「こんな感じ……でしょうか?」
「違うわ、咲夜。もう少し距離が無いとすぐに詰められてお終いよ。」
私は現在、咲夜に対プレイヤー……というか人間相手なら基本有効な心理誘導や技、切り札になり得る能力の使い方について指導していた。
「あなたみたいに時間を操れる訳では無いけど、私も空間操作の魔法なら多少は扱えるの。だから……伝わらないのがもどかしいわね。」
「申し訳ありません、上手く感覚が掴めなくて……」
うーん、確かに紅魔館を拡張する時はかなり時間を掛けてたし、パチュリーにも協力して貰ってたわね。
咲夜は感覚的に時間操作は得意みたいだけど、空間を操るとなると途端に苦手意識が湧くみたいね。
「前パチェに教えて貰ってたでしょう?それを時間操作の感覚でやればいいの。」
私が今話しているのは、咲夜の能力は空間も操れるのだから、それを応用して戦闘で使える手札にしようという話だ。
「えっとね、あなたが空間を操る事に苦手意識を感じるのは理屈で考えてるからなの。
あなたは時間を操る時にわざわざ原子の働きなんか考えないでしょう?考えすぎるから出来なくなるのよ。」
時間を操れるという事は空間を操れるという事。空間を操れるという事は時間停止を用いなくてもテレポートが出来るし亜空間を創り出すことも出来る。
それに相手との距離を物理的に作る事も理論上は可能なはず。私が今言っているのはこの物理的に距離を作る方法についてだ。
咲夜はパチュリーの指導で亜空間を創ったり魔法を使わないテレポートなんかは既に修得している。
ただ亜空間の創造なんかは咄嗟には使えないので、戦闘には応用出来ないのだ。
「今から私が本気で魔法を放つから、物理的に距離を開けて私の魔法を減衰させなさい。その距離で受けると防御魔法掛けても死ぬわよ。」
こういうのは身体で覚える方が早いのだ。
「え……?え、でも」
「じゃあいくわよー!せーのっ!」
私は魔法で水を創り出し、それをウォーターカッターの様に咲夜に飛ばす。
「……咲夜。時間を止めて避けるんじゃなくて空間を操って距離を取るの。」
「すみません……つい癖で。」
うーん、どうすれば伝わるんだろうか。時間を操れるならこれも出来るはずなんだけど……
「まあいいわ、一旦休憩にしましょう。その内出来るはずよ……咲夜、紅茶。」
「はい、お嬢様。」
相変わらず早いわね。
……ちなみに、私は意識している間しか時間停止を防ぐ事が出来ない。
だけど、プレイヤーならまず間違いなく詠唱するでしょうし私ならその間に間違いなく反応出来る。
それに要は時間停止を警戒していれば問題ない訳だし、こういう場面では役に立つから敢えてそのままにしている。
止まった時の中で紅茶を待つのは滑稽だしね。
「そういえばお嬢様、そろそろ十六夜の月としての依頼を消化しないと不味いのでは?」
「そ、そうね……もう一週間くらい紅魔館から出ていないものね。」
最近はなんというか……そう。なんか気分が乗らなくて依頼をこなせていないのだ。
五月病……みたいな?まあこっちの四季なんて知らないけど。……流石に後で調べときましょう。
「……あれ?少し予想外だわ。」
まさかモモンガの方から接触してくるなんて。
あいつの所に置いてきた眷属から連絡があった。何でも相談があるとの事だ。
「うーん、流石に今からってのは向こうも想定してないわよね。まあ都合のいい時に訪ねるように言っといて。」
まあ、多分近いうちに来るでしょう。
となると、ある程度の食事と酒と……ああ。あいつ飲食出来ないんだったわね。
流石に可哀想だし、飲食出来るようになるアイテムを貸してあげようかしら。
確か昔、小悪魔の前任が肉体の無いアンデッドだったからパチュリーが作ったのよね。懐かしいわ。
幻想郷を侵略する時に消滅しちゃったけど、多分今頃地獄を満喫してるわね。……魂が霧散してなければだけど。
「咲夜、近いうちに客人を招き入れる予定だから客用の食事を準備をしといて頂戴。」
「かしこまりました。」
さて……私はお昼寝でもしましょうか。いや、吸血鬼としては間違ってないから。決して私が自堕落な訳じゃないわ。
私は自分に言い訳をしながら昼間のベッドにダイブするのだった。