Vampire Lord   作:Crimson Wizard

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仕事を休んでしまった。……また明日から仕事ですが。


第35話

 

「ここなら大丈夫でしょう。もう日も暮れるし、野営の準備をしましょう。」

 

「私も手伝うぜ。」

 

何でわざわざ外で寝泊まりしなくちゃならないんだか。

本当は転移を使えば夜の間だけ宿に戻る事が出来るんだけど、それを言ったらもはや依頼の意味すらなくなるし……

 

「ほらよ。確かここは……こうだ。本で見た事があるぜ。」

 

魔理沙はこういうの好きそうだし、別に苦でもないんでしょうけど。というか、向こうの世界のテントは普通に目立つと思うんだけどね。

 

「これは……何でしょう?見た事がありませんな。」

 

依頼人である商人が興味を持ってしまったようだ。

 

「天幕を組み立てる過程を簡略化した道具よ。というか、小さく纏めただけね。」

 

多少の手間は掛かるしね。本来私には必要ないんだけど。

 

「ほほう、それは既に商品化されているので?」

 

「まだよ。でもいつかは商会を開くつもりでいるから、貴方に卸す事は出来ないわ。」

 

向こうの世界の道具は魔力を込めなくても基本的に使用出来るので、一般人からすると使い易い物が多くある。

テントだったり、ライターだったり、キャンプ道具であったり。

そういった物の作り方や材料が書かれた本は、全て紅魔館の図書館に置いてある。

 

なので資金稼ぎとして商会を開いてそういった道具を売る事を考えついた訳だ。……お嬢様が。

 

「そうですか……残念です。」

 

そうは言っているが、商人の目はまだ諦めていない。妙な気を起こさないでくれると助かるんだけど……

まあ、そこまで馬鹿じゃないか。

 

「さて、私は食事を作るから、魔理沙は引き続き護衛を頼んだわよ。」

 

「へいへーい。じゃ、おっちゃん。私の目の届く範囲で寛いでおくといいぜ。」

 

……仮にも依頼主におっちゃんって。魔理沙は相変わらず距離の詰め方がおかしいわね。

それに相手も不快に感じては居ないようだし。

 

「分かりました。まさか食事までご用意して頂けるとは……」

 

こういった依頼は多くの場合、食費なんかも依頼主の負担になる事が多い。

それに干し肉みたいな保存食だったり、お湯で戻すタイプの乾物なんかで簡易なスープを作るのが精々だ。

 

だが、仮の身分とはいえ偉大なるレミリアお嬢様に仕えるメイドである私がその様な簡素な食事で我慢出来ようか。

否、断じて否。という訳で、私が食事を担当している訳である。

 

今日はキャンプ飯の王道であるカレーだ。……いや、別にキャンプじゃないんだけど。

 

まず野菜を適度な大きさにカットする。今回は多少大きく切ってもいいでしょう。

鶏肉も一口サイズにカットしたら、空間を拡張しているバックパックから厚手の鍋を取り出す。

鍋を火にかけて、油を引いたら鶏肉に軽く焼き色をつけて別皿に移しておく。

そこへさっき切った野菜とコレクションしている11種類のスパイスを加える。

今回はカレーに慣れていない現地人がいるから、水は味が薄まらない程度に少し多めに入れておく。

 

「おい……咲じゃない、セレネ。ここは紅魔館じゃないんだぞ?」

 

「ちょっと、今は邪魔しないで。」

 

私が料理の邪魔をしないでというと、魔理沙は溜め息を吐きながら離れていった。

 

鶏肉をまた移してと。よし、後は火加減を見ながら煮込むだけね。

 

「で、何?」

 

「いいや、何でもないぜ。」

 

……なによその呆れ顔は。私が料理に妥協出来ないのは知ってるでしょうに。

 

 

 

 

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「さて、そろそろかしらね。」

 

ふむふむ。まあ外で作ったにしてはいい出来なんじゃないか?

 

「はい、出来たわよ。」

 

おっと、危ない。癖で給仕してしまう所だった。

 

「おお!美味そうだな。」

 

「香りは良いのですが……その、少し見た目が……」

 

む、失礼だな。我ながらカレーにしては見た目もいい方だと思うけど。

 

「文句は食べてから言って頂戴。」

 

「いえ!文句などでは……むむ、これは!」

 

ふふん。美味しいでしょう。個人的にはもう少し辛い方が好みだけど、まあ初めてカレーを食べるならこの位がいいわよね。

 

「こんなに美味しいものは生まれて初めて食べましたよ!王都の高級宿でもここまででは無かった。」

 

うんうん。普段お嬢様に振る舞っているものだから、当然よね。

 

「褒められて悪い気はしないわね。」

 

「……これは私の負けだな。いや、でも和風料理ならワンチャンあるか?」

 

魔理沙は何を張り合ってるんだか。まあ、料理で負ける気はしないけどね。

 

「とりあえず、食事を取って暫く経ったら私が魔法で身体の汚れを落とすから、その後私達は護衛を継続ね。」

 

「了解だぜ!ふう、飯も食ったし少しゆっくり……何だ!?」

 

何の音?……なんだ、ただのオーガとゴブリンの群れか。

 

「魔理沙、私は料理を担当したんだからあれはあなたが退治して頂戴。」

 

「ったく、飯を食ったばっかだってのによ。」

 

商人はアダマンタイト級冒険者が居るのを分かっているからか、或いは単に肝が据わってるのか、焦っている様子は見られない。

 

「あなたはそこでじっとしてて。」

 

「はい、ご迷惑は掛けません。」

 

まあ、群れと言ってもゴブリンは十五体くらいだし、オーガも二体しか居ないし余裕でしょう。

 

「私も魔法の練習はしてるんだぜ。」

 

魔理沙はテントに掛けてあった箒を手に取ると、それに乗って空を飛ぶ。

 

「よし、ここまで来れば何にも出来ないよな。じゃあ実験台になってもらうぜ。」

 

魔理沙はミニ八卦炉を取り出すと、そこから大量の水を放出する。

その水を魔法で操り、一定範囲を水で満たしそこへ渦を発生させる。

 

オーガやゴブリンはそのまま渦に呑まれ続け、数分後に溺死した。

 

「……魔理沙。その水は近くに捨てないでよ?」

 

テントを水浸しにされてはたまったものじゃない。

 

「分かってるぜ。ほらよ。」

 

魔理沙が箒から降りながら右手を振るうとたちまち水は消え去った。

……いつもの魔理沙らしくないわね。

 

「……どうしたの?あなたっていつもそんな戦い方しないでしょ?」

 

「おっと、失礼だな。魔理沙ちゃんはいつでもクールでクレバーだぜ。」

 

……納得はいかないがまあ問題は無いし、別にいいか。

 

「さて、モンスターは蹴散らしたし。今度こそゆっくりしようぜ。」

 

「そうね。」

 

夜の間はずっとこの景色を見てなきゃいけないのね。……はぁ、もうこんな依頼は受けないわ。

十六夜咲夜は安易な気持ちで依頼を受けた事を後悔するのだった。

 

 

 

 

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「うーん、失敗みたいね。」

 

まあ、ダメ元だったし別にいいか。

私は今、暇つぶしの手段として考えていた新たな身分を作る際、どんな職業(クラス)構成のどんなキャラにするかを検討していた。

たった今失敗したのは、前提条件を無視して職業(クラス)を取得出来るから、ワールド・チャンピオンの職業(クラス)も修得出来る。

 

……と思ったんだけど。流石に無理みたいね。ちなみに、ワールド・ディザスターは修得出来た。

何が違うのかしらね?どちらも特別な職業(クラス)なのは同じだと思うんだけど。

 

「生産職にも興味があるわね。修得すれば、私がパチュリー並のマジックアイテムを作れるようになるのかしら?」

 

その場合、鍛治職がいいのかしら?それとも錬金術師?いや……確かユグドラシルにも魔力を回復するポーションはなかった筈。

それを作れない時点でパチュリーには叶わないし、あまり必要も無いかしらね……。

だって神官ですもの。自分で回復出来るわ。

 

「まあ、鍛治職が無難かしら?魔化とかルーンとかあるらしいし、そうね……そうしましょう。」

 

よし、大体どんなキャラにするのかは決まってきたわね。

後は……どの国をメインの活動拠点にするかとかも考えなくちゃね。

 

ううむ、何気にこういう事を考えているこの時間が一番楽しいわね。

 

私はキャラの構想を練りながら今日も異世界を謳歌するのだった。

 




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