世に出回ってるウェブ小説はなんであんな長く書けるんですかね?天才?
視界が切り替わった瞬間、俺は異変を把握し即座に周囲を警戒した。
「アルベド!」
「はい!時間が停止しています。」
ここは……玄関ホールか。
俺がアルベドと共に周囲の警戒を続けていると、硬い靴で床を踏みしめる音が規則正しく鳴り響いた。
足音と共に、玄関ホールに繋がる廊下の奥から十代後半くらいの容姿をしている銀髪のメイドが体幹を一切崩さずに歩いてきた。
「ようこそいらっしゃいました。私、レミリアお嬢様にお仕えさせて頂いております十六夜咲夜と申します。」
メイドは華麗にカーテシーをするとすぐに姿勢を正して俺達に向き直った。
「……ああ、今日は君の主人に相談があって来た。アインズ・ウール・ゴウンだ。彼女はアルベド、私のパートナーだ。」
「はい、お伺いしております。それではアインズ・ウール・ゴウン様、アルベド様、これよりレミリアお嬢様の元までご案内致します。」
メイドはそう言うとすぐに背筋を伸ばして歩き始めた。
俺達は彼女に追従するが、内心では疑問が溢れていた。敵対心が無いのは分かったがなんで時間を止めてたんだ?
まさか普段から時間を止めて生活している訳じゃあるまいし。……やっぱり分からないな。
「この先でレミリアお嬢様がお待ちです。私はここまでで失礼致します。」
メイドは大きな扉を開くとその前で俺達に向かって瀟洒に頭を下げている。……どうやら行けという事らしい。
こういう時はどうやって入ればいいんだ?
俺は焦りながらも全く表情に出さずに堂々と部屋の中へと足を踏み入れる。
「ようこそ、紅魔館へ。歓迎するわ。」
レミリアはテーブルの先でワインを飲みながら俺達へと話し掛ける。
俺はアルベドを横目で見るが、うん。表情はデフォルトで設定されていた微笑みと変わらない。アルベドで良かった。
「わざわざこの様に歓迎してくれるとは、感謝しよう。レミリア殿。」
「気にしないでいいわ。それで、今日は相談があるとの事だけど?」
……ここで言えるわけないだろ!あくまで他人という関係だから相談を持ち掛けたのであって、
アルベドの前で支配者としての立ち振る舞いを教えてくださいなんて言える訳が無い。
「う、うむ。それは後ほど話すとしよう。」
「どうして?今じゃ駄目なの?」
……誰かどうにかしてくれー!俺はなんで話のネタも無しにこんな所に来てしまったんだ!
と内心これ以上無いほどにパニクっていると、不意に後ろから話し掛けられる。
「あら?お姉様はお客様が来るなんて言ってなかったけど?」
「だってあなたに関係のある話では無いもの……多分ね。」
なんだ、レミリアさんの妹か。とりあえず、話が逸れてくれて助かった。
「フランドール・スカーレットです。よろしくね?」
彼女はくるりと回ってお辞儀をすると近くの席に座った。
「ちょっと、あなたの分の食事は用意してないわよ。」
「いいじゃん。こういう時は多めに作ってるものでしょ?」
うーん、ペロロンチーノさんが喜びそうだな。彼はこの世界に来なくて正解だったのかもしれない。
「まあ、いいわ。ただし余計な事は言わなくていいからね。」
「どうしよっかなー?」
俺、なんでここに居るんだっけ?ああそっか。駄目だ。アルベドが居ると話が出来ない。
「ああ、食事は私の分を食べて貰って構わない。見ての通り、食事が出来ないものでね。」
「そうだったわね……咲夜。」
「はい。こちらを。」
なんだ……これは。ネックレス?
「それは仮の肉体を付与する宝石よ、魔力を込めると生前の肉体が付与されるわ。詳細なイメージが出来るなら望む容姿になれるわよ。」
肉体……俺にか?まさか、食事を取れるのか!
俺はすぐ様ネックレスへ魔力を込める。魔力の扱い方なんて知らないがとにかくネックレスへと意識を集中させる。
「あら……平凡ね。というか、身長変わってないかしら?」
この身体……鈴木悟のものだ。だが……首の後ろにあったコンソールとの接続口が無くなっている。それに、身体も軽い。
恐らく肉体を構成する要素が自然的な物に置き換わっているのだろう。
「レミリアさん!食事を取ってもいいですか!」
俺はアインズ・ウール・ゴウンとしての演技すら忘れてレミリアさんへと話し掛ける。
「あら……仮面が外れてるわよ。まあいいわ。私は空気の読める女だからね。好きなだけ食べて頂戴。咲夜!」
レミリアさんが声を上げると再び時が止まり、その中で咲夜と呼ばれたメイドが黙々と料理を運んでくる。
なんだこれ……こんなもの食べた事ないぞ。肉だ!肉がある!
「いただきます!」
俺はテーブルマナーなんてクソ喰らえと言わんばかりに肉へとかぶりついた。
「……美味い!」
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「あなたのご主人は少し慎みを覚えた方がいいわね。」
まさか演技も忘れて食事にがっつくなんて……予想外にも程があるわ。アルベドも困惑しているようで未だに返事が返ってこない。
「この様子だと、生前はまともな食事すら取れなかったみたいだし、そのままアンデッドになっちゃったなら……まあ仕方ないのかもね。」
うーん、考えていたプランが全部吹き飛んでしまった。
「まあ、私も頂きましょうか。あんなに美味しそうに食べられると何だかお腹が空いてきたわ。」
「あの人、声も聞こえてないみたいだねー。」
それにしても凄い食べっぷりね。あれ……多分後で吐くわね。まだ肉体が馴染んでいないのに。
咲夜にバケツを用意しといて貰いましょう。
さーて、なんか予想より面白くなって来たわね。冷静になったらどんな反応をするのかしら?それもそれで楽しみね。
私はモモンガをどう弄ってやろうかと考えつついつもよりも少し豪華な食事を楽しむのだった。