Vampire Lord   作:Crimson Wizard

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今回は7割方フールーダ視点です。


本編
第1話


 

そこはアゼルリシア山脈、その麓。

リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国の間に位置し、言わば自然的条件による国境に当たる場所である。

 

その比較的帝国側で、唐突に火山の噴火を疑う程の爆音と地響きが鳴り響いた。

それはバハルス帝国の首都・アーウィンタールにも届き、

優秀な皇帝によって国を治めている帝国は、皇帝の鶴の一声によってすぐさま調査隊を派遣した。

 

「なんだ?紅い……館?」

 

「趣味が悪いですね。」

 

隊員達は無闇に近付かず、中に居るかもしれない相手を警戒して慎重に観察している。

だが……

 

「おぉ…!これは間違いなく魔法的な物じゃな、結界らしき何かも見て取れる……儂は少し確認を取ってくる!」

 

「ちょ、お待ちを!フールーダ様ッ!我々は皇帝陛下より相手を刺激しないよう命令されております!」

 

バハルス帝国の歴代皇帝達を支えてきた帝国主席宮廷魔術師であるフールーダは魔法狂いで有名であり、

爆音と共に莫大な魔力を感知したと皇帝に一言伝えると返事すら聞かずに調査隊に着いてきたのだ。

 

「それはお主らだけじゃろう?儂は何も言われておらん。」

 

「……返事も聞かないうちに飛び出して来ただけでは?」

 

都合の悪い事は聞こえないフリで済ますフールーダ。

まあ、皇帝でも止められないものを一調査隊員が止められるはずは無いのだが……

 

「まあ、お主らは帰ってよいぞ。儂は少しだけここの者とコンタクトを取ってくる。」

 

「……全て皇帝陛下にご報告させて頂きます。」

 

フールーダは鬱陶しそうにしながらも頷き、調査隊は納得出来ないようだがフールーダの指示通り引き上げた。

 

「さて、中には悪魔でも住んどるかも知れんが……話だけでも聞いてみるかの。」

 

フールーダは門の辺りまで歩くと、門の辺りで立ち止まる。

 

「……門番が居ないのでは話すら聞けぬでは無いか。」

 

だが、こんな所で止まるフールーダでは無い。

魔法が絡むとそれ以外に目を向けられなくなるフールーダは相手を怒らせるかもなんて考えない。

 

「まあ、仕方あるまい。飛行(フライ)

 

フールーダは魔法で空を飛ぶと、門を超えてふわふわと玄関口にまで辿り着いた。

 

とりあえずノックを試みるフールーダ。

だが……

 

「すまん!誰か居らぬか!?」

 

大声を上げるも返事はない。

 

普通はここで諦めるのだろうが、フールーダは普通ではない。

 

「……」

 

無言で扉を開けると、そのまま中へと足を踏み入れる。

 

「おぉ…!これは……。」

 

明らかに外から見た景観と広さが違う廊下に大はしゃぎするフールーダ。

ちなみに傍から見ると不法侵入したおじいちゃんがドアを開けた瞬間大喜びする意味のわからない光景である。

 

 

 

 

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さらに奥へと足を進めようとするフールーダだが……

 

「止まりなさい。」

 

自身のすぐ後ろから、

凛としながらも何処かあどけなさを残すような声が聞こえて来た。

 

「……すまんの。誰もおらんのかと思ってな。」

 

魔法的な考察をしていたとはいえ、一度も気は抜いていないはずだが……

 

「そう、それであなたは何者?」

 

「儂か?儂はフールーダという者じゃ……ただの魔法好きのジジイじゃよ。」

 

ここで自身の立場を名乗らないのがフールーダだ。

普通なら保身の為に立場のある人間だということを第一に伝える筈だ。

 

「そう……それで何用かしら?」

 

「いや、いつも通りに過ごしておったら火山の噴火かと思う程の轟音がしてな……

確認しに近づいてみると魔法的な結界が張ってあったのでつい気になってしもうてな。」

 

ほとんど事実だ。元々魔法が目当てでここを訪れたの以外は……

 

「そう。でも人様の敷地に勝手に入るのは関心しないわね。私の主人にあなたの処遇を聞くから着いて来なさい。」

 

そう言われた直後、自身の後ろから足音が聞こえる。

着いて行けば、もしかしたらこの結界を張ったものと話せるかもしれない。

 

フールーダは振り返り、着いて行こうとするが……

 

「おお、随分と別嬪さんじゃの。」

 

姿を知らずに話していた相手が実はメイドであり、

十代後半の美少女だった事に驚くフールーダ。

 

「そうかしら。」

 

メイドの格好をしているが、話し方は普通の様だ。

……フールーダは自分が侵入者扱いなのを忘れているようだ。

 

 

 

 

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それから数分歩くと、目の前に巨大な扉が現れる。

 

「さて、この先に私の主人が居るわ。くれぐれも失礼の無いように。……それと、見た目で侮らない事ね。」

 

そう言われ、頭に疑問符を浮かべながらもとりあえず頷いておくフールーダ。

 

するとメイドは巨大な扉をノックする。

 

「お嬢様、咲夜です。」

 

メイドが言う。

 

「入っていいわよ。」

 

すると即座に返事が帰ってくる。

……聞く限り、メイドの彼女より幼い声をしているが。

 

「失礼します。」

 

ドアを開けて中に入ったメイドの後ろを歩くフールーダ。

 

「あら。御客人?」

 

「いえ、一応侵入者です。」

 

おお!まさか吸血鬼の館だったとは……。

 

「お初にお目に掛かります。私はバハルス帝国所属の主席宮廷魔術師、フールーダ・パラダインと申します。

この度は許可なく館に侵入してしまって申し訳ない。」

 

他国の王族を相手にする時のような対応をするフールーダ。

そのあまりの変貌ぶりと何気に高そうな地位に驚くメイド。

 

「そう、ここはバハルス帝国というのね。それで何用で此処を訪れたのかしら?」

 

その立場を聞いた上で、優雅な仕草のままフールーダに問いかける吸血鬼。

……かなり幼い見た目をしているが、異形の者に見た目など関係あるまい。

 

「実は、いつも通り日課の魔法研究に耽っておりましたところ、爆発音や地響きなどと共に魔力を感知いたしまして、

興味の赴くままに訪れた次第でごさいます。」

 

「へぇ〜。どんな魔法を使えるの?」

 

今度は見た目相応の態度で問いかける吸血鬼。

 

「どんな、と言われますと?」

 

定義が曖昧な為、どんな魔法かを聞き返すフールーダ。

吸血鬼は悩むような仕草をみせ、

 

「んー。じゃあ、得意な属性は?」

 

これまた、ジャンルを問わず広く修めているフールーダには難しい問いだ。

 

「属性……では有りませんが、魔力系、信仰系、精神系の魔法を最低でも第三位階までは扱えます。」

 

「……ん?位階?……それは悪魔とか天使の階級ではなくて?」

 

まるで心当たりのなさそうな吸血鬼。

……位階魔法を知らない?亜人種でも知っているのだ。吸血鬼だからと言って知らないなどと言う事は……

 

「まさか、ご存知ないのですか!?」

 

「……そうね、私たちの知ってる魔法とは別の物みた」

 

吸血鬼が話している途中だが思わず口を挟んでしまうフールーダ。

 

「それはいけませんっ!吸血鬼ともあろうお方が勿体ない!位階魔法を知らないなど人生の八割は損をしておりますぞ!」

 

ポカーンとする吸血鬼を無視して熱弁するフールーダ。

 

「それと、今仰った知っている魔法とはなんなのです?まさか、始原の魔法(ワイルド・マジック)を使えるのですか!?」

 

「ちょ、落ち着きなさいって!」

 

返事をする間もなく喋り続けるフールーダに辟易とした表情を見せる吸血鬼。

 

「お、おお。申し訳ない、魔法の事となると自分を抑えられず……」

 

「……それは身をもって実感したわ。」

 

するとゴホン!と、咳払いをして話を仕切り直す吸血鬼。

 

「さて。先程の話に戻るけれど、とりあえず落ち着いて聞きなさい。まず私たちは、この世界の人間では無いわ。」

 

「……そもそも人間では無いのでは?」

 

そう言うとあからさまにため息を吐かれる。

 

「そうじゃなくて、そうね。この世界の生物では無いの。

……えーっとね。話すと長くなるんだけど、私達はこの世界とは別の世界で生活してたんだけど、

異変……じゃ伝わらないわよね。まぁ、大規模な魔法の発動に失敗して間違えてここに転移しちゃったわけ。

だから、こっちの事は何も分からないのよ。」

 

「……なるほど。ちなみに、プレイヤーでは無いのですか?」

 

フールーダは法国が神と崇める存在を知っていた為、確認を取っておく。

 

「プレイヤー?ゲームか何かの事?……多分違うわ。」

 

なるほど。プレイヤーでは無いと……

 

「それと、私事にはなってしまいますが質問が御座います。」

 

「ん?何を聞きたいの?」

 

フールーダは先程から気になっていた事を話す。

 

「その、私は相手の魔力を看破出来るタレント……能力のようなものを持っておりまして、

吸血鬼にしては魔力のオーラが見えないなと思っていたのです。結界を張られたのは別の方ですか?」

 

「あぁ、魔力は上手く隠しているだけよ。それと、結界を張ったのが別人というのは正解よ。」

 

……なるほど。魔力を隠す方法など知らないが、そういうアイテムなら聞いた事はある。

それにしてもその結界を張ったのはどんな人物なのだろうか。

 

「その、結界を張ったという方はどちらにいらっしゃるので……?」

 

「ああ。それは私の友人の魔女で、今は、というか。いつも図書館に居るわ。」

 

図書館……そういえばこの屋敷……

 

「もう一つ聞いても宜しいですか?」

 

「ええ、いいわよ。」

 

フールーダは屋敷に入った時から気になっていた事を問う。

 

「この屋敷の空間を拡張しているのは、何らかの魔法なのですか?」

 

「あー、残念ながらそれは貴方の横にいるメイドの能力なのよね。まあ、魔法でも似たような事は出来なくもないわよ。」

 

「それは誠で御座いますかッ!?」

 

即座に唾を飛ばしながら聞き返すフールーダ。

あまりの食いつきにやはり引き気味の吸血鬼だが……

 

「そうね……あなたが私たちに情報を提供するのなら対価として魔法を教えてあげましょう。」

 

「分かりました!どんな情報でもお渡しします!何なら帝国の極秘情報も、何でも聞いてくだされ!さぁ!」

 

「ちょ、少しは躊躇しなさいよ。ていうか、立場のある人間なのに躊躇無く国を捨てるのはどうなのよ……」

 

若干軽蔑の篭った視線を受けたフールーダは……

 

「魔法の深淵を覗く為には致し方ない犠牲なのです。」

 

「いや、結局アンタの都合じゃない。」

 

いつも通りだった。

 

「まあ、契約を結ぶなら書面でね。

……それと、私はレミリア。レミリア・スカーレットよ。あなたを客人として歓迎するわ。」

 

「おお、感謝しますぞ!レミリア様!」

 

そう呼ぶとなんだか嫌そうな顔をする吸血鬼、いや。レミリア様。

 

「なんか、髭がもじゃもじゃの爺に様付けで呼ばれるのも気色悪いわね。堅苦しいし、レミリアでいいわよ。」

 

すると何故だかメイドから刺すような視線を感じる……

 

「むむ、ではレミリア殿で。」

 

「……まあいいわ。さて、ではとりあえず客室に案内するわ。

それと、情報の整理が終わったらあなたの主人と対話でもさせて貰おうかしら。」

 

理由は分からないが、まあいいだろう。儂の魔法研究の為の犠牲となってくれ、ジルよ。

 

「おお、それくらいなら構いませんぞ。」

 

その後、皇帝の知らぬところで契約が交わされたと言う。

 




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