一瞬場面が変わったと思ったら、どこかの部屋に連れてかれていた。
ここは、Back roomsに落ちて一番初めに来た部屋?に似ているが違う。
道が左右に別れており、部屋自体は一つではなさそうだ。
壁には小さな子供が落書きしたような絵が描かれている。
テーブルの上にはケーキやチキンなど、誰かの誕生日パーティーが開催されるかのような豪華な食事が並んでいる。またテーブルクロスがかけられており、飾りも施されている。誰が見てもすぐパーティーだと分かるだろう。
Rは微かな記憶を思い出す。
それは紙で見たあの時か、誰か分からぬ謎の男から仄めかされたあの事までかは覚えていないが。ここはあの危険とされている部屋である事を。
確実に敵となるものはこの部屋にはいる。
名前まで覚えていない。だが油断したら命を奪われる。
そんな奴らに何も抵抗出来ないよりかは、気休め程度ではあるがテーブルの上に置いてあったハサミを手に取り、自分の物にした。
少しでも冷静になる為に、テーブルの下に音を立てないようにして隠れる。
無防備な危険からは何とか首の皮一枚繋がった状態で助かっているが、それは完全なる安全とは言い難い。物音1つ立てるだけでも生命が刈り取られるかもしれないこの瞬間を何度も味わうとなると、吐き気が催しそうになる。最悪吐いてしまうとそれだけであいつらが押し寄せてくるのは、想像しやすい。
想像したくもないのだが。
そんな奴らの動向を探るべく、生命の危機を感じながらもテーブルクロスにハサミを使い、僅かな穴を開ける。
微かな生にしがみつく為にも必要な事だ。
そんな穴から見えるのは、さっきRが見た落書きが描いてある壁だ。
少しの間、息を殺しながらじっと待つ。
物音が左の方向から聞こえる。高さはRよりやや小さめだろうか。子供がクレヨンで顔を描いたような敵が、スーッと右へ移動していく。一枚の黄色の布を頭から被っている。
それらが一体だけではなく、何体も通り過ぎていく。
そいつらが通り過ぎるまでの時間が長く感じた。
…
…
…
止めていた息が苦しくなり、静かに呼吸をする。
怖さは感じなかったものの、恐怖と言うのは違う何かが全身を這ってくるような気持ちが込み上げる。
あれが複数体いるのならば、複数のグループがいくつかいてもおかしくない。あの虫のように、一匹いたら百匹はいると思えの理論で考える…あまりの出来事に頭が少しクラッとする。
テーブルにぶつかる寸前で踏みとどまり、心拍数が上がる。
一瞬の隙が命取りだ、油断をするな。
そう言い聞かせ、穴から再度覗いて確認する。
奴らはいない。今のうちだ。
テーブルクロスの下側をそっと上に上げ見回してから、通路に向かって音を立てないようにゆっくり歩いていく。
曲がった先もさっきと似たような部屋であり、相変わらずパーティー用のテーブルが置かれている。上には何かのお肉、ケーキ、シャンパンのようなものがドサッと置かれている。
ここには奴らはいない。探索もした方が良いか…?
ふとお肉に目が行く。Rはお腹がすいていた。この世界の食べ物程信用出来ない物はないのだが、空腹と誘惑がRの思考を握り潰す。さっきまで自身に言い聞かせていた言葉は忘れてしまったのか、肉を一口かぶりついてしまった。
その瞬間、肉と言うには何かが違う味が口の中に広がる。思わず口を歪ませ「うっ…!」と小さく嘔吐く。
しまった!Rがそう思うのも束の間、前の通路からニコニコ笑顔のあいつらが童謡を歌いながら、こちらにじりじり寄ってくる。
冷や汗が落ち、心拍数が最大に上がる。
どうする?どうするどうする!?!?
何かないのか!?何か逃げる方法が!
ある考えをRの頭をよぎる。
だがそれは賭けに出る事と同等であり、下手すれば命が無くなるかもしれない。だが今はそんな事も言っていられない!やるしかない!
Rは持っていたハサミを奴らに向かって投げる。
最前列にいた一体に当たり、一瞬動きが怯む。この瞬間を見逃さずにRは後ろにあった壁に向かって、Noclipを試みた。
その部屋には、パーティーゴアの群れがワラワラと部屋の中を歩き回り、静寂が流れていた。
あの人間の姿はなかった。
あの人間を逃がした。逃がした。ニガシタ。ちょっと驚かすだけだったのに。まあいいや、次の獲物を待とうよ!ほら!楽しいパーティーをしようよ!:)