【The back rooms】   作:T@ma

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【レベル256 η:無限空島】

梯子を登りその先に辿り着いた世界。

時間は昼頃だろうか。正確な時間は分からないがそれぐらいだ。

何処までも青く広がる空に小さな空島が、上下左右にたくさんある。

RPGで天空のステージがあるなら、それに近いものを感じる。

 

 

 

 

此処は外だからだろうが、気温が少し低いようだ。冬よりかは寒くないが、春より暖かくもない。

ここには一体何があるのだろうか。何があったって今更驚きもしないとは思うが。

 

「おや、君は...前にも会った事あるよね?覚えているよ。」

 

後ろから声をかけられ振り向くと、Rが遠い昔にも思えるくらい前に会った事ある、見覚えのあるあのフードを深く被っている男がいたのだ。思わぬ再会?に驚いていると男が笑いながら

 

 

「君まだこの世界にいたんだ。てっきり死んだんじゃないかって思ったけど...。まあ生きてるなら良かったよ。」

 

 

こちらは笑い事では済まされないくらいには大掛かりな出来事に出会ったんだが...。

そんな少し不機嫌な態度で男も察したのか、一つ咳払いをする。

 

 

「まあ、冗談はここまでにして...。僕は君と初めて会ったあの場所以外にも拠点を持ってるんだ。といっても誰か仲間といるとかそんなんじゃないけどね。群れるの嫌いだし。」

 

 

苦笑いしながら男は話を続ける。

 

 

「この世界で何を見てきたかという、探索者の話は貴重な資料になるんだよね。君に手間をかけさせるのを重々承知の上でお願いしたいんだけど、どんな世界を見たかを覚えてる限りでいいから、教えてほしいな。お礼に何か物品あげるからさ。ね?悪くはないでしょ?」

 

ここでもRは悩んだ。しかし初対面ではないのも事実だし、到底人に話したところで誰も信じてはくれないだろう。それならば正体は知らない人ではあるが、話して心に整理もつけたい。Rは頷く。

 

 

「やったあ!じゃあ早速僕の拠点に来てもらおうかな。...とその前に、僕の手を握ってから目を閉じてくれるかな?」

 

 

男の言う通りにRは従う。男の手はRより少し大きく、手袋をしているせいか温かさなどは感じられなかった。

 

 

「じゃ、僕がいいよって言うまで開けちゃだめ。いーい?」

 

無言で頷く。

 

 

「行くよ!離しちゃだめだよ!」

 

 

男が大きな声で言うと、Rの足元が不思議な感じになる。何が起きているか確かめたくて仕方ないが、Rは必死に男の言う事を守り、強く目を閉じると同時に手を更に強く握る。

 

...

 

 

 

...

 

 

 

...

 

 

 

 

不安定なバランスは少しずつ安定していく。

 

 

「...お疲れ様!もう目を開けていいよ!」

 

 

明るい男の声にホッとしつつも、ゆっくり目を開ける。

目の前に見た物にRは口をぽかんと開けて見上げていた。

 

 

 

そこには拠点なのであろう建物が建てられているが、Rが予想していた大きさより10倍は大きいのだ。

色は白く、材質は何で出来ているか分からない。だがちょっとやそっとした事では崩れないだろう。

 

 

「すごいでしょー!これ僕の拠点なんだ!自慢の拠点!もう此処が家と言っても過言じゃないね!」

 

 

男は嬉しそうに自慢している。これにはRも素直に拍手した。

 

 

「ここで立ち話するのもあれだし、早速入って入って!」

 

 

嬉しそうに男はRの前に走りながら拠点の中に招き入れてくれた。それに続いてRも中に入る。

 

 

 

 

 

男の拠点の中は、あっちこっちにRでは分からない物が乱雑に置かれている。

箱らしき物もあれば、薬っぽいものもあるが、いずれも触らないほうが吉だろう。

 

「荷物はてきとーに置いといていいよ。とりあえずそこの椅子にでも座ってゆっくりしてよ。今飲み物持ってくるから。」

 

そう言って男は近くの扉を開けて中に入っていった。

男の言う通りにRは椅子に座る。

この男は片づけが苦手なのだろうか、床に物が乱雑に置かれている。

壁には何かの研究をしたのか、資料がたくさん貼られているがRが見てもチンプンカンプンだったが、隣に何枚か写真が貼ってある。これはこのレベルを撮ったものだろうか。見た事ある青空が映っていた…と同時に、どの青空の写真にも、左上に256と数字が書かれていた。フォントや色は様々だ。

 

 

「物が散らかっててごめんねえ。僕は物を片付けるのが嫌いでさ。まああまり気にしないでよ。」

 

男は片手にノートパソコン、片手にお盆をもち、二人分の飲み物を持ってきた。

 

「疲れたでしょ、飲みながら君が旅してきた話を聞かせてくれたまえ。」

 

Rの前と男の近くに飲み物が注がれているコップが置かれ、近くにノートパソコンも置かれる。

コップの中身を見ると、透明な液体が注がれている。

 

「それはアーモンドウォーターだから、飲んで大丈夫だよ。」

 

そう言って男はゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んでいく。

Rもゆっくりと一口飲んでいく。男の言う通り、味わった事がある味だ。

ホッとしながらRもまたゴクゴクと飲んでいく。

 

「じゃ、早速君が今まで旅してきた冒険の話を聞かせて頂こうかな。」

 

男がノートパソコンを開いた後、カタカタとキーボードの音を鳴らして何かを入力している。

 

 

「ゆっくり質問していくからゆっくり答えてくれたら嬉しいな。じゃあまずは...。」

 

Rは男に質問された事をたどたどしくも答えていく。初めは慣れない事に戸惑いを感じていたが、男が優しく接してくれる事にゆっくり心を開いていく。

それからRと男の話は何時間も何十時間も続く。その間に二人の間に沈黙が流れる事は一度もなかった。

 

 

 


 

 

 

 

 

「いやあ、まさかこんなにレベル調査が進むとは思わなかったなあ、ありがとう。」

 

何日経ったか分からない時が過ぎた頃、Rは机にぐったりして疲れて果てていた。

男は嬉しそうにカタカタキーボードを鳴らしながら資料をまとめている。

この男は疲れというものを知らないのだろうか。

 

「協力してくれてありがとう。疲れたでしょ。ベッド用意しといたから使ってね。」

 

男が扉に向かって手をかざすと、自動的に扉が開かれる。

男が扉に指さしてからオッケーと合図を送ってくれる。使っていいよという事だろう。

その合図に甘えて遠慮なくRは指さされた扉に向かって、ふらふらと歩いていく。その部屋の中には、大きなベッドが用意されている。そこに飛び込む形で眠りにつく。

何か考える暇もなく、Rは眠りの底に落ちていった。

その間、Rは悪い夢も良い夢も見る事はなかった。

 

 

...

 

 

...

 

 

...

 

 

...

 

 

 

 

 

Rがゆっくり目を覚ますと、勢いよく飛び込んだあの布団の中に潜っていた。

ゆっくり身体を起こし、ゆっくり動かす。軽く体操をしていると、男が様子を見に入ってきた。

 

「あ、やっと起きた。君結構長い時間寝てたねえ。余程疲れてたんだね。ありがとうね。」

 

優しい声がRの心に響く。泣きそうになる程の思いをしたのはどれぐらい昔の事だろう。

泣くのをグッと堪えて、男に軽く手を振る。

 

「ご飯は作ってあるからゆっくり食べてね。あ、でも今は外が暗いから外には出られないからね。今出ると見えないナニカにやられちゃうからね。」

 

男が言った通りに窓からの景色を見ると、外は真っ暗の状態で何も見えない。

こんな中を歩くのはごめんだ。男の言う通りにして、用意されていた朝食がある所にまで向かい、椅子に座る。

目の前に用意された朝食から良い香りが漂う。地球によくあるパン、スープが置かれている。

いただきます。と小声で呟き、勢いよくかぶりつく。

久々に味わった懐かしい味が口の中に広がっていく。美味しさと相まって涙が止まらなかった。

そんな様子を男は後ろから静かに見守っていた。

 

 

 


 

 

 

 

食べ終わった後、Rは男に多大なる感謝を贈った。

男もまた嬉しそうにしていた。

 

 

ふと景色を見ると、あの窓から淡い光が差し込んでいた。

恐ろしい夜が知らぬ間に終わっていたみたいだ。

男にこの事を確認すると

 

「...うん、今ならもう出ても大丈夫だね。」

 

男からのお墨付きも出た。そろそろ旅に出ないといけない。

それを男に話す。男もまたそれを分かっていたような反応を示す。

Rは自身が持っていた荷物を抱えて外に出る身支度をする。

 

「またいつでも此処においでよ。歓迎しているからねえ。」

 

男はRに嬉しそうに話しながらRの背中を見て見送る。

 

 

その言葉に振り向く事なく、Rは男の言葉に軽く手を上げた。

 

 

 

 


 

 

 

 

男と別れたRは、空島を調査しようと歩いていると、地面に足をひっかけたRは勢いよく地面に向かって倒れていく。転ぶ!と思うよりも先に ああ、またか...と思えてきたRの予想は当たり、地面に当たる事無くすっぽりと抜け落ちてしまった。

 

もう落ちる事に少し慣れてしまったRは、何も思わないままただ真っ逆さまに落ちていく。

 

 

 

 

そんな事を知らない男のフードが風で少し揺らぐ。

揺らいだその先に、男の顔の一部は見えなかった。

見えないと言うより、存在しないようだ。

 

 

 

Rは濡れながら落ちていた

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