Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿)   作:osias

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グロ注意
人間の悪意に注意


第十六話「封じられし悪の先に~後編~」

西暦1999年11月17日13:30

 

日本帝都、???

 

「大尉・・・仕留め損なったそうだな・・・これで二度目だ。我々とて何度も貴様の失敗を見逃す程寛大ではないぞ?・・・まさか、討てない理由でもあるまいな?」

 

「BETAでも、米国軍でも、国連軍でも、殿下に危害を加えるものあらば・・・斬る」

 

そう言い放ち、沙霧は部屋を出る

 

「殿下に危害を加えるものあらば・・・ですか・・・」

 

部屋にいた下士官がそう呟く

 

「川本の調整はどうなっている?」

 

「春戸が例のものを手に入れれば更に安定するかと」

 

「ふん、あの狂人か、今やBETAの巣窟である佐世保基地にいった筈だな?」

 

「ミイラとりがミイラにならなければ良いのですが」

 

「駄洒落のつもりか?」

 

男は春戸の姿を思い浮かべながらそう答える

 

・・・

 

「・・・しかし、超越強化兵士計画か・・・冗談の様な名前だが、中身は本物のようだな・・」

 

「はい、ですが村井博士亡き今・・・研究資料を手に入れたとしても、元の計画通りの性能が出るとは限りません」

 

「そのために雌狐から第3、第4計画の情報を盗んだのではないか」

 

「・・・しかし、アレを応用した場合、川本は・・・」

 

「“あの国”に媚を売り、貴重なオリジナルのサンプルまで渡し、うっさん臭いミイラ男まで利用し、何とか量産可能な状態まで持ってきたのだ。アレ(川本)がどうなっても構わん、結果を出せ。失敗は許されん」

 

「分かっております」

 

「急げよ、来月には長年の計画が開始する、上手く行けば小娘に顎で使われることもなくなろう・・・ククク、沙霧・・・我々も斬る対象かね?」

 

○○●●●

 

同刻

 

佐世保基地、地下、研究所跡

 

<ゴロゴロゴロゴロ、グシャグシャ>

 

「タケル君・・・さっきからタルを見つけたら敵に向かって投げるのは何故なんですか?」

 

「オリヴァーさん、何かしないと行けない脅迫概念にかられるんですよ。ちなみに木製だったら中からネクタイを着けたゴリラとかベースボールキャップ着たチンパンジーが出そうじゃないですか?」

 

虚空を見つめながら武はそう答える

 

『アッアッアッアゥウ!』

 

奇声と共にMFSAで地面をスラップする音がオープンチャンネルで受信される

 

タケルが寝ている間、文縁は耳元で「タルを待ち上げて投げつける、真正面から投げつける、タルを持ち上げて投げつける、真正面から(略)」、他にも「BETAをセンターに入れてスィ(ry」、「KOOL,KOOL,トリッキー、KOOL、KO(r」等、淡々と睡眠学習(洗脳)施していた。一種の陰険な嫌がらせである。ちなみにケニーにもやろうとしたら、半殺しに会ったらしい。

 

『また・・・道化(黒藤)の悪影響か・・・はぁ・・・エインフェリア6(霞)状況は?』

 

『・・・エリアクリア・・です』

 

索敵を行っていた霞の声が入る

 

『嬢ちゃん、ため息を吐くと幸せが逃げるって言うぜ?気をつけな』

 

『そう思うのでしたら、隊長殿、もう少し隊の引き締めをしていただけるかしら?』

 

『無理というより無駄な気がするな!』

 

『・・・期待はしてなかったわ』

 

はぁ、とまたモニクは溜息を吐く

 

「モニク、タケル君、目の前のロック外れました。研究所に進入可能です」

 

黙々と閉じられた扉を開ける作業を行っていたオリヴァーが二人に声をかける

 

「まさか、技術馬鹿のアンタが私以外で隊の常識人になると思わなかったわ」

 

「ええ、姉さんオレは!?」

 

その台詞に反応する武

 

「・・・自覚がないとは・・・哀れね」

 

「酷!」

 

「さぁ、二人とも行きますよ、中は狭くなっているのでESを脱いでください」

 

オリヴァーはいち早くES(外骨格)を脱ぎ、FP(軽装備)の武器を確認する

 

『・・・中に・・・嫌な感じがします・・・気をつけてください』

 

霞が注意を促す

 

『ああ、オレの方でも感じている・・・さっきからノイズが酷いけど、何かが語りかけている気がする・・・』

 

撃鉄を引き、ゆっくりと研究区画に入る第二分隊(武、オリヴァー、モニク)

 

○○●●●

 

同刻

 

第三分隊(ウィリアムズ、阿野本、ロス)は順調に西側にある倉庫を制圧していた。

倉庫は研究所や司令室と違い、元々の警備体制や作りが強固ではなかったため、既にBETAにより殆どのエリアが破壊されていた。進入した当初は一区画事に調べていたが、めぼしい物は無く、ケニーは殲滅を優先させるようにした。武達と違い慎重に、重要施設を守るような戦いをしなくて良くなった第三分隊は一足早く、敵の殲滅を完了させた。

 

「ウィリアムズさん、一段落つきましたね」

 

「途中、コレ(機関砲)の36mmを手に入れたのが大きかったな」

 

「考えずにバラ撒けますしね」

 

「でも、流石に人型の敵を相手にするのは抵抗があるわね」

 

ロスはそう良いながら周りに散乱する死骸に目をやる

 

「こいつらの正体はまだ分からず仕舞いか」

 

ウィリアムズは銃身で死体を転がす

死体は小さく、子供程度の大きさである

そしてそれは絶望を嘆くような顔をしていた

 

「はい、ピアティフ中尉が情報を検索したようですが・・・まだ確認されていない新型BETAか・・・もしくは・・・」

 

静かにロスは答え

 

「読み通り・・・生物兵器か・・・」

 

ウィリアムズは息を呑む

 

ウィリアムズ達は人型の敵とファーストコンタクトをした時、一瞬戸惑いを見せたが、通信の向うで『これでゾンビ犬とカラスが入れば完璧なのにな?』『そんな事言ったらその内ロケットランチャーで倒さないといけないような上位種出てく可能性が・・・やめてください』と文縁と武の気の抜けたやり取りに、スグに持ち直していた。

 

「にしてもこのMFSA凄いですね」

 

「ああ、小型種は全く相手にならんな、インプラントナイフも超振動が加わっているからBETAもTOFU(トゥフゥー)みたいに切れるな」

 

インプラントナイフを確認するように左右に切るウィリアムズ

 

「それにシー君のYMSA91も凄い機動性ね、時間が過ぎる事に複雑な機動をとるようになってるし」

 

「・・・セシリー・・・そのシー君ってのは止めてくれないかい?僕ももういい歳だし・・・それに機動は白銀中尉がデータリンクしてくれていて、マイ技術大尉が即座にプログラム修正してくれている結果だよ」

 

「そう考えると、白銀中尉の機動は異常ね」

 

「お前らも聞いた事があるだろうTSH機動は彼の動きを元に作られたものだ」

 

TSH機動、その学習過程が公にされ、数日間の内に会得すれば生きて帰れると言わしめたほどの奇跡のマニューバーである。そして二回目であるがTSHはT武、S白銀、H変態、機動の略である。

 

「・・・しかし、これ程の技術、それ程の技能を持っている方々こんなにフランクなんて「それは違うぞ、阿野本」・・・え?」

 

ウィリアムズは静かに言葉を発した

 

「昔さ、まだ空を飛行機が飛んでいたころ、旅客機の事故を研究した者達がいた。その過程で彼らはとある調整因子を発見した・・・それが、上司部下の関係からくる問題。問題を発見した部下が直接上司に注意を与えられない問題だ。彼らの関係は軍の規律に則っていないかもしれんが・・・もし危機的状況、ハプニングが起きた場合は強いだろうさ。遠慮無く注意を出来る関係、そしてそれを受け入れる上司の度量・・・」

 

阿野本とロスはウィリアムズの話を聞きながら考える、実際上下関係の厳しい軍では時として上官に注意をするという事は難しい。しかし、それをしなければ無い場面は多くあった、そしてその注意を強く言うころには大体が手遅れな事が多い

 

「・・・お互い馬鹿にしているような発言をしているが、同時に不思議な信頼関係がある。・・・副指令は彼らを疑うと同時に能力を高く買っていた・・・しかし、副指令の予想以上かもしれんな・・・お前ら、疑問を持ったらハッキリ言えよ?」

 

<ピピピ>

 

「なんだ?」

 

ウィリアムズはロスに問いかける

 

「中尉、マイ大尉達からです・・・村井博士の研究日誌を発見し、そのデータを送ってきたみたいですが・・・強固なロックがかかっている上に言語がバラバラなようですね・・・今から解読にかかるようです」

 

三人は霞、ピアティフ、オリヴァーと武によって解読されていく情報を眺めていた

 

○○●●●

 

同日14:13

 

30分以上が経ち、ようやく発見された研究資料が読めるようになった。

研究資料は日本語の他に、主に英語、イタリア語、ドイツ語、ロシア語、中国語、アラビア語を織り交ぜ書かれていた。所々虫食いのようにデータが破損しており、一番古い資料も1996年からのものしか確認できなかった。

 

1996年10月21・

我々の研究は終・・・材料を手に入れる

多くの・・・を出し、出来損ないを我々は見て来た

そして研究による・・・にて我々は問題の原因を発見する

我々は・・・という遺伝的にも非常に優れた少女を手に入れた

彼女は・果に好かれているようであり、これが・・・・であった

これより彼女は・ES-00に生まれ変わる

 

1996・1・月22日

扁・体への・・が上手く行かない

まだ技術的問・・残っているのかもしれない

どうも・・・が馴染まないようである

 

19・6年11月23日

この地下基地に侵入者・・・る

ふざけるな!アレは・の研究成果だぞ!

また・・験・が必要だ・・・

 

1997年01月3・日

S・S-・1破棄

実・体は頭を・・て血を吐き・・だ

 

・997年02・0・・

SE・0・破棄

同じ症・・・る

 

1・・7年03・1・日

・E・・3破棄

何がいけないんだ・・・

やはり・・00が特・なのか

 

1997年・7・07日

・・・・04成功

・・・・0の遺伝子を・・し・・-ンを作った

助・が父・役をか・・出た

 

1・・7年0・・13日

・・が・・・・・を強・し・・も目標の数値・出る

・波・パタ・・は前の・・・とは違・

やはり因・・・系している

人がB・・Aを・・を操れるものなのか?

一昔に香・夕・という学者がそれ・・・事を発表して・・

し・・、私・・て・・事は・当に世・の、・・国のた・・・・・うか?

 

1997年08・3・・

別の・究のBE・・の・・を利用し作った

生・・動兵器の目処も・・・が安定できずに・・・

・ES0・を生・・アにし・御する事・・定す・

SES・・はS・・・00の遺伝子を使い男・・だが

失敗・、破棄

 

1997年・8・11日

S・・・6及・07、破棄

・・・04は・・・アモル・・ファルスの・・コアに・・

 

・・97年09月・・

・・・・・破棄

 

・997年・0月15日

助手の・戸が・年を・・・きた

彼・00以上の・・・である

過去の・・を洗い・・は理解している

・・・を一度殺し再・・・・良い

これなら上手く・・であろ・

しか・・れで・・のであろう・か

 

・・・・年11月22日

最高傑・の・・・09の誕・だ

私・・う戻・・・所ま・・てしま・・の・・・・ない

だが・・で、これと・・・・が合わさればBE・・など根絶やしに・・・

 

1997年12月・・・

上層部・!!!米国と取引をしS・・・9を・・・!!!

・・・!!!!(支離滅裂であり、文字があっても意味が理解できない)

 

1998年・・月・・・

・・・04を・・・フォファルス・・解・・つ

 

1998年・・・・・・

・・TAがこちらに・・・てきている!!

だが、アモル・・・・・を・・・・ければ!!

 

・・・8年・・・・・・・

・・が故障・・・の温度が下がりすぎている・・・

・・・フォ・・・・の弱点か・・・

・・してきた・だ・・罰か・・・

デスペロ・・でも・棄・・・

志穂、ギ・・すま・・

(日誌はここで終わっている)

 

 

日誌以外の研究資料をオリヴァーは食い入るように見る

 

研究資料は生物、科学、物理、ロボット工学と村井博士が専門とする脳神経関係のものだけではなかった。人体実験は当たり前であり、生きた人間の脳に電気ショックを与える、メスを入れる、カビや胞子を体内にいれ繁殖させる、プリオン蛋白質を脳に入れ人体影響を事細かに記録する、放射線を一定時間浴びさせるなど目に余る研究が行われていた。

そしてオリヴァーが一番目についたのが『生物機動兵器』の項目である

それは生物と機械を融合させ、更に人間を生体コアとした兵器である。

ものによっては一回の戦闘に人一人が必要と記されるものさえある

そして何より、その多くが年端も行かぬ子供達であった

 

『・・・邪道!論理というものを全く無視した、邪道・・・』

 

震えるような怒りを静かに放つオリヴァー

 

「うっ・・・・・」

 

ノイズ頭の中に響き、武は額に手あてる

日誌を見ると同時に頭痛がおき、読み終えるころには耐えられるものではなくなっていた

 

『吐き気をもよおす邪悪とはッ抵抗できぬ無力なるものを利用する事だ、、、!自分の利益のためだけに利用する事だ、、、。大人が何も知らぬ子供を!!てめ『ビービービー』・・・』

 

文縁の台詞を割るように警告音が鳴る

 

『ヴァルキュリア(ピアティフ)!状況を!』

 

ケニーが叫ぶ

 

『中央へのロックが解除されると共に北、東、西口、全ての出入り口が封鎖されました!そして、機能が停止していた基地防衛機能が再活動しています!!』

 

<ビビビ・・ザザ・・>

 

通信に割り込み、一人の包帯を巻いた男が画面に浮かび上がる

 

『ククク、“リヴァイヴァー”オリヴァーはお気に召さないようだな。私の中では高評価な兵器なのだがな?』

 

『てめぇ、何もんだ?』

 

ケニーは冷静に包帯男に語りかける

 

『これはこれは、私とした事が失礼した、元第731部隊所属の春戸醜通(はるど=しゅうつ)以後お見知りおきを』

 

紳士の如く優雅に画面越しにお辞儀をする春戸、

しかしその包帯姿がその絵を不気味にしている

 

『ヴァルキュリア(ピアティフ)、脱出は可能か!?』

 

そうケニーに言われ、状況を整理し、防御機能稼動範囲、そして防御壁の性能を洗うピアティフ

 

『・・・難しいです。出口を封じている防御壁は対核兵器ように作られ、4層あります。MFSAに搭載された小型S-11だけでは破壊は難しいでしょう・・・全機を一箇所に集めれば何とかというレベルです。何より、出口に近づくにつれて、セキュリティシステムが強固になっています。防衛機能を回避しながら出口の防御壁を破壊するのは・・・』

 

『チッ』

 

舌打ちをする、ケニー。出来れば目の前の透明人間もどきの相手をしたくなかったがその選択肢は消えた

 

『つれない男だな、黄昏コウモリよ。ククク、折角遠くまで来たんだ村井博士の傑作を見ていきたまえ』

 

『(論文を書いて名が売れている小僧や技術屋だけならまだしも・・・俺の事まで調べ上げてあるのか・・・男の熱烈なストーカー行為はご遠慮願いたいな・・・とりあえずは・・・)エインフェリア・リーダーより各機へ!これより中央区画に向かい、コントロールを奪う・・・序に奴さんが言う“傑作”とやらを拝ましてもらおう!』

 

『『『『『『『了解!!』』』』』』

 

武達はES(外骨格)に向かい走り出す

 

○○●●●

 

同日14:15

 

作動したセキュリティシステム(防衛機能)により武達の行く手をBETAや正体不明の生物兵器だけでなく、小型の戦闘兵器が阻む。警備用機動兵器は人型、車両型、トーチカと種類が多く、そして何よりもBETAや生物兵器には攻撃をせず、武達だけを攻撃した。

 

『人間だけを殺す機械かよ!』

 

対BETAではない、対人兵器に嫌悪を抱きウィリアムズはたまらず叫ぶ。

彼は腕のインプラントナイフを回転させ兵器を破壊する。

 

そして中央に向かう武達を待つ春戸は静かに語り始める

 

『昔々、ある所に一人の少女がいました・・・

少女の名は志穂(しほ)

幼くして、母と姉妹を亡くし

身内は父親のみ

少女自身も生まれながら病弱で病室の外を知らない

人はそれを不幸と呼ぶだろう

だが、今の時代、不幸は何処にでもあり、珍しくもない

少女はそんな環境にめげず、希望を持ち生きてた

 

父親は少女に優しく、何時も彼女が喜ぶ事をしてあげた

看護師達も少女を心配し、見守った

少女もそんな父のため、皆のために何かしたかった

 

とても心温まる話だ・・・』

 

武を先頭に、モニク、オリヴァーと後に続き、目の前の障害を取り除いていく

12.7mmの銃身は赤く熱を放ち

武がのるYMFSA-90のヒートソードは赤紫に染まり、

血とBETAの体液が刃から滴り落ちていた

 

「何を話しているんだ、あのミイラ男は!?」

 

モニクは苛立ち、叫ぶ

 

 

 

『話を変えよう

1990年代の初頭

オルタネィティブIII(AL3)の情報が接収されIVに移行する少し前

AL3―ESP能力者によるBETAへの対話

結局は徒労に終わる計画だが

幾度にも渡る生贄を観測し、面白い仮説を立てた者がいた

それは、BETAに対し強い恐怖心を抱いた能力者が

平均して4分早く死ぬと言ったものである

逆にどんな絶望的状況でも恐怖を抱かぬ者は4分以上は生き残るという

実に面白い研究結果である

 

ちなみに君達・・・

特に“黒の道化”あたりは知っているだろうが

衛士が戦場に出て、戦闘態勢に入り、敵とエンゲージするまでの平均は3分

人が恐怖し、パニックになり、それがピークするのに45秒

3分45秒と4分・・・合計して約8分、ククク・・・

“死の八分”とはよく言ったものだ

面白い偶然だと思わないかね?』

 

 

「・・・奴さん、俺まで知っているのか?俺も有名になったもんだな!」

 

<ダン!>

 

文縁がリボルビング・ステークで戦車(タンク)級を空中に打ち上げる

 

<バン、バン!>

 

「悪名の間違いだろ!?」

 

ケニーが36mmでそれを追撃する

 

 

『・・・ところで君達は扁桃体という脳の部分を知っているかね?

海馬に隣接する形であるその部分は人の感情・・・

特に恐怖と絶望によく反応する

それは人が最初に持つ感情が恐怖だと言われているのに関係するのかもしれない

 

海馬は記憶を司る

故に多大な恐怖を味わうと人はそれを強く記憶する

だから恐怖の悪夢やフラッシュバックなどを見る

 

BETAと恐怖心の関連性、そして篇桃体が脳全体に及ぼす影響

この二つを研究していた人物

それが村井博士であり

その研究が行われていたのが

ここ、佐世保基地地下研究所だ』

 

 

 

「抜けます!」

 

ロス少尉がそう叫び、扉を破壊する、

それは広間に繋がっていた

そして、レーダーのマーカーに味方の識別信号が近づく

 

「全員無事か!?」

 

ケニーが確認する

 

「大丈夫です」

 

「愚問ね」

 

「行けます!」

 

「まだ、チップ(弾)は十分だ」

 

「オールグリーン」

 

「同じく!」

 

「大丈夫です、行けます!」

 

オリヴァー、モニク、武、文縁、ウィリアムズ、阿野本、ロスの順に答える

 

『ヴァルキュリア(ピアティフ)より各機へ、そこの扉を抜けた先が中央区画です。

タンゴ(ターゲット)が基地のコントロールをしている場所もそこだと思われます』

 

『上に上がる階段があるようだが?』

 

ケニーが問いかける

 

『そちらは・・・行き止まりです。空調や水道、気温のコントロールをする部屋へ続いているだけのようです』

 

『選択肢は一つのみか・・・ここの扉のロックは!?』

 

『閉じられています』

 

「チッ、透明人間モドキが、招待するような素振りをして、最後の扉は閉めやがって!まるで安いストリップショーだな「最後の一枚は絶対脱がないか?」・・・ヒゲ・・・全くその通りだ・・・技術屋!こういう時のためにお前のMFSAを工作仕様にしたんだ、いけるな!?」

 

「はい、大丈夫です」

 

BETA、生物兵器、警備用機動兵器が迫る

 

『各機!技術屋が扉を開くまで!この防衛線を維持するぞ!』

 

各機武器を構える

 

『ファイア!!』

 

各々にBETA達に向かい撃ち始める

 

 

 

『村井博士の研究は実に興味深いものだ

彼はBETAが察知する人の脳波を使いBETAを操作しようとした

 

しかし、事はそんな簡単には行かなかった

 

炭素生命体という以外殆ど未知であるBETA

操作できるほどの脳波を出せる人間

 

問題は山積みであった』

 

 

<ジジジ、ゴゴゴ、プシュー>

 

扉が開く

 

「よし、各機、小僧を先頭、入れ!!」

 

武は扉を抜ける、

そこは長い通路になっていた

 

「ヒゲ!」

 

「応!なんだ?」

 

「ここの防衛、任せても・・・良いか?・・・スグに終わらせる、誰かがここに残り退路を確保しなければならん・・・透明モドキに人数が必要なさそうなら「任せろ!グラサン隊長!」」

 

ケニーは「時間稼ぎのための応援を送る」と言おうとしたが、言い終える前に文縁が叫ぶ。

文縁はMFSAの背を見せ、チラリと首だけを後方をに回し、眺めながら

 

「・・・倒しきってしまっても構わんのだろう?」

 

そんなトンデモナイ事を言い放つ

 

「黒藤、アンタ・・・」

 

モニクはそんな馬鹿げた台詞に言葉を失う

 

「―――ああ、遠慮はいらねぇぞ。痛い目を見せてやれ、ヒゲ」

 

「そうか。ならば、期待に応えるとしよう」

 

文縁は姿勢を低くし、重心を落とす

 

「よし、各機とっとと行って、終わらせるぞ!」

 

全員が中央区画に向かい、文縁の後ろで扉が閉まる

 

「スクエア・クレイモアをもう少し残しておくべきだったな・・・残り2回、それでどれだけ潰せるかが勝負だな・・・へ、色々と・・・マジで言う事になるとは思ってもみなかったぜ。取り合えず・・・」

 

<バシュ!>

 

文縁はスクエアクレイモアのハッチを開く

 

「分の悪い賭けは嫌いじゃない」

 

 

 

『・・・同時期にこの研究所では

全く新しい生物兵器の開発に成功する

最初はBETAと人間を合併した兵器

君達が見た“人っぽいもの”はそれの慣れの果てだ。

 

次に有機珪素化合物を含む機械、ナノマシン、そして植物の融合

有機珪素化合物を含む物は何故かBETAに攻撃され難い事が分かり

研究者達はBETAに破壊されない兵器の開発に着目した

“アルム”と名づけられたこの兵器は制御不能という欠陥を持っていた。

 

だが、そこに村井博士の研究成果が加わる

この生物兵器、人の脳波・・・主に自己防衛機能に反応する。

 

彼らは村井博士の実験体を生体コアに置き“アルム”を操作し、

“アモル”を完成させた』

 

長い通路を武達は駆ける

通路は無人、全く敵の気配がしない

それは、ただ深く深く、地下へと伸びていた

 

そして遠くに、また扉が見える

 

『ここで話は最初に戻る

 

人間に対しての最大の恐怖は何だ?

死か?

しかし、死を与えてしまえば研究は意味を成さない

彼らは生きた実験体を欲した

 

では、身体への拷問か?

最初の実験体以外は耐え切れず息絶えた

 

精神的な、死なない程度の拷問?

 

正解だ

 

少女、志穂は

 

信じる父親を含む数名に

 

強姦(レイプ)された

 

一回という事は無い、

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も

 

彼女の脳には直接電極が付けられ

逃げる事も

気絶する事も

精神を崩壊させる事も

許されず

 

その最中真実が告げられる

少女は“父”である実の娘などではなく

オリジナル00と呼ばれる少女のクローンであると

 

ククク、実に心温まる話だ』

 

そして、武達が扉に近づくと、それは自動的に開いた

むせ返るような生暖かい風が死臭を運ぶ

 

「く・・・これか・・・」

 

悪意と絶望に武は少しよろめき口に手をやり、吐き気を押さえ込む

 

「ち、嫌な感じの元凶だな・・・」

 

ケニーのミラーグラスは鈍く光、彼は眉を細める

 

抜けた先、ドーム状の部屋に

正にスマトラオオコンニャク、

学名“アモルフォファルス・タイタナム”の形をした

白と赤そして植物特有の緑色をした

機械的な・・・不気味な何か・・・

その中心の仏炎苞からチラリと15~6歳の黒ずんだ赤毛の少女が見える

その植物の下に横たわるように白いラボコートを着た中年男性の死体がある

 

「そして、彼女は脳にこの対BETA用生物兵器“アモルフォファルス”の生体コアとなるために必要な記録を植えられる。全ては順調のようであったが、村井博士達の予想を超え一つの問題が発生する。それはコアの脳波がアモルフォファルスによって増幅する事である。つまりは恐怖の増幅。アモルフォファルスは虫を誘うようにBETAを誘い。

そして、この基地はBETAによって全滅した・・・ククク、元々の植物のように」

 

春戸の声が今までに無いくらい近くに聞こえ

武達は声がするほう、上方を見上げると、ガラス越しに包帯を巻いた春戸がニヤニヤと武達を眺めていた。

 

「おお、彼に挨拶したまえ、ご高名な村井博士だ。

彼は愚かにも自身の傑作であるアモルフォファルスを止めようとして亡くなった」

 

そう、アモルフォファルスの下にある死体を指差す

 

「あの子を開放しろ!あの子は人間だぞ!」

 

武は溜まらず春戸に向かい叫ぶ

 

「だまれ、小僧・・・おまえにあの娘の不幸が癒せるのか?彼女を犯した人間がBETAの脅威から逃れるために生贄にし、そして見捨てた娘だ・・・人間と化け物の狭間にいる、哀れで醜い娘だ。おまえにその娘がすくえるか?」

 

「わからない・・・だけどここよりましな生き方はある!」

 

「ククク、どうやって救う?その娘とアモルフォファルスは貴様らと戦う気だぞ?」

 

「各機!避けろ!」

 

ケニーの警告と同時にアモルフォファルスの触手が武達に伸びる

 

武は避けながらその触手に12.7mmを撃つが、弾は硬い皮に弾かれる

武は驚愕し瞳孔が開く、ちなみに某人物がこの場にいたならば武と春戸の一連のやり取りに違った意味で驚愕し目を丸くしたであろう。

 

「各機!36mm、ミサイル、グレネードを使え12.7じゃ無意味だ!」

 

「大尉!捕らえられている少女はどうするんですか!?」

 

ウィリアムズは銃を撃ちながら問う

 

「どうするって言っても、開放できるかどうか・・・『できます!』ウサっ子か・・・」

 

『・・・シホさん・・・助けてって・・・じゃなければ・・・死なせてって・・・それを止めれば・・・彼女は救えます』

 

霞は泣きそうな目でそう呟く

 

「・・・はぁ・・・今回の仕事は貧乏くじばかりだな」

 

「傭兵、諦めなさい、603技術試験隊が貧乏くじを引かされるのは今に始まったことじゃないわ」

 

「ですね」

 

オリヴァーは短くモニクに同意する

 

「よし、行くぞ!中央を避けて各機!撃て!!!」

 

<ババババババババババババ>

 

銃撃が集中し、煙が部屋を包み込む

 

「Cease Fire!(撃ち方止め!)」

 

<・・・>

 

無言に7人は煙に包まれたアモルフォファルスを見つめる

 

<シュッ!>

 

「きゃ!」

 

突如煙の中から触手が伸び、ロス少尉の機体を弾く

機体は壁まで吹き飛ばされる

 

「セシリー!!!」

 

阿野本が触手をヒートソードで切り裂き、ロスの機体を守るようにその前に立つ

 

「おいおい、冗談じゃねぇぞ」

 

ケニーは目の前の光景にそう漏らす

 

アモルフォファルスの葉や根は確かに燃え、そして打ち抜かれ、ダメージを受けていたが

 

それは目に見える速度“修復していった”

 

「俺が牽制に回る!貴様が落とせ!」

 

ウィリアムズが36mmで援護射撃をし、阿野本に命令を出す

 

「クッ!ならVSAMRで!!!」

 

阿野本は背に担いでいた、VSAMRを腰に構え低速モードで撃ち出す

 

<シューーーー、バシューーーーー>

 

撃ちだされた弾はアモルフォファルスの1/3を削りとる

あわや中心の少女を巻き込む威力である

 

「コイツは・・・強力過ぎる!」

 

だが、それをものともせず攻撃が阿野本に集中する

 

「な、さばき切れない!!」

 

VSAMRを背に戻し、36mmとヒートソードで触手を迎撃するも

数回、YMFSA-91を掠る

 

アモルフォファルスは再度修復し始める

 

「ククク、素晴らしい、これが村井博士の言っていた自己回復か!!」

 

春戸が歓喜の声を上げるころには、アモルフォファルスは完全に回復していた

 

「マジかよ!あれだけ削られたのに、質量保存の法則を無視していないか!?」

 

武は驚くも攻撃の手を緩めない

 

『ヴァルキュリア(ピアティフ)!こいつの弱点は分かるか!?』

 

『調べています・・・!!研究資料に・・・項目・・・“アモルの自己回復はナノマシンよりも生物的細胞に依存する、よって氷点下の温度ではその活動が停止・・・”!!』

 

ピアティフがそう読み上げる

 

「氷点下・・・傭兵!どうする?私達の武器にそんな器用な真似はできないわよ?」

 

迫る触手にグレネードランチャーを放つモニク

 

「今考えている!」

 

射撃で敵の攻撃を撃ち落しながら

全体を見渡すケニー

 

「(考えろ!考えろケネス=ロンズ!村井とかいう研究者は止めようとしたんだ、何かこの部屋にあるはずだろ!?)」

 

そして村井の遺体があった場所を見る、

何故か未だに完全な形でその遺体はあった

そして、その遺体に一番近い、壁に箱状のパネル

そこから壁沿いに天井に向かいケーブルが延びている

ケニーはそのパネルをロックし、情報をピアティフに送る

 

『あれは何だ?』

 

『・・・内部・・・コントロールパネルです・・・そこからその室内の温度をコントロールできます!!』

 

「技術屋!」

 

「ハイ!」

 

オリヴァーはそのパネルに向かい走り出す

 

「各機援護!おい!普通(阿野本)!姫ちゃん(ロス)は大丈夫か?」

 

「大丈夫です大尉!僕達も援護に回ります!」

 

ケニー達はオリヴァーを守るように陣を取る

 

「焦らせる気は無いが素早くな!もう弾が残っちゃいねぇ技術屋頼むぞ!」

 

<ババババ>

 

「技術屋!」

 

<ババババ>

 

「オリヴァー!」

 

<ピピピ、プシュー>

 

「行けた!」

 

突然、空調より白い煙が室内に入り込み、

温度が低下し始める

 

「魔女の犬にしてはたいしたものだ・・・だが!」

 

空調がとまり始める

 

『コントロールハックされています!』

 

「ミイラ野郎ッ・・・!!!」

 

ケニーはガラス越しの春戸を睨む

 

「万事休すか」

 

モニクはそう呟く

 

『諦めんなよ・・・

諦めんなよ、お前!!

どうしてそこでやめるんだ、そこで!!

もう少し頑張ってみろよ!』

 

やたら暑苦しい言葉が各自のインカムに流れる

 

『ヒゲか!』

 

『ああ、コントロールルームに来ている、オーリィーの内部コントロールと同調すれば春戸のインプットを上書き出来るが・・・相手の方が技術は上だ・・・俺達・・・いや俺がコントロールできるのは数十秒が限度・・・その瞬間氷点下までその部屋を持っていける』

 

『聞いたな!?小僧!普通!お前らが一番機動力がある!任せるぞ!』

 

『『了解!!』』

 

『よし、10カウントで行くぞ・・・10、9,8,7,6,5』

 

各自弾幕をはりながらタイミングを見計らう

 

『4,3,2,1、ゴー!!』

 

『オーリィー!!』

 

『はい!』

 

部屋に大量の白い空気が入り込む

壁には霜がつき始める

 

武と阿野本は触手の合間を縫って近づく

お互いコンビネーションをとるのは初めてなのに

まるで自分が何をするべきなのかを知るように

二人の機体は放熱と外の温度差から、煙を上げ、

まるで空中に残像を残すように動く

 

寒さにより動きが鈍くなったアモルフォファルスの触手は武達が通り過ぎた後を通過する

それは、まるで残像を攻撃しているようにも見える

 

『『なんとぉぉぉぉぉぉ』』

 

武と阿野本が完全にシンクロする

 

「どこだ!?」

 

武は少女がいる所を探す

 

<・・・こ・・けて・・>

<――――^v――――>

 

武はヒートソードで仏炎苞を切り裂き、少女を抱える

 

『抵抗するんじゃない!いっちゃえよ!』

 

阿野本はVSAMRを高速モードで一発・・・二発・・・三発・・・

アモルフォファルスの中心に打ち込む

 

そして、コアを守るように触手が武達を攻撃するが、

既にそこに武達はいなく、

自滅する形で触手が中心を貫く

 

それを確認し、ケニーが号令を出す!

 

『ALL WEAPON FREE!TERMINATE!』

 

全員が全弾打ち込む

 

・・・そして、アモルフォファルスは沈黙する

 

「ククク、まぁ、こんな所か。まだ、検討が必要か・・・赤道辺りでコイツを放ったら面白い戦果を期待できると・・・そうは思わないかね?リヴァイヴァー・オリヴァー貴様の評価はどうだ?」

 

春戸はそう語りかける

 

「・・・こんな邪道な技術、試験をする必要もなく、評価は最低だ!」

 

<ドドドド>

 

<ウーウーウーウー>

 

警告音が基地内に響き渡り

全員が赤く光るアラームに注目する

 

『ヴァルキュリア(ピアティフ)!?』

 

モニクがピアティフに問いかける

 

『・・・地下が崩落します・・・自己破壊システムです』

 

「クソ、忌々しい、ミイラ野郎が!」

 

振り返ると既に春戸醜通の姿は何処にもなかった

 

「逃がしたか・・・各機脱出するぞ!」

 

各機は撤収作業を開始する。

 

<ピク>

 

「何か動きませんでしたか?」

 

何かに気づきウィリアムズが問うがその問いは誰にも聞かれる事がなかった

 

 

そしてケニーを先頭に武達は元来た道を戻る

 

最後尾の武とウィリアムズが長い通路を抜けようとした瞬間

 

<―――^v――――>

 

<ドン!>

 

武は後ろから押され、抱きかかえていた少女を庇うように転がる

 

「なっ!」

 

振り向くと、そこにはアモルフォファルスに捕らえられたウィリアムズのMFSAがいた

触手が更に武に向かい伸びるが

 

<ドン!!!>

 

ウィリアムズのグレネードが当たる

 

その衝撃でバラバラと天井が落ち

通路が封鎖される

 

<――――^v―――――>

 

『ギッド!!』

 

ケニーは後方の異変に気づき叫ぶ

 

『しくじったな・・・』

 

『ウィリアムズ中尉!今『くるんじゃねぇ!時間がねぇんだ!とっとと行け!』』

 

焦る阿野本に叫ぶウィリアムズ

 

『・・・各機、脱出だ・・・』

 

ケニーは少し躊躇しつつも命令を全員に出す

 

『しかし、ロンズ大尉!!』

 

ロスが問う

 

『脱出しろ!ロス、阿野本!分隊長命令だ!』

 

ウィリアムズ中尉の叫びが通路に反響する

 

『『中尉・・・』』

 

『行け!!!』

 

全員その場所を後にした

 

 

「・・・疑問を持ったらハッキリ言えと言ったが自分が出来ないとはな・・・」

 

ウィリアムズはインプラントナイフで触手を切り落とすと、アモルフォファルスのコアがあった部分に向かいバーニアを吹かす。

 

ウィリアムズはゆっくりとS-11の起動ボタンを開け・・・

 

そして、基地内にS-11の爆発音が響き渡る

 

封じられし悪の一つは光と共に消えた

 

しかし、それはそこにあった悪の一つに過ぎない

 

春戸醜通により

 

悪は光の当たる場所へと出される

 

 

戦人達は待ち受ける苦難を知らずに帰路に着く

 

そして少女はただ安らかに眠り続ける

 

 

○○●●●




90式及び91式試作機械化歩兵装甲(YMFSA)及びVariable Speed Anti-Material Rifle、(VSAMR:可変速対物ライフル)
――技術評価報告書

我が第603技術試験小隊はさる11月17日、指令通り、佐世保基地国連管轄区の地下へ深くへと侵入す。中央区画は春戸醜通と名乗る男によって占拠され、基地防衛システムのコントロールを奪われる。小型BETA種、防衛システム、人型生物兵器と戦闘、これらを打ち倒す。奥でアモルフォファルスと呼ばれる有機珪素化合物を含む機械、ナノマシン、そして植物を融合し、人間を生体コアとする醜悪な生物兵器と遭遇。これは、自己回復機能があり苦戦するも、村井博士が残した記録から弱点を推測す。我々は氷点下の空間を作り、YMFSA-90・91によってアモルフォファルスは沈黙。生体コアとなっていた少女は白銀中尉により救出される。この際、VSAMRは驚異的威力を見せた。室内が氷点下であった事により、予測を上回る連射を阿野本少尉は行った。これはVSAMRの放熱問題さえ解決すれば、有効的兵器である事を証明している。
この戦闘で、キッド=ウィリアムズ中尉がアモルフォファルスに捕われ、S-11を使用。虫の息にあったアモルフォファルスにトドメを刺したと思われる。
我々は春戸醜通を逃がした。彼はこの恐ろしき兵器を作れる情報を持って逃げたと推測す。これ以上犠牲者を出さぬために、素早く彼を捕える事を願う。

これにて列島奪還作戦での我々第603技術試験隊の試験評価を終了。
横浜基地へと帰還す。
               ―西暦1999年、11月17日オリヴァー=マイ技術大尉

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