針葉樹林を抜け出すと、そこには大きなジャンクヤードらしき建物がどっしりと待ち構えていた。
今まであったような緑たくさんの場所から、一気に荒れ果てた姿にRは困惑する。山の上にいたはずなのに、こんな場所に来る事があるのだろうか?
まあ、この世界なら全然有り得る話ではある。今更すぎる。
まるで待っていたと言わんばかりの大きな建物や付近に目星をつけ、歩きながらじっくり観察をしてみる。
周りに大きな塀に囲まれていて、入れる箇所は1箇所だけ。
ジャンクヤードらしき建物はよく見ると、中央辺りに違う建物(恐らくはスクラップしたりする場所だろうか?)がある。塀の入口付近には、何か張り紙のような物が貼ってある。近づいて見ると日本語ではない為、何と書いてあるかはよく分からないが、写真を見ると人々が何かに対して暴動を起こしているように感じ取れる。平和的な記事では無さそうだ。
200m先には、そこに放棄してから何十年も経ったかのような廃車が1台ぽつんと置かれている。まるでこの世界に馴染めずに朽ち果ててしまったかのように、ただそこに置いてあるだけのオブジェがそこにあった。
中を覗くと、運転席がある場所に人が落ちる穴がぽこんと存在していた。その他に違和感はない。穴がある時点で使い物にならないが、タイヤも無い為どの道この車は走る事は出来ないだろう。
そんな車を横目に、建物に入ろうと歩く。
何かの工作作業用の機械の迫力さに唾を飲み込みつつ、入口の扉のドアノブを捻ると鍵は掛かっていないようで、ギィ…と音を立てて開いた。静かに閉じる。
中は広くも狭くもない。電力は通っておりどこからか電気がついている。奥の部屋に作業スペースらしき空間がある。その空間内には、4つの小型テレビが机の上に置かれており、椅子が一脚あるのみだ。
上の階(往復可能。他に行く部屋はなし)には外で見た時は気づかなかったが、窓らしき物がある。
そういえばと思い出す。このジャンクヤードらしき建物に意識を持っていかれていたが、外を見るのを忘れていた。Rは階段を上がって窓を見る。外の景色が見える。
針葉樹林以外の植物は見当たらない。どこを見ても砂埃が舞っている。風は気になる程ふいてはなかったはずだが。
少し奥に目をやると、何か生き物らしきものが見える。よく目を凝らして見てみる。あれは…生き物の形をしたナニカと言う方が良いのだろうか…?左半身がない変なものがいる。
人間に近い形だが、分かるのは人間では無いという事。あんなのに近づくのは真っ平御免だ。
もしかしたら、知らないうちに最善行動をとっていたのかもしれない?そう思うと身体の震えが少し出てきた。
嫌なものを見たRは頭を痛めつつ階段を降りて1階に戻る。少し気分が悪い…。入った時に見つけた小型テレビが置いてある部屋に入る。椅子に座り一息つく。
小休憩出来るこの時間に幸せを感じつつ、どうするかと悩む。常に危険な場所にいるのだから、気が休まる時がない。疲れがどっと押し寄せる。何も考えずに机の上の狭いスペースに乗っていたリモコンを手に持ち、無意識的にテレビをつける。
パッとテレビが1台映り、有名な某ファーストフード店のcmが流れる。それはRも大好きなお店で、いつもお世話になっていたからだ。
ボーッと眺めながら思う。
【食事が恋しい、何か食べたい…】
虚しさが増してテレビの電源をオフにする。ちょっとだけ休憩しよう…と。椅子に座ったまま目を閉じる。
Rは夢を見た。テレビで見た影響なのか、Rが好きなファーストフードの食べ物が彼の目の前にどんと置かれていた。どれもこれもRが大好きな物であり、どれから食べたら良いのか迷ってしまう程の数があった。1つを手に取り包装紙を剥き、口に入れようと近づけた。
ハッと目を開ける。
夢だった。あの大量のご飯は全て空想に過ぎなかった。
Rは夢であった事にガックリ肩を落とす。心の底から残念そうな顔をしている。夢ならば覚めないでいてほしかった。
外の空気を吸いに、ゆっくりジャンクヤードらしき建物の中を後にする。
外は来た時と変わらずで天気も良いとは言えない。かといって悪天候ではない。ずっとどんよりしている。
ふとRは思う。針葉樹林の中から出てきたのだから、出てきた所に行ったら元の所に戻れるのだろうか?
塀の入口付近まで移動する。針葉樹林は相変わらず同じ姿で生えている。少しまっすぐ進めばすぐにRが出てきた所に行ける。疑問に思いつつも針葉樹林の中に入っていく。
鳥の声も風によるせせらぎも聞こえない。聞こえるのは足音だけであり、土を踏む音が少し響く気がする。
少し歩いてみる。足場は悪くなく歩きやすい。建物の中にいる間に雨も降っていないようだ。変わらない景色の中を歩く。
少し歩いた頃だろうか、何か緑とは別の色が見えた気がした。気の所為か?とも思い目をこすってからもう一度それがあった所をよく見る。
Rは自分の目を疑う。テレビで見た某ファーストフード店の看板とお店がぽつんとある。
なーんだ、ついに疲れすぎて幻覚が見えるようになってしまったのだろうか?こんな所にあるはずがないじゃないか。そう思う反面、少しでも藁にしがみつきたい思いが交わりつつも、足は看板がある場所に歩を進める。
その近くまで来ると、確かに地球で見たあの看板と同じ物と建物がそこにある。うっすらと涙を浮かべながら、もうどうにでもなれ!と目を瞑りながら建物の扉を開き入る。
賑やかそうなガヤガヤ…とした声に目を開けると、そこはまるでレストランのビュッフェコーナーのような物が目の前にあったのだ。
次の世界…生成中