Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿) 作:osias
コレハ正式ナ記録ニ在ラズ。第603技術試験隊ガ受ケタ最後ノ任務ヲ記録スルタメ、第603技術試験隊、隊員デアル『モニク=ギャディラック特務大尉』、『ヒデト=ワシヤ中尉』、『オリヴァー=マイ技術中尉』、及ビツィマッド社社員『タケル=シロガネ』ガツケタ音声記録デアル。
宇宙世紀0080、1月5日
<カチ、ジーーージーーー>
私達は『試験兵器及び簡易地上チューンを施した宇宙戦用MSの地上稼動試験及び、味方機援護の実用性』という任を受け、地球衛星上にてHLVを受け取った。高機動型ゲルググはア・バウア・クー撤退時に収容した機体である。技術バカのお陰で形だけでも何とか任務をこなせられるようになった。近頃アイツは『リヴァイヴァー』と呼ばれているらしい。何でも大破に近い兵器でも見捨てずに使い道を見つけるからとか・・・終戦後に二つ名がつくとは皮肉ね。私達は大気圏突入時に救援を求める同胞に遭遇。救援に向かうも結局一人しか助けられなかった。アイツは『邪道に始った戦争は邪道に終る』と呟いていた。私達が『ブリティッシュ作戦』で背負った業が今になって返ってきたのかもしれない。予想外の事件はあったが予定ポイントに突入でき、アフリカ大陸最南端、ケープタウン付近に着陸した。地上についた私達はHLVから離れ、北を目指す、先ずは367物資集積所跡に向かいギャロップの回収が先決だろう。今日の所は即座に安全領域まで入ってから野営をした。私達が降下した直後、暗号通信によりアフリカに残った同胞にはあるポイントに集合するよう伝わっている。できれば多くの同胞がそれを聞きアフリカから脱出してくれる事を私は願う。今日は・・・同胞を一人(レリー=ヴァン伍長)しか助けられなかったが戦闘に巻き込まれたツィマッド社社員の保護に成功する。明日彼が起きた時に名前を聞く事にしよう。そういえばその社員とアイツが隻腕のヅダに何かしていたが・・・まぁ問題はないでしょう。今日の記録はここまでとする。
<カチ>
宇宙世紀0080、1月6日
<カチ、ジージッジ、ジーーー>
え、記録ボタンこれでいいの?あれ、始ってる?ああーテステス、本日は雨なり、本日は・・・良いから始めろって?はいはい、じゃ取りあえず、いやー驚いたねーマジで。603技術試験隊に配属されたから生きた心地がしない事は度々あったが昨日もその一つだね。本当に泥のように眠るっての?春眠暁を覚えズ?まぁいいや良く寝れたわ。ちなみに助けたレリー伍長だけど、大と小両方もらしてて、ザク内は大惨事だったわ、ハハハ。もう一人はタケル=シロガネっていうツィマッド社、社員でテストパイロット。・・・デュバル少佐の後任としてツィマッド社で働いているらしい。デュバル少佐の事・・・教えたら、何か落ち込んでた、昨日の事もあるし無理はないかもな・・・。そういえば、オリヴァー曰く『ツィマッドの侍』とか『白銀の武士』とかいう名前で知られているらしい、俺もそういった二つ名がほしいな、オリヴァーでさえあるんだし。そうだなー『蒼い箒星』なんてどうかな?まぁ、俺の2号機は昨日ので塗装剥がれて銀色になっちゃってるけど。名前とか関係なく同じ日系人としてタケルとはノリが合うね、仲良くできそうだわ~。俺達はこれから北に向かい味方を助けたり援護したりして、アフリカ中央にあるバミグ・・・えーっとなんだっけ!?<『バミングイ・バンゴランだ中尉!全く私は急がしいのに』・・・>そうそのバミグ・ブランコランに向かうらしい。何でもまだそこの付近はジオンのゲリラ勢力が大きく、簡易打ち上げ施設もあるらしい。まぁ、いざとなったら普通に降伏するんだろうけど。そういえば今日起きたら、予備機の腕が直ってたな、残った旧ザクの腕を応急処置だけどくっつけたって。ちなみに予備機には昨日からタケル君が乗ってる。元々ツィマッドのテストパイロットだから難なく操縦したね。まぁ!俺の方が
<ブツ>
【録音機記録スペース満杯によりこれ以降の記録無し】
宇宙世紀0080、1月7日
<カチ、ジーーージーーー>
昨日の記録機のメモリーが一杯なので新しいのにしました。僕達は引き続き北を目指し、ギャロップが放置されているとある367物資集積所に向かった。僕が乗るはずだったヅダをタケル君に渡したため、一番情報収集率、索敵能力の高いキャディラック大尉の14B・・・高機動型ゲルググに載せてもらった。元々宇宙空間戦闘を目的として作られた機体のため、地上用に多少チューンしても、操縦は困難のようだ。乗り心地もお世辞にも良いとは言えない。この日、僕達は連邦軍と味方の戦闘を確認。連邦軍というのは正しくないな。実際は陸戦型ゲルググと陸戦型ガンダムの2体がジオン地上機甲小隊を説得しようとしていた。この2機は終戦を知らせようとしたようだが、地上部隊は信じようとしなかったようだ。実際僕達もどうにか戦闘を止めさせようとしたが。こっちの通信を全く受けてけようとしなかった。それに痺れを切らしたタケル君が単身戦場に飛び込み、尋常じゃない機動で残った地上部隊のドムとザクの戦力を無効化した。ワシヤ曰く、14Bよりは操縦は楽でも、まだプログラムを洗い直す必要があるくらい癖のある機体のはずなのに、タケル君はそんな問題がないようなくらい奇妙で・・・言葉で表すなら『変態的』な機動を見せた。この後ワシヤが『俺の方が~』と言って自分の腕前を自慢するのを止めた。僕達は連邦軍のパイロット、実験部隊隊長マット=ヒーリィ中尉と話をし。更に陸戦型ゲルググのパイロット、外人部隊小隊長ケン=ビーダーシュタット少尉と相談した結果。ここで保護した同胞は彼らに任せる事にした。ヒーリィ中尉はコーウェン准将との会談をさせてくれた。そして、コーウェン准将はジュネーブ条約に則った人道的捕虜の待遇を約束してくれた。更に、僕達の事も黙認してくれたようだ。ヒーリィ中尉とビーダーシュタット少尉は戦争が終って尚戦い続けるのは不毛だといった。僕も同意見だ。レリー=ヴァン伍長は保護を拒否し、僕達といく事にしたらしい。出来ればだが、復讐なんてことを考えていないでほしい。余談だが、その夜は彼らと過したのだが、タケル君がものスゴイ勢いで両隊長に駄目だしされていた。貴重な実験機を任される実験部隊隊長と常に物資不足の外人部隊隊長である、タケル君の機体に大量の負担をかける戦い方に思う所があったようだ。このままだとタケル君は徹夜で二人の講義を受ける事になるだろう。ワシヤと大尉もその講義に参加するらしい。僕も興味があっるので聞く事にした、技術に関して知っておいて損をする事はないだろう。以上記録終了。
<カチ>
宇宙世紀0080、1月8日
<カチ、ジーーージーーー>
えーっと・・・今日は367集積所って所に到着して、ギャロップを発見したので、皆さん忙しく。俺が代り・・・ハァ~~マジ、寝みぃ・・・代りに記録をとる事になりました。実際今日は比較的に平和ですね。ワシヤさんもちょっかい出してこないですし。まぁ、何時もの良く分かんねぇハイテンションなノリで話されますけど。EMS-10ヅダの地上運用は順調。デュバルさんが戦場に出る前に一度乗った事があったけど、戦場改良がされていて、プログラムのお陰か知らないけど、出力が安定している。昨日はヒーリィさんとビダーシュタットさんに交替で扱かれて大変だった。細かい操作方法を淡々と叩き込まれた。確かに俺の今までの機体の動かし方はまるで『整備を必要としない機体を操る』ようなもんだったんだと本当に思った。確か前に会社の整備班長に『テストパイロットとして最高、MS乗りとしては最悪』て言われたのが今になって理解したよ・・・。そういえば、ここら辺で注意しないと行けない部隊が複数あるらしい危険度の低い順で「インビジブル・ナイツ」―投降拒否をし続けるジオン残党らしい、まだ戦力が整っておらず同じジオンだから攻撃はしてこないだろうとの事。まぁ、売国奴と思われたら襲われるって言ってたな。次に連邦軍の「ファントムスィープ隊」、これは急遽編成されたジオン残党討伐部隊。まだ招集されたばかりなので戦力は整っていない。さらに遭遇の確立は低いとか。危険度中くらいのが「砂漠のロンメル」率いるサハラ砂漠部隊。こちらも投降を完全拒否し、未だにゲリラ活動しているそうだ、俺らの近くにいるらしく、間違って投降を促したらアウツ!デザートザクを使う部隊なので見たら即効逃げる。下手に一緒に戦わされたら本末転倒だそうだ。最後に危険度『高』なのが通称「黄昏コウモリ」という傭兵団。今は連邦に雇われていて、ジオンと見たら直ぐ襲ってくる。何でも夕方時の奇襲を多くしたから「黄昏」、元々戦争当初はジオンに雇われて、今は連邦に雇われているから「コウモリ」らしい。隊長機がオレンジ色のジムストライカーで僚機は陸戦型ジムだそうだ。・・・俺は無事に帰れるのか?まぁ、考えても仕方ない!いいわ落ちます!
<ガチ>
宇宙世紀0080、1月9日
<カチ、ジーーージーーー>
記録を今確認したけど、ひどいわね。確かに正式な記録じゃないにしろ・・・ともかく、私達はギャロップを回収し、今朝修理が完了したわ。流石としか言い様がない、最初みた時は本当に動くのか疑問に思ったけど、技術屋の観点との違いというのかもしれないわね。今日は北上の途中、我が軍の歩兵部隊と遭遇、ギャロップに収容する。何とか私達の本分は遂げられそうである。アイツは・・・マイ中尉は働きづめで顔色が悪い、ちゃんと寝てるのだろうか?逆にワシヤ中尉とシロガネは元気が有り余っているようだ。ヴァン伍長に関しては数日前から口数が減っている。何か思い悩んでいるようだ。そしてあの目・・・彼の目が気に入らない。私はあの目を何度か見た事がある。戦士が死兵となった時の目、野良犬の目・・・明日にはバミングイ・バンゴランに着く・・・降下時から発信している暗号通信も連邦軍に解読されるのも時間の問題だろう・・・急がねば。噂では未だに生きている戦艦があるらしいけど・・・記録は以上だ。
<カチ>
宇宙世紀0080、1月10日
<カチ,ジーーージーーー>
ザンジバル級だぜ!ザ・ン・ジ・バ・ル・級!艦長とヨーツンヘイムには悪いけど、やっぱこういう高性能艦は燃えるぜ!今日バミン・ブランコに着いて<『バミングイ・バンゴランだ中尉!何度いったら』・・・>大尉今日は俺の番ですよ!<『そう思うならしっかりやれば良いだろう!』・・・>まー!そこで我々はザンジバル級を発見したのであります!今オリヴァーとタケル、それにここで合流した人達とギャロップのパーツ剥がして修理している。『パーツの流用性・・・論理的だ!!!』とオリヴァーが叫んでいた、この頃アイツの言動が意味不明になりつつある。タケル曰く『徹夜ハイ』らしい。元々ザンジバルの状態は悪くないらしく明日の夕方には発進できる予定。基地に放棄されたマゼラアタックもオリヴァーの指示で手の空いた者が自動トーチカ代わりにするため作業に入っている。全く何時の間にそんな命令も出したんだアイツは?・・・集まった兵士も結構な数でザンジバルが一杯になりそうだ。問題としては、集まった兵士達の情報から連邦の動きや『砂漠さん』の動き、更には『バット・アット・ダスク(黄昏コウモリ)』の動きが活発になっている事が分かったんで。んで、今俺達は見張りをしているわけだわ。そういえばレリーの奴が自分の旧ザクを改造してたな。現地改良型っていうのか?ザクのミサイルポッド着けたり、マゼラ・トップ砲拾ってきたり、追加シールド着けたり。出力足りなくなると思うんだけどなー。そういえば時間がある時タケルがなにやらレリーに話しているな。心のケアも得意なのかあの『侍』は?さて!ここまで来たら祈るだけだぜ!今日はここまでだな!
<カチ>
宇宙世紀0080、1月11日
<カチ、ザザ、ザーーーー>
現在・・・宇宙世紀0080、1月11日1546・・・まだ日は沈み初めていない。予定より早く僕達はザンジバルの修理を終えた。ギャロップは使用不可能になったが、カーゴはまだ使い様があるので基地外部に置いてある。出来れば使わない方向が好ましい、それにここ最近同じような事をした気が・・・いや今はそんな事はいいか。兵士達の搭乗は8割完了している。後は最後に僕達の機体を乗せたら終了だ。息苦しく、広い宇宙が恋しくなるのは不思議な気分だ、早く任務を終わらせ寝<ビービービービービービー!>な、どうしたんだ?大尉!<ザザーザー、『マイ中尉!我々は敵の襲撃を受けている!敵勢力、敵戦力共に不明!ザンジバルの発進はどれくらいで完了する!?』>1600には完了します。<『15分前後か・・・我々で時間を稼ぐ!中尉は発進準備に集中しろ!』>了解!いざとなったらギャロップのカーゴを使ってください!<『カーゴをか?』>中に爆薬を積めました、先の・・・いえこの戦争で使われた戦法です・・・その時は失敗したそうですが・・・使える筈です!<『了解した!』>・・・・また戦いが始る。
<カチ!>
○○○●●
開戦は無人マゼラアタックの爆発で始った。
連邦軍は北北東及び西からの二面進行を開始。
バミングイ・バンゴランから離れた場所でも戦闘が発生している。
「・・・降伏勧告無しの攻撃・・・連邦は私達を殺る気みたいね、状況はどうなってるか?」
モニクは戦闘が見える北北東に向いながら、回線で他のメンバーに呼びかけた。
「こちらレリー=ヴァン伍長!敵は西側から進行、ジムと61の混合部隊!数は不明!既にマゼラアタック自動射撃はオンにしました!ジムの肩についてるマークは・・・髑髏!」
東を守っていたレリーは敵を迎撃しながら、叫ぶ。
「噂のファントムスィープか・・・厄介な・・・」
苦い顔をするモニク
「北北東からも敵が進行!同じく髑髏のマークだ!しかしこちらの部隊は後方より攻撃を受けているみたいだぜ!」
ワシヤも同じくヅダで敵を撃退しながら報告した
「どういう事?」
そんなモニク達の疑問を答えるかのように通信が入った
『・・・こちら、ロンメル少佐・・・応答願う・・・』
「“砂漠のロンメル”・・・いえ、ロンメル少佐、こちら第603技術試験隊、モニク=キャディラック特務大尉であります」
『ほう、中佐相当官殿ですか。我々はジオンの意思を継ぎ戦い続けている。一度掲げた銃を下げ戦いを止める事に思う所はある・・・だが、だからと言って同胞を見捨てる気はない!援護する』
「ご協力感謝いたします、ロンメル少佐」
心強い味方が出来、モニクの気持ちに余裕ができた
「モニクさん!俺はレリーさんの援護に回ります!」
南に配置されていたタケルはヅダを駆りレリーの守る西に向かった。
「頼む・・・我々は北北東の敵勢力を殲滅次第、そちらに向かう・・・」
オリヴァーの通信が入る
「ザンジバル級の発進準備は順調です、戦闘終了前に発進する事も考えて、積極的にキャノン系とスナイパー系を落としてください」
「「「了解(した)!」」」
モニクは個人通信を開きタケルに話しかける
「タケル君・・・」
「何ですか?」
「ヴァン伍長の事だが・・・」
「大丈夫です・・・俺は守りたいものを本当に守りたいという意思でここにいて、このヅダに乗り、戦っています・・・守ってみせます、レリーさんもモニクさん達も、ザンジバルの皆さんも・・・こんな人と人との争いで命は散らせません、やってみせます!」
「・・・フフ」
モニクにはタケルの言葉に一瞬自分の弟を思い出した
「俺・・・おかしい事いいましたか?」
「いや、違うわ、この戦争・・・本当に貴方達のような若い子の方が覚悟を持って戦っているんだと思ってね」
「若いから・・・無謀なだけかも知れません・・・」
「・・・そうね、死なないでね・・・」
「モニクさんも!」
通信を切り、二人はバーニアを更に吹かす。
○○○●●
レリーは一人西より攻める部隊に食い込んでいた。
「はは、僕にも出来るじゃないか!連邦が!仲間の仇だぁぁぁぁぁ!!!」
西は陽動部隊だけであったため数は少なく、罠やトーチカ等が配置されているこの場所を守るのは楽であった。タケルの判断でマゼラアタックは時間差で攻撃を行い、止め処なく敵に攻撃を加えていた。その猛攻と森中に広がる罠が連邦の足を鈍らせる。そこをレリーのミサイルポッドとマゼラ・トップ砲が狙い、結果レリーは難なく敵を撃墜していた。
しかし実戦経験の少なさ、そして高揚感がレリーの判断を鈍らせる。
優位を保てる距離から、敵のキリングディスタンス(攻撃範囲)に自ら足を入れた。
レリー機のマゼラ・トップ砲がジムを吹き飛ばした
「これで!4機目!大した事ないな!連邦も!」
そう叫ぶレリーに対しタケルが激を飛ばす
「レリーさん、油断しないでください!!前に出すぎです!」
『その小僧の言う通りだ、素人が!』
レリーが気づかない内に、沈み始めた太陽を背に一機のジムが迫っていた。
太陽と同じくらいの橙色、手に持つツイン・ビーム・スピア。
「うわぁぁぁっぁー」
『散れ!』
ツイン・ビーム・スピアは旧ザクに向かって伸びる
・・・しかしそれは当る事はなかった・・・二機の間をマシンガンの弾が割ってはいる、一発はビーム・スピアを捉え、破壊はせずとも弾き飛ばす。
『・・・でこっちはエースか!あんな距離から、マシンガンの弾を当てるのか・・・距離をとるか・・・』
橙色のジムは避けながら、ビーム・スピアを拾い、森の中に後退する。
「レリーさん!大丈夫ですか?一旦下りましょう」
タケルはレリー機に近づき、警戒しながら後方に下る
「あ、ああ・・・」
放心するレリー。画面越しにその動揺が目に見える。本気でに死ぬと思ったレリーの目は死に囚われていた。そこにタケルは言い放つ
「死力を尽くして任務にあたれ、生ある限り最善を尽くせ、決して犬死にするな・・・」
「え・・・」
「俺はそう・・・誰かに教わりました・・・誰に言われたか思い出せませんが、俺はこの言葉に従い今日まで生きてきました・・・レリーさん、死に急ぐ様な戦い方は止めてください、死んで逝った仲間のためにも・・・」
「・・・」
自分と同い年くらい青年にそう言われ言葉を失い、レリーは少しずつ冷静さを取り戻す
タケルは回線を開きオリヴァー達に通信を送る
「こちら西エリアのタケル・・・橙色のジム・ストライカーと遭遇、そのジムが引き連れた陸戦型も遠くに確認しました」
「それって、黄昏コウモリじゃねぇーか!?」
「・・・日の入りと同時の攻撃、橙色のジム・ストライカー・・・間違い無さそうね、増援を送りたいのだけど、こちらも手が離せないわ」
ワシヤとモニクが言う様に、ファントムスィープの攻撃に連動し、黄昏コウモリの部隊は別方向からの攻撃を開始していた。
「・・・カーゴを使おう」
オリヴァーが冷静に言い放つ
「カーゴには大量の爆薬が積んである、それにホバー機能も健在だ、誰かがとりに来てくれれば、そちらに運ぶのは難しくない。幸い罠とマゼラアタックの設置位置で敵の大体の移動経路は分かります。その移動経路上に置き、爆発させれば、敵勢力を崩す事も可能かと」
「しかし、マイ中尉!その場合西側を実質MS一機で押さえないといけないではないか!」
オリヴァーの提案にモニクが疑問をぶつける
「肯定です」
「相手は、名のある傭兵団だぜ、連邦の陽動部隊と同時に相手すんなって無謀じゃ・・・」
「記録が正しければ・・・タケル君なら・・・もしかすると・・・」
話を振られたタケルは大きく深呼吸をする
「フーーー、レリーさんカーゴとりに行ってください、ここは俺が抑えます」
「タケル君!」
「それが“最善”です、決して“犬死”はしません、何より俺は一対多数は得意ですから」
ニコリと自信ありげに微笑むタケル
「じゃ・・・僕も死力を尽くすよ!」
旧ザクはザンジバルのいる中央エリアに向かった。
「さて・・・来い!」
目に見える敵にタケルは襲い掛かる
○○○●●
巷で『黄昏コウモリ』と呼ばれる傭兵部隊を率いる、ケニー=ロンズ大尉は悪夢を見ている思いで原状を確認していた。珍しいMS、それはオデッサ作戦前に連邦のプロパガンダ放送がポンコツと称していた青いMS・・・ヅダ。
「ハッ・・・冗談じゃない、何がポンコツだ」
笑うしか、彼には出来なかった、確実に落ちていく連邦のジムと61式戦車。ヅダはポンコツなんて程遠い機動性を誇っていた、しかも腕の一つは応急処置で直したのか、別の機体のをつけている、そんな機体一機を落とせないでいた。彼の部隊は流石に無茶な任務ばかりを与えられて生き延びた部隊だけあり、まだ被害は出ていない。しかし、それも長くは続かないだろうと彼は感じていた。先の狙撃もありヅダのパイロットが射撃が得意だと目星をつけ、弾切れを狙うように部下に命じた。弾切れし、接近戦になったヅダ更に強くなり、奇妙な機動も合わさり手がつけられなくなっていた。こんな奴を相手にするくらいなら、数ヶ月前に与えられた陸戦型を使い宇宙で索敵を行うミッションの方が遥かに容易いと思えてきた。
「・・・ジオンのテロリストかゲリラね・・・こんだけ強い奴がいるなら、そんな事しなくても正面から基地落ちそうなんだがな・・・」
そう思える程、目の前のヅダは多対戦を得意としているようだった。
「しかし・・・ふむ、あの戦い方何処かで見た事があるんだがな・・・今は戦闘に集中するか・・・まぁ、しかし結局は一体だしな、悪いが、本当の集団戦というのをご披露しよう」
黄昏コウモリは連携をとりタケルに攻撃をかけはじめる
○○○●●
タケルは弾切れになりつつもトラップと無人マゼラアタックを利用し粗方の陽動部隊を片付けていた。オリヴァー達との通信は続けている、既にカーゴを回収したレリーがタケルのいる所まで向かっている事を知った。しかし本格的に動き始めた傭兵部隊に苦戦を強いられていた。
傭兵部隊の連携は抜群であり、止めどない波状攻撃をタケルは受けていた。
「クッ・・・部隊の錬度の差でここまで違うのか・・・」
既に左肩に取り付けられている盾はボロボロになり、白兵用のピックは使い物になっていなかった。タケルの武器はヒートホーク一本とヅダの機動性のみという状況に追い込まれていた。
『ここまで、凄腕とは・・・敵ながら天晴れだよ!』
何度目になるか分からないジム・ストライカーとの接近戦、ビーム・スピアをヒートホークで上手くいなす。
「ああ、天晴れついでに撤退してくれないかね!」
ヅダは体当たりでジムを弾く。
『こっちも契約てのがあってね!出来ない相談だ!な!』
弾かれたジムはバルカン砲を発射する。それを盾で受けるヅダ。そこを狙ったように後方から陸戦型ジムのミサイルが襲う。
今まで通り避けようとするタケルだが、一瞬ヅダの動きが鈍る
「しま・・・」
向かってくる、ミサイルの何発かが、マシンガンに落とされる。
一発をヅダの盾で受け、盾は大破する。
「タケル君!」
レリーの旧ザクがカーゴを操作し戻ってきた。
それを確認すると敵にカーゴ爆破の邪魔をされないため、タケルは敵に突っ込む
『おおーっと、行き成り勢いが良くなったね!』
ヅダのヒートホークを咄嗟にジムはスパイクシールドで受ける
「ああ、そろそろ、終わりにしようと思ってね!」
接近戦闘をしながらタケルはレリーとの個人通信を行っていた
「レリーさん、準備は?」
「何時でも射出して、爆発させる事ができるよ・・・オリヴァー中尉の準備の良さには驚きだね」
レリーはカーゴを目標ポイントまで移動させはじめた。
『小僧、俺も同感だ、終わりにするぞ!』
後方の陸戦型ジムが一斉射撃を始め、咄嗟に空中に逃げるタケル
それを読んだようにジム・ストライカーも空中に上がる
『小僧、教えておいてやる、お前は凄腕だが、パターンが決まり過ぎている』
そう言い放つと同時にツィン・ビーム・スピアをタケルに目掛け投げつける
「させるか!!」
それを難無く避けるタケル
『・・・そして、戦場という生き物が見えていない・・・』
その言葉を聞いた、タケルはハッとなり後方を確認する
そこにはビーム・スピアで貫かれているカーゴがあった。
カーゴは目標ポイントに到達する事なく・・・爆発した
光が周辺を包み込み、爆風が機体を揺らす。
「レリーーーーーさぁぁぁっぁぁぁん!!!!!」
地上に着陸したタケルはバーニアを吹かし、ヒートホークを掲げ、ジムの着陸を見計らい袈裟斬りを加える。
「アンタはぁぁぁぁあああーーー!!!」
攻撃をビームサーベルで受けるジム・ストライカー
『それが戦場という物だろ!テロリスト、ゲリラがそんな覚悟も無しに戦場に立っているのか!!!』
ジムはヅダに蹴りを加え後方に飛ぶ。
「誰が!テロリストでゲリラだ!」
その反応に一瞬ジムの動きが鈍くなる。
その隙を突き、再度タケルは攻撃を加える。
ロンズは避けそこない、右腕を持っていかれるがスパイクシールドを叩きつけ再び距離をとる。
『小僧・・・本当にやる、この戦争で、今日の契約程割に合わないと思った事はない・・・いや、ジオン側でのオデッサも酷かったな・・・俺はケニー=ロンズ大尉だ・・・お前は?』
静かにそうロンズは問いた
「・・・タケル=シロガネ・・・唯のタケル=シロガネだ・・・」
その官位を述べない、タケルにロンズは疑問を持つ・・・そして、その聞いた事のある名前を思い出し、疑問の回答に素早く辿り着く
『タケル=シロガネ・・・ツィマッド社の・・・“白銀の武士”・・・』
「ああ・・・」
タケルはロンズの言葉を肯定し、ゆっくりとヒートホークを構える
『民間人がこんな所で何をしている?』
ロンズは聞かずにはいられなかった。
「・・・ジオン残党の・・・恩人の・・・脱出を手伝っている」
『・・・ハッ・・・これも縁かね・・・』
それを聞いたロンズは考えた末・・・戦闘の構えを解き、後方に下り、一般回線を開く。
『こちら、傭兵団のケニー=ロンズ大尉だ。我々はこれよりこの戦域より離脱する』
その通信と同時に陸戦型ジムも撤退し始める
疑問に思ったモニクが一般回線に割り込む
『何故だ!?』
『我々はここにジオン残党の“民間人を襲う”テロリストかゲリラが集結していると言われ雇われてきた、しかし実際はそのような者はいない。これは契約主が契約違反をした事になる。契約外の仕事をする傭兵はいない。まぁ、ゲリラはいるようだが、たまたまこちらに来ただけであり、目的地に元々いたわけじゃないみたいだしな』
「アンタ!逃げんのか!!」
タケルの叫びが紅に染まる空に響く
『ああ、シロガネ君よ、俺達を追撃するのは構わないが、さっきの旧ザク、大破してないぞ』
「なっ!?」
タケルはカーゴがあった所を見つめる
『追加装甲をつけていたみたいだが、どうやら耐熱パネルだったようだな、それに爆発の瞬間に後ろに飛んでバーニアを全力で吹かして、威力を軽減していたようだ』
タケルはレリーのいる所に向かう
『んでは、ジオンの皆さん出来れば縁もなく合わないよう祈りましょう。連邦の皆さんは上司がちゃんと契約を守る事を祈りましょう』
そう言い残し、傭兵部隊は夕陽に消えた。
○○○●●
レリー機中破、タケル機小破、ワシヤ機弾切れになるも、黄昏コウモリが撤退した事により、形勢はジオン軍有利となる。モニク、ワシヤ、タケル、そして、レリー各機はザンジバル周辺に集まり、警戒態勢を引く。残りの連邦軍はロンメル少佐に任せていた。
「ザンジバル発進準備できました」
「マイ中尉、急いで発進する必要もないだろう敵を殲滅した後で・・・」
<ピピピ、ピピピ、ピピピ>
暗号通信がモニク達の機体に送られる。
それをワシヤが読み上げる
「敵、連邦軍・・・増援ヲ送リ・・・素早ク、退避スベシ・・・不可視ノ騎士」
「不可視ノ騎士・・・インビジブル・ナイツ・・・!!マイ中尉!」
「分かっています、ザンジバル発進カウントに入ります。ロンメル少佐にも連絡を」
『こちらにも暗号通信はきている、大丈夫だ我々は北の砂漠に退避する、砂漠までいけば我々のホームグラウンドだ。連邦共には遅れはとらん』
「ロンメル少佐・・・有難うございました、御武運を」
『大尉こそ、我らが同胞任せましたぞ・・・ジーク・ジオン!』
「「「「ジーク・ジオン!!!」」」」
ジーク・ジオンの勝鬨と共にザンジバルは宙を目指す。
<ビービービービー>
・・・しかし、事は簡単にはいかなかった。
「ミサイル、南より来ます!」
「よりにも、よってロンメル少佐達がいない方向から・・・マイ中尉後方のハッチを開け迎撃する!」
「了解。ハッチ開きます」
後方ハッチからモニク機、レリー機は攻撃を開始した。弾切れのタケル及び、ワシヤは砲撃手として迎撃に加わっていた。
確実に落ちていくミサイル
(・・・・ッ!!!)
「オリヴァーさん!!速度落として!!!!」
タケルの突然の叫びに驚きながらも一瞬速度を落とすオリヴァー
ザンジバルの前方を掠めるようにビームが光る
ブリッジのガラスは衝撃で弾け、衝撃がオリヴァーを襲う
「う・・・うっ・・・」
「オリヴァーぁぁぁぁ!」
モニクはオリヴァーの名前を叫ぶ
「だ、大丈夫です。隔壁閉鎖、密封化・・・僕は・・・僕達は・・・!!!」
ザンジバルは速度を上げ、その周りをビームが抜ける
「ここからじゃ、撃てないぜぇ!」
ワシヤは限界ギリギリまで砲塔をビームがくる方向に向ける
「私も、駄目だ・・・」
「こっちも同じです、このままじゃ!!」
「・・・」
一人無言のレリーの旧ザクがハッチギリギリの位置に立つ。
「レリー伍長なにを・・・バカな事はやめろ!その機体では無理だ!」
そして、旧ザクはザンジバルから飛び出した
バーニアを吹かし、マゼラ・トップ砲を狙撃方向に向って連射する旧ザク
静かにレリーは語り始める
「キャディラック大尉、マイ中尉、ワシヤ中尉、そして・・・タケル君・・・僕は貴方達と共に歩み、初めてこの戦争で戦う意味を見つけた気がする。僕は戦うよ、死んだ仲間のためじゃなく、生きている仲間のために・・・」
下から突き上げるビームの雨が止む、そしてパラシュートも無く高度からレリーの機体は自然落下していった
「伍長!!!」
「レリー!!」
「レリー伍長!」
「タケル君・・・死力を尽くして任務にあたれ、生ある限り最善を尽くせ、決して犬死にするな・・・この言葉、僕も貰うよ・・・」
タケルの視界は滲んでいた。決して今の結果をタケルは彼に求めていなかった。
「はい・・・」
そしてザンジバルは大気圏を抜け・・・連邦軍の追撃を逃れたのである。
○○○●●
――――地球衛星上
青い、母なる地が足元に広がっていた
タケルは重い空気の漂う艦内、ブリッジに向かった。
途中、ワシヤとモニクに合流する。
そして、ブリッジの扉を開けると・・・そこには宙に舞う赤い液体とオリヴァーがいた。
「オリヴァーーーーー!!」
モニクは素早くオリヴァーがいる方向に行き、彼を抱き上げる
「死ぬな・・・オリヴァー・・・お前まで死んだら・・・私は・・・」
タケルはただただ息を飲み
ワシヤは唖然としていた
そして涙を浮かべるモニク
沈黙がブリッジ内を包み・・・
<グーーーーー>
「へッ?」
タケルはゆっくりとオリヴァーに近づき、顔を覗き込む。
「グッスリ・・・寝てますね・・・」
「な、なっなーーー!」
モニクは爆睡するオリヴァーをワシヤに投げつける
「ちょ、ちょ、ちょーーー!」
第603技術試験隊活動最終記録
我々第603技術試験隊は宇宙世紀0080、1月11日最終任務を完了せり。我々は大気圏より突入せし。この時MS-05ザクに乗るレリー=ヴァン伍長とツィマッド社社員タケル=シロガネを保護。地上にて陸戦艇ギャロップを回収し、バミングイ・バンゴランに向い北上せし。途中味方を保護し、バミングイ・バンゴランではザンジバルを発見しこれを修理す。しかし、脱出前に敵と遭遇、戦闘へと発展せり。この戦闘においてEMS-10ヅダ、地上チューンせしMS-14B高機動型ゲルググ、及び現地改良せしMS-05ザクは複数の連邦軍MSと交戦。ロンメル少佐率いるMS-06Dデザート・ザク部隊の援護もあり見事撃退せし。この戦闘時にタケル=シロガネ駆るヅダは傭兵部隊『黄昏コウモリ』及びジオン残党討伐部隊『ファントムスィープ隊』を圧倒せり。地上チューンの高機動型ゲルググ及び、現地改良型ザクも有効兵器であると証明せし。この戦闘において、レリー=ヴァン伍長はザンジバルを守るため空中より降下戦闘をせし・・・生命の確認は出来ずMIA認定されし。我々第603技術試験隊は今日をもって、解散。私オリヴァー=マイ技術中尉は任を解かれる。
―宇宙世紀0080、1月11日オリヴァー=マイ
宇宙世紀0080、1月15日
<カチ、ジーーージーーー>
タケル=シロガネです。俺達はあの後、オリヴァーさん達の母艦、ヨーツンヘイムに回収された。助けた兵士達も無事サイド3に届けられるようだ。オリヴァーさんは一昨日目が覚めた。そして、お約束ぽくモニクさんがすげぇーマジで怒ってた。あの二人は仲良くならんのか?・・・オリヴァーさん達は任を解かれて皆違う事をするようで。ワシヤさんはサイド3に帰った、結局何をやるのか最後まで教えてくれなかった。モニクさんは少し政治を学ぶといっていた。宇宙に戻ってきたらツィマッド社が無くなっていて、ビックリした。元々戸籍がなくて、ツィマッドのお世話になっていた。困った所をオリヴァーさんがアナハイムに知り合いがいるから何とかしてくれるそうだ。彼も、ヅダと今までの記録を件の彼に届けたいとか・・・。まぁ、良くわからんけど何とかなるっしょ!以上!
<カチ>