【コミカライズ連載開始】迷宮狂走曲~RPG要素があるエロゲのRPG部分にドはまりしてエロそっちのけでハクスラするタイプの転生者~   作:宮迫宗一郎

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10.「ワンパンすればデメリットなし」は狂人の発想

Q.魔素とは何ですか?

 

A.この世界における天然資源のようなものです。ですが魔素そのものを直接扱えるのは「ダンジョンの主」のような高位の存在のみです

 

Q.魔素とMPの違いはなんですか?

 

A.魔素を原油とするならMPはガソリンみたいなものです。魔素から人間やモンスターにも使用可能な部分を抽出してダウングレードしたものがMPとなります

 

Q.【門番】の死骸をまた魔素に変換すれば実質的に魔素の消費は0だし、【門番】量産すればさっさと世界を滅ぼせたのでは?

 

A.魔素を肉体に変換するという過程そのものにも魔素を消費します。イメージとしてはMPを消費して蘇生魔術を使っているようなものとお考えください

 

――公式Q&Aより抜粋

 

 

──────────────────────

 

 

《表》

 

無事に2本目の【遺恨の槍】を手に入れて大変機嫌がよかった俺は、協力してくれた3人の分も確保してプレゼントしようかと思ったものの、何故か「やめたげてよお!」的なことを言われて断られてしまったため、さっさとダンジョン中層へと降りることにした。

 

中層へと繋がる扉に手を触れると、扉に波紋が走ってキィンという高音がした。ギルドで最初に聞いた話によれば、これで次回からはダンジョン入口の扉を直接中層の扉に繋げることができるようになるらしい。ようするにショートカット作成だな。

 

そうして扉をくぐって階段を降りていくと、やがて中層のスタート地点である11階層にたどり着いた。中層に足を踏み入れれば、それまでの「いかにもダンジョンです」って感じの岩でできた洞窟から景色が一転し、周囲を埋め尽くすほどの緑色が目に飛び込んでくる。地下迷宮の中には鬱蒼とした大森林が広がっていた……というのは、ダンジョンRPGのお約束なのかもしれない。

 

中層は前半の11~20階層、後半の21~30階層の2部構成になっており、前半は自然そのものが悪辣な罠として冒険者に襲いかかってくる。中には不用意に足を踏み入れると即座にバッドエンドになってしまう罠が仕掛けられた場所すらあるくらいだ。

 

上層がプレイヤーに魔術の重要さを理解させるための場所とするならば、中層前半は【狩人】などの罠の扱いに長けたクラスの重要さを理解させるための場所って訳だ。俺が当初はサブクラスを狩人にする予定だった理由の1つでもある。

 

本来なら上層のボスである【背信の騎士】も、1ターン目で「物理攻撃によるダメージを半減するバフ(有利な状態を付与するスキル)」を使ってくるんだよな。だから攻撃魔術で攻めるか、バフを剥がす魔術を使うかして攻略するのが普通だ。

 

まあ俺の場合は【背信の騎士】をワンターンキルしたからそもそもバフを使わせなかったけどな。そんな感じで、上層であれば慣れたプレイヤーなら比較的簡単にゴリ押しできるが、中層からはそうもいかない。どれだけ戦闘能力が高くても、罠に関しては対処できるスキルがなければどうしようもないからな。

 

「つってもまあ、今の俺のパーティには【狩人】を極めたルカがいるから、道中は正攻法で進みつつ戦闘はレベル差でゴリ押しできるんだけどな!」

 

“結局ゴリ押し自体はするんじゃないか……”

 

【背信の騎士】は俺たちに【遺恨の槍】だけでなく、大量の熟練度をもたらしてくれた。まあ初期レベルクリア(縛りプレイ)に考慮してかボス戦では経験値が貰えないんだが、それでもボス戦で得られる熟練度は非常に美味しい。

 

そのお陰で2本目の【遺恨の槍】がドロップした頃には、ルカは【狩人】を極め、俺は【騎士】を極めることができたのは嬉しい誤算だった。これは他の冒険者たちにも積極的に広めていくべき画期的な熟練度稼ぎではないだろうか? いずれ俺が凄腕の冒険者として名を上げて信用を勝ち取った暁には、真っ先に広めていくことにしよう。

 

「それにしても、(現実なんだからいわゆる『大人の都合』がなくなっててもおかしくないのに)なんで経験値が貰えなかったんだろうな」

 

“まっ、モンスターはちゃんと殺さないと経験値にならないからね。彼は死んで「は」いないし。……「死んでないだけ」とも言うけど”

 

うーん、やっぱり何を言ってるのかは分からんが、なんか呆れられている気がする。あっ、肩を竦めて首を横に振られてしまった。なんか君、どんどん人間臭くなってない???*1

 

まあいいや。話をダンジョン中層に戻そう。今回からはレベリングよりも探索をメインにやっていく。つい楽しくてレベリングに没頭しすぎたせいでダンジョン探索が滞ってるからな。適正レベルの安全マージンなんてとっくの昔に越えてしまっているし、必要なスキルも揃っている。

 

「なので、今回は寄り道せずにさっさと中層を突破してしまおう。レベリングとトレハンは下層までお預けだ」

 

“えっ!? どうしたの主!? 何か悪いものでも食べた!?”

 

「という訳で、まずはこの階層のマップを全部埋めるぞ!」

 

“うーん、この一行で矛盾する感じ。いつもの主だったかぁ”

 

【アヘ声】だと当然ダンジョンマップは白紙からのスタートだが、この世界では他の冒険者の存在によってすでにある程度マップが完成している。

 

というのも、この世界ではギルドが冒険者に「魔術的な細工を施したマップ」を無料で貸し出しており、今まで他の冒険者たちが踏破してきた場所の情報は俺のマップにも共有されてるんだよな。

 

その代わり、冒険者は自身が踏破したマップの情報をギルドに提供することが義務付けられている。そうすることで過去の情報と最新の情報に食い違いがあったりしても随時データが更新されていき、ギルドは常に最新の情報を入手し続けられるようになっているって訳だ。

 

ただ、この世界の冒険者は、なんというか「冒険者」を名乗ってるくせに冒険心が全然ないというか……次の階層へのルートが見つかった時点で探索をやめてしまうのか、マップに白紙部分が目立つんだよな。

 

しかも、次の階層への最短ルートなんかは頻繁に情報が更新されてるみたいだけど、過去に行き止まりだと判明した場所に関しては数年単位で情報の更新が止まっていたりする。つまり、この世界の冒険者は全然「冒険しない」んだよな。

 

「冒険者たるもの、マップは全部埋めてから次の階層に進むべし!」

 

“そんなことを言うのは主だけじゃないかなぁ”

 

ダンジョンの行き止まりに宝箱がないか確認しながら進むのは、ダンジョンRPGに限らず全てのRPGの基本じゃないか?

 

たとえ次の階層へと進む階段を先に見つけたとしても、いったん来た道を戻って他の場所を探索してから改めて次の階層に進むもんだと思うんだが。

 

それになにより、やっぱりマップが穴だらけというのは気持ち悪いんだよな。

 

この世界には「初見プレイ時から攻略サイト見ながらプレイするタイプの人」ばっかりってことなんだろうか……。それにしては肝心の攻略情報が全然充実していないとは思うが。原作開始前なのが原因か?

 

「まあとにかく、頼んだぞルカ!」

 

“マップを全部埋めるってことは道中の罠も全部解除しろってことなんでしょ? 普通に面倒なんだけどなぁ”

 

「なに、今のルカなら罠の解除確率は99%だ! ほとんど失敗する心配はない!」

 

“うぇー……「ほとんど」なんて言葉を信じてないクセに、どうしてそんな無責任なことを言うのさー……。ボクだってもう100以外の数字は信用してないんだけど?”

 

「あ、すまん。そういえば瀕死にするの忘れてた。敵が出てくる前に【七星剣】!」

 

“ぎゃわーっ!? ちくしょう! いきなりやるのはひどいじゃないか! 覚悟してる時にやられるよりも不意打ち食らった時の方が痛いんだからな!?”

 

「それと道中の戦闘で発見した宝箱の解除もよろしくな! 中層の宝箱は解除失敗すると猛毒ガスとか浴びたり爆発に巻き込まれたりするはめになるから気をつけてくれ!」

 

“キレそう”

 

こうして、今後の方針を共有した俺たちは、悠々と新たなスタートを切ったのだった。

 

 

──────────────────────

 

 

《裏》

 

その小さな生き物がダンジョン入口から現れたのを見た瞬間、ギルド内に併設されている酒場にたむろしていた冒険者たちは「何事だ?」と怪訝な表情になった。

 

小さな生き物――ノームはミディアムショートの茶髪をチリチリと焦がしており、身につけた装備品も煤で汚れている。恐らく誰かに使役されているモンスターなのだろうが、結構ひどい有り様だった。

 

奴隷にしては装備品が整っており、中層を攻略中の【狩人】が使っているような弓やマントを装備しているが……【隷属の首輪】をつけている以上、このノームが奴隷であることは間違いはないだろう。

 

6割くらいの冒険者はすぐに興味を失い、3割くらいはノームに同情的な視線を向け、そして残りの1割くらいが剣呑な表情を浮かべている。

 

剣呑な表情を浮かべる者たちは、ダンジョン下層まで到達している上位の冒険者であった。彼らはノームの危険性を身をもって理解しており、ノームが使役するゴーレムに殺されかけた者もいれば、仲間が地中に引きずり込まれて行方不明になった者もいる。

 

その中でも特にノームに対して強い憎しみを持つ者たちは、「他人の奴隷であっても構うものか」と武器に手を掛け、他の冒険者たちの制止を振り切って席を立とうと――

 

「いやあ、今日はずいぶんと攻略が進んだな!」

 

“もうやだー! 植木鉢(おうち)帰るぅー!”

 

――したが、続いて現れた男を見て「スン……」と真顔になり、無言で椅子に座り直して何事もなかったかのように酒を呷った。

 

いかに上位の冒険者といえど、「頭に暴漢みたいな鉄仮面」「上半身に武士の甲冑」「下半身に正統派騎士みたいな鎧と腰マント」とかいう素敵ファッションに身を包んだ【狂人(ぶっちぎりでイカれた奴)】とは関わりたくないのである。というか「ノームといえどこんな奴がご主人様とか可哀想だな」とすら思った。

 

いやまあ、冒険者の中にはこの男のように「性能重視で見た目なんか気にしない」という人間もいるにはいるが、せめて上半身と下半身の防具くらいは同じシリーズで揃える冒険者の方が大多数である。というか、せっかくこの世界では店売りの装備品が充実しているというのに、一切それらを利用せずに全て現地調達するからこうなるのである。

 

このように、男が防御を固め始めたことで他の人間たちから「ようやく頭の病気が治ったのか」と思われるようになったかというと、そんなことは全くなかった。

 

むしろ評判は悪化しており、上位の冒険者たちにまで広まりつつある。もっといえば、上位の冒険者たちに知られたことで、「こいつ狂ってんな」と思われる理由が新たに増えていたりする。

 

例として、男のメインクラスが【騎士】であることがあげられるだろう。

 

サブクラスとしては大人気の【騎士】であるが、実は男のようにメインクラスを【騎士】にしている冒険者は稀なのだ。

 

この世界の冒険者はピンチの仲間を一時的に庇うことはあれど、それはあくまで緊急時の対応だ。敵の攻撃とはローテーションを組んで仲間全員で受け止めダメージを分散させるもの、というのが常識であり、敵の攻撃を全部1人で受け止めるなどというのはイカれた発想なのである。

 

さらに、この世界の【騎士】は「()()()()()()()()()()()()()()()()()」とされている。

 

【シールドアサルト】というスキルがあるにはあるが、このスキルは「防御を攻撃に変換する」という特性上、スキルを発動してからしばらくの間はDEFが0になるという大きすぎるリスクを抱えているのだ。その間に強力な物理攻撃を食らってしまえば一撃でHPが全損することを覚悟しなければならない。

 

そんな訳で【騎士】をメインクラスにするメリットはほとんどなく、むしろ上位の冒険者たちからは「メインが【騎士】だと強力な武器を装備できなくなってしまい、モンスターへの抵抗手段を失う」ということで地雷扱いされている。

 

そりゃあそうだ。いくら防御性能を上げても、まともな攻撃手段がなければなぶり殺しにされるだけだ。敵を倒すのに時間をかけすぎて大量のモンスターに囲まれてしまえば、モンスターに押し倒されて身動きが取れなくなって人生終了である。

 

それならば【騎士】の次くらいに防具が豊富で、かつ強力な武器を装備できる【戦士】をメインにした方がいい、というのが上位の冒険者たちの間では定石である。いくらHPを減らしたくないと言っても、やりすぎはかえって危険なのだ。この世界では「1つの能力に特化した冒険者」というのは好まれないのである。

 

なので、強力な攻撃を連発するボスを相手に「ワンパンすれば実質デメリットなしだな!」などとほざいて【シールドアサルト】をブッパしたり、「火力の低さはカウンターで手数を増やして補うぜ!」と嬉々としてモンスターの群れに突撃するような奴は、やっぱり【狂人】扱いされても仕方ない。

 

「いいか? アレは例外中の例外だ。絶対に真似するんじゃないぞ」

 

「あの……こんなこと言うのは失礼なんでしょうけど、どうしてあの人はまだ生きてるんですか?」

 

「……俺にだって分からないことはある。長いことダンジョンに潜っていれば、理解不能な出来事に遭遇するのは1度や2度ではない。覚えておけ」

 

上位冒険者と新米冒険者の師弟の間でそんな会話がなされるくらいには、【狂人】の名は冒険者たちに広まりつつあるのだった……。

*1
意思表示が出来ないと死にそうな目にあうと学んだので、必死に人間のジェスチャーを勉強した結果

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