私達は上空から混乱の渦に呑まれている王都を眺める。
「へぇ……王都は大混乱のようね。」
「お嬢様、口調が。」
あら、いけないわ。油断しちゃった。
それにしても、王都は大混乱だというのに例のモモンとやらは居ないじゃない。
いや、出来る限りギリギリまで混乱させておいてそこに颯爽と登場するとか考えてそうね。
「行きますよ、セレネ。」
「ええ!」
居た。今は必死にイビルアイがドラゴンのヘイトを買って時間を稼いでいるようだ。
「〈
咲夜が不意をついてドラゴンの頭部へと雷を落とす。
……へぇ。ただの雑魚ドラゴンじゃないみたいね。
「セレネ!」
私達に気が付いたイビルアイが声を上げるとある程度固まって防御に徹していた蒼の薔薇のメンバー達がこちらを向く。
というか、多分だけどこのドラゴンレベル80は越えてるわよね?
よくラキュース達生きてたわね。いや、そういう風に命令されてるのかしら?そんなに賢そうには見えないけど。
「私が奴の気を引きます!その隙に攻撃を!」
さて、私もただのんびりしていた訳では無いのだ。
紅魔館に居る時もしっかり色々調べていたのだ。そう、武技とやらを。
原作ではナザリック側のNPC達が習得した描写は無かったと思うが、恐らくそれはユグドラシルの法則の縛りがあったからだ。
私達はユグドラシル出身という訳では無いので、そういったものは無かった。
恐らくだけど、レベル差も私達には関係無いと思うわ。
ただまあ、相手からの攻撃なんかは勿論レベルの低いものだと私には通じないけど。
逆に言うとレベルという絶対的な壁がない分、咲夜なんかは人間相手からもダメージを貰う可能性もあるが、
咲夜の攻撃も異業種や格上相手に十分通用するという事だ。
「〈防御超強化〉〈不落要塞〉!」
ドラゴンが攻撃してくる瞬間に覚えたての武技を発動する。……正直そのまま受けてもほとんどダメージはないのだが。
というか、この武技もパチュリーから貰ったステータスを可視化できるカードでポチッと覚えたものだ。
正直ゲームのスキルなんかよりも簡単に覚えてしまった為、一生を掛けてこれらを覚える現地人共を鼻で笑ってやりたい気分だ。
「ダリア!〈
イビルアイが水晶の槍でドラゴンを攻撃するが、外皮が厚いのかレベル差なのか全く攻撃が通っていない。
本当、攻撃が全く通じないのにこいつらはなんで生き残ってるんだろうか。逆に凄いぞ。
「セレネ!時間を稼いでください!」
私が迫真の演技でそう叫ぶと咲夜が大袈裟に空中に躍り出る。
「デカブツ!こっちよ!
咲夜が私が知らぬ間に覚えていた雑に強そうな魔法を使っている。
あれいいわよね……私信仰系
さて、では始めますか。
「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い、我が必勝の剣を!」
私が両手で剣を振り抜くと刀身から光の粒子がドラゴンに向かって放たれる。
「
光の粒子がドラゴンに触れた瞬間、視界のほとんどを塗り潰すような眩い光が周囲を覆い尽くす。
これ、やってる事は前とほとんど変わらない魔力放出だが、見た目にはかなり拘ったのだ。
この為にパチュリーに新しい魔法を教えてもらったし
というか、この応用で透明化まで出来るようになってしまった。これでも頑張って覚えたのだ。
……正直、これを覚えるのは武技なんかよりも余程苦労した。
さてそんな事を考えている間にドラゴンは塵も残さず……いや。
私の予想では綺麗に消え去る筈だったんだけど、なんかめちゃくちゃ血飛沫が飛んで……うわっ、なんか肉片落ちてきた。
これはイメージダウンか?と私は恐る恐る周りを見渡してみるが、周りはそうは思っていなかった様で耳を劈く様な歓声が鳴り響いた。
うむうむ、少し予想とは違ったけどまぁ。威力を間違えただけだし。もうちょい強くすれば次は肉片も残らない筈……。
あれ、これって私の当初の予定にあったモモンガとの接触が出来なくない?
……それにフランが来る前に倒しちゃったから絶対小言を言われるわ。
私はこの後間違いなく来るであろうフランのお小言タイムを思って頭を抱えるのだった。
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「……どういう事だ?デミウルゴス。」
「申し訳ございません!どうやら奴らが別々の宿に泊まっているというのは偽の情報だったようで……!」
モモンガは計画が失敗に終わった事に内心、若干安堵していた。
だが、デミウルゴスを出し抜くとは。この世界にも頭脳面では警戒するべき存在がいる様だな。
「謝罪はこの命で以て」
「もう良い。それに私は最初に言った筈だ。お前達はナザリック外部の者を見下す傾向にあると。今回の事でそれがよく分かった筈だ。」
そう、NPC達は心のどこかで絶対に自分が負ける事は無いと慢心しているのだ。
俺も正直最初は似たような考えだったが、シャルティアの一件で考えを改めた。
「今回は確かに失敗した。……だがそれで得られたモノもある筈だ。」
「……寛大な措置に感謝致します、アインズ様。それと、御覧になられてお分かりになったと思いますが、
この十六夜の月という冒険者チームは危険です。我々に命じてくださればすぐにでも始末致しますが。」
「却下だ。何でもかんでもすぐに排除しようとするのはお前達の欠点だ。真の智者とは、それすら利用するものだ。」
……何が真の智者だか。本当の俺はデミウルゴスの考えなんて微塵も分からない凡人なんだけどな。
まあこう言っておけばすぐに排除といった行動に出ることは少なくなる筈だ。
「……流石はアインズ様!我々如きとは見ているものが違うのですね!」
うん、まぁそういう事にしとこう。
「当然だとも。これでも私はお前達の主なのだからな。」
俺はそう言いつつも、十六夜の月という第十位階魔法を使って見せた冒険者チームを警戒するのだった。