「…それはなんて言う魔法なの?」
「これはですな……」
あっれぇー?私は恥を忍んでパチュリーに頭を下げ、
本気の誠意を見せながら力を貸してとお願いすると案外すんなりと受け入れて貰えた。
……やっぱりツンデレなのかしら?
それで、最初は私がフールーダに魔法を教えていたんだけど……
フールーダがその魔女に会わせてくれとあまりにしつこいから、
パチェ本人が拒否したら諦めるように言い含めて連れてきたんだけど……
「へぇ。他の魔法と組み合わせる事で効果を発揮するのね……」
「そうなのです!これは……」
確かに、パチェも知識を求める魔女だし意外とウマが合うかもなんて思ったけど、
まさか短時間でパチェと魔法談義をするレベルだなんて……
パチェは興味のない人間の事は視界に映そうとすらしないから、
フールーダはパチェの基準である何かを満たしたんだろう。
「ねぇ……これ私いらなくない?」
昨日からぶっ続けで話し続けてるのよね。この二人……どんだけ魔法好きなのよ。
「何を仰いますか!レミリア殿の影魔法とやらも教わってみたいのです!」
「……でも今はパチェと別の魔法の事を話してるんでしょう?だったら今ここに私がいる必要はないじゃない。」
私、昨日からほとんど何も話してないわよ。
「それもそうですな。」
コイツっ…!
「……はぁ。」
ムカつくけど、魔法が関わると駄目だわ…このジジイ。まともに相手するだけ無駄ね。
「もういいわ。私、あなたの主人とやらに会ってくるから。」
こんな事してても、時間の無駄だしね。相手は皇帝らしいけど……
アンタの所の魔法狂いに大いに迷惑を被っているとでも言えば相手にされない事はないでしょう。
暗君では無いようだし……
「それじゃあ、送って頂戴。」
「いや、今!かなり良い所なのです!」
…本当にコイツ、魅了掛けた後に情報だけ搾り取って殺そうかしら。
「私にこの辺の土地勘が無い事は話したわよね?……それと、あなたの情報とやらも結局は魔法の事ばかり。
私はもっと一般的な情報が知りたいの。このまま役に立たないならこの契約は打ち切るわ。」
そう、コイツは契約すら蔑ろにして魔法談義に打ち込んでいるのだ。この数日だけで魔法という言葉を何度聞いた事か…!
「そ!それは困ります!ジルのいる場所で良いのですか?」
大慌てで立ち上がるフールーダ。
洗脳とか、忘却の呪文とかで魔法の事忘れさせる事も視野に入れてたから助かったわ……
「そのジルとやらがあなたの主人ならそれでいいわよ。」
「ちなみに、送ったらすぐに帰りますのでお許しを。」
お許しをとか言ってるが、許可なんて無くても勝手に帰るでしょうに…!そもそもお前の帰る場所は帝国でしょうが。
「……ふん。」
ようやく話が纏まり、フールーダは魔法を唱える。
「では行きますぞ。
すると視界は切り替わり、レミリアは絢爛豪華な装飾で飾り立てられた部屋の中に立っていた。
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「おい!爺、報告も無しにここ数日どこで何をしていた!?」
ここは何処かと考えて恐らく帝国とやらの城であり、
それも皇帝も使用する部屋だと思い至ったレミリアは気だるげに横を向く。
「すまんの、ジルよ。儂はもう少しやることがあるので少し休暇を貰うぞ。」
「おい、せめて詳細を」
皇帝の話を最後まで聞かずに結局転移して逃げたフールーダに皇帝は頭を抱えている。
この男……このままじゃストレスで禿げるわね。
私の勘がそう言っているわ。
「あなたも苦労しているのね。」
「……そういえば、爺が連れて来ていたな。何か用かな?お嬢さん。」
そういえば、今は翼も消しているし人間の子供にしか見えないんだったわね。
「私は間違いなくあなたよりも年上なのだけれど……」
「ハハ。じゃあ何歳だというんだ?」
「五百を超えてからは数えてないわ。」
そういうと、子供に向けるような笑顔だった皇帝の表情が段々と固まっていく。
「なるほどな、爺が帰ってこないと思ったら人外の住処でも行って魔法の教えでも乞うていたのだろう?」
「正解よ。ちなみに、あの老人のせいで私は生活が変わった挙句にここ数日だけで魔法という言葉を数え切れないほど聞いたわ。」
すると人外だと分かっている私に対しても同情の表情を浮かべる皇帝。……分かるわ、何かシンパシーを感じるのよね。
「まあ、被害者同士で仲良くしようじゃないか。とりあえずは自己紹介でもどうかな?」
私が人外でも話の通じる相手な為か、フレンドリーに対話を試みる皇帝。
「そう、では名乗りましょう。私はレミリア・スカーレット、種族は一応、吸血鬼よ。」
そういって日の下を歩けるようになる前から練習していたカッコイイポーズで翼を広げる私。
「おお、ではレミリア嬢と呼んでも?」
「構わないわ。」
すると、皇帝も名乗りを上げる。
「私はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ。まあ、気軽にジルクニフとでも呼んでくれ。」
「分かったわ、ジルクニフ。」
軽く目を見開くジルクニフ。まあ、皇帝に呼び捨てで呼んでくれと言われて素直に呼ぶ奴は居ないだろうしね。
「それで、爺とはどんな話を?」
「まぁ、それを話すならまずは私達の事情から話さなくてはならないわね。」
そう言って私はこの世界とは別の世界から来た事やフールーダが館に侵入して来て、
なし崩し的に契約を結ぶ事になったことなどを話す。
……フールーダが侵入の辺りでジルクニフの眉間にかなり皺が寄っていた。
「そうか、それにしても不法侵入とは……由緒あるバハルス帝国の主席宮廷魔術師が情けない。
……フールーダがすまないな、レミリア嬢。」
なんだか悟りを開けそうな目をしているわね。
まあ、今までもアレに散々振り回されて来たんでしょうし素直に同情するわ。
「まあ、ああいう人間は下手に制御しようとせずに、物で釣れれば楽なんだけど……」
「……ああ。その通りだ。あんなのでも周辺国では一番と謳われる
……やっぱりあのジジイは殺しておいた方が世のためではないかしら。
「まぁ、しばらくは私の屋敷に居座ってると思うわ。」
「……ああ、そういえば報告にあったな。紅い館の事だろう?」
まあ、人が居ないとはいえ国土にあんな派手な館が現れたら当然上に報告がいくわよね。
我ながらちょーっと派手過ぎる気がしないでも無いけれど。
「やっぱり何か支払った方がいいのかしら?」
一応確認しておく。
「……いや、フールーダの居場所が分かるだけでも有難い。
今までも度々有ったのだ。魔法に関係する報告が上がると連絡すらないままいつの間にか消えている事が。」
……どれだけ自分本位なのよあのジジイ。妖怪の私に言われるって大概よ。
「まぁ、迷惑を押し付けているという点で支払いは気にしないで貰って構わない。
迷惑料だとでも思っておいてくれ。」
なるほどね、ちょっとした打算も込みみたいだけど。まあ、そのくらいの方が分かりやすくていいわ。
「そう、助かるわ。」
その後、色々話を交えて周辺国家の大まかな情勢が分かった。恐らくまだあの骸骨は来ていない。
今の内に色々と進めなくてはならないわね……
私はまず咲夜や美鈴達を強化する事と、私が位階魔法とやらを覚えられるのかを試してみる事にした。
所謂レベルアップって奴ね。それが可能かどうかの実験を行う事にしましょう。
……ちなみに、この辺の地理なんて全く分からないので当然帰れず、
ジルクニフに気を遣われて部屋を貸してもらった。
今後も似たようなことが起きるかも知れないし、
後で自室か何かに紅魔館に直接転移出来る魔法陣でも張りつけておきましょう。
寝れないのキツい