受身をとるがそのまま勢い余って立ち上がれず大の字に倒れる武
「仕舞いだ!」
「駄目!!」
<タケルちゃんをいじめないで!!!>
<ダーーーーーン>
<ドーーーーーーーーーーーン>
「!!!???」
多くの出来事に混乱する沙霧
一つは、訓練生の少女(遥)が武と彼(沙霧)の間に入った事
一つは、一瞬見知らぬ別の少女の幻影を見た事
一つは、後方の作戦目標が破壊(爆破)されたであろう事
一つは、間に入った遥かの両足が何者かによって打ち抜かれた事、そしてそれが倒れている武のもう片方の肩に当ったこと
沙霧にハッキリと分かる事はただ一つ
「誰だ!無礼者が!出て来い」
死合を邪魔された事である
<・・・>
遠くで銃撃、叫び声、続く爆発音が聞こえるものの第2射は起きなかった
沙霧は静かに刀を鞘に納める
「興が冷めた・・・我が方の無礼を詫びる」
そう言い、その場から走り去る沙霧
・・・
そして戻ってきた沙霧の手にはトランシーバーと小型緊急治療キットがあった
そして手際良く、蹲る(うずくまる)遥を治療する
「染みるぞ」
「うっ!」
<ドドドドド>
治療する沙霧の所に軍用車に乗ったオリヴァー達が来る
「遥!白銀!」
ペイントガンを沙霧に向ける水月
が所詮ペイントガン、沙霧は気にせず話し始める
「そこの少女は足を撃たれている、白銀武の方は両肩に傷がある、治療用具は置いていく、それとこのトランシーバーもだ。応急手当が済んだら、ここから北、あの爆発があった目標(ターゲット)から北西の方に帝国軍本部がある、そこに衛生部隊がいるから早く連れて行け」
水月とオリヴァーは何も言わず、遥と武を車に乗せ走り出す。
「白銀武・・・その命、今は預けるぞ・・・さて・・・」
漏れ出す怒気と殺気を抑えながら歩き出す沙霧
○○○●●
同日
数分前
10:18
武達が落ちた地点より北東数百メートル地点
「さ、沙霧め!早く片付けろ!」
・・・
「な、何をやってるアイツ!餓鬼一人に!」
・・・
「チ、チッ、なら僕が始末してやる!」
川本は腹ばいになり狙撃ライフルで武の頭を狙い撃つ!
「な、な!」
<カーーン>
<ダーーーーーン>
<ドーーーーーーーーーーーン>
が、狙いはライフルに当った鎖のような物と武をかばった遥によって外れる
「狙いが正確だと、本気で彼を殺そうとしたのが分かってしまったなぁ」
後ろを振り向くとそこには黒藤が何時ものようにふざけた顔をしながら立っていた、手には鎖が巻かれている
「どうやら川本・ザ・ストーカーは拳のティクアウトが足りなかったご様子で☆」
「な、な、お前こんな事やって・・・す、すむと!」
<ドーーーン>
<ドーーーン>
<ドーーーン>
「・・・・・・・・」
続く爆発音に黒藤が言った言葉は掻き消されたが、川本にはその口が言った事が分かった
(お・ま・え・の・つ・み・を・か・ぞ・え・ろ)
西暦1999年11月1日10:22の事である。
西暦1999年11月1日、
僕達は二日間の合同総合技術演習から帰って来た。結果として、皆問題なく合格できた。作戦は囮部隊と攻撃部隊を作るというもの。僕、タケル君、涼宮訓練生、速瀬訓練生の4人は囮としてその任務を全うした。ギリースーツを着込んだロンズ大尉、モニク、大空寺訓練生、玉野訓練生は途中帝国軍の少尉と戦闘があったものの問題なくロンズ大尉を囮に作戦通り大空寺訓練生及び玉野訓練生の連携により帝国軍少尉を退け、その間先に進んだモニクが目標を爆破に成功。・・・しかし、タケル君と涼宮訓練生は怪我をした。タケルは両肩を軽症、涼宮君は両足を中傷だ。応急処置が早かったため重症にならずにすんだ。爆破用の火薬以外ペイント弾しか使っていない筈なのに普通は怪我をする筈が無い。しかし、帝国軍の佐官が一人暴走し、狙撃ライフルを取り出したそうだ。犯人はタケル君と死闘を繰り広げた沙霧大尉によって発見された。発見された時、その佐官は全裸で木に縄で貼り付けられ、顔は殴打された後があったそうだ。
タケル君は全治一週間、涼宮訓練生は二週間程度だそうだ。この世界の医療技術には驚愕である。別途、調べる必要があると思われる。
―西暦1999、11月1日 オリヴァー=マイ臨時大尉/訓練生