Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿)   作:osias

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第0章「あいとゆうきときぼうのおとぎばなしのはじまり」



第一話「白銀の武士は信念を見せて」

宇宙世紀0079, 11月22日

 

「・・・以上が、今回のプロトギャン第2期トライアルの予定です。」

 

ムサイ級の艦内ブリーフィングルームで、簡略的な説明が終えられる。

 

「質問は?」

 

一人のジオン軍人が手を上げる

 

「ドゥエン中尉どうぞ」

 

中尉と呼ばれた男は手を下げ、疑問をぶつける。

 

「俺と俺の小隊は今回のトライアルに“わざわざ”呼び出された、護衛任務だと、こんな忙しい時期にだ。確かに俺のリックドムはツィマッド社の物だ、素晴らしい機体だ、感謝はしている、だが今回のテストパイロットがこんな小僧だとは納得いかないな」

 

そう言いドゥエンは部屋の隅に座るタケルを指差した。中尉の言う事も最もである。現在ジオンの情勢は良くなく、各地域で戦闘が行われ。撤退しなければならない地域も多くなっていた。

 

「・・・」

 

タケルは敢えて何も答えない、何故か知らないがトライアルというものでは実力さえ見せれば古参のパイロットは納得してくれるだろう、そんな気がしていた。

 

「ドゥエン中尉、タケル=シロガネ試験パイロットは我が社が誇る、一流のMS乗りです。実際彼の腕前を見ていただければ納得いくと思います」

 

「ああ、そうかよ、じゃ、見せてもらいますよその実力とやらをな」

 

皮肉を言いドゥエンは部屋を出ていった。

 

 

その後ろ姿を見つめるタケルに、ドゥエン中尉の部下が近づいてきた。

 

「シロガネ君、悪く思わないでくれよ、今は我が公国も厳しい時期なんだ、それなのにここで護衛任務を与えられたことが気に入らないのだよ。それに、トライアルとは言え君みたいな若い人間が戦争に関わる、そんな時代自体にも彼は嫌気をさしている。まぁ、何も無いとは思うが、君は気にせず全力尽くしたまえ。」

 

この時期、ジオン兵士達の中には疑問や不満、不安と恐怖、そういったものを持つ者が増えてきた。

 

「はい・・・ありがとうございます。えっと・・・」

 

「グレッグだ・・・グレッグ=ダム少尉だ。」

 

男はニコリと笑い、タケルと握手をした。

 

男の手は大きく、暖かく、タケルの緊張を少し解してくれた。

 

「シロガネ君、全力で君の護衛に回ろう、我々ジオンに新兵器が足りないという事はないんだ。君を護る事はサイド3にいる家族を、娘を護るくらいだと思って事にあたるよ」

 

グレッグはそう言うとタケルの背中を叩き、退室していった。

 

「ではシロガネさん、デッキに向かって下さい」

 

今回のトライアル、タケルにとって、恩を返す絶好のチャンスであった。彼は一年ほど前に戦場の真ん中に現れた、と言うより気づいたらそこにいた。何かに呼ばれた様な気もしたが、名前以外、何も思い出せなかった。所謂『記憶喪失』であった。

 

彼が覚えているのは戦場で必死に生き抜いた記憶。何処も彼処も戦場の地球で彼は生き残った、何故かサバイバル技術を知っていたためそれらが役にたった。泥水を啜り、人の屍を乗り越え、生き抜いた。転機が訪れたのは彼が放置された旧ザクを見つけた時である。彼はそれに乗り戦場から遠ざかったのである。その最中、彼はツィマッド社に拾われる。ツィマッド社は彼の操縦技術を買い、タケルは試作機の試験機動、試験運用を始めた。ヅダ、ドムも試験部隊に送られる前に多少運転をした事があった。

 

「プロトギャン2号機カタパルトデッキに上がりました」

 

オペレーターの声が耳に響く、思ったよりもタケルは落ち着いている。

 

「タケル!今回でギャンの性能をジオンの連中に知ら占められなければジオニック社にシェア全部もってかれる!全力で当れ!」

 

「ハイ!」

 

ツィマッド社の技術屋が必死にシロガネに叫んでいる。

ギャンにしてみれば今回のトライアルがラストチャンスである。噂では対抗馬のゲルググ正式採用されるような話をタケルは小耳に挟んでいた。

 

「シロガネさん、今回のテスト内容は機動性能を示す、アクロバットと、大型ビームサーベルでの立ち回りです。ダミィーをここの宇宙空間に大量に設置したので「できるだけ派手に破壊しろ!!!」・・・だそうです」

 

「落ち着けよ、ヒヨッコ!俺達もいるんだ、何かあったらケツは持ってやる」

 

そうタケルに護衛任務で来ているエド=ドゥエン中尉が声をかける

 

「何かあったら俺のリックドムで助けてやるよ!」

 

ガハハと音割れするほどの大声を飛ばす中尉。

 

「・・・有難うございます、中尉。タケル・シロガネ、プロトギャン2号機、出撃します!」

 

タケルはそれを単に好意と受け止め出撃する。

 

●●○○○

 

プロトギャンは淡々と宇宙空間での機動を見せ付ける

 

「推進力に問題があると言われてたけど、リックドムに比べたら、全然出力高いじゃないか」

 

そんな事をぼやきながらタケルは決められた機動をこなして行く。

 

 

そんな光景を遠くから観測する者達がいた

 

「・・・なんだ、あれは・・・機動に問題があったのじゃないのかね?あれでは我が方のゲルググが劣っているように見えるではないか」

 

男はモニター越しにプロトギャンを見てそういった。

 

「・・・データが来ました、今回のテストパイロット腕が良いみたいですね、今まで表にでなかったのはツィマッドの・・・差し詰めワイルドカードということでしょうか」

 

「大丈夫なのか!!」

 

男は激怒し部下に当り散らす

 

「大丈夫です、今回は不運な事に近辺に連邦の1個大隊がいるそうです」

 

「ほう・・・それは確かに不運だな・・・クククでは、我々はショーの続きを見ようじゃないか。」

 

○○○●●

 

「これで、終わりだぁぁぁぁ!」

 

プロト・ギャンの大型ビームソードがダミーを貫く。

 

「これにて、第二期トライアル過程、全て終了です。お疲れ様です」

 

終りを告げるオペレーターの声を聞き

 

「ふぅー」

 

タケルは一息ついた、そこにドゥエン中尉からの無線が入ってきた

 

「ヒヨッコとさっき言ったのを謝らないとな、ツィマッドが言うだけの腕はあるって事だ」

 

タケルは照れくさそうに鼻の頭をかく。

 

「しかし、コイツが量産されれば、ジオンはまだ戦えるな、そもそも、我々は・・・」

 

ドゥエン中尉の声が遠ざかり、悪感がタケルを襲った。

(・・・タ・・・ちゃん・・・とらないで!)

一瞬の頭痛に頭を抱えるタケル。

 

一瞬の頭痛が止まった瞬間、周りの音が再び聞こえるようになった。

会話に戻ろうとしたタケルはもう一人の兵士、グレッグが何か興奮しながら言っている事に気づく。

 

「・・・隊長!行けますよ、我々は勝てま・・・」

 

<バアァアアアァァァア>

 

・・・そう言い終わる前に一機のザクIIがメガ粒子の光に消えてなくなった。

 

タケルは咄嗟にマーカーを確認する・・・アルファ2・・・グレッグ機

 

「グレッグッゥゥゥゥぅー!!!!」

 

<ビービービー!!!!>

 

ドゥエン中尉の叫びの後に遅れるように鳴る警報

 

「シロガネさん!敵襲です、連邦一個大隊がこの領域に侵入、攻撃を加えています!」

 

オペレーターが叫びマップに敵戦力がポツポツと表示される。

 

動揺しつつ回避行動をとるリックドム、ザクIIとプロト・ギャン

 

「どういう事ですか?ここは戦略目的も無いアステロイドですよ!」

 

「小僧!今はそんな事を言っている場合じゃねぇ!戦闘準備をしろ!」

 

「中尉!シロガネさんの機体は我々のムサイに向かわせて下さい、そこで拾います」

 

「オペレーターの姉ちゃんそれは無理だ!距離があり過ぎる、・・・それに既に連邦のMSに捕捉されている。我々は独自にランデブーポイントへ向かう!ルバヘ少尉!数は?」

 

アルファ3、ルバヘ少尉はレーダーを確認する。

 

「最悪です、分かっているだけで『棺おけ』が20機、ジム、キャノン、スナイパー混成で20機、サラミス3機です」

 

「チッ、何たってそんな規模のお客さんがこんな所に・・・」

 

皆が慌ている中、タケルは何故か落ち着いていた。グレッグ少尉が目の前で死んだ、悲しい筈なのだが、何故か動揺はせず、慣れた感覚があった。そして 報告される敵の数が何故か『少ない』と感じてしまう。実際はそんな事は無いのだろうが不思議と沸く感情は現状に絶望を感じさせない、まるで自分はもっと 酷 い 状 況 を味わったことがあるような・・・

 

(・・・ケル・・ゃん!!!)

 

タケルは急遽頭に響く声を元に引っ張られるように機体を動かした。

 

一筋のビームがタケルが居た所を貫く。

 

「隊長!スナイパーです!」

 

「隕石の後ろに隠れろ!っておい小僧!」

 

タケルは命令を無視し、岩から岩へ隠れるながら、スナイパーへの距離を縮めた。

 

「す・・・凄い」

 

「感心している場合じゃない、俺達の任務はあいつの護衛だ!追うぞ!」

 

二人は咄嗟にタケルの後を追う。

 

 

ジムスナイパーに乗る連邦兵は息を飲んだ。

さっき狙ったジオンの新型機は突然自分のビームを避け、高速で近づいてくる。更に周りにいた味方のジムは隕石の影に隠れる敵に狙いをつけれず接近戦を挑み各個撃破されていた。自分が放ったビームから数十秒、数十秒の内に既に4機の味方が討たれていた。

 

そして目の前に白銀に輝くMSが現れる。

 

「ニュー・・・タイプ・・・」

 

そう一言残し、ジムスナイパーは貫かれた。

そして周りに取り囲むボールとジムキャノンにタケルは襲い掛かった。

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

ジムスナイパーの周りに居た敵を殲滅し、タケルはコクピットの中で息を整え。母艦への通信を試みる。

 

ザーザーザー

 

「ミノフスキーが濃くなっているのか・・・」

 

ドゥエン中尉達の機体が追い付く。

 

「新型が凄いのか、小僧の腕が凄いのか・・・おい、小僧、お前のお陰で相手は大分混乱している、お陰でこっちもMSを2機と『棺おけ』を6機程落とせた」

 

「隊長、大分ルートから離れましたですが・・・」

 

「ああ、この状況で背を向けるのは危険だな・・・アステロイドを抜け、ここを離れるのが得策かもしれんな、時間がかかるが、多少安全にムサイとのランデブーポイントにも近づける。小僧聞こえているな!?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

「良い返事だ!」

 

三機は隕石群の間を抜けていく。

 

―――連邦艦隊

 

「どういう事だ、一機のMSを破壊するのに何を手間取っている!」

 

連邦軍士官は怒りを露にして、艦長席の肘掛に拳を叩きつける。

 

「戦闘が開始して2分!既にMSを8機にボールを10機もやられているんだぞ!」

 

「艦長!敵はアステロイドを抜ける模様です」

 

「クソ!他に出せる機体は無いのか!」

 

そう焦る連邦軍艦長に一人の男が話しかける

 

「艦長、深追いをすると被害がでかくなるだけだと思うがな・・・。あの白銀の機体、戦い方を良く理解している。地の利を活かしての接近戦、そしてそれを成せる・・・人の利とも言える腕も確かだ。護衛のリックドムとザクIIの腕も悪くない」

 

艦長は振り返る、そこには連邦軍のユニフォームをラフに来た、褐色肌の男が立っていた。

 

「ケニー=ロンズ中尉か・・・傭兵風情が分かったような事を・・・そこまで言うなら貴様が出たらどうだ中尉!」

 

ロンズは肩を上げ、首を振り否定をする。それは何処か馬鹿にするような白人特有の大げさなリアクションを思い出させる。

 

「ハッ、冗談!俺のジム・ストライカーは地上戦用、俺の部下の機体もそうだ。簡易チューンで宇宙に出せるようにしても溺れるだけだぜ。言っておくがここで引くのが吉兆。奴さんの機体性能が確認出来ただけで良しとするべきだな」

 

「五月蝿い!全軍前へ出るぞ、なんとしてでもこの機体はここで落とす、さもなくば我ら連邦の脅威となる!」

 

ロンズはヤレヤレというような顔をして、ブリッジを出る

 

「忠告はしたぜ・・・さて、部下には出撃準備させるか・・・天の利は誰にあるのかね・・・」

 

 

―――アステロイド

 

「連邦の奴らしつこいですな、隊長」

 

ルバヘは玉になった汗を額から拭き、そう呟いた。

 

「そうだな、数だけは蟲のようにいやがる」

 

無言でタケルは敵MSを貫く。

 

「12機目か・・・小僧、これが初陣とは思えねえな、お前、戦ったことあるな?」

 

「・・・まあ・・・」

 

それ以上タケルは何も言葉にしなかった、MSを討つ度に人類はこんな事をしている場合じゃないんじゃないかと、そういう思いに駆られる。

 

「隊長!」

 

「どうした、ルバヘ?」

 

「ザクのモノアイじゃ確実とは言えませんが、この隕石郡を抜けた先・・・あそこにムサイがいるみたいです!」

 

「小僧!」

 

タケルはプロト・ギャンで指定位置を望遠で覗いた。

 

「確認しました、ムサイです」

 

「・・・ランデブーポイントより大分離れているが・・・別部隊か?どちらにせよ、収容して貰おう、俺達の弾薬も残り少なくなってきている」

 

三機はムサイへと進路変更をする。

 

(・・・ちゃ・・・そっ・は駄目・・)

 

また頭に何かが響き、咄嗟にタケルは機体を止める

 

「(何だ、今日はやけに頭痛が激しい、それに空耳じゃないような何かが・・・)」

 

足を止めたタケル機に気づき、ドゥエンが機体を振り向かせる

 

「どうした、小僧。今頃になって吐気でもしてきたか?」

 

「隊長!さっきから通信を試みているんですがあのムサイ反応が無・・・」

 

次の瞬間ムサイが一斉射撃を開始する。

 

少し離れていた、タケルとドゥエンは回避行動をとる。

 

ルバヘ機は回避行動をとるも、無慈悲にミサイルはルバヘ機の下半身を食らった。

 

「隊長!何故味方が!!?」

 

そう言い残し、ザクIIの核エンジンが爆発した。

 

「ルバヘ!・・・お前もがここで・・・ッ!!!」

 

二機は再び隕石郡に姿を隠す

 

 

「艦長!ミサイル来ます!」

 

「面舵!回避!!!」

 

連邦艦隊は急な攻撃を回避する。

 

「敵ザク、消失しました」

 

「味方ごと・・・撃ったのか・・・?各艦隊はあのムサイを落とせ、MS隊は引き続きジオンの新型を狙え!」

 

「艦長!」

 

「何だ!!!」

 

「ケニー・ロンズ中尉が出撃許可を求めています」

 

「あの、傭兵め、何が溺れるだ、出れるのではないか!構わん出せ!」

 

「了解しました、許可します」

 

 

――――連邦艦隊ハンガー

 

「中尉許可が出ました、出撃してください」

 

「了解、全機出るぞ!」

 

「「「了解」」」

 

ロンズはクローズドチャンネルに変える

 

「皆、ちゃんと予備のエアーとレーションを持ったな?」

 

「「「ハイ!」」」

 

「では、出撃後、俺達はこのサラミス艦隊から離脱、救援を一番近い別艦隊に送る。その間出来るだけ情報の収集。交戦は必要な時以外は禁止。分かったな?」

 

「「「了解」」」

 

ロンズ中尉達が駆るジム・ストライカーとジム陸戦型が出撃する。

 

「皆さんには悪いが、ここで死ぬ気はないんでね」

 

戦力的に圧倒的なはずの連邦陣営。それでもこの場では離れる事を選らんだのロンズの経験則である。

 

―――アステロイド

 

ミサイルとメガ粒子が飛び交う戦場を二機は隕石を盾にし、移動していた。

 

「前門のトラ、後門の狼。中尉どういう事ですか?何で味方のムサイが?」

 

「さあな、俺にも分からん。だが連邦にあのムサイ、両方とも俺達・・・いや、小僧の機体を目指して移動している」

 

タケルは考え込む。

 

「(逃げるにも両陣営が接近させすぎた)・・・クソ・・・じゃあ、漁夫の利で、両陣営戦わせた方がいいですね」

 

「ああ、俺達は連邦の数を少なくしながら、共倒れを願うしかないな」

 

タケル達は行動を開始する。

 

 

―――ロンズ小隊

 

「凄げぇな、あの白銀の機体は、この場にきてまだ諦めていない。それどころか動きが良くなっているようにも見える。戦場を駆ける武士(モノノフ)か・・・」

 

「ロンズ隊長!もうMS14機、ボールを16機あの白銀の機体に落とされてます」

 

「ははは、『連邦の白い悪魔』も真っ青だな」

 

「隊長どうしますか?」

 

「どうすると言っても、ここで待機だ。俺達陸戦型の機体であの戦場に飛び込んだら自殺行為だ。それに俺達の任務は別にここでの戦闘ではなく地上でのジオン掃討だからな。ん?あの2機何か行動をとる気だな・・・まぁ動揺している今が確かに好機だが・・・」

 

ロンズは光り輝く宇宙を見つめた。

 

 

―――連邦艦隊

 

オープンチャンネルで声が聞こえる

 

『アンタらはここで散って満足なのかぁ!!!』

 

その叫びとともサラミスが一機のMSに破壊される。

 

「ルウムの悪夢だ・・・」

 

それは正に一年戦争開戦時さながらの光景、MSに戦艦がいとも容易く沈められる。

 

続き白銀のMSは2機のGMを蹴散らし、もう一隻のサラミスを落とす。

 

「し、集中攻撃を加えろ!早く、早くアイツを落とすんだ!」

 

残りのサラミス一隻とMS達が一斉射撃を加える。

 

白銀のMS複雑な軌道を描きビームを避け、ミサイルを切り裂く。数十秒の攻撃に終に一撃入る、白銀のMSの左腕は吹き飛び、MSは吹き飛ばされる。

 

「よ、よし、やったか!」

 

その叫びと共にサラミスは被弾する。

 

「ムサイからの攻撃です!」

 

先程、タケルに被弾させたのはムサイであった。そしてムサイはそのまま連邦軍に攻撃を加えていた。今まで白銀のMSに集中攻撃をしていた連邦軍は一瞬の油断を狙われた。

 

「チッ!ジオンが!落とせ」

 

 

―――アステロイド

 

タケルはバランスを崩す機体をどうにか制御しようとしていた。

アラームが五月蝿く鳴り響く。さっきも変な声のおかげで撃墜だけは免れた。

 

「くッ、もってくれプロト・ギャン!オレはこんな所でやられてられないんだよ。“また”死ねないなんだ!」

 

遠くでリックドムが他のMSを相手にしているのが目に入る。

 

そこで近づいてくるムサイにタケルは目をやる。

 

ムサイは隙を突く形で残りのサラミスを落とし。

 

そして、タケルに向かって回頭を始める。

 

タケルには次の数秒がユックリと流れた。

 

戦場の音は消え、全てがモノクロとなる。

 

さっきまで激しく脈を打っていた心臓は止まったのじゃないかと思うほど静かである。

 

ムサイから放たれる粒子には色が無く、流れるように白いトンネルがタケルに向かってくる。

 

自然とタケルは回避運動をとり始める・・・間に合わない、間に合わないが身体が勝手に動くのである。

 

「(死ぬ・・・またしぬ・・・オレはまた・・・何もできないのか!『スミカ』!!!)」

 

突然、タケルの身体に振動が伝わり、機体は吹き飛ばされる、そして耳に怒号が響く

 

「ジオンの!!!面汚しがぁぁぁっぁぁぁ!!!!」

 

リックドムが放ったジャイアントバズーカがムサイの艦首を打ち抜くとほぼ同時にリックドムはメガ粒子に吹き飛ばされた。

 

タケルの機体に無線が入る

 

「ザザザッ・・・へへ・・・助けてやる・・・て言ったろ?・・・ジーク・・ジ・・」

 

八方に広がるその光は、混沌とした戦場の終わりを告げ、

気を失っているタケルの頬を一筋の涙が流れた。




近接型次世代MS試作型「プロト・ギャン」第2期トライアル試験報告記録。

我がツィマッド社技術開発部はさる10月22日プロトギャンの第2期トライアルを実施せり。しかれども、敵との遭遇により実戦戦闘へと発展せり。この戦闘 において試験パイロットタケル=シロガネは複数の連邦軍MS及びモビルポッドと交戦。その尽くを蹂躙、計16機のMS、16機のモビルポッド、そして2機 のサラミス級巡洋艦を撃破、トライアル任務を全うす・・・・。戦闘は・・・我が社の試作兵器を損失するも、それ以上の戦果を持って実用性を証明したものと 信じる。この戦闘において、護衛についたジオン兵三名は殉職す。タケル=シロガネは何者かにより爆発寸前のプロト・ギャンより救出され、後に我が社員が乗 るムサイに回収される。
              ―ツィマッド社録「ツィマッドの侍」より
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