あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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海底洞窟

そらのはしら事件から約1か月、悪の組織の動きは未だ無く少女たちはホウエンの古い文献を引っ張り出しレックウザについての情報を集める。と言っても調べるのはもっぱらダイゴとミクリで少女はハウスの掃除であったり、食事をジムに取りに行ったり作ったり、雑用に近いものを中心にしていた。少女は特に苦にする訳でもなく、時間を見つければポケモンたちと触れ合ったり、特訓したり、ダイゴたちが忙しそうにしていなければ文献について説明してもらったり。元々一人旅だったので雑用は嫌いではなく、比較的楽しんでいる。

 

現在、3人は昼食を済ませリビングで食後の紅茶を楽しんでいた。少女はお昼はダイゴにせがまれて作った辛口チーズまみれカレーを食べ、胃が消化にエネルギーを使っているからだろうか心地のいい眠気に襲われながら外をボーッと眺めている。

お昼にガッツリ系のカレーを食べるのは胃がもたれるのでは無いかと思われたが食事中も2人が美味しいと褒めてくれるのに加えて、カレーの中でも自分が一番好きなカレーを久々に作れて少女は満足していた。とろとろのモーモーチーズを上に乗せた辛口カレーはカレーの辛さとモーモーチーズの甘さとコクが暴力的に美味しいのだ。カロリーはかなり高いが、カロリーが高い=美味しいという方程式はやはり万国共通であろう。

 

「お昼ご飯作ってくれてありがとうね。とても美味しかったよ。」

 

そう文献と資料を片手に少女へお礼を言うダイゴに少女は頬を綻ばせる。

 

「いえ、私も久しぶりに食べれて嬉しかったです。あのカレーが一番好きなんですよね。」

 

「あぁ、美味しかった。でも、フィラの実とオッカの実を普通の2倍入れてるの見た時は思わず二度見してしまったよ。その後に出してきたマトマの実を見た時は正気を疑ったけど。」

 

「だって激辛にするのがあのカレーのポイントですからね。それにちゃんとオボンの実とネコブの実で辛さの中にも旨みがあるように調節してますし。」

 

意気揚々と語る少女に、うん確かに美味しかったとミクリたちが微笑ましげに笑う。

 

「そういえば今日はこれからどうするんですか?」

 

この一ヶ月間、時たまダイゴがチャンピオンリーグの挑戦者の相手をしに帰ったり、ミクリがコンテスト関連で呼び出しをされたりということはあったが、活動はほぼハウスであったため夜には帰ってくる。それによって少女の一日の行動も決まってくるのでその日の予定を把握しておく必要があった。

 

「今日は最近新たに発掘された遺跡に3人で行こうと思っているよ。なんでもホウエン神話に関わる新たな壁画が、」

 

Prrrr.... Prrrr....

 

ダイゴが話している途中に突然電話音が鳴り響いた、どうやら音の出処はダイゴのスマホロトムの様だった。

 

「電話だ、すまないが少し出てくるよ。」

 

そう言ってダイゴは立ち上がりリビングから出ていった。

残された少女とミクリは後ろ姿を見送ったあと、軽い雑談でもしようかという話になり、2人はダイゴが戻ってくる間談笑することにした。

少女はミクリがコンテストマスターという事でコンテストでの話を聞きたいと言い出し、彼は嬉々として思い出を語ってくれた。

 

「へぇ、シンオウでミクリさんが開催したコンテスト大会があったんですね。」

 

「あぁ、ミクリカップはシンオウだけじゃなくてジョウトでも開催しているけど、、その時ファイナルステージで魅せてくれたポッチャマとグレイシアの水と氷のパフォーマンスはとてもbeautifulだった。負けてはしまったが、グレイシアが使った目眩しのシャドーボールからの氷の礫は美しさだけではなく何処か洗練されたバトルセンスさえ感じたよ。」

 

「そうだったんですね、見たかったなぁ。」

 

「カロス地方でもコンテストに似た催しがあると聞いたよ。見たことはあるかい?」

 

「トライポカロンですね。友人がそこに出場しているので何度か。」

 

「へぇ。トライポカロンはポケモンコーディネーターではなく、パフォーマーと呼ぶらしいね。」

 

そう楽しそうに2人で談笑しているとリビングのドアがが物凄い勢いで開く。バタンッ!と大きな音を立てたドアの方に驚いて目を向けると焦りで汗を滲ませたダイゴがそこに立っている。

 

「どうしたんだい、ダイゴ。いつもクールな君が珍しい。」

 

神妙な面持ちのダイゴに対してミクリは冷静に声をかける。

 

「例の組織の目撃情報が入った。」

 

「「!」」

 

「それも海底洞窟。行こう、胸騒ぎがする。」

 

ダイゴの言葉に2人は立ち上がり、玄関を目指した。

 

……

 

ルネから東南東に位置する海底洞窟に行くためには水ポケモンが必要なようで、ミクリとダイゴはギャラドス、少女はラプラスに乗って移動していた。

 

「海底洞窟に何があるんですか?」

 

少女はギャラドスに乗る2人にインカムから少女が声を掛ける。こんな悪天候の中でもインカムは正常に動いているようで、ミクリがこちらを向いてくれる。さすが、デボンクオリティ。

 

「海底洞窟はカイオーガとグラードンの目撃例が多い場所で、多分あそこは2体にとって縁のある場所だと思われる。2週間のオトギリの発言から組織が本格的に動き出したと考えて良いだろう。彼らはレックウザだけではなくカイオーガたちにも何かするつもりなのかもしれない!」

 

「なるほど。」

 

ミクリの話に少女は気を引き締め直すと、ミクリのギャラドスのスピードに必死に合わせてくれるラプラスにごめん、頑張っての意味を込めて甲羅の部分を撫で、空を見上げると先程まで晴れ渡っていた空はどんよりとして時たま雷鳴を響かせていた。

 

ミクリ曰く海底洞窟は空から飛んでも行けるがルネシティの様に周りが崖に囲まれているらしくもし気づかれたら撃ち落とされる可能性があるので海底から潜っていくのがマストらしい。

海を渡り、海中を潜って出たそこはミクリの言ったように壁に囲まれており、ルネシティより空の入口はかなり狭いため攻撃されると洒落にならないだろう。

少女たちは洞窟の入口の前に組織の物と思わしき潜水艦を発見し、浅瀬に近づいてくれたギャラドスとラプラスからそれぞれ降りるとポケモンたちをボールに戻した後、潜水艦に近づいた。

 

「組織のものでしょうか、、、。」

 

「恐らくそうだろうね。」

 

少女たちが潜水艦をまじまじと見ているとドスの利いた声が狭い空間に響く。

 

「お〜い、おいおい。なァんかいると思ったら前のクソガキとチャンピオン様じゃねェか。なんだァ、お前、俺に殺されかけたってェのにこんなとこにノコノコ来やがったのかァ?」

 

洞窟から出てきた声の主はそらのはしらで戦った大男のオトギリだ。

少女は彼の声が聞こえた時から体を強ばらせ、体が震えるのを必死に耐えた。あと一歩で殺されかけたのだ、恐怖を抱くのも無理はない。

 

「テメェ、もしかして、俺に殺されたくてここに来たんかァ?いいぜ!!お望み通りぶっ殺してやるよ!!」

 

オトギリが叫びながらずんずんと少女に近づくが、少女は足がすくんでしまって逃げようにも逃げられない。

少女が顔を恐怖の色で染めているとオトギリから守るように2人の間に割って入る者がいた。

 

「やぁ、君がオトギリかい?話通り、パワフルかつバイオレンスな人のようだね!」

 

「あ"ぁ?誰だァ?テメェ。」

 

立ちはだかったのは笑顔を貼り付けたミクリで、オトギリの圧を屁ともしていなかった。ミクリがオトギリから少女を隠すように立ってくれたおかげで少女はオトギリからの圧力や殺気から解放され手足から余計な力が抜くことができた。潜水艦の裏に回っていたダイゴもオトギリの声が聞こえてすぐ表に回ってきたようで、ミクリ横に立ち並ぶ。

 

「銀髪のにぃちゃんはこの前会ったなァ。ホウエンチャンピオンだろ。」

 

「あぁ、ホウエンチャンピオン、ツワブキ・ダイゴ。宜しくするつもりは無いよ。」

 

「ボクはコンテストマスターをしているミクリという者だ。」

 

ダイゴたちはにこやかとオトギリと相対するがその目は全く笑っていなかった。

 

「はは、連れねぇ奴らだなァ。仲良くしようぜや、、ま、そのガキは殺すけどな?」

 

オトギリがゲラゲラと笑いだし、ダイゴたちはぴくりと瞼を動かした。2人がモンスターボールを出したのを見てオトギリは歓喜する。この男はどこまで戦闘狂なのか。

 

「いいぜいいぜいいぜ!!血が滾るほどのバトルしようや!!」

 

オトギリは出したモンスターボールを空中に投げる。雄叫びと共に出てきたのはあの日と同じオノノクスとニドキングだ。ダイゴとミクリもポケモンを出そうとした時、それを少女が腕を掴んで止めた。

 

「待ってください。」

 

「!どうしたの。」

 

ダイゴは不思議そうに少女を見る。

 

「あいつを倒すのは私です。あの日酷い形で負けてから私はずっとあいつに勝つことを目標にこっそり特訓してたんです。絶対勝ちます、勝ってみせます。だからリベンジさせて下さい。」

 

そう言う少女の手が震えているのに自身の腕を伝って気づいたダイゴとミクリは眉を下げて笑い、君がそうしたいなら良いよと言うようにモンスターボールを持った腕を下ろした。少女は2人から手を離すとオトギリの前に躍り出て睨みつける。

 

「あ"〜??腑抜けのてめぇに何ができんだよ、また自分のポケモンだけに戦わせてテメェは傍観してるだけなんだろォ!?」

 

「もうそんなことはしない!私も一緒に闘う、この子達のトレーナーとして!!」

 

そう啖呵を切ってボーマンダとブースターを繰り出した少女。それにオトギリは堰を切ったようにゲラゲラと笑う。どうやら少女を対戦相手として認めたようだ。

 

「ダイゴさんとミクリさんは先に行っててください。」

 

「、、、良いのかい?」

 

「えぇ、大丈夫です。ダイゴさんたちが私を信じてくれるなら、私はそれに応えます。」

 

少女が不敵に笑うものだからダイゴたちも任せるしかないなと苦笑を漏らした。

 

「あぁ、信じるとも、、、ここは任せたよ。」

 

ダイゴはオトギリを一瞥したあと洞窟へ入っていく。ミクリは少女をじっと見つめたあと少女に笑みを返した。

 

「お嬢さん、いいステージを!!」

 

そう言い残してミクリもダイゴの後を追う。それに少女はほっと安心する。

もしここでダイゴたちが残っていたら、少女は振り絞った勇気が挫けてしまうところだった。しかし彼らが少女を信じて先に行ってくれたから、少女は勝つ覚悟を固められる。

少女はオトギリと向かい合ってあの時とは違う目でオトギリを見上げた。

 

「見敵必殺!!オノノクス、瓦割り!ニドキング、毒づき!」

 

あの日のように突っ込んでくるオノノクスとニドキングに少女は冷静に対応する。

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブで瓦割りを受け止めて。ブースターは避けてニドキングのしっぽに炎の牙。」

 

ボーマンダは指示通りドラゴンダイブでオノノクスの瓦割りを受け止め、ブースターはジャンプして毒づきを避けるとしっぽに噛み付く。

 

「オノノクス、馬鹿力でボーマンダを捕まえろォ!ニドキングはしっぽをぶん回して地面に叩きつけてやれ!」

 

オノノクスは直ぐに瓦割りから力づくに技を切りかえボーマンダの首のところを掴む。ボーマンダは喉を掴まれ事に驚き藻掻く。ブースターはしっぽを振り回したニドキングからすぐ口を離し叩きつけられる前に後ろへ飛びのけた。

 

「ボーマンダ、藻掻くと相手の思うつぼになる!落ち着いて龍の舞で振り払って!ブースター、そのまま後ろへ下がってきて、態勢を立て直す!」

 

「させるなオノノクスそのままブースターの方に投げつけてやれ!ニドキング、地ならし!ブースターの体勢を崩せ!」

 

しかしオノノクスよりボーマンダの方が素早く、龍の舞の遠心力でオノノクスの手から抜け出した。

ニドキングの地ならしはボーマンダに当たらなかったが、発動されブースターとオノノクスを襲う。

 

「ボーマンダ、龍の舞から捨て身タックル!ブースター、鬼火でオノノクス達を撹乱!」

 

「ニドキング、毒づきでボーマンダを迎え撃て!オノノクス、ドラゴンクローで鬼火を切り裂け!」

 

ボーマンダはオノノクスたちに龍の舞の勢いのまますてみタックルで突っ込んで行く。ブースターは鬼火で視界を奪おうとしたが、オノノクスのドラゴンクローで切り裂かれそのまま技を受けてしまう。ボーマンダは構わずニドキングに向かっていくがニドキングの毒づきとぶつかり合い、なかなか押し勝てない。

 

(ボーマンダが押し勝てない?龍の舞で攻撃力を上げてるのに、、、。

それにボーマンダの時よりオノノクスの攻撃力が上がっている気がする、、、そうか、特性!)

 

オノノクスは闘争心という特性を持っている。闘争心は同性のポケモンに対して攻撃力を上げる効果があり、ブースターとオノノクスはオス同士であることがわかる。そしてニドキングは力づく。力づくは本来の攻撃に加えて追加効果のある技の追加効果を無視する代わりに攻撃力を上げる効果を持つ。ニドキングの技構成は追加効果のあるものばかりであることから、もともと高い攻撃力を更に底上げしてるのだ。

ポケモンバトルまで脳筋かと頭でオトギリに対して悪態を突く少女。

ブースターは鬼火を使って撹乱したり、火傷で相手をジワジワと削るテクニカルなタイプなのだが、根本にあるのがパワー系のスタイルであるためパワーよりのテクニカルタイプと言った方がいいだろう。ボーマンダは言わずもがな真っ向から攻めていく完全パワータイプ。トレーナーである少女はポケモン個人のバトルスタイルに合わせて戦うため、ボーマンダとの関係上パワータイプ寄りではあるが戦術の幅は広く浅い。

故にオトギリのような自分のバトルスタイルを確立させ、狭く深い戦術のものに対して押し切ることが難しい。

真っ向からの勝負は自分に分が悪いことを察し、別の方法は無いか考える。少女が考えている間にボーマンダとニドキングの技が相殺され爆発が起き煙が上がる。

少女はその煙を見てはっと何かを閃いた。

少女が勝ち筋を見つけると少女の様子に気づいたオトギリが勝負を付けに来た。それもド肝を抜く方法で。

 

「オノノクス、ニドキングに逆鱗!」

 

「!?」

 

オトギリの訳の分からない行動に少女は正気を疑ったが何か仕掛けてくるだろうとボーマンダたちを後退させた。

オトギリの指示通りにオノノクスはニドキングに対して逆鱗を発動させ、ニドキングはそれを受け止めた。

 

「ボーマンダ、ブースター、構えて!」

 

なんとかオノノクスの技を受け止めたニドキングは痛みに苦しんだが雄叫びを上げて持ちこたえた。

 

「いけやニドキング!カウンター!!」

 

「!!ブースター、ボーマンダの前に出て!守る!」

 

ニドキングが迫ってくる前にボーマンダの前に躍り出たブースターは素早く守るを展開した。ニドキングが守るとぶつかり合う。

オノノクスの逆鱗はニドキングがオスであったため特性の効果に加え、ドラゴン技の中で1番攻撃力が高く、タイプ一致で火力が上がっていた。それをニドキングが受け止めカウンターで2倍の威力に底上げされている。つまり、とんでもない火力のカウンターがブースターたちを襲っているのだ。守るでも押し返せなかったカウンターはそのまま大爆発を起こし、辺り一体を煙が包む。煙は少し離れた所にいたオノノクスさえ隠してしまう。

その時、冷静な少女の怒号が飛んだ。

 

「ブースター、鬼火!!」

 

「!!ニドキング、地ならし!」

 

少女の言葉に反応したオトギリはニドキングの地ならしで全て凪払おうとする。しかし、爆発を近くで受け、逆鱗のダメージがあるニドキングは足を地面につけてしまい動けない状態だった。

オトギリが舌打ちをする。

 

「ニドキング、気合い入れろ!鬼火の方に毒づき!」

 

ニドキングはなんとか立ち上がり毒づきをするがそれは空を突いただけに終わった。ニドキングは辺りをキョロキョロする。

 

「ニドキング!炎の光が見えたら毒づきだ!!」

 

ニドキングはオトギリの声を聴き毒づきの体勢を取るが鬼火はニドキングの周りを取り囲むように浮かび上がった。ニドキングはどこにいるのか分からなくなる。後ろでザッと地面を擦る音が聞こえそこに毒づきを打ち込んだがまたもそれが当たることは無かった。

 

「ニドキング後ろだ!」

 

オトギリの叫びが響く、ニドキングが後ろを振り向いた時全身を炎に包んだブースターがいた。

 

「フレアドライブ!!」

 

少女の声と同時にブースターはニドキングへ炎を纏った体で突進した。ブースターの技を鳩尾に食らったニドキングはそのまま目を回して地面に倒れた。

 

「ニドキング!!、、、オノノクス、逆鱗!」

 

ニドキングが倒れ、直ぐにオノノクスへ指示を出すがオノノクスは先程の逆鱗で混乱状態に陥ってしまっていた。少女はその隙を逃すことなくボーマンダに指示を飛ばす。

 

「ボーマンダ、ダメ押しの龍の舞!からのドラゴンダイブ!!オノノクスを沈めてやれ!」

 

ボーマンダが龍の舞をしたことにより煙が揺らぎ、煙が晴れていく。これ好機とオトギリがオノノクスに指示を飛ばそうとするが、先に動いたボーマンダのドラゴンダイブがオノノクスに直撃、オノノクスは爆発と共に吹き飛ばされ壁に激突した。そのまま目が回る。

 

「よし!!」

 

少女が拳を上げ、ボーマンダとブースターは少女に近づき抱きついた。飛びついてきたボーマンダを支えきれず倒れ込んだ少女は地面に頭を打つもそんなことは気にする素振りもなくボーマンダたち撫で回した。

 

「ありがとう、ボーマンダ、ブースター!!よく頑張ったね!!」

 

目を涙でいっぱいにした少女はボーマンダたちに感謝の言葉を叫び続けた。すると突然黙っていたオトギリが高笑いを始めた。

 

「だーはっはっはっ!いいなァ!!!テメェ、バトルができねぇ腑抜けだと思ってたらヌイコグマじゃねェか!!好いねェ、好いね、好いねェェ!!もっとやろう、もっと!この熱い思いをぶつけ合おうや!!」

 

オトギリの絶叫に少女は睨み付けながら言葉を発する。

 

「その前にひとつ聞かせて。」

 

「あぁん?なんだよ。」

 

「貴方たち、ここに何しに来たの。」

 

「あぁ、その事か。ボスの話じゃ超古代ポケモンを呼び出して、そいつらを支配するつってたなァ。俺は戦うことにしか興味ねェから詳しいことはわかんねェけどなァ?確か、ゲンシカイキってのをさせる必要があるとか何とか言ってたなァ?」

 

オトギリの発言に少女は一気に青ざめる。

超古代ポケモンはグラードンとカイオーガの呼び名。

 

「ゲンシカイキ、、、?!不味い!!」

 

オトギリの発現だけではどちらを呼び出すのかは分からないが、ゲンシカイキが起これば1体だけでも世界は天変地異に見舞われる。

少女は早くダイゴさんにこのことを伝えねばと洞窟へ走り出すがそれをオトギリが止める。

 

「おいおい、どこに行くつもりなんだァ?」

 

「退いて!!貴方に構ってる暇なんて無い!!」

 

少女がそう叫ぶがオトギリが道を譲る気配はないらしく、ボーマンダとブースターは臨戦態勢を取る。

 

と、その時大きな地響きと共に地面が揺れる。立っているのもやっとなそれに傍にいたボーマンダにしがみつきなんとか持ちこたえる。

 

「なんの地震、、、?!」

 

「あぁ、ボスの奴やっと始めたのかよ。」

 

「?!」

 

その地震はスペース団のボスが起こしたものらしく少女は揺れが収まると素早くポケモンたちをボールに戻し、オトギリを振り切って洞窟へ入っていく。

 

「おいおい、地震が起きたってのに洞窟なんて逃げ道ないとこに突っ込んでいくかよ。俺より馬鹿か?ま、そんなとこも好いけどなァ??」

 

…………

 

少女が洞窟へ入るとダイゴとミクリがやったのであろう組織の下っ端らしいもの達が死屍累々かのように倒れていて、その地獄絵図に少女は若干引きながらもダイゴたちを探した。

少女は洞窟を走りながら2人の名前を呼ぶ。少女の声は洞窟に響き渡り、それがダイゴたちの耳に届いたのであろう。少女が進む方向からダイゴとミクリが走ってくるのが見えた。

 

「ダイゴさん、ミクリさん!」

 

「お嬢さん!大丈夫なのかい?!」

 

お互いが駆け寄り合い無事を確認する。

 

「私は大丈夫です。ダイゴさんとミクリさんは大丈夫、、、みたいですね!流石です!」

 

「あぁ、私たちは無事だよ!それよりオトギリはどうした?何かされなかったかい?首を絞められたりしなかった?!」

 

ミクリが少女の肩を掴んで迫る。ミクリの形相に少女がビビってると、ダイゴが止めに入った。

 

「ミクリ、落ち着くんだ。すまないお嬢さん、ミクリはずっと君を心配してたのさ。入口の死屍累々を見たかい?あれ全部ミクリがしたんだよ。」

 

「避けなことを言わないでくれるかい?」

 

どうやらダイゴとミクリは少女のことを信じて洞窟へ入ったのはいいが、やはりオトギリと2人きりにするのはとても気がかりだったようだ。それもそのはず、オトギリは一度少女の首を絞めた前科がある。そんな男と一緒にいて心配するなと言う方が無理がある。2人は少女が頼まなければ絶対にオトギリの前に少女を出すつもりさえなかったのだ。

ダイゴたちの様子に少女はほっと息をついた。

 

「ダイゴさん、ミクリさん、私、オトギリのオノノクスとニドキングに勝ちました!!」

 

少女としては2年ぶりの対人戦。荒も多かったが、この勝利は少女に取って大きな一歩だ。

少女の言葉にダイゴたちは呆気に取られたあと笑って、よく頑張ったねと言ってくれた。ダイゴは少女の肩に手を置き少女を労る様にしてくれ、それに少女は嬉しそうに笑う。

が、喜びに浸る時間は3人には許されていない。すぐに3人は険しい顔つきになった。

 

「ダイゴさん、ミクリさん、大変なんです。奴らここでカイオーガとグラードンを呼び出して支配するってらしいです。」

 

「そうだね、僕達も下っ端の人達から荒方の話は聞いた。奥に急ごう、ついておいで。」

 

少女は頷き、最奥を目ざして駆け出した。が、それも虚しく先程より強い地震が起こり、少女はバランスを崩して倒れてしまう。それをダイゴが支えてくれ、頭から地面にダイブするのは免れた。ダイゴは少女を支えたまま、しゃがみ揺れに耐える。ミクリも姿勢を低くし壁に手を着いた。

先ほどの地震は時間にして1分ほどで収まったが、今回は2分以上揺れ続け、それは下から突き上げられるような揺れだった。流石にここに居続けるのは危険だと判断した少女たちは踵を返し出口へ急いだ。その時、ダイゴとミクリに伸ばされていた下っ端は居なくなっており、外へ出ると強い存在感を出していた潜水艦の姿もなかった。

そんなことを気にしている時間は無いとダイゴと少女はエアームドとボーマンダを出し背中へ乗ると海底洞窟から出るよう指示を出す。ポケモンたちは直ぐ飛び立ち高い崖の外へ出るとその瞬間、突風に煽られ先程の戦闘で疲労していたボーマンダが飛ばされたしまうが、トレーニングの成果か持ち前の体幹を活かして体勢を建て直すことができた。

海底洞窟が高い崖に囲まれているせいで気づかなかったが、外の天気は大荒で暴風雨が吹き荒れ、波は荒れ所々で渦を巻いているのが見て取れる。それはどこかそらのはしらに行った時と同じ様だったが、今回違うところを示すとするならその大荒れの天気は一部的、と言うより海上だけで、陸は何故か強い日照りで、それは大地を干からびさせるかのような普通の日照りとは比べ物にならないものだった。誰から見ても分かる天変地異に少女たちは呆然としてしまう。

 

その時海底洞窟の方から何かの鳴動が聞こえて来た。少女たちが海底洞窟に視線を向けた瞬間、ドォン!という爆音を轟かせ大きな何かが洞窟を突き破って出てきた。

少女たちが目を凝らしてそれを見ると、大きな存在は1体だけでなく2体いることに気づく。それは写真に見たものとは少し違った姿をしていて、その姿は全身に光沢を纏い、宝石のような輝きを放っていた。

そう、出てきたのは石の洞窟でダイゴによって語られた【ゲンシカイオーガ】と【ゲンシグラードン】だった。

彼らを視認してから少女は冷や汗が止まらず、このプレッシャーはシロガネ山でレックウザを見た時の物に近いようで程遠いように感じた。肌に突き刺すようなプレッシャーは冷たく、何者も寄せ付けないと言っているかの様だった。

 

カイオーガとグラードンは雄叫びを上げその存在を世界に知らしめる。我々が目覚めたぞと、この世界に発信したのだ。

少女はそれに手足が竦むのを感じるが己を奮い立たせ、何とかしなければとボーマンダに指示を出そうとする。

 

「やめるんだ、お嬢さん。今ここで戦ってもどうにもならない。僕達じゃ太刀打ちできない。」

 

「でも!今ここで止めなかったら彼らが暴れて、ポケモンや人が危険にさらされてしまいます!」

 

止めるミクリに何故だと少女は戸惑う。

今止めなければ何が起きるか分からない。危急存亡のときなのだ。

 

「それでも、だよ。伝説のポケモン1体ならどうにかなるかもしれないが2体も相手取るのは分が悪すぎる。ダイゴが言ったろう、前回ゲンシカイオーガとゲンシグラードンが現れたとき自分たちは何もすることができなかったと。

言い方は悪いが、ここで無駄死にしたいのかい?レックウザを助けるんだろう?ここで選択を見誤ってはいけない。」

 

「、、、分かりました。」

 

少女は苦渋の決断をし、それにミクリはよし、と少女の肩を叩く。

少女はボーマンダにダイゴの所へ行くように伝え、彼女はそれに了承したかのように鳴くとダイゴとエアームドのもとへ飛ぶ。

 

「お嬢さん、ミクリ。大丈夫かい?」

 

「はい、、、ごめんなさい、間に合いませんでした。」

 

少女は洞窟でダイゴたちを引き止めてしまったから計画を止められなかったと悔やむがダイゴは首を振った。

 

「気を落とさないでお嬢さん、多分この計画は最初の地震があった時からもう完成していたし、下っ端の相手に手間取ってしまった僕たちも悪い。今は悔恨の念に駆られているときでは無いよ。」

 

ダイゴの意見がもっともだ。起きてしまったのなら後の祭り、少女たちがしなければならないことはその対処だ。

ダイゴの言葉に少女は落ち着きを取り戻し、頬を叩くと気を引き締めて、超古代ポケモン2体を目にした。

カイオーガは海底へ潜り、グラードンはマグマを引き連れてどこかへ歩いていく。

今は何もしてこないことに安心するべきなのか、今後待ち受けているであろう脅威に震えるべきなのか少女は分からず、その光景をただ眺めているしかなかった。

 





ボーマンダ(自信過剰)♀
【龍の舞、すてみタックル、ドラゴンダイブ、羽休め】
パートナーポケモン。両親に誕生日プレゼントで貰ったタマゴから孵化した。主人公の一番の理解者で、性格は人懐っこく人を背中に乗せて飛ぶのが好きなので移動手段はもっぱらこの子。ダイゴのことは主人公を最後まで信じてくれたから信頼してる。姉御肌というよりお姉ちゃん肌。主人公のパートナーポケモンとして苦楽を共にし、主人公を見守り続けた。主人公が危険になった時、守るのは自分じゃないと絶対に嫌。別の子を頼ると拗ねる、ものすごく拗ねる。 主人公に何かあれば誰であろうと全力でぶっ飛ばす。
バトルスタイル:脳筋でタイプ相性もガン無視、龍の舞積んで力で殴る。龍の舞はとても強力で縦横無尽な動きは掴みどころがなく汎用性が高い。格上だろうとなんだろうと怖気つかないし果敢に挑んでいくし負けず嫌いでどれだけボロボロに攻められても絶対爪痕は残す主義。

ブースター(もらいび)♂
【鬼火、炎の牙、フレアドライブ、守る】
2番目に主人公がゲットしたポケモン。元々ナナカマド研究所にいて、研究対象だった子。主人公が初めてナナカマド研究所に来た時に主人公を気に入って旅に出ることになった。ボーマンダと仲が良い。可愛い見た目に反して少し素っ気ないところがある。暑い所大好き、寒いところも得意、でもジメジメしたところは嫌い。(鬣がうねるから)
バトルスタイル:鬼火の火傷でじわじわダメージを追わせて自分は守るで防御に徹し、最後はフレアドライブで仕留めるのが定番。

主人公
バトルスタイルはポケモンの依存。
技などはそのポケモンの好きなバトルスタイルに合わせて構成しているため偏りがある時がある。
どんな技を使いたいかはポケモンとフィーリングで相談しているが、大体がボーマンダのことをリスペクトしていたりするので技構成が似ている子が多い。
ダブルバトル、タッグバトルがやや不慣れ。
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