Vampire Lord   作:Crimson Wizard

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第13話

 

「……もう諦めた方がいいんじゃない?」

 

咲夜が嫌そうな顔をして蜘蛛の巣を払いながら言う。

 

「私も賛成だ。流石に無謀すぎるぞ、ラキュース。」

 

200年を生きた吸血姫様も流石に限界が近いようだ。

まあ、もう半日近くこの調子なのだ。ハッキリ言って見つける前に日が暮れると思う。

 

「……お腹空いた。」

 

「……セレネの手料理が食べたい。」

 

忍者姉妹ももはや真面目にあるかも分からない大木を探す気は無さそうだ。

 

「そうだな、少し休憩を取ろう。」

 

私も疲れたし……。

 

「セレネ、持って来た?」

 

流石に携行食は持っていったがいいという話は前日にしてたんだけど。

 

「勿論持って来たわよ、……ほら。」

 

えー。なんでサンドイッチ……干し肉とかだと思ってた。

 

「まさか本当に手料理が食べれるとは。」

 

「てかこれ冷たい。」

 

冷たい……?能力を使ってまで持って来たのか。今のお前はメイドじゃないんだぞ、咲夜。

 

「そこはほら、そう……魔法を使ったのよ。」

 

……その答え方だとどんな魔法か聞かれたら困るだろうに。

 

「そうね、じゃあ休憩にしましょうか。」

 

ラキュースも多分内心諦めてるな、これは。

 

「ん、美味しい。」

 

「その辺の酒場のよりうまい。」

 

忍者姉妹は頬をもぐもぐさせている。まあ、本職が作った物だし……

 

「それにしてもよ、何かこの辺違和感がないか?なんかこう、重圧を感じるっつーか。」

 

何で一番索敵能力が低いであろうガガーランが忍者姉妹より先に気付くかね。いや、流石に二人も気づいてるか。

 

「問題ない、それが目的なのだから。」

 

……この口調疲れたな。まだ敬語キャラのが良かったかもしれん。今からでも変えようかな。

今の所は組合の人間と依頼主や蒼の薔薇以外と交流がないから、まあこの依頼が終わったら上手いこと誤魔化して軌道修正するしかない。

 

「……どういう事?」

 

ラキュースが怪訝な顔をして辺りを見渡している。

私は何も言わずに剣を抜いて辺りを警戒する素振りを見せる。

 

すると……ほら来た。

 

「なんだこの地鳴りは!」

 

ガガーランが大声で叫ぶ。

 

「近付いて来てる!」

 

「来た、デカいの!三時の方向!」

 

んなもんは見れば分かる!

さてさて、予想通りやって来たな、ザイトルクワエだったか?

 

なんたって私が呼び寄せたんだから。

蒼の薔薇が食事を取っている間に眷属を呼び出してこっそり悪戯してきたのだ。私に見張り番をさせたのが悪い。

でもこうでもしなきゃ依頼は未達成で終わった筈だ。

 

ちなみに容姿を変えているのは魔法によるもので、

ビルドを組み替えているのは指輪の力なので容姿を変えずに能力だけ変更する事も容易い。

簡単にいうとアルトリア姿でレミリア・スカーレットの能力を使う事が可能だと言うことだ。その逆も然り。

 

「来るぞ……!」

 

なんてシリアス顔で呟いていると地鳴りを伴って凄い勢いで例の魔樹さんがやって来た。

おおー。デカい。

 

ん?……ちょっと待てよ、私達は置いておいて、蒼の薔薇は死んじゃうかも。

 

やばい、考えて無かった。早く依頼を終える事しか頭の中になかった。

 

「セレネ!転移で逃げなさい!蒼の薔薇を連れて!」

 

私は迫真の演技で口調を修正する。蒼の薔薇はピンチで素が出たと勘違いしてくれることだろう。

 

「でも!ダリアを置いていくなんて……!」

 

おい、咲夜お前ちょっと口角上がってるぞ。流石にこの場面で笑うのはヤバいって。

 

まさか私達がそんなお遊び気分でいる等とは露知らず、ラキュースは顔を悲痛そうに歪ませて声を張り上げる。

 

「駄目よ!私達だけ逃げるなんて!あなたも一緒に逃げましょう!」

 

ふふ、可愛い所もあるじゃないか。これだから人間は好きなのだ。

ちょっと一緒に過ごしただけでもこいつらの人の良さが分かる。

 

「大丈夫です、私には切り札がある!ですがあなた方がいると巻き込んでしまう!」

 

こう言っとけばイビルアイ辺りがラキュースを宥めて上手いことやってくれるだろう。

 

「行くぞ、ラキュース!私達が居てもダリアの足を引っ張るだけだ!」

 

「……でも!」

 

「おい、言い争ってる時間はねえぞ!本人が何とかなるって言ってんだから信じるしかねぇだろうが!」

 

「もう時間が無いわ!集まって……ダリア、また後でね。上位転移(グレーター・テレポーテーション)

 

という咲夜の迫真の演技と共に蒼の薔薇の面々は消え去った。

 

さて……。あんなに悠長に話してたのに例の魔樹さんが追いつかなかったのは眷属で上手いこと足止めしていたからだ。

私が動きを阻害してなかったらあのお馬鹿さん達は土に帰っていただろう。

 

「ふふ、この姿を外で晒すのは久しぶりね。」

 

私はレミリア・スカーレットとしての姿に戻る。

 

「別にあなたに恨みはないのだけれど、あなたが持ってる薬草とやらを持って帰らないと私の依頼が失敗に終わってしまうの。」

 

私は地響きを伴って段々と近付いてくる魔樹を前に悠々と口を開く。

 

「だからまあ、死んで頂戴。」

 

私がそう言うと雲一つ無い空の更に遥か上空から小隕石が降ってきた。

私は翼を翻し影へと潜ると物凄い轟音と地響きが聞こえてくる。どうやら上手いこといったようだ。

 

私は能力を使用しただけ。偶然私の近くの魔樹に隕石が落ちて来た、そういう運命だった。

運命を操る程度の能力は本来あまり強力な力では無かったが私が能力を磨きに磨いた事で、

因果律操作とまではいかないけど簡単な事象改変くらいなら出来るようになった。

 

あとはそう、運命を読む位なら可能かしら。まあそれでも色々と制限はあるのだけど。

 

私はダリアとしての容姿へと戻ると、さも必死に防御しましたと言わんばかりに装備を傷付けて汚した。

あんまりしたくないけど仕方が無い。この装備は時間が経つと修復されるし大丈夫でしょ。

今回は小隕石を召喚するマジックアイテムを使って、私は結界を張って何とかギリギリ助かったという事にしておこう。

 

そして薬草……薬草……あった!ふぅ……これドロップアイテム扱いじゃなかったら今頃は土と同化してたわね。

本当に魔樹の天辺に生えてたら今頃は……考えなしで隕石なんか落とすもんじゃないわね。少し反省したわ。

薬草採取が目的なのに薬草を塵にしてどうするのよ。

 

さて、では目的も果たした事だし、咲夜の元に帰りましょう。……足でも引き摺りながら。

 




ドロップアイテム扱いだから薬草は無事だったという事にしてくださいw
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