Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿)   作:osias

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第十一話「死せし大地に軍靴の足音が木霊した~後編~」

西暦1999年11月15日11:32

四国、高知市

 

無人の街にBETAの叫び声、弾丸の飛ぶ音と機械音が響く

それは一種の音楽の様に

地獄にBGMがあるとしたらこんな感じなのだろうか

 

「化物如きに俺の弾が避けられるかよ!」

 

接近戦に成らない為、ケニーのギャンはシールドとツィン・ヒート・スピアを背中に背負い、左手に87式突撃砲、右手にショットガンを持ち弾をばら撒いていた。

 

「虱潰しだ!」

 

ビチャビチャグチャグチャと言う音を立てながらBETAの小型種は潰れていく

道路の上はBETAの死骸で溢れかえる

 

「チッ、こういう風に行動範囲を狭められるとは思った事がねぇぜ」

 

悪態をつきながら、足場を確認するケニー

 

「どけ、傭兵!」

 

モニクの言葉に、ギャンは空中に逃げる

開いたスペースにドムのラケーテン・バズが炸裂し、死骸を含むBETAが吹き飛ぶ。

毒々しい紫色の液体が回りのビルに着く

 

「ロンズ隊長、モニクも遠距離兵装を使うのは構いませんが、接近戦兵装も使ってもらわないと、評価のしようがありません」

 

モニク達の視界、右下に何時ものように冷静なオリヴァーの顔が浮かび上がる。

 

「分かっちゃいるがな」

 

「あの、怪物に近づく気にはならないわ」

 

二人共苦笑いをする。資料を前もって見て、戦闘もしたとはいえ、まだUCから面々にはBETAの姿には抵抗がある。

 

「・・・ではタケル君」

 

「オレ!?マジで?」

 

「マジです」

 

「はぁ~」

 

溜息をつきながらも兵装を右手ヒート・ソードと左手99式超震動短刀に切り替える

沙霧と戦った時と同じ構えを取り

 

「では、白銀武押して参る!」

 

武の撃震T型はBETAの群れに飛び込む。

それは正に竜巻。

ヒート・ソードの一振りはBETAを溶かし

99式超震動短刀の一振りはBETAをバターのように切り裂く

 

「おぅ、行け行け、小僧援護は任せろ」

 

ケニーはコクピットで観戦モードになりリラックスしながら

武を援護するように周りのBETAを36mmで倒すダックハントのゲームをするように潰していく

 

「武の腕も尋常じゃねぇが、グラサンの腕も異常だな、どうやったら武に当てずに周りのBETAだけ倒せんだよ?」

 

文縁は網膜に映る映像を見ながら呟く

 

「ヒート・ソード、及び99式超震動短刀は両方とも小型BETAには効果ありと・・・問題は大型種にどのくらい効果があるかですね」

 

「オーリー!観測と評価も良いがちゃんと撃ってくれ!」

 

「分かってます・・・引き金を引くくらい!」

 

<キュィーン・・・ダダダダダダダダダダダ>

 

武達とは別方向にいるBETAをホバートラックとドムが掃討する

 

「武、正面のBETAでここのは最後だ!撃震王のとっておきをお見せしろ!」

 

「了解!」

 

撃震T型は両手の武器を振り、周りのBETAを一掃すると、正面に向き99式超震動短刀を地面に突き刺し、左手を前に出す。

そして武の網膜にVCS用のテロップが流れる

 

「アームドガドリング!セットアップ!」

 

その声に反応するように、左腕部からガドリング砲が現れる

 

「劣化ウラン弾のシャワー存分に浴びろ!」

 

<シュィィィィン・・・バラララララララララララ>

 

ホバートラックが装備しているガドリング砲より高い回転音を奏で、

36mmが空を埋める。

 

<ララララララララララララララ>

 

火薬の煙と光に包まれ

その双眼は撃たれるBETAを只々見つめる

 

<ラララララララ・・・・ィィィィン>

 

一通り撃ち終わると、そこに動く物は無かった

 

「中々の威力ですね、武器を落さずとも使える方法があれば良いのですが・・・後は移動時と飛行時での使い勝手を調べるだけですね」

 

オリヴァーはコンピューターにデータを叩き込む。

 

「・・・オールクリア、高知市確保!」

 

文縁の声が戦いの終了を告げる

 

 

 

武達は高知駅前の広場で戦術機から降り

昼食を取っていた

 

「<モグモグ>・・・中々デカイ奴には会わないな、ング・・・このカツヲの叩きてのは旨いな」

 

生姜独特の香りが立ち昇り、

それに合わすように出し汁が円やかにカツオの肉を包み込む。

 

武達は太陽光発電を行っていた工場を発見し、

今だに冷凍されていた食材を文縁が発見(奪取)、調理し、

彼らは持ってきたレーションと一緒にそれを食べていた

 

「・・・酒が飲みたくなる味だな・・・それにしても技術試験としては大型にも会わないと話にならんな・・・もっと西に行くしかねぇようだな」

 

ケニーが言うように、これまで彼らがエンゲージしたBETAは全て小型種であった

 

「まぁ、相手からこっちに向かってくれるから楽って言っちゃ楽だがな」

 

そしてBETAは武達に向かい現れる。殲滅戦をする上では楽である。

 

「・・・それにしても本当に誰もいねぇなぁー」

 

ケニーが見渡すと、そこにはビル街が学ぶ

先ほどの戦闘で所々煙が出ているが

それ以外には全くの静寂・・・

街の中にはBETA以外の死骸はなく、

他の生物は全て食べられたと思われる痕跡の黒ずんだ血の跡が所々にある

 

「昔来たときは結構賑わってたんだけどね」

 

そう思い出す様に言う文縁

 

「・・・はい、“どろめ”、冷凍で臭いついてるから、ちゃんと生姜、レモン、薬味と一緒に食べてくれ」

 

武は軍用の鉄製の器に入れられたどろめをフォークでかき混ぜる

臭いは気にしなければ感じず、逆にレモンの酸味、

薬味の香ばしい香りと生姜のサッパリとした香りが器内を支配する。

口入れると甘いとろみのある食感が口内に広がり、

つるりと喉を通る

 

「・・・美味い、これに白いご飯があったらマジ最高だったな・・・」

 

「・・・はは、高知名物も食い収めだな」

 

<・・・>

 

「オリヴァー、帝国軍の動きはどうなってるの?」

 

モニクはオリヴァーの隣に座り

オリヴァーは小さく震えるモニクの手を持っていた。

彼女とて気丈に振舞っているが、

BETAという未知の生物との戦闘に恐怖しないわけではない

 

「・・・今確認しているよ・・・」

 

オリヴァーは無線のヘッドフォンに片耳を預けながらレーションを頬張る

ケニー達のように不可思議な和食を食べる気がしなかった。

 

「・・・九州の方は予想よりBETAの数が少なく上手く殲滅をしているようです・・・四国の帝国軍は西条市周辺を抑えたようだね」

 

他の三人は地面に置いてある地図に目をやる

 

「・・・俺達より時間があって、まだそんな所か」

 

「グラサンそういうなや、あっちの方がBETAは多いからな」

 

「それに、MSの方が性能が高くて、進軍速度は倍以上ですし」

 

「・・・しかし、四国の北、愛媛の西条市か・・・このスピードだったら俺達と八幡浜市辺りでぶつかるな・・・」

 

「・・・おいヒゲそれはどこら辺だ?」

 

文縁が指差したそこは、佐田岬半島の南、九州の北東にある港を持つ街であった。

 

 

○○○●●

同日12:11

西条市

 

赤い衛士強化装備を着た女性が二人が丘から西条市を見つめていた

 

「こっちは一人やられて、2機中破だ、真那の方は?」

 

一人は青緑色の髪をおろし、眼鏡をかけた月詠真耶(つきよみ=まや)中尉

 

「中破1小破1よ」

 

そしてもう一人は緑色の髪を後ろに纏め団子にした、従姉妹の月詠真那(つきよみ=まな)中尉

 

「小型種だけを相手して、この体たらくか・・・そっちの被害はさほど酷くないな・・・連隊長は渡辺(わたなべ)少佐だったか・・・」

 

「ええ、可も無く不可も無くといった所でしょうか。実際は鳩木(はとぎ)旅団長がもう少しマトモな指揮を出し、洒論(しゃろん)中佐が上手く連携を取ってくれていれば被害は少なかったでしょう」

 

眉間に皺を寄せるマナ

 

「鳩木之宗(はとぎ=ゆきむね)大佐に洒論天不(しゃろん=てんぶ)中佐か・・・ほぼ新兵で構成された部隊に、指揮能力がほぼ皆無の旅団長と唯我独尊の連隊長・・・我々が呼ばれたのも頷けるな・・・」

 

二人は斯衛軍のため帝国陸軍引率の今回の様な作戦に組み込まれるのは稀、

それだけにキナ臭さを戦場で感じていた

 

「・・・BETAは狙ったように我々に向かってくるし・・・・国連軍も南で動いているという・・・今回の作戦・・・何かあるの・・・?」

 

マナは再び街に目をやる

 

「中尉殿!」

 

二人は呼ばれ振り向くと一人の青年がいた

 

「貴様は・・・?」

 

眼鏡を光らせマヤが問う

 

「ハッ!渡辺少尉であります!」

 

マナはその面影が連隊長に似ている事に気づく

 

「連隊長のご子息か」

 

「はい!」

 

「で、何の用だ?」

 

マヤは渡辺少年を見る、渡辺少年にとってそれは睨まれているようにも感じ一瞬ビクつく。

 

「れ、連隊長殿が大休止の終わりを告げ、進軍せしと」

 

二人はそれを聞き、頭を抱えた。

大休止を言い渡され、まだ1時間も休んでいない。

後方で何もしていない連隊長にとってはさほど重要じゃないだろうが、

前線に立つ衛士達にとって大休止や小休止は食事と同じくらい大事である。

 

「鳩木大佐は何を考えている・・・分かった今出撃準備にかかる」

 

マヤは歩きだした

 

「マナ・・・?」

 

マナは今にも降り始めそうな曇天の空を見上げ呟く

 

「嫌な感じだな・・・」

 

○○●●●

(二日後)

11月17日15:00

四国西側、西予市三瓶町周辺

 

ギャンと撃震のスラスターは火を噴き空を舞う

それを高速で地面を滑る様に追うドムとホバートラック

 

「雨が激しくなってきたな・・・ホバーで足を取られるという事は無いけど・・・こう視界が悪いとやり難いわ!」

 

モニクは過剰な程の36mmを撃ちBETAを仕留める

地面に散ばる紫色の液体は雨によって薄れていく

 

「嵐の~中で~♪」

 

「姉さん危ない!」

 

武がモニクの機体に取り付こうとしたBETAを撃ち落す

 

「その~夢も~♪」

 

「助かったわ、タケル」

 

「技術屋!八幡浜までどんくらいだ!」

 

「直進して12kmくらいです」

 

「諦めないで~♪」

 

「「「「う(る)さい(です)(わ)!!!」」」」

 

「・・・」

 

4人に叫ばれ黙る文縁

 

「ヒゲ、BGMまで用意して・・・歌って誤魔化そうとしているようだが・・・進軍に遅れが出ているのはお前のせいだぞ!」

 

前日文縁は撃震に乗りたいと駄々をコネ、搭乗し

調子に乗り高高度にジャンプしたさいにバランスを崩した撃震を操れず、

落下

転倒

小破

その整備を行うために半日603小隊は足止めをくらった

 

「ついカッとなってやった、反省もしないし、後悔もしていない」

 

「性質悪(ワル)!」

 

武はたまらず叫ぶ

 

「取り合えず小休止を取るぞ!予備弾の詰め替えとリロードをちゃんとやっとけ!」

 

各々は機体の状況確認(ステータスチェック)を行い、ホバートラックに詰まれた予備弾を取る

 

「技術屋!ホバートラックに積んであった弾薬はこれで全部か?」

 

「はい」

 

「いよいよ、もって無駄玉が撃てなくなってきたな・・・『戦いは数』か・・・」

 

「ドズル=ザビ閣下もそう言っていたそうです」

 

ケニーが言った言葉にオリヴァーが反応する。

宇宙世紀0079、一年戦争時、ジオン公国軍は圧倒的に物資や人員で連邦軍に後れをとっていた。それは連邦軍総司令官ヨハン=イブラヒム=レビル大将に『ジオンに兵なし』と言わせる程明らかであった。そしてジオン公国軍宇宙攻撃軍司令ドズル=ザビ中将は一年戦争末期、ジオン公国軍総帥で兄のギレン=ザビに『戦いは数だよ』と不満を漏らしたのは後々のジオン軍人が知る事になるほど有名なエピソードである。

そして、この世界、BETAの脅威は何にしても圧倒的な『数』である。恐れを知らず、物理的にしか止める事の出来ないBETA。ジオン公国軍として『数』を相手にしたオリヴァーとモニク、そして『数』を武器にした連邦軍にいたケニー、想像ではその恐ろしさを知るが、彼らはこれから『本当』にその脅威を知る事になる。

 

「文縁少尉、本当に何故、無理してF-4JT(撃震T型)に乗ったんですか?」

 

オリヴァーは通信を切り、ホバートラック内でハンドルを握る文縁に話しかけた

 

<・・・>

 

少し考えるような間があり、文縁は頭だけを後ろに向け答える

 

「いやさ、元々俺が俺のために作った機体だからさ・・・実戦で一度も乗ったこと無くて・・・まさかあそこまで安定性が悪く、操作し難いものになっていると思わなくてさ・・・」

 

文縁が言うように、核反応炉、XM-3、追加スラスター、マグネットコーティングが追加された撃震T型は最早彼が知る物ではなかった。問題は多大な馬力とそれを操作するための繊細さである。背部から飛び出ている核反応炉と通常の撃震より大きい両腕を持つT型はミリ単位での操縦を要求され、文縁にそれをコントロールする技術は無かった

 

「・・・それに調べたい事もあったしな・・・」

 

「はっ?」

 

文縁の呟きにオリヴァーは問いかける

 

「いや、武・・・お前がナンバーワンだ!・・・て事っすよ!」

 

何時ものようにサムズアップと溢れんばかりの笑顔を見せる文縁に呆れるオリヴァー

 

「そうですか」

 

<ピピピピ・・・ピーーーーーー>

 

ホバートラックに詰まれた振動計が鳴り、文縁の横にあるモニターは音の波を作り、そしてが何かと一致するように合わさる。それを見て自分の色眼鏡を目の位置まで上げる文縁

 

「・・・この波紋・・・このパターンと位置は・・・なんて事だ、これは偉い事ですよ!!オーリィー、グラサン隊長に連絡だ!!!!!」

 

○○●●●

同日15:05

八幡浜市南部

 

「中尉!月詠中尉!助けてください!ちゅう・・・」

 

<ドギャ>

 

帝国軍新兵の乗る撃震は戦車級BETAに取り付かれ身動きが取れない所をモース硬度15を誇る装甲に170km/hの速度で突っ込んでくる突撃級BETAにより、コクピットは勿論、機体全てが潰れる。そしてそれを漁るように戦車級や兵士級といった小型種が撃震に群がる。マナの網膜に映るバイダルデータは中の衛士が生きている事を知らす。

周りのBETAを120mmと36mmを使い分けながら潰しその機体に近づこうとする・・・が・・・戦車級の黄色い唾液が撃震を覆い、乗っていた衛士のバイダルデータは急激に上昇、心拍数が180を超えた時点で一気に0に落ち・・・平らな線がマナの視界右端を横切り続ける。

 

<ピィーーーー>

 

「・・・少尉・・・!!」

 

マナにとって唯一の救いは最初の一撃で撃震の通信機が壊れ、衛士の断末魔を聞かずにすんだ事であろう。

 

<ザーザーザーザーザー>

 

聞こえていたとしても降り注ぐ雨がその声を掻き消していたかもしれない

 

この時点でマナのいる小隊はマナ駆る赤いType-82F 高機動型瑞鶴を残し全滅した。

 

<ダダダダ>

 

マナを援護するように銃撃がBETAを襲う

 

「斯衛殿大丈夫か!」

 

そこには黒い帝国軍カラーの撃震が2機。

 

「助かった、貴様らは?」

 

「帝国陸軍131連隊、児島(コジマ)連隊所属、第八小隊・・・、臨時小隊長の天田(あまだ)先任少尉です!」

 

そこに移ったのはまだ幼さが残る童顔、黒髪の少尉だった。

 

「その声、月詠中尉ですか!僕、いえ私です、渡辺少尉です!」

 

三機が敵を殲滅しているとマナの機体に似た赤いType-82F 高機動型瑞鶴が近づいてくる

 

「マナ無事か!?」

 

「マヤ?・・・無事とは言い切れんな、私以外は全滅だ・・・で、どうした?」

 

「鳩木旅団長が全軍、北にある八幡浜市役所まで後退するようにとの事だ」

 

「撤退命令じゃないのか!俺達の連隊だけじゃなく、渡辺少佐の133連隊もボロボロだ、唯一無事なのは洒論中佐の132連隊ぐらいじゃないのか!?」

 

天田少尉が言うように、彼らの旅団の被害は多大なものであった

最初は八幡浜市で問題なくBETA殲滅を行っていたが、南部に食い込みころになり、突然八幡浜港から師団数(約3万)はいると思われるBETAが奇襲。

八幡浜市、最南端に食い込んでいた131連隊は勿論、133連隊は南にいるBETAと西からの奇襲により二面戦に追い込まれる。これにより新兵達はパニックを起こし、たった数分の内に131連隊は4割、133連隊は3割の被害を出した。陸軍旅団は3連隊、戦術機324機からなっている。この時点で彼らは全軍の2割弱、約75機の戦術機を失った事になる。ほぼ被害が無いのは北東にいた洒論中佐の132連隊と指揮本部だけである。

 

「天田少尉!言っても始まらん、行くぞ!」

 

「「「了解」」」

 

マヤの高機動型瑞鶴を三機が追う

 

○○●●●

同日15:09

八幡浜市北西部市役所

 

マナ達が市役所に付く頃には既に市役所周辺をBETAが包囲していた。

BETAの波を止めるように数機が市役所に留まり応戦している

 

「渡辺少佐!」

 

マナが帝国軍の不知火を見て、そう叫ぶ

 

「月詠中尉殿か!指令本部は一時撤退し始めている、北東に抜け、131連隊に合流しろ!殿(しんがり)は我々が行う!」

 

「な!本部は俺達を見捨てたのか!?」

 

天田先任少尉は声を上げる

 

「少佐!我々も!」

 

マナは撤退するように渡辺少佐に提案する

 

「これは命令だ月詠真那中尉、貴殿らが斯衛と言えどもここでの指揮権は私にある。行け!」

 

「父ちゃん・・・」

 

「一端の衛士が情けない声出すな!さっさと行け!」

 

渡辺少佐の命令に従い4機は北東に抜ける。

 

それを確認し、渡辺少佐は回りの僚機に告げる

 

「灘(なだ)中尉!新井少尉達を連れて引け!」

 

「な、何を言っているんですか連隊長!」

 

灘中尉と呼ばれた女性が驚く

 

「ここはもう維持できない・・・だが、友軍が後方に引き・・・立て直すまでここを維持してやるさ」

 

「・・・連隊長、死・・・」

 

言い切らずに言葉を飲み込む灘中尉

 

「・・・すまんな、児島少佐と合流し指揮下に入れ」

 

「了解・・・お前ら聞いたな!行くぞ!」

 

光線級がまだ確認されていないため、灘中尉達はスラスターで上空に飛び、最後に92式多目的自律誘導弾システムを積んだ機体はミサイルを全部放ち、それを援護するように僚機は120mmと36mmを撃ち、そして退避した。

 

「・・・さて・・・殺れるだけ殺ってやろうじゃないか」

 

そう言い渡辺少佐は市役所の上に上がる。

雨が渡辺少佐の不知火を濡らす・・・

左手の突撃砲は36mmをオートにばら撒き、右手の120mmは比較的動きの鈍い要撃級を、そして92式多目的自律誘導弾システムのミサイルは突撃級だけを狙うように打ち出す。

 

<バララララ、ドン、ドン、ドン>

 

溜まるBETAの死骸が他のBETAの動きを遅くする。

 

右手の120mmと左手36mmを打ち終わる頃に変化が訪れる。

港から巨大な影が海面より、現れる。全高66m、蜂の様な姿をした、要塞級と呼ばれる、現段階で人類が確認している最大級のBETAである。

 

「・・・予測はしていたが、終に来たか!!」

 

素早く渡辺少佐は指令本部及び、他の連隊長に『要塞級確認』のメッセージを打つ

そして、左手の120mmの的を要塞級に絞り、右手は36mmを放ち、撃ち終えた92式多目的自律誘導弾システムをパージ。

 

<ドン、ドン、ドン、ドン、ドン>

 

5発程撃ち込むころには要塞級は沈黙、

しかし、次々と要塞級は海面より現れる。

そして、要塞級の内部にいた生き残りの小型種も出てくる。

 

<ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、カチカチカチ・・・>

 

弾数0を告げる音が渡辺少佐の耳に入る

無言で突撃砲2丁を正面に投げると、背部に積んである長刀を2本抜く

 

敵に捕らわれず、避け続けながら、長刀を振り続けるという芸当はエースと呼ばれる沙霧大尉や武だから出来る事であり、元々突撃前衛でもない渡辺少佐にとってこれは神風にも近い特攻である。

 

要塞級に近づくと、触手が伸び、渡辺少佐が駆る不知火の左腕をもぎ取る。渡辺少佐には長刀で三胴構造各部の結合部を狙うほどの近接戦闘技術はない。

 

「・・・よし、来い、私に集まって来い!」

 

<バキ>

 

右手の長刀が触手により破壊される

 

「・・・頃合か・・・息子よ・・・生きろ!」

 

S-11の光が市役所周辺を包みこむ。

 

<~♪~~♪~~♪>

<ザーザーザーザー>

 

渡辺少佐が最後に聞いたのは爆発音、雨音・・・そして軽快だが哀愁が漂う音楽・・・

文縁が『ターニングポイント』と呼ぶBGMだが

 

渡辺少佐がそれを知る事はもう無い

 

灘中尉が市役所を離れ、この瞬間まで『たったの4分』、

後世ではこの四国八幡浜市殲滅戦において3万を1機で抑え(誇張とも言われているが)、殲滅戦の勝敗を決めたとまで言われる『渡辺の4分』である。

 

○○●●●

同日15:13

八幡浜市北東部

 

灘中尉達と合流したマナ達はひたすら指令本部を目指し移動していた

 

<ドーーーーン>

 

「「「「「「!!!!」」」」」」

 

雨雲により太陽は遮断され暗くなった地上を

後方から迫る独特の光が照らし

それを追うように爆発音がする・・・

 

戦場を何度か渡りあっている者達にとって

 

その光は死の光、

 

絶望にて希望を託す光

 

「S-11・・・」

 

天田少尉が息を吐くように小さく言う

 

「連隊長・・・」

 

「少佐か・・・」

 

「クッ・・・渡辺少佐・・・」

 

灘中尉、マヤ、マナがそれぞれ短くそして静かに黙祷する

 

「と、父ちゃぁぁぁぁん!!!!」

 

まさかと思う行動、

 

誰もが戦場で仲間を亡くした事がある、

 

しかし多くは戦場で親類を亡くした事がない、

 

ましてや初陣で父親を亡くす子供の、

 

新兵の気持ちなど誰にも分からない

 

渡辺少尉は機体を反転させ元来た道を逆走し始める

 

「・・・渡辺少尉!馬鹿か!?」

 

一番最初に反応したのはマヤであった

罵りつつも彼女は一番最初に、BETAの群れに飛び込まんとする渡辺少尉を止めるべく彼の機体を押さえる

 

「貴様!自分が何をしているのか分かっているのか!!!!??」

 

「ァァァァァ、ウワァァァァァァアアァ」

 

撃震は捕縛しようとする高機動型瑞鶴を弾き飛ばす、

 

「なっ!」

 

倒れる事がなくとも、現状の戦術機は倒れないようにバランスを取ろうとする行動にでる、そして雨によりぬかるんだ地面は足の踏ん張りを奪う、

その一瞬の硬直が時として命取りとなる

 

「マヤ!!!」

 

マナは叫ぶ、マヤの機体の目の前に突撃級が向かっていたからである。

射軸からして援護は間に合わない。ただ叫ぶ事によりマヤか渡辺少尉が対処してくれる事を祈る

 

突撃級は最高速度を維持し続ける、バランスを取るために反応しないスラスター及び足部を無視し、左手の120mmを放つという判断をしたマヤは流石と言えるだろう、それが確実に一番最良の選択である。だが、モース硬度15を誇る突撃級の前面は1発2発では破壊できない。

 

「マヤ!!!」

 

「月詠中尉!!」

 

「中尉!!」

 

悲痛の叫びが戦場に広がり・・・

 

<~~♪~~♪~~♪>

 

<ザシュ!ザァーーーーー>

 

不可思議な音楽と共に空中から赤く光る二本槍を突き刺す、西洋騎士のような戦術機が現れる。騎士の様な戦術機は突き刺した勢いを殺さず突撃級を『吹き飛ばした』。それに巻き込まれるように他のBETAも潰される。

 

「なっ!」

 

マヤの思考は追いつかない。

何が起きた?何だこの戦術機は?新型か?帝国軍?国連軍?オレンジと白色のカラー、エースか?いや、それよりどれだけの馬力を持てば突撃級を吹き飛ばせる?何だこの音楽は?戦場で音楽?ふざけているのか!?

 

「モース硬度15も大した事はないな」

 

目の前の騎士は通常回線(オープンチャンネル)でそう言い放つ

この予想外の状況に隣にいる渡辺少尉も唖然としている。

 

「貴様は何だ!?」

 

マヤの網膜に地平線に沈む夕日をバックに飛ぶコウモリのロゴが映り、そこにはVoice Only(音声のみ)と表記される

 

「俺達は国連軍第603技術試験小隊。俺は小隊長の・・・悪いが機密なんで俺の事はエインヘリャル1と呼んでくれ」

 

「貴様らが南に展開していた・・・」

 

「話は後だメガネっ子!」

 

「な!!」

 

フザケタTACネームで呼ばれ激怒するマヤ

 

「こんだけいりゃロックの必要ねぇーな」

 

左手に持ったシールドを掲げる、そこからミサイルが一斉発射しBETAを襲う

しかし、それはBETAを止めるには至らなかった

 

「ち、こう数が多いと・・・」

 

合流したマナ達も応戦し始める

 

<孤独の心に志をともし~♪>

 

「・・・またか・・・何なんだ!」

 

 <♪御言葉に~ 染める~ 我らよ!>

 

「ん、少年か?」

 

<GEKISHIN!GEKISHINーOH! OH! OH!>

 

空中から水滴に混じり、高速の36mmが降る

そこには白銀色に染まった通常より一回り大きい撃震がいた

左腕部からは白い水蒸気の煙が立ち昇る

 

「第603技術試験小隊、魔女の鍋(ウィチズポット)副長エインヘルヤル2、これより貴殿らを援護する!」

 

今度は抜き身の刀二本が蓋の様に砂時計の上に置かれた、T字に二つの翼が覆うロゴが現れる。銀色の砂は物理法則を無視し上に昇っている様にも見える。

 

○○●●●

同日同刻

八幡浜市西フィリピン海

 

ドムとホバートラックは海上を滑走しながら、海面から浮上するBETAの頭を押えていた

 

[おうおう、武達はやってるねーー。グラサンは助ける時は『待たせたなヒヨッコが!』と言わんとアカンやろが~]

 

[(何か懐かしい台詞ね)・・・黒藤少尉、一々BGMを変える意味はあるのか?命令を聞き逃す程の音量ではないが]

 

[形式美というやつですよ、無ければ燃えません]

 

[・・・本当に603という部隊は変人しか集めんのか?]

 

[奥さんそれ、アンタも[何が言いたい黒藤?]・・・いえ、何でもありません]

 

クローズ回線にケニーと武が参加する

 

[まるで世界の終末(アルマゲドン)のようだなこの光景は・・・「エモノがいたぜ!♪」ヒゲ、それは分かってる、と行き成り音楽変えるな!エインヘリャル1より各機へ、見えるBETA全部殲滅しろ!帝国軍は200機くらい残っているらしい、俺達で1万倒せば奴さん達は単純計算で一機当百でなんとかなるだろ]

 

軽快な三味線を加えたBGMに変わる

 

[エインヘルヤル2了解、本当のBETA戦にようこそ]

 

[アインヘリヤル3了解したわ。今回は海上から安全に撃つだけの楽をさせて貰うわ]

 

[アインヘリヤル4了解しました。そっちの記録はタケル君に任せます]

 

[エインフェリア5了~解~。まぁ俺は運転だけだからなーまぁDJは任せろ]

 

[・・・てかマジで皆さん、英霊(エインヘルヤル)の読み同じにしましょうよ!文縁さんの何て読み確実に違いますよね!?]

 

武達603技術試験小隊のコールネームはA-01のヴァルキリーズに似せてエインヘリャル、英霊にした。

 

[何も残らないだけゴミよりマシよね?]

 

[意味が分かりません、物凄くBETAてゴミが残ってます!死んでも残ります!]

 

[あ~お前ら取り合えず仕事するぞ!]

 

[[[[了解!]]]]

 

○○●●●

同日15:20

八幡浜市北東、指令本部

 

生え際の後退した中年男性佐官は指揮車両の中で踏ん反り返りながら画面に映る洒論中佐を睨む。

 

[ど、どういう事かね?中佐、前線は押し返しているようだが?]

 

[ん~鳩木大佐さ~ん、南に展開していた国連軍小隊が参入してくる可能性は分かっていたがここまで強いよはね~魔女の私兵は中々の英傑のようだ~]

 

黒い衛士強化装備に黒いテンガロンハットを被るという珍妙な格好をした、20代後半の男性。彼は132連隊隊長の洒論天不中佐である。

 

[まぁ、小娘(将軍)派の渡辺少佐がいなくなったのは幸いか・・・ここで日本に力を付けて貰っては困るのだよ私のためにもね・・・そのためにG元素なんという餌を用意し、斯衛も呼びつけてこの体たらくか!]

 

[んで~どうすよ~鳩木さ~ん、本腰入れて殲滅に向かうかい?]

 

[いや、このまま防衛戦だ・・・131連隊の児島と133連隊には前に出て貰おう]

 

[んん~?そうなると後々大変な事になるかもしれんよ~?]

 

[確かに問題が起きるたびにやれ私が悪い、無能だと言うがね、もうそんな事は関係ないんだよ。近々私はかの国で大成を果たす!]

 

[そうかい、じゃ俺はアンタの命令に従うだけだよ]

 

洒論は鳩木大佐との回線を閉じ、別の回線を開く

 

[で~どうだ大尉達から見て、魔女の具材は?]

 

洒論は自分の連隊に所属する三人の大隊長に機密(クローズ)回線を繋いでいた

 

[ご機嫌だねぇ~人が死に!そして生きるために戦う!戦争はこうでなくちゃなー!]

 

最初に口を開いたのは頬骨が出、金髪の髪をバックにした男、家古野斬(かこ=やざん)大尉である。

 

[・・・あれが私の息子の名を語る仇か・・・何とも凄まじい動きをする]

 

茶色い短髪の中肉中背で何処となく武を思わせる中年男性が語る

 

[難しくても・・・私達の子の仇取らない訳には行かないわ・・・!]

 

長い黒髪をアップにした妙齢の女性がその男性に続く

 

[ククク、白銀影行(しろがね=かげゆき)大尉に白銀光(しろがね=ひかり)大尉・・・ちゃんと動きを見ててな~あの撃震の兄ちゃんとは何時か戦わないと行けないからね~]

 

[・・・ああ、だが今は引く友軍のために防衛線を張る!私達は前に出るぞ!]

 

[ああ、ちゃんと鳩木旅団長の命令通り防衛線を張ってくれ~前線のやつらには引くように命令は出ているからなぁ~]

 

132連隊はただただ、防衛線を張り嵐の戦場を見つめる

 

○○●●●

同日15:33

八幡浜市前線

 

武達は一進一退の攻防戦を行っていた

最初は押していたが、味方機が遣られ、弾数が少なくなるにつれ、BETAに押され始める

 

<バン、バン、バン、ガッ!>

 

ギャンのショットガンが詰まる

 

「チッ!ジャムりやがった!セミオートだとジャムるか!だからといってポンプ式ではこの数に対応仕切れん!」

 

左のショットガンを投げ、小型の闘士級を潰す。

そして87式突撃砲に持ち変える

 

「今までデカ物(大型種)に会わなかったから120mmは余裕がまだあるが、36mmはそろそろ切れるな・・・そして何より・・・」

 

ケニーはBETAの群れを飛び越え後ろから一発ずつ120mmを突撃級のケツに撃っていく

それを援護するように一機の帝国軍撃震が36mmを回りに撃つ

 

「俺はやる!一匹でも多くの敵をッ!銃身が焼きつくまでまで撃ち続けてやる!!!」

 

そう、天田少尉が言うように、長期の戦闘で武達の突撃砲の銃身は徐々に焼ききれ始めていたのである。現に横浜基地から持ってきた武の突撃砲は既に使い物にならず、武はやられた味方の銃を拾い戦っている

 

「指令本部と132連隊は何をやっている!我々だけで殲滅しろと言うの!?」

 

マナは長刀を二本振り要撃級を切り刻んでいく、マナの突撃砲は既にマヤに渡してある。

 

そこに絶望的なオリヴァーの通信が入る

 

『こちら国連軍603技術試験小隊、アインヘリヤル4、八幡浜港にて光線級及び重光線級を確認。各機は飛行時に注意してください』

 

[おぃ、技術屋そっちは大丈夫か?]

 

[はい、海中からは撃って来ないようです、レーザーを撃ってもさほど威力は無いかと]

 

[それよりもだ傭兵!我々の弾が切れそうだ、重光線級、光線級、要塞級と攻撃重要度を設定し殲滅にかかるが、全ては倒せんぞ!]

 

[ああ、分かっている・・・]

 

他の衛士達の通信が戦場に響く

 

『オイ!ドウイウ事ダ!コレ以上持タナイゾ!ウアアアアア』

 

90式戦車がBETAの波に飲まれる

 

『増援ヲ!我ニ戦力ナシ!』

 

武器を全て使い切った陽炎は避け切れずに要撃級の豪腕で吹き飛ばされる

 

『弾ヲ寄越セ!早ク!』

 

そう言い振り返る撃震は自分が孤立している事に気づき、

突撃級に潰されるのを避けるため飛び上がり、

空中でレーザーに撃たれ撃墜される

 

渡辺少佐のように“上手く”S-11を作動させるのは極少数でしかなかった。

最後の最後で『死にたくない』という極々普通の、

人間的な生への渇望がS-11を有効活用する邪魔になっていた。

 

「このままじゃジリ貧だ!」

 

既に千体以上と渡り合っている撃震T型のヒート・ソードは少しずつ刃こぼれや曲がりはじめていた。

 

「邪魔だ!消えろ!!」

 

武は要塞級達の三胴構造各部の結合部を斬る

体液と雨でヒート・ソードからは白と紫の煙が立ち昇る。

 

「凄いなあの撃震は・・・一人でどれ位倒す気なの?」

 

灘中尉は後方で見ながらそう思う

 

「あれが・・・正に・・・嵐の前衛(ストームバンガード)」

 

灘中尉を援護する新井少尉はそう言う

 

「(あの近接武器は正面から突撃級を切り伏せるとは・・・異様だな・・・何より・・・騎士の様な戦術機は別として、撃震をベースとしたあの白銀の機体・・・動きが全く違う・・・不知火以上だ・・・!!!)」

 

マヤは横目で撃震T型の戦闘を見ながらその性質を分析する

 

「おい!ヒゲ全然減ってる気がしないぞ!?」

 

「減ってますよ!索敵結果からしてアンタらだけで予定の1万はゆうに食ってますよ!」

 

「チッ、となると後方が動かないの何故だ」

 

「傭兵考えても仕方あるまい、そこの小隊長達全員援護を要請している、天田少尉も先程『守ったら負ける攻めろ!』と叫んでいただろ?・・・それでも動かないとなると・・・(ただ無能ってわけじゃなさそうね・・・)」

 

「いや、これ・・・もっと悪化した!132連隊の動き・・・これ退いてんぞ!?」

 

「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」

 

武以外にも通信を聞いていたマナ達帝国軍衛士達も驚く

 

「どうする?俺はもう近接武器しかねぇぞ!」

 

ギャンはツイン・ヒート・スピアをBETAに突き立てる

 

「それに関節部分のコンディションが警告(イエロー)から危険(レッド)になんぞ!」

 

数日間に渡り簡易整備のみの戦闘が武達の機体を蝕んでいた

それはケニーのギャンだけじゃなく他の機体にも言える事である。

ただ一番多く戦っているケニーと武の機体が先に悲鳴を上げたに過ぎない

 

「広範囲殲滅兵器でも使わなければ殲滅は無理だぞ・・・撤退するにしてもどのくらいの被害が出るか分かったもんじゃねぇ」

 

「それは私とて分かっている・・・」

 

<・・・>

 

絶望的な無言

 

「・・・あるぜ・・・方法が・・・」

 

文縁は口を開く

 

「な、本当か?」

 

ケニーが返す

 

「・・・BETA群中心部にエインフェリア2の撃震王を突っ込み右手の特殊兵装を使えば・・・この範囲の敵は最低でも消せる・・・」

 

武達の網膜に映ったそれは半径1~2kmの範囲であった

 

「この前乗ったとき調べたが、ちゃんと積んであるし、使える・・・」

 

その言葉にオリヴァーは数十分前の会話を思い出す、文縁が無理を言って撃震T型に乗った理由だ。

 

「そんな事出来るのか?」

 

爆弾であろうと思われる兵器をBETAの中心で爆破させる・・・無理とも思える作戦にマナが問いかける

 

「出来る出来ないじゃない、やるんだよ!団子!」

 

「!!!(私は団子か!)」

 

「そうと決まれば、少年俺が援護する!行くぞ!」

 

「なら俺達が梅雨払いをする!仲間を・・・皆をやってくれたな倍返しだぁぁぁぁーーー!」

 

叫びと共に天田少尉は両手の突撃砲を放つ!

 

「行くわよ!BETA!!!」

 

「私はまだ死ねません!!」

 

「・・・父ちゃん・・・仇は討つ!!!」

 

「撃つ!」

 

「行けぇぇぇ!白銀(ハクギン)の!」

 

天田少尉に続き、灘中尉、新井少尉、渡辺少尉、マヤ中尉、マナ中尉が叫ぶ

 

武の撃震は突っ込む様にスラスターを開ける、その後ろにケニーが続く。

BETAの群れに当たるギリギリで上昇し、空を飛ぶ

光線級のレーザーは急降下と急上昇で避け続ける

急降下時には大型種を蹴って移動する

 

「凄い・・・あんな戦い方が出来るのか・・・」

 

二人の動きに見とれるマナ、それは彼女らがやってきた方法とは別次元の戦い方である

飛び上がり、高速で移動、レーザーは腕で避けるという荒業、蹴る殴る吹き飛ばすという戦法、普通の戦術機では不可能な事である。

 

武達の行く手を要塞級が阻む。

ケニーは右手のスピアを投げ一体を串刺しにし、ヒート・ソードを抜き、迫り来る要塞級達の触手を切り払い武の道を作る。

 

「少年行け!ここは俺が食い止める!」

 

「了解!!」

 

武は更にスロットルを開け、レーザーをバレルロールで避けると全速力で突っ込む。

レーザーが飛んできた方向に二匹の重光線級とそれに挟まれる形で一際大きい要塞級を確認する。

 

[武!そこら辺が中心だ!]

 

武の足元には地面を覆う程のBETAが蠢いている

99式超震動短刀とヒート・ソードを一本ずつ重光線級の目玉に投げる。

刃は吸い込まれるように目玉にはいり、<グチャ>という音共に弾ける

残り一本のヒート・ソードで触手を切り落とし、要塞級に零距離まで近づく

 

[撃震王!アァァァクション!]

 

「ノーススター!セットアップ!」

 

撃震T型の右手の指が直立しさらに突起物が2本横から出る

 

[打ち込め!!!武!!!]

 

「ウオオオオオオォォォォォォ!」

 

<ガン!!!>

 

七つの傷をつけ、右腕事要塞級に減り込む

 

<・・・>

 

「・・・何も起きないですよ・・・」

 

[武、馬鹿、離れろ!!!]

 

文縁の慌てる声に急かされる武

 

「いや、でも、右腕減り込んで動けんっておい「切り離せ!」・・・は?「早く!」ああ!」

 

左手のヒート・ソードを使い右腕を切り落とす

 

『戦域にいる全機体に告ぐ!これより送られる範囲から離れろ!巻き込まれんぞ!!!』

 

武は急いで、反転しスラスターを吹かす

 

「少年!やったか?」

 

ケニーのギャンと合流する

 

「ええ、でも、この後どうするのか・・・ん?」

 

武の網膜に数日前と同じ様にテロップが流れる、その文字を読み始める

 

「何だ・・・ななひゃくはちある・・・兵器の内・・・ノーススターを使った?・・・オマエハモウシンデ「アホ、タケル、ハエエ」イル?「あ」」

 

<ピピピピピピピ>

 

言い終えると何かに反応するように警戒音が鳴る

 

「・・・・・・・・・てれってー・・・」

 

気の抜けた文縁の声を皮切りに

 

<ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン>

 

大爆発が起きる・・・

 

その熱量・・・渡辺少佐の時の約3倍・・・

 

そう戦術核に匹敵するとも言われ、ハイヴの反応炉を2~3発で破壊する高性能爆弾・・・S-11の指向性を無くした3発分の爆発である。

 

その光は

 

列島奪還・四国解放作戦、八幡浜市殲滅戦の終わりを告げる光であった。

 

○○●●●

同日同刻

八幡浜市より北北東、鞍掛山、山頂

 

帝国軍不知火の望遠レンズで状況を見ていた男が一人

 

「・・・白銀武は日本を焦土とする気か・・・!!!殿下!!あやつはやはり危険です!」

 

<ザーザーザーザーザー>

 

雨は熱くなった大地を冷やすように、

 

死者の無念を流すように、

 

降り続けた。




YMS-15K試作改良型ギャン、TSF-TYPE77/F-4JT 77式戦術歩行戦闘機――撃震T型、
及び兵装技術評価報告書
我が第603技術試験小隊はさる11月15日、四国八幡浜市にてMS-09F/TROPドム・トローペン(先行量産型)、99式ホバートラックを含むYMS-15K試作改良型ギャン、TSF-TYPE77/F-4JT 77式戦術歩行戦闘機――撃震T型の実戦試験運用を実施せり。BETAの海よりの奇襲により打撃を受けた帝国軍を援護すべく我々は戦闘に参加せし。この戦闘において試作改良型ギャンはツィン・ヒート・スピアを使用せし、その威力BETA大型種に対し抜群なり。撃震T型はヒート・ソード及び99式超震動短刀(ソニックブレイド)を使用、両兵装はモース硬度15を誇る突撃級、要撃級に効果を見せし。比較せし場合99式超震動短刀の方が短いという理由で同等の評価を得ているものの、ヒート・ソードと同じ長さであれば同等以上の戦果が望めていた思われる。生物系のBETAには超振動の方が威力が高いと確認される。今戦闘においてショットガンの致命的問題を発見せし。それは連続使用による故障。半自動(セミオート)の場合速射性は上昇するも故障の確率も上がる、されどポンプ式では物量で押すBETAに対し戦果は見込まれぬ。検討すべし。撃震T型の特殊装備、左腕部、アームガドリングの性能は良好、高速度により、大型種にも多少の効果を見せし。右腕部ノーススターは今作戦において、敵を殲滅せし高威力を見せるもその扱いにくさと使用上の危険度は高い。運用には注意が必要とされる。尚、今作戦の立役者は国連軍133連隊隊長渡辺少佐と思われる。彼が作くりし4分が我々を援護に間に合わせたものと信じる。S-11は他の機体に積まれているものの彼のように有効的に使用したものは他には確認されていない。S-11の運用方の再検討を願う。今作戦、国連軍132連隊と指令本部との連絡がしっかりしていた場合、我々はノーススターに賭けるという事をせずにすんだと信じる。我々は引き続き列島奪還作戦に参加し、これら兵器の実用性検証と評価を続ける。
               ―西暦1999年、11月15日オリヴァー=マイ技術少尉
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