「……という訳です。どうでしょう?我々と共に人類の為に戦いませんか?」
よく分かんないけどそういう訳らしい。私の前にはスレイン法国の使者……というか漆黒聖典のメンバーが二人程いる。
確か、クアイエッセ?と隊長とかいう名前の分からない奴だ。
「悪いけど……断るわ。別に正義の味方になりたくて冒険者になった訳ではないから。」
「そうですね、私も行動が制限されるのは困る。」
なんというか、パーティとしての活動では殆ど咲夜が喋ってるな。これじゃ私が従者みたいね。
「そうですか……残念です。ですが無理強いは致しません。気が変わったら何時でも法国を訪ねてください。」
そういって二人は帰っていった。そういえば、なんで二人だったのかしら。
それに隊長とかいうのは切り札の一つだった筈……いよいよもって法国の思惑が分からないわね。
まあいいわ。とにかく、本来よりも早く法国が接触してきたのは恐らく使える魔法の位階なんかで大まかな実力が分かってるからね。
咲夜が冒険者として使える事になっている位階は第八位階。
まあ別に隠してる訳ではなくて第八位階より上の魔法なんて使う相手がいないだけなんだけど。
なんて事を考えているとパチュリーからの
『レミィ、あなたが言ってたのと同一の存在かは分からないけれど王国の辺境で何か強い力を感知したわ。』
あら、もうそんな時期かしら。そろそろ奴らが表立って活動を始める頃合いかしらね。
私はパチェに
「んー、そもそも奴らが表立った活動をしない可能性もあるけど……」
私はともかく、咲夜の既出の魔法の位階が第八位階である事は当然知られてるでしょうし……
まあ……警戒してくれるのはいいんだけど、それで表に出て来なくなると困るわね。
奴らが一生あの墳墓の中に引き篭っているというのなら話は別だが。
……よく考えたら法国に潜入するのも悪く無かったわね。
別に敵対するって訳では無いけど深くまで潜り込めれば更に情報が……いや、そうすると冒険者としての行動が制限されるわね。
まあ、今はいっか。
『お姉様、聴こえる?フランちょっとお話したいな……フランに隠れて何か面白そうな事してない?』
フ、フラン?あれ……フランにはこの世界関連の話は最低限しかしてなかったはず……。
そもそも何で
咲夜が私の話してない事を勝手に言うわけないし……
……パチェね、アイツ、裏切りおったな!フランが興味を持っちゃうといけないから言わないでって言ったのに!
『フラン?今行くわ、ちょっと待ってね!』
私は即座に返事を返すとそのままフランの影を通じて転移する。
「それで……?何でフランにだけ黙ってたの?」
我らがお姫様はそれはもうお怒りのようでした。
何時もの無邪気な表情は一切なく、冷たい目でこちらを睨んでいる。
「えっとね、私は姉としてフランの為を思って……」
「それで……?」
……やばい。こんなに怒ってるフランを見たのは何時以来かしら。
「いえ、黙っていて申し訳ありませんでした。」
「うむ、宜しい。じゃあそこに座って。詳しい話はそれから聴くから。」
ゆ、許されたぁ。でもこれから尋問ね……解放されるのは何時になるのかしら。
「はい。レミリア・スカーレット、着席しました。」
「そのノリはもういいから。それで?何?冒険者とかいう面白そうなお仕事やってるんだってね。」
流石にこの態度は少しキツいものがある。いや、よく考えたら少し興奮するかも。
あ、……やばい!フランの目がゴミを見る目に!
「あ、それね。勿論話すわ。まずはどこから話そうかしら……」
私は誤魔化すように咳払いをして、詳しい説明を始めた。
「ふぅーん。」
やばい。次の一言が分かってしまった。
「フランもそのパーティに入れて。」
ですよねー、知ってた。
この流れで断るのはまず無理として……偽名やら私達との関係とか諸々考えないと……。
「フランは何をしたいの?そういうゲームはやった事あるでしょ?」
なんだっけ?TRPGの……私アナログ系のゲームにはあまり詳しくないのよね。
「んー、魔法使い?かな。」
「あー。フラン?その、魔法使いはもう咲夜がやってるのよ……」
……怒ってない?
「そんな顔をしなくても、そんな事で怒る程フランは子供じゃないよ。」
ふぅ、良かったー。でも、そうしたらフランがやる職業って何になるのかしら。
「私が聖騎士……というか、TRPG風に言うならタンクね。で咲夜が魔法使い。フランは何をやりたい?」
「んー、王道は盗賊とかなんだけど、向いてないと思うんだよね。」
まあ……確かにフランは盗賊って柄では無いわね。魔法職以外だと、どちらかといえばアタッカー系?かしら。
でも魔法少女フランドールも見たくはあったわね。
……ん?
「あ!フラン!魔法使いが二人っていうのは駄目なの?」
「全然いいと思うけど?魔法使いっていっても色々あるんだよ。例えばね……」
そこから冒険者の話ではなく何故かゲームの職業の話で盛り上がってしまい、かなり脱線した所で思い出した。
「フラン、いつの間にか話が入れ替わってるわよ。」
「そうだった……。うん、もう魔法使いでいいんじゃない?咲夜とは別系統の魔法を使えばいいんだよ。」
そうよね……別にパーティに魔法使いが何人居ようと困る訳では無いし。
「そうね……死霊系とかはどう?アンデッドを召喚して戦わせたり。」
「えー、なんかジメジメしててやだ。それならテイマーの方がマシだよ。」
テイマー……テイマーね。悪くないんじゃないかしら。
「それよ!あなた一時期魔獣を飼ってた時期があったでしょう?絶対そっちのが向いてるわよ!」
「まだ飼ってる子達も居るよ?ヒポグリフのセルちゃんとか。」
セルちゃん……セルちゃん?
「フラン、その子のフルネームはなんて言うの?」
「セルウィウスだよ!」
……それならセルウィーとかもう少しマシな呼び方があったのでは。
「う、うん。いい名前ね。あ、そういえば戦闘スタイルは?ポーションを投げ付けて戦うのはどう?自分で調合して。」
「かっこ悪いからやだ。」
まあ、確かにスタイリッシュでは無いわね。本人が嫌なら別にいいんだけど。
「うん、その辺は後々考えるとして……そう、名前よ!フランはどんなネーミングがいいの?」
……そういえばこの子は昔から異様に謎の拘りが強いのよね。
「えっとねー……」
そしてその拘りの強さは主にネーミングセンスにおいて発揮される。
……うん。
「やっぱり良いわ!私が考えるから。」
頼むから歴代ローマ皇帝みたいな名前は辞めて欲しい。
凄くジト目で睨んできているが、可愛いだけだぞ。
「そうね……ユナ……ユナにしましょう!」
我ながら天才的なネーミングセンスね。
「ユナか……うん、それならいいよ!」
まあ実際はかなり安直な理由なんだけど。
さて……そうね、後は関係性なんだけど……この際姉妹という関係性は隠さなくてもいいかもね。
「フラン?あなたが良かったらだけど、そのまま姉妹として公表するのはどうかしら?」
「え?……うん。分かった、じゃあその代わりフランがお姉様でお姉様が妹だよ!」
うん?哲学……?ああ、そういう事。
「分かったわ、じゃあ宜しくね?ユナお姉様。」
「うん……!なんか良いかも。」
最初はどうなる事かと思ったけれど……まあ、この笑顔が見れたのなら良かったかもしれない。
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