「ふ、ふぅ。疲れたぁ……全く、なんなのよ!あの魔法への執着は!」
私達はあの後、館ごと何処か知らない土地へと転移した。
少なくとも、間違いなく幻想郷では無いわね……
直ぐに眷属を召喚して館の周辺数kmを調査させたけど、何も見つからなかったわ。
まぁ、とりあえずそれでこの後どうするかを話し合っていたら咲夜がフールーダと名乗る爺さんを連れて来た。
そこまではいいんだけど……あの男!魔法についての話が長い!そして質問の多いこと……
全く、おじいちゃんの相手は疲れるわ。
「あの、お嬢様。あのフールーダという老人。一応客人ですが、あの人間の提案を受け入れても良かったのですか?」
ん?立場のある人間みたいだし別にいいんじゃない?というか、提案をしたの自体は私だし……
「あら、何か気になることでもあるの?」
「いえ、そうではなく……魔法狂いということは間違いなくまたパチュリー様に何か頼み事をする事になるのでは?」
……あ。それは出来ないんだったわね。
パチェは梃子でも動かないだろうし、フランにやらせてもいいけど、間違いなく何かを要求されるわね。
「……面倒臭いけど、私がやるわ。」
私、繊細な術式は苦手なのよね。かなり集中力を使うから、正直やりたくないんだけど……
「まぁ、飽きたらフランにでも押し付けましょう。大体、このイレギュラーも元はと言えばあの子のせいだし……」
しかも何故かパチェはフランを叱らないのよね……全く、私には文句ばっかりの癖に!
「なるほど、妹様に押し付けると。」
「だって!今回ばかりは私本当に悪くないわよね?」
本当に何もしてないもの。フランが邪魔しなければ魔法の発動も失敗しなかったし……
「いつもは自分が悪いって分かってたんです?」
コイツ……鼻で笑いながらこの質問だ。全く…!
「こらそこ!主人に対しての口の利き方じゃないわよっ!それとその顔!ムカつくから辞めなさい!」
皆して私のせいにするんだから!……それと、さっきある程度フールーダから聞いた話で私は確信を得た。
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ここ、オーバーロードの世界だわ。
オーバーロードっていうのは、前世の記憶にある娯楽小説だった気がするのだけれど、
吸血鬼の本性はヤツメウナギみたいな顔とかいうふざけた設定を見た瞬間に読む気が失せたのよね…。
私達が本の世界に入ったのか、それとも本の世界が元々存在していてそれに転移したのかは知らないし、
摩訶不思議な現象なのも事実だけれど、
確か紫も能力を使って二次元と三次元の境界を弄ったりしてたから必ずしもありえない事ではないわ。
話は逸れるが、私は既に曖昧な記憶となっている前世のそれを、魔法を使って鮮明に思い出せるのだ。
ちなみに他の魔法と併用して使う事で、前世で一度読んだ本の内容を忘れて再び初めから読み直すことも出来る。
まあ、手元に何も無い時の暇つぶしには最適よ。
閑話休題、
さて、後でその世界観だったりを確認する為に魔法を使ってもう一度読まなくちゃいけないわね。
確かパワーインフレしてたから、咲夜たちを外に出す為にもしなくちゃならない事は多いわ。
さて……まずやることは周辺諸国の情勢を知ること。
そして強さの基準を知ること。
いつ死ぬかも分からないような場所に咲夜達を放り出すわけにはいかないしね。
それと食糧なんかは庭で作ればなんとかなるし、現時点でかなりの蓄えがある。
そこまで深く考える事では無い。
そしてもう一つ、そのオーバーロードとやらの世界観を再確認してからになるが、
この世界にはレベルの概念があった筈。それが私たちに適応されるのかどうかという検証も必要ね。
適応されるのなら、既に私達は何かしらのクラスでレベルを得ている事になる。
適応されないのなら、私達は完全にこの世界の法則から切り離された存在だという事。
他には、私達はこの世界の法則からある程度切り離された存在ではあるが
一部分のみ適応されるという事も有り得る、そしてこれが一番望ましい。
例えば、オーバーロードにおいてレベル差というものはかなり大きかった筈。
10レベル、それだけ離れるともはや戦いにすらならないと言われていた。
だが、それはユグドラシルとやらの法則が一部この世界に適応されているからだ。
適応されていなければ極論、50レベルの人間が100レベルの人間すら打倒できる事になる。
私達に現時点でレベルの概念がなく、経験値的なものでこれからレベルを後付け出来るのであれば、
例えば私なら運命を操る程度の能力に、吸血鬼としての能力。
それに前世の記憶を読み取って私流にアレンジした魔法、そしてパチェから教わった魔法。
私は既に持っているそれらに上乗せして位階魔法とやらを使えるようになる。
つまりめちゃくちゃ強くなれるという事だ。
さて……朧げな記憶を思い出しながらだけど、それでもかなり覚えていたわ。
流石私の頭脳ね!
それと、そのオーバーロードで思い出したわ。
私達の装備、貧弱過ぎ問題。
これは早急に解決しなければならないわ。
だってこれ。お気に入りだし頑丈とはいえ、何処まで行っても所詮はただの服だもの。
多分だけど、装備だけなら現地人より劣ってるんじゃないかしら?
まあフールーダを見る限り、殺ろうと思えばいつでも殺せる程度でしか無かったから、
装備無しでも恐らく……なんだっけ、あの主人公の骨。
ムササビ……?いやモモンガだったかしら?あれに秒殺されるような事はないと思うわ。
成長性があると喜ぶべきか、装備が貧弱過ぎると嘆くべきか。
私も本当は敵対した時の事ばかり考えたくはないのだけれど、
紅魔館の当主としてはどうしても考えなきゃならない事なのよね。
やらなければならない事は沢山ある。
「さて、まずは……とりあえずパチェの協力を仰ぎましょう。」
私はイレギュラーだからと言い訳をしてパチェとの約束を一旦忘れる事にした。
解説回みたいになっちゃった。
高評価よろしくね!