私は十六夜咲夜。レミリアお嬢様に絶対の忠誠を誓う者であり、お嬢様は畏れ多くも私の事を娘だと呼んで下さった。
私は幼少の頃、吸血鬼ハンターだった両親からレミリアお嬢様を狩る為の餌として捨て駒にされた所を拾って頂いたのだ。
その時から私はレミリア・スカーレットの犬となり、同時に娘の様な存在になったのだ。
私には幼少期から使える不思議な力があった。私は時間を自由自在に操る事が出来たのだ。
止まった時の中は誰もいない。勿論、音もしないし影も無い。
私は自由に時を操れる反面、この時間の中に置き去りにされてしまう事がどうしようもなく怖かった。
でも、ある時お嬢様が私の世界に入って来た事があった。
私は驚いた。生まれて一度も時が止まった世界に侵入された事はなかったからだ。
私はその時本当の意味でお嬢様だけが私の理解者なのだと知った。
お嬢様は私の為にパチュリー様に魔法を教わって止まった時の中で動く方法を教えて貰ったらしい。……私だけの為にだ。
今、私は幸せだ。
お嬢様の為に働く時間は何よりも私を満たしてくれる。パチュリー様には病気だと言われてしまったが、この忠誠は生涯揺らぐ事は無い。
私の一日はいつも不規則に始まる。
「お嬢様、おはようございます。」
「ふぁ〜。おはよ……」
私は止まった時の中で睡眠を取っている。身支度も食事もスキンケアも、全て止まった時の中で行っている。
この能力のお陰で私は常に万全の状態でお嬢様と接する事が出来るのだ。
「今日はお客様がいらっしゃるんですよね?何時頃にお迎えするので?」
「んー、それがまだ分かってないのよね、明日行くとだけしか言われてないし。」
そんな適当な……それにお嬢様を待たせるだなんて、なんて失礼な奴らなんだろうか。
「お食事や客室の手配などは既に完了しております。」
「パーフェクトよ、咲夜。」
ふふ、褒められた。
私はこの紅魔館でメイド長として働いている訳だが、実はこれはお嬢様から求められた訳ではなく半分くらい趣味でやっている。
家事をしている時間は落ち着いて物事を考えられるし、これが天職というヤツなのかもしれない。
昔お嬢様が人肉を持って帰ってきた時は少し驚いたが……あれはヘルハウンドの餌だったわね。
そういえば最近は少し忙しくて、妹様のペットの餌も用意出来ていない。……後でやっとかないと。
妹様はあまり外に出られないので、私が外に出た時に大量に買い溜めておくのだ。
最近はお嬢様からよく呼び出されるし、それ自体は嬉しいんだけど……何せ時間が足りないわ。
水周りの家事は時間を止めながらは出来ないし、食事の用意なんかは予め済ませていて時間を止めて保存しているけど……
それに最近は冒険者としての活動でお嬢様と素で会話をする影響か口調が時々崩れてしまう。
客人が来るなら気を付けないと、私のせいでお嬢様が下に見られるのだけは絶対に避けなくてはならない。
客人の名前は聞いている。アインズ・ウール・ゴウンだったか。如何にも偉そうな名前だし、間違いなく従者を連れて来るだろう。
私は従者として格の違いを見せてやろうと気合いを入れるのだった。