Muv-Luv IGLOO [M.L.I] 記録無き戦人達への鎮魂歌 (再投稿)   作:osias

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マハラジャ=カーン閣下の命を受け、試験評価機体の受け取りに向ったタケル=シロガネとオリヴァー=マイ。そこで出会ったのはオリヴァーの(恐)妻であるモニク=キャディラック=マイとかつての敵、傭兵団黄昏コウモリ元団長のケニー=ロンズであった。二人は試験評価の機体の整備が万全ではない事をタケル達に伝える。

タケル達は改造されたヅダの制御コンピューターを戦術戦略研究所所属のジョブ=ジョンから受け取る。この時、タケルは不思議な少女マリオンと出会う。

その出会いはタケルに何かを感じさせるものであった。

ジョブ=ジョンはシャア=アズナブルと同じ様にタケル達にフォン・ブラウン市を狙うテロリストを警戒するように伝えた・・・


第五話「涙は扉を開いた~後編~」

宇宙世紀0081、10月22日

 

<バタバタバタバタバタ>

 

廊下を慌しく走る足音でタケルは目を覚ました。

 

「ん・・・・?」

 

タケルは起き上がり、素早く“迷いもせず”パイロットスーツに着替えた。

顔を洗い終ったと同時に部屋のドアが開く。

そこには既にパイロットスーツを着て、サングラスを光らせる、ケニー=ロンズがいた。

 

「少年、流石に起きていたか。そろそろ第2種戦闘配備になる、ブリーフィングルームまでいくぞ!」

 

そう言い立ち去るケニーの後をタケルは追った。

 

 

―――ブリーフィングルーム

 

「タケル=シロガネ中尉入ります」

 

「少年を連れてきたぞ」

 

ブリーフィングルームでは映像と通信傍受から得られる情報を処理するオリヴァーとモニクの姿があった。モニクはヘッドフォンを耳にあて、情報を書きとめ、オリヴァーは映像を解析していた。

 

『フォン・ブラウン市民の皆様、現在緊急避難勧告が発令されました、速やかに近くのシェルターまで避難し、係員の誘導に従ってください。繰り返します、フォン・ブラウン市民の・・・・』

 

『敵は何人だ?どこにいる!!!』

 

<ザ・・・ザ・・・>

『・・・・・地区・・攻撃ヲ・・受・・テイル・・・我ガ・・壊滅・・』

 

『基地を守れ!基地が攻撃を受けている!』

 

『・・・聞いて・・・人・・・助け・・れ!・・・区の・・・だ!・・・子供・・・助・・・』

 

フォン・ブラウン市の放送、軍通信、一般緊急通信。様々な電波が交差し、混乱がフォン・ブラウン市内で発生している事だけは分かった。

 

タケルはその悲痛な叫びに顔を歪める

 

モニクは一通りの情報を紙に書き終えると方耳をヘッドフォンから外す。

 

「・・・こんな所ね」

 

「モニク姉さん、状況は?」

 

「最悪ね、最悪だけど・・・戦略としてはすばらしいわ。テロリストはジオン公国軍を名乗り、同時にフォンブラウン市内にある重要拠点・・・基地、兵器工場、研究所などを攻撃。今までは歩兵による白兵戦しかしていないのにここに来て彼らはMSを使ったわ。編成はジオン軍MSと連邦軍MSの混合部隊。連邦軍のMSは未だに味方識別がされていて、結果はこの・・・混乱よ」

 

「で嬢ちゃん、俺達はどうするんだい?」

 

「モニク=マイ特務大尉です“ロンズ中佐殿”。我々の工場は表向きには廃鉄工場よ、ここは狙われるとは思わないが、用心をするに越した事はない、備品などは既にヴァル=ラングに積み込みはじめている。積み込みが終り次第、我々はフォン・ブラウンより離脱。整備士達も避難する」

 

「この状況を見て見ぬフリをしろと!俺達(ジオン軍)の名を騙る奴らをのさばらせると?」

 

タケルがテーブルに手を叩きつけ、吼える

 

「落ち着け少年、お前はスーパーヒーローか何かか?俺達の仕事は兵器の運送、試験評価だけだ。降りかかる火の粉を払うならまだしも自分から火の輪にダイブしたけりゃサーカスにでも行け」

 

そう言いケニーはタケルを笑い、食いかからんとするような目でタケルはケニーを睨んだ。

 

「ケニーさん、どうやら降りかかる火の粉が来たようです。第2種ではなく第1種戦闘配備でお願いします」

 

フォン・ブラウン市内にあるセキュリティカメラの映像を傍受していたオリヴァーが静かに状況を説明する。

 

「どういう事だ?技術屋さん?」

 

「MSがこちらに向かってます。ジムコマンドですが連邦なのかテロリストなのかわかりません」

 

「だが、向かっているだけだろ?」

 

「テロリストよ」

 

モニクはヘッドフォンを抜き、スピーカーに換え、他の周波数をフィルター、シャットアウトする

 

<・・・ザ・・・ザ・・・>

 

『おい、こっちであってんのか!?』

 

『おお、その先にある廃鉄工場でジオンが新型を開発してるってさ』

 

『ハハハ、負けたのに諦めが悪いこった!』

 

『そのお陰で俺達の戦力が増えるわけだ!いや、“軟弱な同志ではなく我々が有効活用してよろうではないか諸君!ジオンとして!”』

 

『ちげぇねぇな!ジーク・ジオンてか?』

 

『『『『『ハハハハハハハハハハ』』』』』

 

<ブツ!>

 

モニクは通信機の電源を切る

 

「下種が我々の同志でもないのか」

 

「テロリストが我々ジオン軍関係者が暴走しているのかと思いましたが、違いましたね」

 

「な、何なんだよこいつら!」

 

「少年よ、先の大戦、まさか本当に連邦対ジオンだけだと思ったのか?世の中常に利益を得ようとする第3勢力はいるもんさ、俺だってそれに入る」

 

「兵器を奪い戦力を整え、新たな力を得る、それらの武器を売るため、自分達の力を売るために戦いの火種を撒く、そんな俗物と言ったところですか?ロンズ中佐殿?」

 

「・・・何か俺もその俗物に入れらている気もするが・・・まぁ嬢ちゃん「マイ特務大尉です」の読みで当りだ」

 

「クソ!」

 

タケルはブリーフィングルームを出て、MSハンガーに向かって走った

 

「若いねぇー」

 

「何をしている中佐殿?私も出ますが、貴方も出撃ですよ?」

 

「なんで?契約じゃ試験評価だけだろ」

 

「試験評価にうってつけの状況じゃない?」

 

「コンバットプルーフ・・・論理的です」

 

「はぁ~・・・分かったよ俺はギャンで出るぞ」

 

「じゃ私はドムだな、オリヴァーはヴァル・ラングを頼む」

 

「了解しました」

 

三人もブリーフィングルームを出た

 

○○○●●

 

いち早く出撃したタケルはヅダ改を駆り敵と接触していた

 

「クッ・・・新しいコンピューター(EARTH)をつけてもまだこれだけピーキーか!!」

 

敵からの攻撃を空中で大きく宙返りし回避する。機体は過度のブーストにぶれる。

 

「落ち着け・・・デュバルさんは言っていたツィマッドの機体はどれも繊細でレディみたいだと・・・レディを扱うように優しく、その動きの一つ一つに集中して、会話のタイミングを合わせろって!」

 

ジムコマンド3機の攻撃を今度は小さく余分な動きをせず回避する、1撃は全く別の所を攻撃した

 

「ブレからくる不規則軌道に騙されたか・・・こいつはこう使うんだな・・・しかし久々の実戦でビビるかと思ったけど・・・シャア大佐の模擬戦に感謝だな・・・」

 

戦場は機体に慣れたタケルの独壇場となった

 

『なんだ、よコイツ!こんなの聞いてねぇぞ!』

 

『ジオンの新型は動かねぇんじゃねぇのか!?』

 

タケルは回避運動と共にチェーンマインを放ち、それをショットガンで爆破させ煙幕を作る。この時点で2機が落ちていた。

 

『おい、お前ら返事しろよ!おい、クソォ!クソォ!クソ!!!!』

 

そしてそのパイロットが最後に見たのは煙をシールドピックで突き破った銀色のMSであった

 

○○○●●

 

『敵、小隊全滅したもようです』

 

オリヴァーはヴァル・ラングから情報をモニク達に送っていた

 

「流石はツィマッドの侍て所か、しかし離れすぎて追いつくのだけで大変だわ、こっちの推進力も考えてほしいな」

 

『モニク、ロンズさん前方から別部隊が来ます。後こちらの出航デッキが故障か破壊されてか分かりませんが開かないので、積荷を搭載しだい、フォン・ブラウン市に上がります。その後は全機帰艦し、離脱したいと思います』

 

「了解したわ、セキュリティーカメラの傍受が出来てて助かったわね」

 

レーダーに4機MSが捉えられる

 

「ジムコマンド、量産型ガンキャノン、ザクが2機・・・汚物の方ね、ゴミ虫は早々に駆除しましょう」

 

「お嬢ちゃんのその言い・・・いや、何でもない、援護を頼む」

 

「言われなくたってそうするわ!あいつらには私達に会った不運を嘆かせてやるわ!」

 

モニクのドムは地面を滑走しながらラケーテン・バズとシュツルムファウストを同時に発射、着弾を確認せずにビルの後ろに隠れる。

 

攻撃によりザク1機はバズーカの砲弾で吹っ飛び、ジムコマンドはツェツルムファウストを盾で防ぐも左腕をもっていかれる。

 

ケニーのギャンはビルの屋上から屋上に跳ね、敵に近づいていった。

それを視認したガンキャノンはギャンに向けてキャノンを撃つ。

 

「ロンズ中佐!」

 

注意するように叫ぶモニク

 

「落ち着け、これくらい無問題だ」

 

そして何事もないかのように砲弾をビームソードで切り払う

砲弾は後方に飛びビルに当り爆発する。

 

「非常識だな貴殿は」

 

「誉め言葉と受け取っておく、よ!」

 

その光景に一瞬硬直した敵の隙を突き、ヒートソードをもう一機のザクに投げ撃破する、

そのまま飛込みビームランサーでガンキャノンを串刺しにした。

 

ジムコマンドは反転し逃げようとする

 

「嬢ちゃん!」

 

叫んだ時には既にバズーカの砲弾がジムコマンドを追い・・・破壊した

 

「良い判断だ」

 

「有難うと言っておくわ、そして、マイ特務大尉です。しかし貴殿の思惑通りというのは気に入らない・・・相手が逃避行動に出るのを予測していたのでわ?」

 

「ノーコメントだ」

 

ケニーは笑う。モニクは気に食わないが、それでもケニー=ロンズの実力は今の状況では心強かった。

 

「少年を追うぞ!」

 

二人はタケルの後を追いかけた

 

 

○○○●●

 

タケルは廃鉄工場に向かっているであろう機体を粗方撃破し、撤退準備に入っていた。

 

「連邦軍が来る前にオリヴァーさん達と合流し、クッ・・・」

<助けて>

 

普段よりは軽い頭痛に一瞬頭に手を伸ばす。

 

「こっちか?」

 

タケルは崩れたビルの側に寄った。

そこには見覚えのある青髪の少女が瓦礫の下敷きになった金髪の青年を助けようとしていた。

 

タケルは素早く集音機とスピーカーのスイッチをいれる

 

「マリオンさん、ジョブさん!」

 

「タケルさん・・・」

 

「・・タケル君か!」

 

ジョブ=ジョンの生存を確認し、安堵するタケル

 

「大丈夫ですか?」

 

「下半身を挟まれただけです、悪運は強い方で助かりましたよ」

 

タケルはマニュピュレーターを操作し、瓦礫を撤去しはじめる。

 

<・・・タ・・ゃ・・避け・・>

「敵!」

 

「タケルさん!!」

 

後方からタケルのヅダ改にビームが当る

 

『やったか!亡霊が!!!消えろ!』

 

しかし、ビームは装甲に弾かれる。

その間に瓦礫を撤去し終えるタケル。

 

 

「ここには民間人がいます!俺に戦う意思はありません!」

 

『しるかよ!』

 

『やっちまえよ!』

 

ジム1個小隊は攻撃を開始、ヅダ改はマリオン達を守るようにしゃがむ。

 

<ダダダ、ダダダ、ダダダ>

 

攻撃はシールドを少しずつ削り、試作ビームコーティングを剥す

 

『何て固い機体だ!』

 

『だが、動かなきゃタダの的だな!』

 

『ヒャハハハハハ』

 

防御し続けるタケル、

 

街の所々では煙が上がり、

 

人々の悲鳴が木霊する、

 

銃撃は空に響く

 

「アンタらの仕事は人助けじゃないのかよ!!!こんな所で・・・!アンタらは!!!人の命を・・・ッ!」

 

<―――――――^ⅴ―――――――>

 

突然の違和感と吐き気がタケルを襲う

 

<助けてくれ!>

<死にたくない!>

<ママ、パパー>

<来るな!来るな!>

 

タケルは身体の中に何かが入ってくる

 

嫌悪感、

 

悲しみ、

 

絶望、

 

自然と一滴の雫がタケルの頬を濡らし

 

タケルの中の何かが切れる。

 

「タケルさん、ダメ!」

 

次の瞬間ヅダ改のモノアイが縦横無尽に動き、赤いモノアイは白銀色に変る

 

<SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL HUMANKIND SAVE ALL >

 

<TEAR System Stand By>

 

Terminate

Enemies at

All

Range

 

<我全範囲ノ敵殲滅ヲ優先ス>

 

それは正に幻影

 

連邦の兵士には一瞬にして敵が消えたかのように見えただろう

 

ヅダ改が暴走しはじめて、僅か10秒・・・連邦軍のジム小隊は沈黙し

 

何かを求めるようにヅダ改はフォン・ブラウンの戦場に消えた。

 

「タケルさん・・・」

 

ヅダ改が消えた方向を心配そうにマリオンは見つめた。

 

○○○●●

 

ヅダ改が謎の暴走をしたその頃・・・

 

「連戦と民間人の救出で少年には追いつけないな・・・」

 

「しかたないわ、攻撃されるなら反撃はしざるおえないし、それに民間人を無視するわけにもいかないわ」

 

二人が民間人を誘導し終えるとオリヴァーから通信がはいる

 

『モニク、ロンズさん、無事ですか?』

 

「オリヴァーか?無事だそちらの状況はどうなっている」

 

『デッキから都市内部に入り、近くまで来ているので直ぐに合流できると思います』

 

「技術屋!現在の状況は分かるか?」

 

『はい・・・状況は連邦有利です、連邦軍は軍艦を都市内で展開し始めました。作戦の一部なのか、又は実際に負けているのかは分かりませんが、テロリストと思われる部隊は撤退を開始。民間人の非難は9割以上完了している模様です』

 

「タケルの方はどうなってるの?」

 

オリヴァー達が乗る試験機には全て情報を記録、分析、送信する機能があり。情報は全てヴァル・ラングのメインコンピューターに流れるようになっている。

 

『タケル君は・・・ん!?』

 

その情報からタケルの状況と位置を確認しようとしたオリヴァーは異変に気づく。

 

「どうしたの?」

 

『タケル君の機体に異常があるようです・・・これはErr・・暴・・走・・しているのか?・・・なんだこのデータは!?ピークでの推進力は06の9倍?』

 

パイロットの身体状況が分からずともタケルが危険な状況にいる事は一目瞭然であった。

 

「06・・・?ザクの9倍といったら1800トンくらいか!?人間がそんなんに耐えられるのか!?」

 

当然それほどのインパクトがダイレクトにパイロットに伝わるわけではない。だが、機体の構造上そこまでのインパクトを吸収するようにできていない。通常のザクで良くて250~300トンくらいの推進力のインパクトを吸収する。故に、改造されているとはいえ所詮ザクと同時期に開発されたヅダがそれだけのインパクトをパイロットに伝えずに吸収するとは考えにくいのである。

 

『・・・データを送ります、素早くタケル機を回収し、フォン・ブラウンを離脱しましょう・・・皆さん気をつけてください、タケル君のいる地点では軍艦が展開しているようです』

 

モニクとケニーは途中でオリヴァーと合流し、タケルのいる場所に向かった。

 

○○○●●

 

<ビシャーーー>

 

化け物の鮮血が宙に舞い、ヅダ改のヒートホークが勢い余って地面に刺さる。

何匹同じ化け物を殺したのかタケルにも分からない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

タケルは息を整え。

そして眼前の化け物達を見る。

化け物は数種類いて、全て同じ特徴を持つ。

それは人類から見て、嫌悪感を抱かせる風貌。

一匹一匹何処となく人の特徴を持つが、一目で異形と認識できる。

 

この化け物達には名前があった筈だが、タケルには思い出せない、思い出す余裕もない。

 

また何匹か殺した時、一匹がタケルに突進し、タケルを捕らえる。

それはカニみたいな腕を持ち、蛸のような形をした化け物であった。

 

今まで敵の攻撃が掠りもしなかったため、この状況にタケルは驚く。

 

敵の攻撃をヒートホークで受ける。

 

後方に下ろうとするが、一つ目の化け物からの遠距離攻撃で上手く離れられない。

 

<・・・ね・ん・>

 

タケルには眼前の化け物が何か言った気がした

 

<タ・・・ル・・>

 

後方の目玉も同じ様に声をかけてくるような気がした

 

<・・・ケ・・・く・・・ん>

 

見えない所からも声をかけられる

 

<タケルさん・・・>

<タケルちゃん!>

 

「・・・ぁぁ・・・俺は皆・・・ごめん・・・ごめん・・・俺は・・・スミカ!!」

 

その呼び声に答えるように涙で顔を濡らすタケルは叫び

 

そしてタケルの意識は途絶えた

 

○○○●●

 

<ビービービー>

「ちっ・・・」

 

コクピット内に響く警告音に対して舌打ちをするケニー。

暴走するヅダ改をモニクの援護、オリヴァーの誘導、連邦とテロリストの犠牲の上で何とか押さえつけたが、その代償にギャンの駆動系部分とエンジンは悲鳴を上げていた。

ビームソードでヒートホークを受け、動力を切ったヒートサーベルでヅダ改を押さえた。

 

「・・・いい加減目を覚ませ少年!!!」

 

額に若干の汗を流しながらケニーはタケルに話かける。

 

「シロガネ=タケル中尉!気を確かに持て!」

 

モニクの声が響く

 

「危険領域です!エンジンカットをしてください、タケル君」

 

オリヴァーは何時ものように冷静さを保とうとしていた。

一番索敵範囲の広いヴァル・ラングはいち早く戦域に入る敵艦を捉えていた。

 

「ここから早く退避しなければ、敵大隊と接触し、艦隊戦になります・・・!!!!」

 

「チッ、鈍重な連邦もこんだけ時間やれば動くか・・・」

 

ケニーは舌打ちをし、操縦桿を再び強く握る。

 

「オリヴァー!敵との接触までどのくらいだ!」

 

「もう戦闘区域には入ってます」

 

焦りが一同を襲う・・・

<タケルさん・・・>

<タケルちゃん!!>

と三人は少女達の声に驚く

 

「・・・・め・・ん・・俺は・・・・ス・・カ!」

 

そしてその声に答えるようにタケルが何かを叫びヅダ改は停止する

 

「何、今の・・・」

 

「声・・・少年を止めたのか?」

 

「・・・!敵、連邦軍、サラミス級撃って来ます!」

 

<ヴォォォォォーン>

 

砲撃が空を裂く

 

「ロンズさん、タケル君を回収してください。このままでは的にな・・・」

 

オリヴァーは画面に映るヅダ改の異常な数値に気をとられる、ヅダ改を見つめると一瞬涙のような光が銀色のモノアイより漏れる

 

「技術屋どうした!?」

 

ケニーの怒鳴り声にオリヴァーはハッとなり意識を戦場に戻した

 

<ビービービー>

 

ロックオンの警告音が耳に響き、オリヴァーは冷たい汗を背中に感じた。

 

「敵艦隊砲撃回避を!「オリヴァー間に合わないわ!」なら僕が!盾になるくらい!「技術屋!」」

 

オリヴァーはタケル、モニク、ケニーを守るように前に出た。

 

画面一杯に閃光が広がる・・・そしてオリヴァーはビーム撹乱幕発射ボタンに指を伸ばすが間に合わない事に気づく

 

死を覚悟した三人を別の暖かい光が包む

 

それは優しくも悲しいそんな感覚の

 

ハレーションが機体のモニターを覆い

 

そして

 

艦砲射撃が通過したそこには何もなかった・・・

 

そして遠くからタケル達が消えた方向を見つめる少女、

 

マリオンは何も無い宇宙(ソラ)を眺めていた

 

「貴方の理想(ゆめ)はここで叶えられないから・・・

行方しらぬ明日は貴方が光となりて導いて、

例え未知をたどり、例え傷つき、力尽き、飛び立つためのツバサを傷めても、

貴方には新たな仲間が力があるから。

ただひとつ進むべき路の彼方を眺めて、時を越え、果てしない未来へ旅立って・・・

天命(さだめ)に負けないで

 

・・・バイバイ・・・タケルさん」




アクシズ技術試験課活動記録報告書

我々アクシズ技術試験課は宇宙世紀0081、10月22日フォン・ブラウン市にて連邦軍及びテロリスト部隊の戦闘に巻き込まれ試験機の実戦試験を実施せり。整備未完了ながらも各機奮闘せり。シロガネ中尉はEMS-10ZFbに搭乗し、先行、敵を殲滅。後を追うようにマイ特務大尉はMS-09F/TROPにロンズ元中佐はYMS-15Kに搭乗、シロガネ中尉に合流すべく後を追う。されど、民間人の救助に時間をとり、シロガネ中尉は孤立。この時EMS-10ZFbは謎の暴走をせし。マイ技術大尉乗るヴァル・ラングは物資搬入を終了し、マイ特務大尉達と合流せし。暴走するEMS-10ZFbを我々三機及び敵を囮に使いつ、捕縛に成功。されど、連邦軍艦隊による艦砲射撃により我々はこの世界より消滅せり。

―宇宙世紀0081、10月22日



        ―西暦1999、10月22日   オリヴァー=マイ技術大尉
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