Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿) 作:osias
11月16日13:00
武達が奇襲を退いた、数時間後
某国、某五角形建造物
将官と思わしき初老の白人男性が書類を処理している所に
ゴーグルを付けた白人佐官がドアを激しく開け入ってくる。
「Sir, we have a problem」[閣下、問題が発生しました]
[以下和訳]
「何かね、この忙しい時に?」
将官は冷静に答える
「373(スリーセブンスリー)の一部が連絡を途絶えました」
373部隊・・・・
それは計画的暗殺を行う某国の特殊部隊である。
一度空気を呑むと佐官はそう答える
それに反応するようにペンを置き険しい顔をする将官
「・・・何処に向かった部隊かね?」
「日本です」
「・・・彼らには旧式ではあるがナイトホーク(F―117)が与えられていたはずだが?」
「信じられませんが、ほぼ殲滅、黄色猿(エイローモンキー)共が調子に乗り始めたようです」
無くした視力を補助するためと思われるゴーグルは機械音を立てる目の前の上司にピントを合わせる
「・・・君は先日諜報部から届いた資料を見たかね?」
「はい、ハッキリ言って眉唾でした・・・今日の映像記録を見るまでは」
とゴーグルの佐官は一枚のディスクを将官に渡す
「ほう、準備が良いな」
「無様に負けてもこれだけは送信出来たみたいです」
将官はディスクを受け取ると、PCに入れる
無音の戦闘映像が映し出される。所々衝撃で砂嵐になったり、映像が飛ぶ。
そこには白煙を切り裂き縦横無尽にナイトホークを蹂躙する白銀の戦術機が映し出されていた。そして、それを止めに一機の不知火が入る・・・
だが、今度は重圧感のある戦術機がホバーをしながら一機ずつナイトホークを吹き飛ばし、何とか接近した機体も右手に持つサーベルで切り裂かれる。
「このプラチナカラーの奴は、ファントム・・・いや、日本製の撃震の改良型か・・・信じられん、これが戦術機の動きだと言うのか?それにもう一機の奴はホバーを使っているのか?そしてこのバズーカ、ほぼ無反動でこの威力・・・圧倒的ではないか」
「それだけではありません、視界が限定されている中、相手だけ何故か正確に我がほうを殲滅しています・・・特殊な技術が使われていると思われます」
「これは本格的に潰すか?・・・いや、日本の技術力は惜しいな・・・何とかせねばいかんかも知れんな・・・我が国が目指す未来のためにも日本・・・極東の魔女は危険だ」
「同感です、これ以上極東の猿どもに良い顔はさせられませんな・・・『AOD(アームズオブデスペア)』を出すのはいかがでしょうか?」
「『絶望の矛』か・・・面白い、許可する」
○○○●●
同日同刻
川崎工場
シュミレーター
追加スラスターとタンクを着けた国連軍カラーの吹雪J(イェーガー)が同じ追加装備をしたグレー(無色)の瑞鶴Jの相手をしていた
『クッ!この機体やる!!だがそれでは私は倒せん!』
濃い紫色をした長い髪を武士のように上に纏めた少女が叫ぶ
それに答えるように姿勢制御を含めた変則的空中移動で吹雪はグレーの瑞鶴追い詰める。
移動に惑わされ、瑞鶴が放つ弾は空を切り、
『そこ!』
吹雪は両手でヒートソードを振り下ろす
が
『な?!』
それは瑞鶴の背に隠されていた薙刀で防がれる
瑞鶴は右手に持った薙刀を回転させ、円運動でヒートソードを弾くとそのまま、威力を殺さずに切り付ける
『・・・!!・・・ちっ!』
一瞬の動揺を見せたあと、吹雪は頭部バルカンを発動させる
36mmバルカン砲は瑞鶴の頭部を吹き飛ばすも、振り上げられた薙刀により一刀両断にされる
〔敗北〕
その二文字が出ると、少女は深い息を吐き、シュミレーターを出る
「冥ちゃんらしくもないのう、一瞬油断があったようじゃが?」
そこには巨大な2m級の老人、御剣神鳥が髭を撫でながら立っていた
「御爺様・・・」
「カッ!!!」
一瞬の怒気に身構える少女
「ほっほっ、御剣冥夜(みつるぎ=めいや)ともあろうものが情けない、一回負けた程度で」
「・・・」
「・・・それとも何か気になる事でもあるのかのう?」
「・・・相手の使う薙刀に何か懐かしい感じがあったので・・・」
そういうと神鳥は優しい目で冥夜を見つめる
「そうか、そうか。まぁ、善戦したから良いじゃろう、ここ数年で一番伸びておるな、やはり“てぃーえすえぃち”(TSH)機動を会得したおかげかのう?文倶琉(ぶんぐる)の孫の目は間違っておらんかったて事かのう」
神鳥がいうTSH機動というのは、武の動きをベースにした機動であり。その会得には理論的説明ビデオを見た後、彼の動きを真似たシュミレーターに乗り身体で覚えるというかなり乱暴なものである。後に衛士達に『もんじゃストームメーカー』、『衛士の洗礼いらず』、『吐き気かな?いや違う、違うな。吐き気はもっとウボぁぁー(修正)』と言わしめるほど辛いものである。TSH「TakeruShiroganeHentai」機動の略である事は本人すら知らない、当然のように夕呼の命名である。名前の略“だけ”を知った海外のオタクが白銀武作のエロゲーだと思って検索し、キーボードを破壊したのはまた別の話。人類滅亡の危機であってもオタクは不滅らしい。
さて真面目な話、武の機動は対BETA戦を考えた三次元空間戦闘法であり。光線種が視認してから発射するまでの間の回避を考えたものである。これに一年戦争で培った、姿勢制御によるランダム回避を行う。宇宙空間という上下の無い、自由な空間での戦闘を体験し、BETAを知る武故に編み出された特殊な機動戦術である。武が見せる機動はまるで『翼が生えた鳥の様に天空を自在に飛翔し、河を泳ぐ魚のように自由であった』ととある老人に言わせた。ちなみにそれを聞いた文縁が右手を胸の前で左手で包む、抱拳礼をしながら「こころじゃよ・・・」と呟いたとか呟かなかったとか。
「よしてください、御爺様、私は『白銀の』にはまだまだ遠く及びません」
「目標を大きく持つ事は良いが、流石に数日で“彼”並に強くなるはずもなかろう(しかし、既に古参衛士以上の実力か・・・本当に奴の助言通りに衛士訓練をしたが・・・ここまでの成果がでるとはのう)・・・時に冥ちゃん、吹雪いぇーがーの乗り心地はどうかのう?」
「素晴らしいです、現存の戦術機に多少手を加えるだけでこれほどの安定性を得られるとは。それに頭部バルカン砲など手が使えない時の牽制に打って付けです。小型種の相手も楽になるでしょう」
「ふむふむ、順調じゃのう、量産型中遠距離支援機と超弩級戦車も先行型が603に配備され。日本の未来は明るいのう・・・後は米軍からのちゃちゃをどう受け止めるか・・・えっくすえふじぇい(XFJ)計画の奴らもこっちに無理矢理送り込むみたいだしのう」
「XFJ計画ですか、米国の技術を吸収し改良型の不知火を作るという・・・」
「そうじゃ、しかし技術的問題も解決し、計画を凍結させようとしたんじゃが、一方的過ぎたようじゃのう、相手側は納得出来ずに色々交渉しておるようじゃが、そこの所は大泉大佐、巌谷中佐、そして大空寺の管轄じゃ。どうなるかは分からん。取り合えず今日はこのぐらいにして、帰るとしよう。心神のぷろぐらむ作りは飛行機乗りがいないことには始まらんしのう」
「飛行機乗りですか?」
「ほっほっほっ、まぁ、昼食を食べに行くとしよう」
「御爺様!」
色々と疑問の残る物言いをした神鳥を冥夜は追う
○○○●●
13:30
九州中央部、ひたすら破棄された国道442号線を使い北西を目指す二機と一両。
「オリヴァーさん!全く帝国軍見えないんですけど!?」
ホバートラックを追うように撃震T型が後ろを走る
「かなりの速度で進軍しているよです」
そのホバートラックはドムのあとを追う
「強行軍ね、他の帝国軍も合流できていないだろう、この速度では」
ドムは器用に道路上の瓦礫を避け、時には吹き飛ばしながら滑っていく
「何を急いでいるのか知らんが、参戦する前に戦いが終わらない事を祈るだけね」
「しかし、戦略を使わない敵で助かります・・・こうやって堂々と道路を使えますからね」
アクセルを全開にしているホバートラックはガタガタと揺れる
「ですね・・・急ぎましょう!」
○○○●●
14:44、横浜基地、香月博士研究室
夕呼は親指の爪を噛み、スパイによる被害報告を再度確認していた
「(どこのスパイか知らないけど、思った以上に荒らしてくれたわね)」
<コンコン>
「入りなさい、開いてるわよ」
ピアティフ中尉が入ってくる
「副指令、603技術試験隊、試験品目を授与し、佐世保に向かったと連絡が入りました」
「そう・・・佐世保基地ね・・・」
パソコンを操作し、佐世保基地の資料を出す
佐世保基地
九州北西、長崎県佐世保市にある、表向きは国連軍と日本帝国軍共同軍事基地。
しかしその裏では様々な研究が行われる。前将軍の時代に解散された731部隊が1960年、極秘裏にこの基地にて再編成、研究所は国連軍管轄の区域に建設された。彼らはいち早くBETA対策を始める。当初からBETA打倒を目指した研究をし、それは対話や相手を知るといった保守的オルタネィティブ計画とは違い攻撃的思想を軸としていた。
去年[1998年]の光州作戦の失敗と共に北九州にBETAが襲撃し、その際、地下にある研究施設は突如沈黙。現在佐世保基地内はBETA小型種が徘徊し、研究データは佐世保基地に封印される形となった。
「・・・ピアティフ、『猟犬』を佐世保基地に回して。今から出せば、白銀達が占領するころに届くでしょ。その後白銀達には『猟犬』を使って佐世保基地国連軍管轄区の調査を行うように言って。優先させるのは研究資料よ(交渉材料は多いに越したことはないわ、身内[国連軍]にしろ帝国軍にしろ・・・それに違う可能性も見ておきたい)」
「『猟犬』の方はまだ調整が完全ではないとの事ですが」
「急がせなさい、川崎の連中が私の『頼み』を無視できなるはずがないわ、無理なら現地調整できるまでにしとけば十分よ」
「しかし・・・彼らが危険なのでは?」
歩兵は強化機動歩兵装甲をつけたとしても、その生存率は極めて低い、それはこの世界での常識である。
「そのためにウィリアムズ達を送ったのよ?ロンズも白銀も戦術機なしの戦闘が出来る事は総合技術演習で証明しているわ。それにアイツもいるしね・・・まぁ、ここで死んだらそこまでの奴らって事でしょ?解ったら、とっとと手配しちゃって」
「・・・それと白銀少尉、両マイ中尉達が所属不明の戦術機に襲われたと報告が入りました」
「・・・分かったわ、『猟犬』の手配が出来たら、その件に探りを入れなさい」
「了解しました」
「(・・・同じ組織か・・・別物か・・・全くなめた事してくれるわ)」
ピアティフ中尉が振り返り、研究室のドアを開くとそこには何時もの黒いドレスにウサ耳バンドをつけた霞が立っていた
「佐世保に・・・行きます」
「社、何言って「行きます」・・・」
霞は真直ぐと夕呼を見つめる。そしてその沈黙に何かを感じた夕呼は目を閉じ、ゆっくりと開く。
「そう・・・好きにしなさい、ピアティフ、悪いけど貴方も社についって行って、社だけを佐世保に送るわけには行かないしね。所属不明機に関しては別の人間にやらせるわ」
「・・・了解しました」
○○●●●
15:00
佐賀県、白銀隊
「戦闘区域に入る・・・その前に姉さん!作戦はどうする?」
「今、オリヴァーから情報を受け取っている所だ・・・きたな・・・」
「BETAは佐世保基地周辺に展開、規模は現在既に1万前後。南南東から進軍してきた第8、11旅団に反応し、水滴状に前線が伸びています。帝国軍は第8旅団が突出し、その後を11旅団が追う形となっているようです。第12旅団はまだ戦域に入っていない・・・全く足並みがバラバラじゃないか・・・!!」
長崎自動車道及び西九州自動車道が点滅する
「ふむ・・・こうすると我々は一度北上して北北東から攻める形が良いでわね、タケル・・・何故だかわかるか?」
モニクは佐世保市北東より延びる国道202及び498号線をマークする
「・・・今いる帝国軍と同じ方角から攻めたら、国連軍の自分らは混乱を起こす可能性がある、何より前線に出るのに手間がかかる。ならばまだ第12旅団が展開していない北東から攻め、データ収集するのが得策・・・」
「そういう事だ、そして我々の速度と戦力がなければできん」
「よし」
パシンと両手で頬を打ち気合を入れる武
「エインヘルヤル2(武)より各機へ、これより戦域に入る、後々帝国軍との連携を考慮し回線はオープン。必要に応じ秘密回線は開け。我々は第一目的である実戦データの収集を行いながら、第二目的である帝国軍の戦力低下を抑える。エインヘルヤル3(モニク)はバズーカで大型種を一掃しながら切り込む、エインヘルヤル4(オリヴァー)は周囲の索敵を重視、戦況把握を優先し、情報は帝国軍にも提供、そして出来るならば36mmで小型種を殲滅・・・自分は援護に回りながら、敵殲滅優先度順に倒していく!」
「アインヘリヤル3(モニク)了解」
「アインヘリヤル4(オリヴァー)了解しました」
「・・・コールネーム・・・あぁ兎も角・・ん、ん!行くぞ!」
「「了解!」」
○○○●●
15:10
佐世保市、市外南東部
第8旅団
「BETAよ、怯えろ!竦め!」
薄青い線の入った一機の不知火が長刀を大型光線種の目玉に突き立てる。
その長刀は赤く燃え、切り口から蒸気がたつ
「貰った!」
振り向き様に盾に着いたガドリングを放ち小型種を殲滅する
『則守どうだ、新兵装の具合は?』
沙梁准将が通信を入れる
「沙梁閣下、最初はあの春戸とかいう輩が持ってきた物であり、疑いましたが中々素晴らしい威力ですぞ」
『そうか、ならば引き続きお前は護衛をしつつ東の部隊を指揮、私はこのまま大蛇を使い中央を一掃する』
「了解しました。時に閣下」
『何だ則守?』
「そちらでも確認していると思いますが北北東より、国連軍の小隊が敵と交戦していますがいかが致しましょうか?」
『たかが三機、邪魔にならないならば、捨て置いて問題ないだろう』
「はっ!」
通信が切れ、則守は目をレーダーに向ける
「(閣下は“邪魔にならないならば”と言ったが、邪魔になるどころか我々以上BETAを殲滅している・・・国連軍のエースか・・・フッ、頼もしい、これで私は護衛に専念出来る・・・)」
別の通信が入る
『則守・・・お兄様は何と』
「沙梁少尉、閣下はこのまま東の前線を押し込むようにと」
至極他人行儀の反応に沙梁少尉と呼ばれたショートヘアーの女性は寂しそうな顔をする
『そうですか・・・分かりました。それにしても国連軍の方々は凄いですね。送られてくる情報の正確さもそうですが、遠目でも分かる戦闘能力の異常性が目立ちます。動きに関してはこの高起動試験型吹雪を超えているでしょう。そして、あの撃震の武器、貴方のに良く似ています』
「それは私も思いました。春戸とアノ国連軍部隊は何か関連性があるのかも知れませんな・・・兎も角我々は我々の仕事をこなしましょう。ア・・・沙梁少尉は私の後ろを着いて来てください」
『分かりましたわ』
『ビー3(則守)より各機!これより我々はこの戦線を押し込む。国連軍機に関しては無視して構わない、援護の必要は無し、我々は我々の任務に専念する!各機落ち着いて対処しろ!』
『『『『『『了解!』』』』』』
○○○●●
15:30
佐世保市、市外南南東部
第8旅団本隊
超大型移動砲台『大蛇』により迫り来るBETAは軒並み吹き飛び、後には線状の空間が残る
「ふん、こんな所か・・・これ以上は佐世保市に被害が出るな。呆気無いものだ・・・大蛇は下げて・・・ん、何だ!」
<ドドドドド>
○○●●●
同刻
佐世保市、市外北北東部、白銀隊
「敵戦力ほぼ殲滅完了」
要塞級を武の撃震が切り裂く
「それにしても、あの巨大な自走砲のおかげで結構簡単に制圧できましたね」
「そうですね(・・・フォームがヨルムンガンドに似ているが・・・そんな偶然あるのだろうか・・・それに帝国軍の一機が使っている武器もF-4JTが使っているガドリングとヒートソードに似ている・・・副指令からは聞かされていないが既に量産されているのか?)」
相槌を打ちながらオリヴァーはモニター横に写る『大蛇』と則守が駆る不知火を見つめる
「データも十分取れたわね、ただ傭兵達が間に合わなかったのは痛いわね」
<ドドドドドドドド>
突然の震動が武達を襲う
「な、何だ!」
「オリヴァー!」
「確認しています・・・これは・・・地下から、巨大な何かが着ます」
「オリヴァーさん、位置は!?」
震動と熱反応からの計算を高速に行う
「・・・南西・・・第8旅団本隊の真下です!!」
オリヴァーの叫びと同時に武達は視線を本隊に向ける、そしてその中心を食い破るように巨大な生物が現れる。一番似ている生き物としては多毛類のイソメであろう。無数の牙を開き、地上に顔だす。その震動だけで数機の戦術機が吹き飛ばされ。始めて見るBETAに陣が崩壊し、混乱の波が全体を覆う。
2体の大型BETAは帝国軍本隊を食い破り、1体は後方の退路を立つように現れた
『お兄様!!!』
『いけません!』
隊長機の不知火が形の変わった吹雪を止めようとするが
吹雪は不知火を振りほどきスラスターを吹かす
「・・・あれは・・・母艦(キャリアー)級3体も!!・・・あの吹雪危ない!」
吹雪が空中に飛び上がると同時にコクピット内に警告音が鳴る
「レーザー警告!?」
母艦級・・・
それはその名が示す通り、BETAの母艦、本来この時点では未確認のBETA・・・
その内部には当然光線級も搭載されていた
『愛奈様ぁぁぁぁぁぁ!』
その叫びと共に吹雪の前に盾を持った不知火が立ちはだかる。
束となったレーザーは盾を砕き後方の吹雪をも貫く
『則守!!!!』
二機は抵抗なく落下する
「・・・!!ここからじゃ間に合わない!」
武は超低空で飛びながら弾を母艦級の方に120mmと36mmを放ち
モニクは援護するようにバズーカを放つ
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
一機の撃震が突如飛び上がり二機を掴んだ
「とった!?でもあの高さはまだ危険だ!」
『良くやった天田少尉!ヒゲ!』
『もうやっている!』
警告音が天田少尉を包む
レーザー光が天田少尉達に伸び・・・
拡散する
その周りにはキラキラと黄金色に輝く粒子が舞う
「・・・あれは・・・ビームかく乱幕!?・・・」
『『やはり!効果は絶大だッ!!』』
オリヴァーと文縁の声が重なる
天田少尉達の機体は地上に立つと同時に二発の砲弾が母艦級目指し飛ぶ
飛来する砲弾に向け光線級はレーザーを放つが空中に舞うビームかく乱幕に阻まれる
一発は母艦級を貫き、その巨体を後方に押し、崩す
BETAの集団が母艦級に潰され、母艦級の口は堅く閉じ他のBETAの出撃を困難にした
「母艦級を貫き、吹き飛ばす・・・何て弾使ってるだぁぁぁ!?」
武はその光景に驚く、軽く言葉を噛む
そして、もう一発は前方の要塞級を吹き飛ばし、弾は上に上がり、母艦級を掠るように外れる。それに驚いたようにその母艦級は地下へと潜った
『エインヘリャル1(ケニー)及び5(文縁)、国連軍教導隊(A-01)第7大隊第1小隊、帝国軍第13旅団133連隊第3大隊援護に入る!』
『こちらエインフェリア5(文縁)、初弾命中、敵未確認大型種撃破!次弾、上に逸れやがった、撃破ならず!温まった砲身に制御が追いついていない!それに周りの大型種が邪魔だ!』
武達は弾が飛んできた方向
東を見る
そこには、超大型の戦車が夕日を背負い疾走していた
「来たか・・・ヒルドルブ」
モニクはその戦車を見て呟く
『いまのデータを解析すれば、射撃プログラムを修正する事ができます』
文縁の報告にオリヴァーが返す
『で、今日射撃する分はどうすんだよ?』
『少尉の経験で修正してください・・・とは言いません、その手のデータは既にあります、直ぐにでも修正プログラムを書きそちらに転送します・・・主砲のデータを!』
『紀伊級45口径50.8センチ(20インチ)砲だ!頼む、俺に勘で修正できる程の腕はないし、こっちはBETA共で手一杯だかんな!』
オリヴァーはホバートラックに移しておいた過去の記録から大型戦車の射撃プログラムを出し素早く修正を加える。ここに来て過去の戦友の置き土産が役にたった。
「中々の大群さんだ。上等じゃねぇか。これなら普段の俺の評価が不当だってのが証明できるってもんだ!」
文縁はBETAの大群を前に意気込む
『よし、お前ら聞いたな?アーク1(ウィリアムズ中尉)、2(阿野本少尉)、3(ロス少尉)は中遠距離支援機“独眼”の特徴を活かし帝国軍を援護、主に光線級を優先。3大隊の第7小隊は教導隊(A-01)の連中を護衛、敵は近づけるな!第9小隊は帝国軍を救助。第8小隊は俺達についてこい!第603技術試験小隊は大物を一掃する!技術屋がプログラムを完成させるまでエインヘリャル5(文縁)を援護。ヒゲはデカブツ(母艦級)を抑えろ、お前の機体でしかアレはやれんだろう。技術屋は作業終了次第、戦況を全軍に伝達、出来るだけ混乱を抑えろ!』
ケニーの命令が戦場に響き渡る
『『『『『『『『『『『『『『『『了解!!!』』』』』』』』』』』』』』』』
叫びと共文縁は機体の性能を確認するかの様にヒルドルブの巨体を360度回転させ、ピタリと砲身を母艦級に向ける
「このTactical Mobile Tank(戦術起動戦車TMT-05)戦狼・・・ヒルドルブがただのデカイ戦車じゃない事・・・見せてやる・・・『こちら国連軍第603技術試験小隊エインフェリア5、今より榴散弾を放つ、各機は指定位置より離れろ!』・・・来たなBETA・・・殲滅戦と言うのを教えてやる」
文縁はオープンチャンネルで周囲の帝国軍衛士に注意をし
ヒルドルブの砲身を空中に向け無造作に榴散弾を放つ
空中で拡散した弾はBETAに鉛の雨を降らし、ビチビチと音を立てて殺していく
ヒルドルブの後ろを戦術機の上半身と下半身に車輪を着けた様な機体、『独眼(ドクガン)』が走る。この時代では見慣れないモノアイが赤く光り、機体の天辺に180mmキャノン砲と36mmの副砲、右腕に4連装120mm砲、左腕にクローアームが装備されている
『アーク1(ウィリアムズ)より僚機に告ぐ、オールウェポンフリー、180mmと120mmの嵐をBETA共に味あわせてやれ!』
『アーク2(阿野本)了解!』
『アーク3(ロス)了解しました』
『エインフェリア5(文縁)援護する』
スモークディスチャージャーの代わりに設置されたビームかく乱幕を前方に発射する。
それにより再び空中には輝く粒子が舞う
『(かく乱幕は)長くは持たねぇ!こっちは焼夷榴弾で足を止める!』
独眼の主砲と右腕武装が火を放ち、
それに答えるようにヒルドルブも焼夷榴弾を数発放ち小型種を焼殺する
○○●●●
第8旅団
突如のBETA襲撃により、帝国軍内の命令系統は混乱し、パニックが発生していた
『閣下、部隊の陣!崩れました!』
大隊長の一人が沙梁准将に報告を入れる
『ええい!何をしている、ならば立て直せ!』
『混乱していて、陣、形成できません!』
『私の大蛇はどうした!』
『BETA襲撃時に横転!一回転して正位置にありますが、操縦士の反応はありません!』
『誰か向かわせたまえ!あの大型種をやるのに大蛇は必要だ』
『現在の状況では・・・』
『ならば私が出る!』
沙梁准将はインカムを耳にかけ、立ち上がる
『後は任せる!春戸!』
沙梁准将は振り返るが立っているべき場所に春戸はいなかった
『(こんな時に何処に行った?・・・逃げたか!)我が不知火を出せ!』
『はっ!』
・・・
沙梁准将が不知火に乗り込むと
インカムを通し兵の動揺を察した
『どうした!?』
『未確認BETAの一匹が撃ち抜かれました?』
『打ち抜かれた・・・どういう事だ詳しく報告をしたまえ!』
『1時方向に発砲炎!団長、機影を確認!巨大な自走砲のようです!』
『見えた!でかいぞ!』
別の兵士が叫ぶ
『ザザ・・・こちら国連軍第603技術試験小隊エインフェリア5、今より榴散弾を放つ、各機は指定位置より離れろ!』
『こいつは、やばいぞ! 下がれ!!』
突如入ってきた通信から数十秒経って、砲弾の嵐が降り、BETAが炎に包まれる
『・・・まるで陸上の艦砲射撃・・・私へのあてつけか!』
沙梁は拳を強く握る。
彼が作った『大蛇』は戦況を引っ繰り返すための戦略兵器
そのコンセプトは動ける超巨大砲・・・
夢を実現するも、問題が残った
あまりに巨大ゆえに、鈍重
だが目の前にその問題を解消した兵器があらわれる
ハイヴに打撃を与えるほどの攻撃力は目の前の兵器には無いだろう
だが、そのスピード、旋回能力の高さ、そして数種類の弾による戦略の幅
技術者として沙梁の脳裏にある二文字が浮かぶ
〔敗北〕
<ドン!>
沙梁は力強くコクピットのパネルを叩く
『そんな事があってたまるか!私の大蛇の方が優れていると証明してみせよう!』
不知火はスラスターを吹かし沈黙した『大蛇』に向かう
○○●●●
15:42
『エインフェリア4(オリヴァー)まだか!?』
文縁は焦りを見せる
『もう少しです!』
『堅忍不抜でいろってか?』
『ヒゲ!前に出すぎだぞ』
ケニーが叫ぶ
『ハッ、このヒルドルブの実力見せてやるぜ!』
前線に近づくヒルドルブは突如変形し、人型の上半身をあらわにする。
その変形に周りにいる帝国軍衛士達は一瞬唖然とした。
『36mmと120mm食らっとけ』
腕に持った二丁の突撃砲を乱射する
見える範囲を虱潰しに打つ文縁。
休む事無く連射した突撃砲の弾数はスグに底をついた
『突撃砲が弾切れ寸前だ!自力で調達する!』
文縁はヒルドルブを大破した撃震に向かわせる
『良い銃だ借りるぞ・・・』
撃震の腕から突撃砲を抜く
『オラオラ!残りは何処だ!』
主砲から交互に榴散弾と焼夷榴弾を放ちつつ、突撃砲の弾をばら撒く
ヒルドルブを中心にBETAが殲滅されていく
『お待たせしました。プログラム完了です』
『よし!今出ている母艦級は帝国軍後方・・・ここから30km前後の距離か・・・ギリギリだな・・・だが無用心に頭を高く出しすぎだ!狙い打つぜ!』
両肩に付いたシャベルアームで機体を固定する
『APFSDS弾(装弾筒型翼安定徹甲弾)を食らえ!』
衝撃音が辺りに響き、砂塵が舞う
弾は直進し母艦級を貫く。劣化ウランで出来た弾は高温により溶け、母艦級は炎上した
それに反応するように最初に捕らえ損ねた一体が地中より再び現れる
『最後のお客か!』
ヒルドルブ内に警告音が鳴る
『チッ、撃ち過ぎたか?砲身がオーバーヒートし始めた!冷却が必要だが・・・もって後一発二発か!?』
状況に舌打ちをする文縁
『お兄様!』
『何だ!?』
女性の叫びに驚く文縁
『こちらアインヘリヤル4(オリヴァー)!今現れたBETAの近くにある移動砲台に向かう機影あり!』
『技術屋!識別コードは!?』
『・・・帝国陸軍第8旅団、団長沙梁義明(さはり=よしあけ)技術准将です』
『最高責任者が最前線で何やってやがる!!!?一番近い奴はどいつだ?』
ケニーの怒号が戦場に響き渡る。
『俺が行きます!』
天田少尉が名乗りを上げる
『頼む!小僧と嬢ちゃんはアマちゃんの道を作ってやれ!他は移動砲台に化け物(BETA)が向かわないようにしろ!ここで最高責任者がやられたら崩壊するぞ!』
『『『『『『『『『了解!!!』』』』』』』』』
○○●●●
その頃沙梁は『大蛇』に取り付きコクピットに入っていた
「・・・くっ、酷い状態ではあるが撃てないわけではない!」
『お兄様!もう止めて!』
妹からの通信が入る
『お前か、何のようだ?』
『お兄様、お兄様のやるべき事がおありでしょう?』
『そうだ、今から我が“大蛇”の有用性を実証しよう!』
『止めてください!もう良いのです!今お兄様がやるべき事は指揮ではなくて?』
『うるさい!お前には分かるまい技術者の意地が、沙梁家の長子としての義務が!』
沙梁准将はスイッチを入れ、弾を装填する。
コクピット内部はバチバチと電気が放電し、今にも破壊されそうであった
『いい加減にしろ!アンタの詰まらない意地が義務が!俺の仲間を死なすのを見ていられるか!?』
天田少尉の撃震が『大蛇』のコクピットに向かう
『ふん!一発あれば十分なのだ!この一発が!この一発さえあれば戦況を返せる!』
沙梁准将はトリガーを引く
蒸気を放ちながら砲弾が発射される!
だが、弾は砲身から放たれる事は無かった
そして砲身の天辺から暴発しはじめる
『不味い!』
天田少尉は素早く『大蛇』に隣接し・・・爆発に巻き込まれる
『天田少尉!!!』
一番近くにいた武が声を上げる
『・・・大丈夫です・・・』
『大蛇』の後方にコクピットを無理やり抜き取ったボロボロの撃震が現れる
『ハァハァ・・・沙梁准将は無事です』
画面には頭部から血を流す天田少尉が移る
『無駄な手間ばかりかけさせやがって・・・ヒゲ!』
『・・・一発あれば十分か・・・』
ヒルドルブの主砲が再び火を噴き
『へへ、惜しかったな・・・コイツが無かったら勝てたかも知れんなBETAさんよ!』
最後の母艦級を射抜く
『よし!小僧は素早くアマちゃんとボンボン准将を救助!残りは敵を殲滅、佐世保市を占領するぞ!』
この日、落ちし日ノ本にて
一匹の狼が遠吠えを上げる
それは日の出の始まりを歓喜する声なのか
人類の未来を悲しむ声なのか
誰にも分からない
TMT-05戦狼“ヒルドルブ”及びTSF-99TYPE-MS12独眼
――技術評価報告書
我が第603技術試験小隊はさる11月16日、四国九州長崎県佐世保市にて未確認巨大BETA『母艦級』の奇襲を受けし帝国軍を救援せし。TMT-05ヒルドルブの初弾は見事母艦級に命中、これを撃滅せし。されど二発目は熱された砲身により外れる。過去のデータを元に即座に射撃プログラムが組まれこの問題は解決せし。TSF-MS12独眼もその長距離射撃能力を遺憾なく発揮し、BETAを殲滅す。両兵器の威力抜群なりて、敵を翻弄せし。その戦闘能力を証明したと信じる。尚、ヒルドルブの砲身は連射により高熱化せし、冷却方法の検討をすべし。我々は引き続き列島奪還作戦を続行、佐世保基地の占領にあたる。
―西暦1999年、11月16日オリヴァー=マイ技術少尉