Vampire Lord   作:Crimson Wizard

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ちょっとオリジナル要素多め


第29話

 

「飲み込み自体は早いわね。今までは何かを学べる環境では無かったということかしら。」

 

「……もしかして、才能あったりします?」

 

「調子に乗らないで。飲み込みが早いと言っても凡人の域を出ないわ。」

 

私がそういうと、あからさまに落ち込んでいるモモンガ。

 

「でも、これで基礎知識は大丈夫なはずよ。これであなたの言う第三位階程度までなら理屈で説明出来るんじゃないかしら?」

 

「……あの、少し休みませんか?もう二週間はこの図書館に居る気がするんですけど。」

 

……食事を取らせてやっているだけマシだと思うんだけどね。まあ学者や魔法使い以外には苦痛なのかもしれないわね。

でも、魔女である私が彼のような存在を認める訳にはいかない。

 

私たち魔女は知識を求める生き物だ。魔法はその副産物に過ぎない。

でも、だからといって魔法を軽んじている訳では無い。私たちは魔法使いという種族であることに誇りを持っている。

故に彼のように熟練の魔法使いが扱うレベルの魔法が操れるのに中身はそれに追い付いていないというのが我慢ならない。

 

「いいわ。少し休憩にしましょう。それと、あなたは私の弟子になるんだから、普通の魔法も覚えてもらうわ。」

 

「……位階魔法ではない魔法ですか?多分無理だと思うんですけど。」

 

「端から無理と決め付けるのは良くないわ。それが自らの視野を狭めているの。とりあえず、その馬鹿みたいな指輪は外してこれを着けなさい。」

 

魔術的な何かなのは分かるけど、馬鹿みたいに着けすぎでしょ。作業する時邪魔そうだけど。

 

「ええ……どれを外そうか。これは絶対駄目だし……炎耐性の指輪も駄目だな。よし、これだな。」

 

……指輪を外すのにどれだけ掛かるのよ。

 

「いいわ、とりあえず着けたわね。それはあなたをユグドラシルの法則とやらから解放する指輪よ。」

 

レミィに創った物とは真逆の物ね。

……勝手に与えたことについて後で色々言われそうだけど、レミィも好き勝手してるんだし、文句は言わせないわ。

 

「ええ!?でも位階魔法が使えなくなるんじゃ……」

 

「いい?質問は後にして頂戴。これを着用すると、あなたはユグドラシルとは無縁の存在になるの。

レベルも無いし、位階魔法も使えない。つまり自然的な存在になるの。あなた、今まで何かをしようとして失敗した事はなかった?」

 

「あ、そういえば料理をしようとしたらその瞬間だけ意識が無くなったり薬草を採取したいのに全く見分けがつかないなんて事がありました。」

 

「それがユグドラシルの縛りよ。あなたが不自然な存在である事の証明。でもこれを着けるとそうじゃなくなる訳。

ちなみに意識的に切り替えるから、指輪をつけるだけじゃ駄目なの。そうね、あなたに分かりやすく言うなら……」

 

モモンガは真剣に話を聞いている。やはりユグドラシルの法則による縛りは不自由だったのだろう。

 

「今のあなたはユグドラシル由来のビルド構成な訳。それをカチッと切り替えるイメージをしてみて。

あなたは新ビルドを育成中のモモンガ。勿論レベルは1ね。」

 

まあレベルなんて概念は無くなるんだけど。

多分こういった説明は私よりレミィの方が得意なんだろうけど……私はゲームなんかについてレミィから聞いた知識しかないし。

 

「……多分出来ました。」

 

「そう。じゃあ今からは好きなだけ魔法を覚えられるわ。記憶できる数に制限なんか無いし位階魔法も技量次第で再現可能よ。どう?少しはやる気出た?」

 

「めちゃくちゃ出ました。もっと魔法について教えてください!」

 

これでモモンガは正式に私の弟子だ。まあ悪く無いわね。私が魔法を指導した事があるのは咲夜とアリスと魔理沙だけだし。

魔理沙は指導されたなんて認めないでしょうけど。

 

「いいわ、じゃあ先ずは……」

 

 

 

 

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「あの二人、ここ二ヶ月くらい図書館に篭もりっぱなしよ?絶対何かあるでしょ!」

 

「そんな、モモンガ様が浮気なんてする訳ないわ!」

 

あれからずっとモモンガが出てこないものだからアルベドとは互いに時間を潰すべく会話をする毎日が続いている。

 

「まあ、パチェに色恋沙汰なんて私にも想像つかないし、今頃モモンガはパチェに扱かれてるはずよ。」

 

「モモンガ様を扱く……ああ、私も魔法詠唱者(マジック・キャスター)だったら良かったのに。」

 

……そういう意味じゃないんだけど。

 

「あーもう。それにしてもモモンガの奴全然出てこないじゃない!服だってわざわざ美鈴に買ってこさせたのに。」

 

「まあ、私はモモンガ様が満足するまで待つわ。いい女は主人の趣味を邪魔しないものよ。」

 

それにしたって二ヶ月だぞ?いくら何でも長過ぎる気がする。

 

まさかモモンガを弟子に取ったなんて事は……いや、無いわね。

今までパチェに弟子入りを志願した魔法使いたちは私目線でもかなり優秀だった。それでもパチェは弟子を取らなかった。

 

パチェが直接魔法を教えた存在なんて、咲夜とアリスと魔理沙くらいじゃないかしら。

 

 

 

 

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「というか、私が言うのも何だけどあなた帰らなくていいの?」

 

「いや……多分全然良くないでしょうけど、ここまで来たらある程度自分に胸を張れるようになってから彼等と会いたいので。」

 

ふん、私基準だとある程度というのは決して低くないレベルだぞ。

 

「いいわ、ここ数ヶ月であなたはかなりの事を学んだはずよ。ようやく野良の魔法使いと同レベルくらいね。」

 

「……まだその程度なのか。」

 

「それはそうよ。魔法使いにはそれぞれ生涯のテーマ、主題。言い方はそれぞれだけど自身と結び付く概念が一つある筈なの。

それに比べてあなたは何にも無いし、まだ学び始めて数ヶ月……これでもマシになった方よ。あなた最初は四則演算もまともに出来なかったじゃない。」

 

数学や化学というのも魔術とは深い結び付きがある。故に魔法を極めるのなら必ず通らなくてはならない道だ。

 

「魔術は学問よ。それを考えるとあなたはこの短期間でかなり成長しているわ。」

 

「ありがとうございます。……でも、何に使うのか分からない呪文もかなり有りましたね。」

 

魔法使いという生き物は何でもかんでも魔法で出来るか試したくなっちゃう生き物なんだから仕方ないじゃない。

 

「まあいいわ。とりあえずあなたが見習い魔法使いとして一定のレベルに達した事を認めましょう。」

 

「これでようやく見習いなのか……」

 

「そろそろ私の魔法をあなたに見せてあげるわ。あなたにはまだ早すぎるかもしれないけど、ある程度目標がしっかりしていた方がいいでしょう?」

 

「パチュリーさんの魔法か。俺の目標……」

 

「じゃあ手を貸して。」

 

私は彼の手を取ると別の大陸へと転移した。

 

 

 

 

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パチュリーさんの手を取ると、落下するような感覚と共に視界がいきなり切り替わった。

 

「うおっ!なんだここ!」

 

「……そう慌てなくても、別に危険な所では無いわ。紅魔館から地続きでは無いけれどね。」

 

王国がある場所とは別の大陸って事か。

 

「にしても暑いですね。なんで砂漠にしたんですか?」

 

「人の居ない所じゃないと目立って仕方がないからよ。」

 

……そのレベルの魔法って事か。俺の目指すべき目標。パチュリーさんがそう言った以上、俺もしっかり目に焼き付けなくては。

 

「私の操る魔法は五行相克の地、水、火、木、金に加えて日と月の属性を内包してるの。

これは私の生まれ持った力だけど、同時に私の魔法の集大成でもあるの。しっかり見てなさい。」

 

パチュリーさんは詠唱を始める。

 

「水は火に、火は金に、五行相剋を司りし魔女が命ず、夜よ明けるな。日輪出づる刻は永遠に許されず……日よ沈め。」

 

彼女の周りに宇宙空間で光る星々の様な光が出現する。それらは互いを照らし合わせ、やがて一つの大きな魔法陣となった。

 

「《極夜》」

 

彼女がそう呟くと魔法陣が大きく光り、その後、灼熱の日差しを照らしつけていた太陽は月へと変わり、周囲の色は静かに夜の色へと変わる。

 

「……凄い。」

 

「これで、この砂漠一帯は極夜と呼ばれる状態になったわ。これから、この土地では永遠に太陽が見える事は無いでしょうね。」

 

永遠に……だと。俺の師匠は思ってたより凄い人なのかもしれない。

今までの俺だったらきっと地味だとか役に立たないなとか思った筈だ。

だけど、魔法をある程度学んだ今の俺なら媒体も無しに永続的に魔法を発動するのがどれだけ恐ろしい事なのかが分かる。

 

「でも、これって向こうの大陸からはどう見えているんでしょうか?」

 

「そこは大丈夫よ、しっかり範囲は指定したから。ここは観光スポットにでもなるんじゃないかしら?はい、帰るわよ。手を貸して。」

 

俺がパチュリーさんの手を掴むとそこは見慣れた図書館だった。

 

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