Rの目には、だだっ広い草原がどこまでも続いていた。少しひんやりする程度の温度を感じながら、この景色を眺めていた。空全体が雲に覆われているようで、日光さえも遮られている。過ごしやすい場所ではあるが、遮蔽物がほとんど無いような場所だ。もし雨や雷が訪れたら、この世界の事だ、何事も無く終わるなんて到底ありえない。此処はあまり時間をかけたくないなと、一人ブツブツ呟いていた。
大きな木が数本あるだけで、山や丘のようなものも見られない。花や建物などがあってもおかしくないが、そういった物はなさそうだ。木の枝をよく見ると、枝1本ずつに麻紐が1本くくりつけられており、1本ずつに物品が吊るされている。ない所もあるが。
ざっと見るだけでも、いくつか吊るされているのが見える。
・アーモンドウォーター
・アヒルのおもちゃ
・約30cmぐらいの瓶
・錆びた鍵
・枯れた花束
使えそうなのはアーモンドウォーターと、瓶くらいだろうか。吊るされていた2品を麻紐から解いて、Rの物にした。
Rの目には入っていたが、あえて見ないでいようとした物がある。それは、真っ黒な木だ。真っ黒に塗りつぶされた木が遠くにあるのは見えていた。だが、異常な気質と不安さから、近づく事に嫌悪感を覚えていた。空気が変わって少しピリッとしているというか…、言葉に表すのは難しいが、そんな気分になる。
黒い木の枝にも、さっき見たような光景が見られる。何か物品が吊るされているが、得る為にはその木に近づかないといけない。何か得体の知れない物に巻き込まれたくも無いため、渋々Rは諦める事にした。
黒い木を除けば、それ以外は大きく変わったところがない草原だ。
青々とした草が風に吹かれて優しく靡いている。ここにポカポカするお日様があれば100点満点だったのに。
そんな事を思いながら、アーモンドウォーターと瓶があった木の近くまでまた歩きだす。何かまた得れる物があると良いんだけど…そう思いながら歩いていると、木の近くで何かに躓いてしまった。このままだと木に向かってぶつかってしまう!片腕にアーモンドウォーターと瓶を持っていたRは、割れないように衝撃から守る体勢をとる。しかし転んだと思いきや、木をすり抜けて地面をスポッとすり抜けた。すり抜けて全身に地面を叩きつける。うぅ…と唸り、アーモンドウォーターと瓶を抱えたまま、身体をゆっくり起き上がる。
Rがすり抜けてきた場所は、駅の【地下の通路】にも似たような場所だった。