あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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宇宙を蝕む組織

ポケモンたちの頑張りによって飛行船の内部に入り込めた少女たちは持っていた回復薬で回復した後、一度ポケモンをボールへ戻し内部を偵察していた。

意外にも機内は手薄で下っ端たちがいる様子はない。これは好機と少女たちはレックウザを助け出すべく、船の管制室を探しに歩き出した。

しかし、手当り次第にドアを開けていっても時間が掛かりその間レックウザが無事である確証はない。そのため、二手に別れることで効率よく機内を探ることになった。

ミクリの進言により少女はダイゴと行動することになり、それぞれの連絡はインカムで取る事になった。

 

「何かあれば、連絡してくれ。すぐ駆けつける。」

 

「あぁ、分かっているとも。ダイゴはお嬢さんをよろしく頼むよ。」

 

ダイゴが頷くと、ミクリは笑って少女たちとは逆の方向へ進んで行った。

安全を考えると離れるべきではが、レックウザを助けるという目的がある以上、少女たちに余裕はない。それに3人で固まれば、組織に見つかるリスクも高くなる。少女は不安な気持ちに蓋をした。

 

「僕達も行こか。」

 

歩き出すダイゴの後ろを着いていく形で進んで行く。

足音をできる限り立てずに、組織の下っ端の気配にも注意しながら進む。

 

「ダイゴさん。」

 

「ん?どうしたのかな。」

 

「おくりび山でミクリさんが伝説のポケモンはコントロールできないって言ってましたが、シュオウは伝説のポケモンをコントロールできているように見えました。何故、シュオウはそんなことができてたんでしょうか。」

 

人が制御できるはずがない伝説のポケモン、加えてカイオーガとグラードンはゲンシカイキしていた。到底人に操れる存在には思えない。のにも関わらず、シュオウは心を呑まぬまま、2体を見事操って見せた。

聞かされていた話とは違うことが、目の前で起こった。それが事実だとしても、何故操ることができるのかという疑問を抱かずにはいられない。

 

「うん、、、ミクリの言う通り、普通は伝説のポケモンをコントロールすることはできない。しかし、どんな方法かはわからないけど彼らはそれを可能にする何かがあるということは確かだ。」

 

「伝説のポケモンをコントロールできる何か、、、。」

(そんなものがあるとは到底思えないのに、、、)

 

「!お嬢さん。」

 

話しながらも部屋を見て回り続けていたダイゴは、何かを見つけたように少女を呼んだ。声に反応した少女が顔を上げる。

 

「どうかしました?」

 

「こっちに来てくれ。」

 

呼ばれるままダイゴの横に並ぶ。ダイゴが廊下の中央で止まっていて、視線の先には他の扉より大きな扉があった。あからさまに何かありますと言った感じである。

 

「何かありそうですね。」

 

「あぁ、露骨にね。、、、行こうか。」

 

足音に気をつけながら扉に近づく。

扉に付けられた窓から様子を伺うと中には数人のスペース団の団員がいるのが見えた。

 

「人いますね。」

 

「戦ってもいいんだけど、騒ぎを起こすのは正直避けたい、、、。」

 

「騒ぎを起こさず、あの人たちをどうにかしたらいいんですか?」

 

「うん、まぁ、それができるならね。」

 

「、、、。」

 

………

 

「いや、にしてもレックウザを本当に捕まえられるとはな。」

 

「あぁ、本当にボスはすげぇな。グラードンとカイオーガも操っちゃんだもんなぁ。」

 

「流石ボスだぜ。」

 

「ああ、全くだ。、、、ん?」

 

団員がボスに賞賛の声をあげている時、扉がギィと音を立てて少し開いた。

団員は侵入者かとモンスターボールを構えるが入ってきたのは小さいぬいぐるみのようなポケモンだった。

団員たちは拍子抜けして、モンスターボールをしまうと入ってきたポケモンに近づいていく。

 

「なんだコイツ。ポケモンか?」

 

「ピカチュウっぽい布被ってるけど、ピカチュウじゃねぇよな?」

 

「てかこいつ、どっから入ってきたんだ?」

 

それぞれ見たことないそのポケモンに興味深そうな反応を示し、ポケモンの布に手をかけた。その瞬間団員の1人が絶叫を上げる。

 

「やめろ!!!そのポケモンの布をとるな!!!」

 

その表情は恐怖に染まっていて、冷や汗をだらだらかいている。

ほかの団員も突然の大声に驚いて、摘んでいた布を離す。。

 

「おい、どうした。そんなにビビって。」

 

「そのポケモンはミミッキュだよ!」

 

「ミミッキュ?」

 

「アローラとガラルに生息するポケモン!」

 

「へぇ、アローラとかガラル行ったことねぇから知らなかったわ。で、そのミミッキュがどうしたんだよ。」

 

「俺、アローラ出身なんだけど、親からミミッキュには不容易に近づくなって言われてるんだよ!そ、そいつの布の中身を見た研究者がショック死したとか、そいつが生息してる廃墟でポルターガイストが多発してるとか!!」

 

「はぁ?!ショック死?!」

 

ショック死なんてただの都市伝説か何かだろうと言いたいところだが、異様なまでの怖がり様に恐怖心を煽られた。それに、よく考えるとポケモンが他のポケモンの着ぐるみを来ているなんて普通ならありえない。ならば、団員の話は本当の話なのではないか。サッと顔が青ざめる。

ミミッキュから距離を取ると団員同士で団子状になる。腰が抜けた状態でガタガタと震えて可哀想なくらいだ。

ミミッキュが近くにあった台の上に飛び乗と、ミミッキュの行動一つ一つに団員たちはより団子になって、ビクビクと震えふ。

するとミミッキュはモゾモゾと動き出し、布を上にあげ始める。ミミッキュが台に乗ったことで、布の中が見えやすくなってしまっていることに団員たちは酷く慌て出した。

 

「お、おい、やめろよ!!」

 

「中見えちゃうって!!」

 

「動くな!!」

 

「やだやだ見たくない!!死にたくない!!」

 

段々とめくれ上がるミミッキュの布。もう少しで中身が見えてしまう所まで着ている。その時、ガタンと団員たちの後ろで物が動く音がする。団員たちが恐る恐る振り向くと、そこにはいるはずのない女がじっと団員たちを見下ろしていた。

団員たちは仰天しすぎたのか、声のない叫びを上げたあと見事に全員白目を向いて床に倒れた。

 

「あれ?やりすぎたかな、、、?」

 

少女は思った以上の反応をした団員たちを見下ろしながら、首を傾げた。団員たちが伸びたのを確認し、ダイゴが部屋に入ってくる。

「なかなか鬼畜なことするね??」

 

「あ、ははは。不可抗力ですよ?ミミッキュの中を見せるつもりなんて最初からなかったですもん。」

 

ねー、なんてミミッキュを抱き上げて笑う少女にダイゴは顔を少し引き攣らせた。

ミミッキュは何を言っているのかわからないのか、首を傾げていた。可愛い。

 

「でもアローラの人がいてくれて良かったですよ。運が良かった。」

 

「そうだね。にしても何故わかったのかな?」

 

「腰にロイヤルマスクのキーホルダーがついてたので。」

 

「ロイヤルマスク?」

 

聞き返してくるダイゴに、ミミッキュを撫で回しながら少女は頷く。

 

「はい。アローラで一番有名で人気の謎のマスクマンです。実力も相まって、実質アローラチャンピオンなんじゃないですかね。」

 

「へぇ、そんな人がいるんだね。」

 

伸びてる団員たちを部屋の隅へ移動させると、部屋の中を物色し始める。ディスプレイが複数あるパソコンが数台置かれ、その周りには分厚いパイプ式ファイルなどが山積みにされている。ダイゴはそれらのファイルを開けながら一部のパソコンをいじり始めた。

少女は全く分からないので別のファイルを開け、何か有益な情報はないか探す。そのファイルは宇宙に関するもののようで、ブラックホールができる原理とか、エネルギー量がどうのとか、少女は何を書いているのかさっぱりで静かにファイルを閉じた。少女が軽く現実逃避したくなったとき、室内を自由に歩き回っていたミミッキュが鳴いているのに気づいた。

 

「ミミッキュ、どうしたの?」

 

近づいてきた少女に気づいたミミッキュは、これを見ろと言うようにディスプレイを指した。

「ん?何かの波形かな?それも2つ、、、。」

 

ディスプレイには規制正しい何かの2つの波形が映されていて、横には何かのパーセントゲージもある。

少女は何の波形か全く分からないが、何か大切な情報源になりそうでダイゴを呼ぼうとしたが、その前にミミッキュがキーボードを勝手にカタカタと押してしまう。

 

「ミミッキュさん、何してるの?!」

 

少女がミミッキュを慌てて抱き上げる。ミミッキュは抵抗することなく大人しく抱き上げられ、そのまま機嫌良く甘え出す。

少女は困惑しながら、ディスプレイを再び見ると先程の画面は消えて、別の映像が映し出されていた。そこには眩い光を放つ2つの宝石。

 

(ど、どうしよう)

 

先程の画面が消えてしまったことで、やってしまったと怯える。勝手に触って恐らく重要な情報をどこかにやってしまった。これは絶対に怒られると思いながら、少女は恐る恐るダイゴを呼ぶ。

 

「ダ、ダイゴさん。ごめんなさい、勝手に触って何か重要そうな画面消しちゃって、、、」

 

「ん?ちょっと待ってね。

あぁ、大丈夫、タブを切り替えちゃっただけだよ。、、、お嬢さん、もしかして機械弱い?」

 

「あはは、、、そうです。」

 

少女は機械にとてつもなく弱かった。

ポケモンセンターの通信機器やスマホロトムなどの日常で頻繁に使うものは問題ないのだが、それ以外は慣れるまではてんで使えない。タブの切り替えにもテンパるほどに。

ダイゴにこれから慣れていこうねと笑われると、はい、、、と萎れながら返事を返した。

 

「それにしても、これは、、、。

まさか、、、、」

 

ダイゴがディスプレイに移されたものを凝視する。終いには何故これが、いやそんなことは、なんて映像を見ながらぶつぶつと呟き始めた。少女が困惑してしまう。

 

「ダイゴさん?」

 

「あ、、、すまない。」

 

「いえ、大丈夫です。あの、これがどうしたんですか?」

 

ダイゴが神妙な顔つきになった。少女は唯ならぬ気配を察知してゴクリと唾飲み込み、ミミッキュを抱く腕に力が入る。

 

「ミクリからホウエンに伝わる2つの宝玉のことは聞いてる?」

 

「はい。でも、その2つはもう存在してないって、、、。」

 

ホウエン地方に伝わる、2つの宝玉。【あいいろのたま】と【べにいろのたま】。この2つの宝玉は、グラードン、カイオーガに深く関わっており、今は2体の手によって破壊されたと聞かされている。

 

「あぁ、そうだ。いや、、、そのはずだったんだ。」

 

「そのはず?それってど、、あっ。え、いやでも、そんな。」

 

「、、、」

 

「ダイゴさん、これって、、、」

 

「あぁ、

 

 

 

 

 

 

 

【あいいろのたま】と【べにいろのたま】だ。」

 

 

……

 

 

「ダイゴとお嬢さんは大丈夫だろうか、、、。」

 

2人と別れてから数十分がたった頃、ミクリは1人で通路の部屋を片っ端から開けながらそんならしくないことを考えていた。

ホウエンチャンピオンのダイゴがついているし、少女自身弱くはない。そんなことは理解しているが如何せん少女が命の危険に晒されやすい。

 

「いや、ダイゴがいるなら大丈夫だ。私は私らしくelegantに、だけどとってもguroriasuに、、、」

 

そう心を改め、次の部屋に行こうと廊下に出ようとした時こちらに近づく足音が聞こえてきた。ミクリはすぐさまドアの影に隠れて外の様子を伺う。

聞き耳を立てると足音は一つだけではないようで、何かを話しているのがわかった。

ミクリは物音に気をつけながら意識を話し声に集中させる。

 

「おい、ボスよォ。俺ァ色んなやつと戦わせてやるって聞いたから協力してやってんのによォ。ちと話が違ェんじゃねェか?」

 

「はぁ?オトギリ、あなた何様?あなた如きがシュオウ様に意見できる立場も脳みそもないんだけど。」

 

「あ"ぁ"?テメェは黙ってろやカマスミィ。」

 

(仲間割れか?いや、そんなことより、口ぶりからオトギリはただのビジネス関係だったのか?)

 

カマスミと同じ幹部であるオトギリもシュオウに執心しているものだと思っていた。だが、事実は異なりシュオウとオトギリはただのビジネス関係。一体どういう事なのか。

廊下にはオトギリの怒気を孕んだ声が響いていた。

 

「なぁ、ボスよォ、ほんとにどう言うつもりだァ?なんで俺に戦わせねェ、俺はテメェの用心棒だろォ。テメェと出会ってから数年、計画の準備とやらをずゥっと待ってやってたんだぜ?だって言うのに、いざ計画が実行されても全然戦えねェじゃねェかよォ。さっきチャンピオン野郎とかなんてぜってぇ邪魔もんになるだろォ?」

 

(用心棒、ということは戦いのプロとしてオトギリを雇っていたのか。まさか雇用主と被雇用者との関係だったとは、、、いや、この場合はクライアントとサプライヤーか?)

 

「、、、そうだな。それはすまない。」

 

「シュオウ様!!こんな戦うことしか脳がない奴に謝ることなどありませんわ!!」

 

「俺ァ謝罪なんて求めてねェんだわ。質問の答えを聞かせろよ。」

 

「、、、君には私たちの計画の邪魔者を排除してもらうために幹部になってもらった。だが、計画が実行され超古代ポケモンが我々の手に落ち、レックウザも捕獲できた。我々の計画は恐ろしいほど完璧に順調だ。だからこそ、ここで余計な戦闘は避けなければならない。」

 

確実に計画を遂行するために、余計な戦闘をしたくない。特に、チャンピオンであるダイゴと戦うことでオトギリが倒されることを嫌っているということだろうか。

 

(いや、オトギリを倒されて困る理由はなんだ?グラードンとカイオーガがいるならば、用心棒など不要のはず。)

 

オトギリは青筋を浮かべて激昴し始める。シュオウ近づき、その胸ぐらを掴みあげた。

 

「あ"ぁ"?!じゃぁ、これからも俺ァ戦えねェってことか?!テメェ約束破るのかよ!!テメェがそのつもりなら俺ァまず先にテメェをぶっ潰す!!」

 

「はぁ?!あんた、私たちを裏切る気?!というか、その汚い手を話しなさい!!シュオウ様に何かしたら容赦しないわよ?!」

 

「うるせぇ!!裏切ったのはテメェらだろォが!!俺ァ戦うことしか興味ねェんだよ!!俺の存在は戦うことだ!!戦うことが俺の存在意義!!戦うことその物が俺なんだよ!!」

 

「あんたねぇ、、、!!」

 

ヒートアップしていくオトギリとカマスミだが、一方でシュオウは焦ることも無く、酷く冷静だった。

 

「君が怒るのもわかるが、安心して欲しい。私は約束を破るつもりはない。計画が完遂された暁にはあのチャンピオンとも戦える場をセッティングしよう。君が望むなら超古代ポケモンとも戦うことだって可能にしてみせる。だから、もう少し私の計画に付き合ってくれないだろうか。」

 

なんとシュオウは計画が成就された時、ダイゴや超古代ポケモンと戦わせてやると言うのだ。普通ならば不可能なその約束だが、超古代ポケモンたちを操ることができている事実がある限りでたらめではない。

オトギリは納得したようにニヤリと笑った。

 

「絶対だぜ?その約束破るなよ。」

 

「あぁ、勿論だとも。」

 

シュオウが頷くと、オトギリは掴んでいた手を離し、強者とのバトルに心待ちに愉しそうに笑った。あの状態のオトギリを諌めるとは。

シュオウはそれを見届けると行こうかと歩き出した。カマスミはぴったりとシュオウの腕に自身の腕を絡ませ歩く。

 

「シュオウ様、大丈夫ですか?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。ありがとう、カマスミ。」

 

「い、いえ、私は何も、、、。」

 

シュオウが微笑むとカマスミは頬を赤く染めてもじもじとした。その様子は乙女そのものだ。

 

「それにして素晴らしいですわ、シュオウ様。見事に超古代ポケモン2体を操るだけではなく、レックウザまでもその手中に収めてしまわれた。」

 

恍惚とした表情をしながら話すカマスミ。シュオウはそうだねと頷く。

 

「あぁ、これでやっと全て揃った、、、

 

 

 

 

 

 

宇宙を破壊するための全ての駒が。」

 

 

………

 

ディスプレイに映し出される2つの宝玉。それは今は存在するはずのないもの。しかしその存在はディスプレイ越しに少女たちを照らしている。

 

「これが【あいいろのたま】と【べにいろのたま】、、、砕けたはずのものがどうして、、、?」

 

無いはずのものがそこにある、少女はまさに狐につままれた気持ちだった。

 

「わからない、僕もずっと砕けたものだと思っていた。けど、この2つが今この事態に大きく関わっているということは確かだろう。この波形はこの2つの宝玉のエネルギーを表してるのかもしれない。」

 

何故、存在するはずのない2つの宝玉がそこにあるのかという疑問は今の段階では考えても仕方がないと一旦置いておく。ダイゴは2つの宝玉がそこにどんなある意味を思考を巡らせる。

少女も精一杯頭を回転させ、少女は記憶のタンスを片っ端から開けていく。

 

『文献では宝玉はそれぞれを制御する力を有すると書かれている』

 

(【あいいろのたま】はグラードンを、【べにいろのたま】はカイオーガを制御する、、、)

 

少女はミクリの言葉を思い出しながら、うーん、と頭を捻る。

するとダイゴが呟くように言葉を発した。

 

「、、、もしかしてゲンシカイキか?」

 

「ゲンシカイキ?」

 

少女が復唱すると、ダイゴはこくりと頷く。

 

「ずっと考えていたんだ、どうしてカイオーガとグラードンが今ゲンシカイキができているのか。前に超古代ポケモンたちがゲンシカイキした時、その現象は巨石の力によるものだった。しかし今、巨石はここには無いとすると2体をゲンシカイキさせているのは宝玉によるものだとしか考えられない。」

 

ゲンシグラードンとゲンシカイオーガはグラードン、カイオーガの本来の姿でありながら現在その力は失われ、ゲンシカイキには強大な自然エネルギーが必要になる。前回ホウエン地方の海上で見せたゲンシカイキは巨石のエネルギーにより引き起こされた現象。だが、現在巨石がないというならば、別の何かがゲンシカイキを起こしていると言える。それが宝玉だと、ダイゴは考えた。

 

「なんで巨石が無いって分かるんですか?」

 

「カロスの事件以降、エネルギーサンプルを使って巨石が出現がすぐにわかるように常にデボンが探査しているんだ。巨石はあるだけで争いの火種になるからね。もし巨石があるならすぐに僕に情報が来るはずなんだ。」

 

「あぁ、なるほど。その情報が来てないから巨石が起こしている現象ではないってわかったんですね。

でも、それならデセルシティでの事件と辻褄が合わない気がするんですが、、、。」

 

デセルシティ、それは初めて黒いレックウザが目撃された場所だ。彼の事件ではフーパと呼ばれる幻のポケモンが、数多の伝説のポケモンを呼び出し共に暴れ回っていたと聞いている。そしてそれを食い止めていたのも、同じくフーパに呼び出されたレックウザとラティアス、ラティオスだったとも。その中にグラードン、カイオーガの姿もあり、ゲンシカイキの姿であったと報告されている。

ゲンシカイキは超古代ポケモンたちの本来の姿であることから、自然エネルギーを使って彼らの自由意志で起こすことができても何ら不思議ではない。

ダイゴの仮説通りならゲンシカイキに自然エネルギーに加えて、巨石や同等のエネルギーが必要ということになる。これではデセルシティで起こったこと矛盾することになる。

 

「お嬢さんはディアルガ、パルキアの存在を知っているよね。」

 

「勿論知っています。シンオウに伝わる時間と空間を司る神と呼ばれしポケモン。ディアルガとパルキアがどうかしましたか?」

 

シンオウ地方で生まれギラティナの存在を祖父から聞いたとき、勿論ディアルガとパルキアの話も共に聞かされている。だが、彼らと何の関係があるというのだろうか。

 

「デセルシティに出現した伝説のポケモンの中には、その2体もいたんだ。この2体を呼び出せるということは、フーパは時間と空間に干渉することができる可能性がある。」

 

「そうか、、、時空に干渉できるということは、現在だけじゃなく過去や未来からも呼び出すことができる、というわけですね。つまり、フーパは現代ではなく古代からゲンシグラードンとゲンシカイオーガを呼び出していた。だから、あの時は巨石のエネルギーが必要なかったんですね。」

 

「そういうことだね。

でも、ゲンシカイキを引き起こした巨石のエネルギーとこの宝玉のエネルギーが同一のものであるか、可能性が高いだけで決まったわけじゃない。もしかしたらミスリードってことも無きにしも非ずだからね。

でも、、、」

 

「ダイゴさん、、、?」

 

ダイゴの言葉が突然弱くなって、少女はどうしたのかと顔をのぞき込む。

 

「今は無理なんだ。」

 

ダイゴは苦虫を噛み潰したような顔をして、首を振った。

 

「どうしてですか?」

 

「、、、前に味方だと思ったいた人に裏切られたと言っていただろう?」

 

「はい、人とポケモンを消すなんて怖いこと考えてたんですよね?」

 

スペース団の野望を阻止するというミッションに対して、こちらの構成人数が少ない理由になった出来事だ。

 

「そう、彼は人とポケモンのいない世界を作ろうとした。巨石の力を使ってね。」

 

「!」

 

巨石を力を使った。

この任務が少数精鋭で行われているのは、各協力機関にスパイがいることを嫌ったという理由は嘘ではない。だがそれ以上に、警察やポケモンGメン、ポケモンレンジャーなどの大きな組織が積極的に関わることで巨石の存在が公になるリスクを避けるためだった。

それだけに巨石は強大な力があるということだ。

 

「巨石の力を利用した彼の計画は凄まじかった。カロスのジムリーダーやチャンピオン、ポケモントレーナー達によって野望は阻止できた。それからというもの巨石の存在は秘匿され、集められたデータサンプルはトップシークレット扱いでカロスで信頼のできる博士と事件に尽力してくれたジムリーダーの2人、または僕の管轄の下、デボンコーポレーションでしか知ることはできなくなっている。」

 

「つまり、巨石のデータを持ち出すことはできないからこちらから宝玉のデータを持って行って照合するしかない、ということですか。」

 

「うん、その通りだよ。」

 

なんて面倒くさいと少女は額に手を当て巨石を悪用した知らない誰かへ悪態を着いた。

しかし、そんなことをしていても仕方がない、データを照合するためには宝玉のエネルギーを示しているであろうこの波形データを持っていかなければならないのだ。

 

「でもこのデータをどうやって持っていくんですか?」

 

「そうだね。お嬢さん、手を出してごらん?」

 

言われるがままに手を出した少女の手に、ダイゴがポケットから出した電子機器を乗せる。

 

「デボンで開発した高性能USBメモリだよ。バックアップの速度も段違いに早いし、耐久性もバッチリさ。」

 

「デボンって何でも作りますね、、、。」

(ばっくあっぷ、、、ってなんだ。)

 

少女は想像以上に機械音痴だった。さすがにここでダイゴに聞くのは忍びなく、後で調べようと心の中で決心する。そんな少女の状態に気づかないダイゴは、ふふふと笑っている。

 

「天下のデボンコーポレーションだからね!2つあるからどっちにも取り込んでおこう。1つは僕、もう1つは君が持っていてくれ。」

 

「わかりました。」

 

ダイゴから受け取ったUSBメモリをポートに差し込と、何もせずともバックアップが開始される。どんどんとゲージが溜まっていき、完了の文字がディスプレイに表示された。なるほど、高性能だ。

 

「ミクリに報告しなくては。あちらの様子も気になる。」

 

「そうですね、宝玉のことも早く知らせないと。」

 

そう言って耳につけたインカムの通話のボタンを押そうと手を伸ばす。

 

『ダイゴ、お嬢さん!』

 

「「うわっ」」

 

『待って、その反応は傷つくよ?』

 

いざボタンを押そうとした絶妙なタイミングでミクリから連絡が入った。殆ど不意打ちであったため、少女とダイゴは驚きの声を上げただけで他意は全くない。

 

「あはは、すまない。丁度こちらも連絡を入れようとしていてね、驚いただけだよ。」

 

『そうかい?それならまぁ、いいんだけど。それよりだ、奴らのしようとしている計画がわかったよ。』

 

「!!本当か!」

 

『あぁ、奴らの狙いは宇宙だ。』

 

「宇宙?!」

 

いきなりの壮大なターゲットに驚きを隠せない少女とダイゴ。レックウザを手に入れるだけが目的ではないことは薄々気づいていたが、宇宙と来るか。

 

『奴らは超古代ポケモンを使って宇宙を破壊するつもりらしい。奴らの口から直接盗み聞いたから確かだろう。』

 

「う、宇宙を破壊って、、、そんなことできるんですか、、、?」

 

あまりにも現実味のない話だ。突然話のスケールが大きくなって、少女の頭は混乱寸前だ。

 

「いや、できる算段があるから奴らはこうして計画を実行に移している。超古代ポケモンをもコントロールできるているならば、その計画を可能にするアビリティを奴らは持ってしまっている見込みが高い。」

 

「そんな、、、。」

(じゃぁ、彼らの計画は殆ど完成してる。超古代ポケモンだってもうシュオウの手中なのに、、、。)

 

「でも」

 

挫けそうになっている少女にダイゴは待ったを掛けた。彼の表情は挫けるにはまだ早いと言っているかのようで、少女は顔を上げる。

 

「彼らの計画は完遂されていない。ならばまだ止められる、レックウザを助けられる。そうだろう?」

 

例え圧倒的に不利な状況であろうとも、それがあきらめる理由にならない。トレーナーはどんなときでも、まだバトルが終わっていないなら諦めることは決してしない。最後までもがき、足掻き、貪欲に勝利を欲する。

ダイゴの言葉に少女は気合いを入れ直し、力強く頷いた。

 

「結局僕たちが1番強くてすごいことを知らしめてあげよう。」

 

『あぁ、勿論だとも。では、そちらの状況も教えて『おい、テメェそこで何してやがる。』ッ!!!』

 

インカムからミクリ以外の男の声とミクリの息を飲む音が聞こえる。

不味い、少し話し話しすぎてしまったようだ。

 

『すまない、見つかってしまった。』

 

「わかってる!ミクリそこから離脱しろ!」

 

『あぁ!テメェ、あの時の優男か!!逃がさねぇぜ!!』

 

『、、、すまないが、逃げれそうにないね。奥から敵の増援も来た。』

 

「くそっ、待ってろすぐ行く!」

 

「ダイゴさん、この男オトギリです!」

 

オトギリと対面した回数が多い少女が声の正体に気づく。なんて運の悪いことか。ミクリの身の危険に冷や汗が出る。

 

「お嬢さん、急げ!」

 

USBを引き抜いたのを確認して少女とダイゴは部屋を飛び出し廊下を走る。

 

……

 

機内の通路を走り抜ける。ダイゴは発信機の受信機片手に走っていた。ダイゴによると実はインカムには小さな発信機を取り付けているらしく、すぐに居場所が分かるようにしていたらしい。

走っている間も機体が不自然に揺れているのがわかる。ミクリがオトギリたちと交戦しているのだろう。

 

「お嬢さん頑張って、もうすぐだ!」

 

長い通路を走り抜け、ダイゴがある部屋を見つる。端末を見るとミクリの発信機はその部屋を示していた。

 

「「ミクリ/さん!!」」

 

部屋の中にはミクリのオトギリの他にシュオウ、カマスミも揃っていた。多くのクレーターの跡を見ると、激しいバトルだったことが容易に想像できる。

ジムリーダーをしていたミクリも幹部2人の相手を取るには限界があったのか、ミクリのミロカロスとギャラドスが床に倒れていた。ミクリ本人は床に膝をついて、なにかに耐えているようだ。

横には見慣れないチラチーノ、電気を帯びているように見える。

 

「ミクリ、どうしたんだ!」

 

すぐ異変に気づいたダイゴがミクリに話しかけるが、ミクリは満足に返答できない。よく見るとミクリの体も電気が走っているようにぱちぱちと光っている。

 

「、、、ダイゴさん、横のチラチーノです。」

 

「チラチーノ?」

 

「多分、ミクリさんはチラチーノの電磁波を受けて体が、、、。」

 

「なっ、、!君たち、なかなか卑劣な手を遣うようだね。」

 

普段怒りの感情を出さないダイゴもその蛮行に憤慨する。いや、大事な友人を傷つけられて平然とできるほど、ツワブキ・ダイゴという男は冷徹な人間ではない。

しかし、チラチーノのトレーナーらしきカマスミはそんなダイゴを愉快そうに甲高い声で笑った。どうやら自身の行いを悪いなんて思っていないようだ。悪の組織の幹部である以上、言うまでもないことでもあるが。

 

「あは、あははは!なぁにを言っているの、私たちは悪の組織よ?どうして人としての倫理観があると思ったのかしら。」

 

頭、お花畑なんじゃない?とこちらを煽るカマスミ。見た目に反して性格は全く上品さの欠けらも無い様子だ。

 

「あぁ、それもそうだね。

 お嬢さん、僕たちが今するべきはミクリを助け出すこと、良いね?奴らは人にもポケモンにも危害を加えるのに躊躇いがない、気をつけて。」

 

「了解です。」

 

カマスミの極悪さをダイゴは怒りを抱きながらも冷静に受け流し、ミクリの救出を最優先にした。少女もそれに頷き、モンスターボールを取り出す。

それにカマスミはニヤニヤし、オトギリも興奮気味にモンスターボールを出す。両者、嬉々として戦うつもりみたいだ。

 

「、、、戦うことは避けられないか。いいだろう、誰が一番強くて凄いか教えてあげるよ。頼むぞ、メタグロス!」

 

「あと少し力を貸してボーマンダ!」

 

ダイゴの少女はそれぞれ自身のパートナーポケモンを出し、幹部2人と対峙する。

 

「好い奴も捨て難いが、俺ァは今回チャンピオンの方貰うぜェ、カマスミ。」

 

「お好きにどうぞ、私は元々あのクソガキしか興味無いわよ。シュオウ様に近づくクソ小娘、痛めつけて二度とシュオウ様の前に出れないようにしてあげる。」

 

幹部2人は邪悪な顔を見せながらそれぞれの獲物を決める。オトギリはダイゴに、カマスミは少女と戦うようだ。カマスミからは何か私怨を感じ、少女は少し身震いする。

 

「お嬢さん、そっちは任せるよ。」

 

少女は頷くと首のメガチョーカーに触れる。ダイゴも胸のメガラペルピンを手に取る。

 

「石の煌めき、絆となれ」

 

 

「「メガシンカ!!!」」

 

キーストーンとメガストーンが光を放ちポケモンたちの姿が変わる。

 

「最初から全力たァいいねェ、血が滾ってくるぜ!!いけやニドキング!!」

 

「行きなさい、バイバニラ。」

 

敵が出したのはどちらもボーマンダとメタグロスにとっては相性不利。加えて2体は先程までの戦いから回復が出来ていない、慎重に戦う必要がある。

バイバニラの特性の雪降らしにより霰が機内に降り始めた。

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブ!」

 

ボーマンダは体を宙返りした後、その反動でドラゴンダイブの勢いをつけバイバニラに迎えっていく。相性が不利だとしてもそれを理由にボーマンダが引くことは無い。

 

「バイバニラ、オーロラベール。」

 

しかし相手も対策をしているようで天候が霰の時のみに発動できるオーロラベールを使用することでメガボーマンダの技の威力を半減してくる。霰が降っている以上はオーロラベールは貼られ続け、また一定時間が経たないと効果は途切れない。

短期戦に持っていくことができなくなってしまったのである。人に非道なことをするわりには予想外にもバトルの構成は考えられているようだ。

 

「バイバニラ、フリーズドライよ。」

 

バイバニラが辺り一帯を冷気で包む。急激に冷やれた空気はボーマンダを冷やし彼女の身体を氷で固め始める。

 

「ボーマンダ、捨て身タックルで氷をバイバニラにぶつけて!」

ボーマンダは半身が氷で固まっている状態にも関わらず指示通りに捨て身タックルでバイバニラへ飛んでいく。バイバニラはオーロラベールがあるからか、余裕の態度でボーマンダを受け止める準備をする。カマスミも同様である。

 

「オーロラベールが見えないのかしら。そのまま墜としてあげなさい、もう一度フリーズドライ!」

 

バイバニラは再び冷たい冷気を身体から放つ。このままではボーマンダがフリーズドライを至近距離で食らってしまう。

 

「ボーマンダ、急停止して縦横無尽に飛び回って。」

 

ボーマンダは羽を巧みに操ってホバリングすると、自身が巨体にも関わらず好きなように狭い機体の中を飛び回り始めた。

スピードは圧倒的にボーマンダが上であり、バイバニラは目で追うことがやっとであたふたしてしまう。

 

「バイバニラ、落ち着きなさい。」

 

カマスミは至って冷静だが、少女が指示をなかなか出さないため焦れったい動きについ爪を噛んでしまう。

 

(ボーマンダが動きを止めた瞬間に、一気に片付けてあげるわよ。)

 

タイプ相性は圧倒的にバイバニラが有利、体力が削れたボーマンダならば氷技がもう一撃当たれば止めになるだろう。

カマスミは余裕の笑みを浮かべる。

 

「ボーマンダ、龍の舞で接近してバイバニラの視界から外れて!」

 

「!」

 

ボーマンダが急に接近したことでオーロラベールがあるにも関わらずバイバニラは驚いて目を瞑ってしまう。バイバニラが目を開けた時には何処にもボーマンダはいない。大きな巨体のポケモンが一瞬でいなくなったことに頭が真っ白になったバイバニラはその場で固まってしまう。

 

「何してるの、上よ!!」

 

カマスミの焦った声が聞こえ、バイバニラは急いで上を見上げるとボーマンダがこちらに降ってきている。

 

「捨て身タックル!」

 

オーロラベールは【守る】のように技を受けないことは無いために不意をつかれた一撃はバイバニラに見事命中した。

床と捨て身タックルに挟まれたバイバニラは抵抗できずに、どんどんと床に身体が埋まっていく。ボーマンダは、しっぽでバイバニラをぶって壁に激突させてやる。

 

「ほんとにうざったいわね。小賢しくちょこまかと、、、!」

 

カマスミが顔を歪ませて少女をギロリと睨みつけるが少女は気に留ない。その様子に舌打ちをすると、突然不敵に笑う。

少女はカマスミが何かを企んでいることに警戒し、ボーマンダを引かせようとするが間に合わない。

 

「バイバニラ、挑発!」

 

バイバニラがボーマンダを煽るように振る舞い、ボーマンダはまんまと挑発に乗ってしまった。

挑発は龍の舞などの変化技を封じる技。龍の舞を利用しての攻撃が多いボーマンダにとっては痛手だ。

 

「ふふ、これでボーマンダお得意の龍の舞は使えなくなったわね?」

 

カマスミはニヤニヤと下品な笑みを浮かべて笑う。

 

「龍の舞を使えないから能力は向上できない。極めつけは相性は圧倒的不利。バイバニラに対する打点はボーマンダには無いでしょう?」

 

カマスミが勝ち誇った顔をする。ボーマンダに対してバイバニラを出したのはタイプ相性だけでなく、挑発を持っていたからだった。

 

(なるほど、ならまずこの霰をどうにかするべきかな。オーロラベールがあると碌なダメージを与えられないし。)

 

霰が降り続ける限りオーロラベールは何度でも貼り直すことができる。ボーマンダからのダメージは半減され、バイバニラからのダメージは効果抜群で大ダメージなる。ボーマンダの残り体力を考えても、オーロラベールが剥がれた瞬間に勝負に出るしか勝ち筋がない。

 

「こうなれば袋の鼠同然ね。ふふ、ふふふ、あははは、、、一気に決めてあげる、バイバニラ吹雪!」

 

吹雪は天気が霰の場合に必中になる技だ。避け続けてもいつか吹雪はボーマンダを捕らえるのは明白だった。

追い詰められた少女は頭をフル回転させて打開策を講じる。

 

(なにか、霰を無効化できる物は、、、)

 

機内を見渡し鍵になるものは何か無いか探す。

その時、ふと同じように戦いを繰り広げているオトギリとダイゴの方向に目が向いた。

オーロラベールがあるせいかメタグロスもニドキングに苦戦しているようだが、少女は何処か違和感を覚える。

何処かおかしい、何かが違う、そう思って吹雪が放たれる瞬間までその違和感を見つけるために2人の戦いを凝視する。

 

「メタグロス、ラスターカノン!」

 

「ニドキング、大文字!」

 

(、、、大文字?)

 

ニドキングの放つ技に疑問を覚えた。

少女とオトギリが戦った時ニドキングの技はどうだったか。大文字は覚えていたのか。

 

(ニドキングはたしか、毒づき、地ならし、岩石封じそしてカウンターを使っていて、大文字なんて覚えていなかったはず。技が物理から特殊技に変わってる、、、?

そうか、あれを利用すれば!)

 

「ボーマンダ!ドラゴンダイブで床スレスレを飛び回って!」

 

龍の舞を使えない代わりにドラゴンダイブで加速する。床とぶつかるかぶつからないかの所を飛び回るボーマンダに容赦なく吹雪が放たれる。

 

「そんなことして何なるのかしら?無駄な足掻きはせずに早く諦めたらどう?」

 

勝ちを確信しているカマスミは気づかない。ボーマンダが床スレスレを飛ぶことで何が起こっているのか、そして今戦っているのが自分と己だけでは無いということに。

吹雪がボーマンダに迫っている中、少し離れた場所で戦っているダイゴとオトギリの方に異変が生じる。

 

「メタグロス、コメットパンチ!」

 

「受け止めろニドキング!至近距離で大文字だ!」

 

メタグロスが回転を加えながらニドキングに突っ込んでいく。ニドキングは持ち前の腕力でメタグロスを受け止め、そのまま大文字を打とうと足を踏ん張ったその時。

 

ズルッ

 

何故かニドキングが足を滑らせてしまった。

 

足を滑らせたニドキングはそのまま横に倒れてしまい、メタグロスに発射されるはずだった大文字は機体の壁に穴を開ける。

 

「何がおこって、、ぐぁ?!」

 

突然足を滑らせたニドキングにオトギリが驚いたと同時に彼の体が風の力で前へ倒れそうになる。

陽圧状態にある機内は、ニドキングが開けた大穴を開けたことで空気が外へ逃げるように穴に吸い込まれていた。

寸前のところで踏ん張ったオトギリは吸い込まれることなく、その場で耐える。

 

「あっぶねェ、、、あ"?なんで床が凍って、、、そうか、これのせいで俺のニドキングが足を滑らせやがったのかよ!」

 

そう。オトギリが言った通り、床が全面的に凍っていたのである。

 

「おい、カマスミィ!!テメェこっちの邪魔してんじゃねェよ!!」

 

カマスミのせいだと決めつけたオトギリは怒鳴り散らした。

 

「はぁ?!私は何もしてないわよ!!バイバニラに吹雪を指示しただけ、、まさか!」

 

カマスミがバッと少女に急いで顔を向ける。少女はニヤリと笑った。

 

「特性雪降らしで霰が降りフリーズドライでこの機体の空気が凍って、床も少し霜がおりてたから吹雪で凍らないかなと思ったんだけど、、、上手くいってよかった。」

 

少女は床を凍らせることでニドキングの足を滑らせ機体に穴を開けさせた。カマスミとオトギリは少女に上手く使われたようだ。

カマスミが更に酷い形相になって少女を睨めつける。

 

「あんた、私を利用して、、、!もう容赦しないわ、吹雪!」

 

「避けてボーマンダ!」

 

バイバニラが吹雪をボーマンダに放つが、先程とは打って変わって軽々交わすボーマンダ。

 

「なッ、どうして?!」

 

「気づいてないんですか?霰、もう降ってないけど。」

 

ハッと上を見上げるカマスミ。先程まで降っていたはずの霰は既に降ってはおらず、機体の天井が見えるだけだった。雪雲は空気の流れと共に機体の外へ逃げてしまっていたのだ。

霰が止んだことでバイバニラを守るオーロラベールが使えなくなる。加えて、オーロラベールの効力も今のタイミングで終了となってしまった。

その好機を逃すべく少女とダイゴは畳み掛けた。

 

「ボーマンダ、捨て身タックル!」

 

「メタグロス、コメットパンチ!」

 

ボーマンダとメタグロスの会心の一撃がバイバニラとニドキングを襲った。熾烈な2匹の技はそれぞれに命中し爆発を起こす。

機内は煙で包まれ視界が悪くなり、ポケモンたちの様子が分からない。

 

穴が煙を吸い込み、霧が晴れるように視界が開けていく。ポケモンの影らしきものがだんだん見えてきた。

ボーマンダはメタグロスは、バイバニラとニドキングを倒したのだろうか、少女は目をよく凝らした。

 

「、、、え??」

 

バイバニラに捨て身タックルを決めたはずのボーマンダがぐったりとして床に倒れていた。メガシンカも解かれており、身体がミクリのようにパチパチと発光しているように見える。

 

(どうして?!なんで、ボーマンダが痺れてるの?!)

 

煙が全て穴に吸われ、ボーマンダが倒れている一帯が顕になった。ボーマンダが影になってわからなかったが、彼女の近くにバイバニラではないポケモンがいる。

そこに居たのは先程ミクリを痺れさせていたカマスミのチラチーノだった。

 

「な、なんで、チラチーノが、、、。」

 

なんでチラチーノがそこにいるのと言いたかったが、口を動かせずに音出すことは叶わなかった。

唾液が無くなって、口腔内が乾く。だらだらと冷や汗が流れる。

 

「なんでって、見てわからないの?私がチラチーノに電磁波を指示したからからよ。貴方、想像通りおつむのできがよろしくないのね。」

 

カマスミがニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる。悪魔のような笑いに少女は怒りで身が震える。

 

「巫山戯るな!!そんな卑怯な手で、ボーマンダを、、、!!」

 

「卑怯ぅ??私1対1で戦うなんて言ったかしらぁ?言ってないわよねぇ、貴方が勝手に勘違いしただけじゃなくってぇ?」

 

「ボーマンダを、よくも私のパートナーをそんな下劣な方法で、、、!」

 

「なんて醜い顔!あは、あはは!さいっこうに気分がいいわ。もっとその顔歪ませてあげる、、、!

バイバニラは吹雪、チラチーノはトリプルアクセル。あぁ、、、ちゃんと

 

 

ボーマンダを殺す勢いでね。」

 

「なッ!」

 

カマスミの表情や声から冗談でないことがわかる。

バイバニラもチラチーノも躊躇なくボーマンダに技を放とうとしている。ボーマンダは気絶し、超古代ポケモンたちとの戦闘の疲れもある状態で追い打ちを掛けられたら一溜りもない。下手をすれば本当にボーマンダが死んでしまう。

少女は気づくと身体がボーマンダの下へ走っており、彼女の大きな体を隠すように覆いかぶさっていた。

 

バイバニラの吹雪が身体を急激に冷やし、吹き付ける雪のつぶが身体に当たるのはとても痛い。チラチーノがトリプルアクセルで背中を蹴りつける。

吹雪で体温が奪われて身体が勝手に震え出す。この段階ですでに皮膚感覚が麻痺してトリプルアクセルの痛みが遠くなるが、ドンッドンッと衝撃を受けていることは分かる。息が早くなって瞳孔が開き、思考が纏まらなくなる。肉が切れる感覚がしても、もう何が起こっているのかわからず、気を抜くと叫んで暴れだしそうになる。

それでも少女はボーマンダから離れなかった。痛いとか寒いとか、そんなものよりもしかしたらボーマンダが死んでしまうのではないかという恐怖で心ががたがたと震えて、その恐怖のお陰でボーマンダの上に留まることができていた。

 

ずっと機内を覆っていた煙が殆ど吸い込まれ、ダイゴは少女たちの異変にやっと気づいた。

因みにメタグロスはニドキングを見事に撃破している。

 

「お嬢さ、、、?!メタグロス、お嬢さんたちを守れ!ラスターカノン!!」

 

メタグロスのラスターカノンがバイバニラとチラチーノを襲う。少女は2匹の攻撃が止んでもボーマンダを守るために必死に彼女の顔をお腹に匿って急所となる所を守る。

少女は身体の震えを押さえ込んでボーマンダをモンスターボールに戻そうとモンスターボールを向ける。

 

(はやく、、、早く動け!!!)

 

やっとの思いでボーマンダを戻してあげれるところまで来た。

 

「ボーマンダ、もどっ「フーディン、サイコキネシス」ッ?!」

 

モンスターボールが淡く光だし少女の手から無情にも離れると壁の方へ飛んでいく。壁にぶつかるとコロコロと転がる。

少女が振り向くと後ろには今までずっとこちらを傍観していたシュオウがフーディンを連れて立っていた。

シュオウの登場に危機感を覚えたダイゴが走り出す。

 

「デスバーン、黒い眼差しだァ。」

 

「っぁ?!、、、君、しつこいね。」

 

オトギリがいつの間にか出していたデスバーンが黒い眼差しでダイゴの行く手を阻んだ。

その場から動けなくなってしまったダイゴが睨みつけるが、オトギリは何処吹く風でニヤニヤと笑うだけだった。

 

「メタグロス、コメットパンチ!」

 

ダイゴがデスバーンの技を解こうとメタグロスに指示を出す。メタグロスはデスバーンへ攻撃を仕掛ける。デスバーンは鈍足なポケモンで、メタグロスの攻撃からは逃げられないだろう。

 

が、しかし

 

「デスバーン、トリックルーム。」

 

デスバーンが不思議な空間を展開するとメタグロスのスピードががっくりと減速した。

トリックルームは素早いポケモンが鈍足になり、鈍足なポケモンほど素早くなる不思議な空間。素早さが逆転する空間なのだ。

メタグロスはメガシンカしている事で素早さも上昇しており、デスバーンというポケモンは非常な鈍足なポケモン。トリックルームという空間においてデスバーンはメタグロスより素早い。

 

「デスバーン、ボディプレス!」

 

デスバーンがメタグロスの上を取ると、そのまま落下しメタグロスを押し潰す。

 

「サイコキネシスで振り払え!」

 

メタグロスはサイコキネシスを発動させデスバーンを浮かせるとそのままトリックルームの壁にぶつける。壁に激突したデスバーンにメタグロスが追い打ちをかけるためにラスターカノンを打つ。ラスターカノンはデスバーンに直撃すると大きな爆発を起した。

高い耐久値を持つさすがのデスバーンもメタグロスのラスターカノンには一溜りもない。

 

「もう一度ラスターカノン!」

 

メタグロスがもう一度ラスターカノンの準備をする。次にラスターカノンを受ければデスバーンは確実に倒れるであろう。

しかし、それはカマスミによって放たれることは無かった。

 

「そこのメタグロス、止まりなさい。この男がどうなってもいいのかしら?」

 

声の方向に目線を向けると、いつの間にか移動していたカマスミがミクリの横にたっている。そのすぐにバイバニラも居て身体からは冷たい冷気を放っている。痺れて動けないミクリが氷技を受ければ無抵抗で凍りつかされるであろう。

ダイゴはすぐに止めるよう指示をするとメタグロスも大人しく技を止める。

 

「それでいいのよ、、、どうぞシュオウ様。これで貴方を止めるものはいなくなりました。」

 

「ああ、ありがとうカマスミ。」

 

ミクリを人質に取られたダイゴとメタグロスは抵抗できず、シュオウ達を睨みつけるしかない。

カマスミはシュオウからお礼を言われると身体をくねらせて悶える。バトルを止められたオトギリは文句を言おうと口を開けるがシュオウに止められたことで口を閉じた。

シュオウから邪魔をするなと言うオーラが滲み出ていた。

シュオウはゆっくりとボーマンダに覆い被さる少女に近づくと、髪を引っつかみ無理矢理顔をあげさせる。少女の痛みを耐える声にダイゴはやめろと叫ぶが、やめろと言われてやめる者はここにはいない。

少女は痛みに耐えながらも何とか声を発する。

 

「おま、えの、目的は、、なん、だ。超古代ポケモンを、、操って、、、宇宙をどう、、壊す。」

 

少女はもう気息奄奄で、訥々とでも言葉を発せるのが不思議なくらいだ。

そんな少女にくつくつと笑う。

 

「くははは、、、もう死にかけの君になら教えてやろう。カイオーガとグラードンは、レックウザを手入れた今、私たちの計画を誰にも邪魔されないためのただの壁。レックウザこそが宇宙を破壊するためのエネルギー。レックウザの生命エネルギー、やつの全てを使って宇宙に特大のブラックホール作る。宇宙を飲み込む程の、、、ね。そういう計画だよ。」

 

(レックウザの、全て、、、?!)

 

シュオウの発言によると、レックウザの命を引き換えに宇宙にブラックホールを作るという。

ブラックホールは大きな星が死ぬ時、超新星爆発と呼ばる現象をきっかけに生まれるもの。レックウザの生命エネルギーを使うことで、ブラックホールを人工的に作ることができるというのか。

 

「案外簡単に教えてくれるんだな。」

 

黒い眼差しによってその場から動けていないダイゴが口だけを動かし、シュオウへ投げかける。シュオウはあぁ、そうだなと笑う。こう言葉を続けた。

 

「君とそこで痺れている彼は逃げることはできない。それに、この娘は、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで死んでもらう。」

 

 

「な?!やめろシュオウ!!何故お前も超古代ポケモンもその子を狙う!!」

 

ダイゴが黒い眼差しから逃れようと藻掻きながら叫ぶ。

そんなダイゴにシュオウが心底愉快そうに笑う。

 

「君だって危険分子は少しでも排除するだろう?そういうことだよ。」

 

「だからって人の命を奪う必要なんてないだろう!!それにその子はまだ子どもだ!!」

 

「ならば何故連れてきた。」

 

「ッ!!」

 

シュオウの言葉にダイゴは二の句が継げなくなった。シュオウはそれに鼻を鳴らす。

 

「何も言えないか、、、そうだろうとも。君たちは一ヶ月前の時も今回もこの娘を利用している。ホウエン地方を守るため、我々を阻むためにこの娘を使ったのだろう?その結果がこれだ。普通の大人ならば一度でも命の危機に晒された子どもをこんな所には連れてこない。君たちがこの娘にしたことは私やオトギリがしたこととそう変わりないことではないかな?」

 

なぁ、チャンピオン殿?と蔑んだ笑みを浮かべるシュオウにダイゴが唇を噛み締める。

シュオウの言う通りだ。常識ならば、子どもを危険に晒さない為に一ヶ月前のあの時に参加させるべきでないと、シンオウ地方に返すだろう。だが、そうすることはダイゴたちはしなかった。それは少女の命を危険に晒されることを厭わないということだった。

その時、少女の髪を掴んでいたシュオウの手首を誰かが握りしめる。

それは他でもない少女自身だった。

 

「それは、ちがう。」

 

「、、、何が違うと言う?我々を追うため、レックウザを守るため、君という人間を使ったんだ。あぁ、仕事のためなら子どもを利用することも厭わないとは、なんと哀れな存在だろうか、チャンピオンと言う存在は。」

 

シュオウの言葉に先程まで息も絶え絶えだった者とは思えないほど、段々手首を掴む力が強まる。

 

「ここ、に、、私が、いるの、は、私の意思、、。私が、、ダイゴさんと、ミクリさんに、着いていくことを、決め、、たん、だ、!」

 

「ははは!私の意思とは!なんと愚かなことだ。よもや、彼らが素晴らしい人間だとでも?さすが、チャンピオンとなれば人を誑し込むのはお安い御用というわけか!その手腕を是非ご教示いただきたい。

君はなんと言われて彼らに誑かされた?いいかい、彼らが君に投げた甘い言葉は全て虚言だ。彼らは君のことを利用価値のある駒としか考えていない。仲間でもなんでもない!!」

 

ダイゴは何も言わない。

髪を掴む力が強くなる。少女はギリッと歯を軋ませた。

 

「そんなこと、知ってる、、、!!」

 

少女が声を荒らげた。

 

「え、、、?」

 

少女の叫びに一番驚いたのはダイゴだった。

知っている、そう少女が言ったことが信じられなかった。

 

「ダイゴ、さんたちが、、私を利用して、、いたことも、仲間と、、、思っていなかった、ことも!

それでも、良かった。利用、、されていようと、仲間だと、、思われて、いなくも。ダイゴさんは、私を導いてくれた、、、ミクリさんは、ずっと私を心配して、くれていた。それは、嘘なんかじゃ、無かった!

だって、ダイゴさんとミクリさんは、私を一緒に戦わせてくれた、戦ってくれた!私は、彼らに救われたんだ!

それを、、、何も知らないお前が、知ったような口を利くな!!!」

 

ダイゴと最初に会った時から疑問があった。なぜ、ダイゴもミクリも自分に友好的なのか。勧誘時のダイゴは少し挑発的だったが、それ以外は紳士な対応だった。その態度が少女は酷く困惑した。

ダイゴとミクリのことをこっそり調べた時、ダイゴが《頑張っているトレーナーとポケモンが好き》と言っている記事を見つけた。可笑しいと思ったのだ。

当時の少女はバトルはできない、するつもりは無いと2人に言い切っていた。誰がどう見ても頑張っているトレーナーには見えない。確かに、露骨に嫌悪感を出してくるような人物では無いのだが、友好的にもされないはずだ。あの夜ダイゴたちと話し合ったことで結果的に打ち解けられ、バトルの練習もするようになったが、最初の段階でシンオウ地方に帰されても何ら不思議ではないかった。

そして2人と関わり、一ヶ月間も共に過ごして気づいた。自分を見て険しい顔をするダイゴを、悲しい顔をするミクリを。合点がいった。自分がレックウザに縁のあるものとして任務のために利用していること、仲間と言いながら少女を子ども、守る対象だとしか見ていないこと。

そのことに気づいたとき、少女は悲しいなんて感情は湧かなかった。利用してくれて良いとさえ思った。

それは何故か。少女はダイゴたちが言った言葉を信じていたからだ。

何を壁とするのか、何を重要だとするのか。それは人それぞれ。

 

(ならば私は、自分が見たもの、聞いたもの、感じたもの、自分の信じたいものを信じよう。

利用することを仲間だと偽ることを嘆くなら、代わりに私がその言葉が真であると信じ抜こう。)

 

きっと、2人と対等にはなれないから。

諦めにも似た覚悟は、ひっそりと少女たち3人を支え続けた。

 

例え歪だと思われようと、愚かだと言われようと少女にとってダイゴの言葉は救いであり、2人は恩人で大事な仲間だ。誰になんと言われようと揺らぐことは無い。

それを部外者であるシュオウに好き勝手言われるのは、腸が煮えくり返りそうになるほどに許せなかった。

 

少女がシュオウの手首を捻るようにして横に強く引く。強引に引っ張ったことでブチブチと音を立てながら髪が切れるのも少女が気にする様子はない。

シュオウの手から逃れられた少女はよろけながらもしっかりと足を踏み締めて立ち上がる。

 

「私はダイゴさん達と一緒にあなたたちを潰してレックウザを助ける、、あなたたちの目論みなんて絶対止めてやる!これが私の意思だ!!」

 

少女の言葉を聞いたシュオウの顔からは先程までのような余裕そうな笑みは消え失せ、冷ややかな目で少女を見ていた。

 

「とんだじゃじゃ馬娘だったようだ。もういい、目障りだ。フーディン、サイコキネシスであの穴にその娘を落とせ。」

 

「お嬢さん!!」

 

ダイゴの叫びも虚しくフーディンが目を怪しく光らせて少女に念力を使って穴へ吹き飛ばす。踏ん張ることもできず、少女の身体は外へ飛び出すとそのまま海へ落下して行く。ボーマンダは気絶してしまい、全く動けない。少女を助けるポケモンはいなかった。

 

「メタグロス!コメットパンチでトリックルームを壊すんだ!!お嬢さんを助けろ!!」

 

メタグロスはトリックルームの中にいるにも関わらず今までで一番のスピードとパワーでコメットパンチをトリックルーム自体に放つと、メタグロスとデスバーンを閉じ込めていた不思議な空間は音を立てて壊れる。メタグロスの動きを自由にした。

 

「デスバーン、黒い眼差し!」

 

メタグロスを行かせまいとデスバーンが黒い眼差しを発動させようとするが、どこからともなく雪の礫が飛んでくる。

全員が技が飛んできた方向を見ると、床に倒れていたはずのミロカロスが首だけ起き上がらせていた。どうやらデスバーンを襲ったのはミロカロスの吹雪だったようだ。

その隙を逃さなかったメタグロスは穴をラスターカノンで広げると躊躇なく外へ飛び出して行った。それを見届けたミロカロスは今度こそ床に倒れた。

 

「ちっ、逃したか。」

 

「何してるのよオトギリ。」

 

カマスミが指の爪を噛みながらオトギリを避難する。

 

「まぁ、いいじゃないか。外はカイオーガとグラードンの影響で天候は最悪。

メタグロスと共に死ぬ可能性の方が高い、放っておいて大丈夫だろう。」

 

シュオウの言葉でカマスミは大人しく引き下がる。

ダイゴは3人の様子を伺いながら、少女とメタグロスが落ちていった穴を見る。

頭の中をぐるぐると駆け巡るのは少女の言葉。

 

(守られていたのは、君じゃないよお嬢さん。)

 

ダイゴはメタグロスと少女の無事を祈りながら目を閉じたのだった。




ミミッキュ(化けの皮)♀
【剣の舞、じゃれつく、ゴーストダイブ、道連れ】
アローラで出会った。イタズラ好きで住人を困らせていた。挫折後ガラルに引こもる前に、ポケモンたちに押されて旅行しに来てた主人公にイタズラ仕掛けてボーマンダに叩きのめされた。それから主人公、というよりボーマンダにストーカー、ガラルに引っ付いていきそこで手持ちに入った。つまり出会ったのはアローラでGETはガラルという少し複雑な経緯がある。いたずらっ子だったせいか人からもポケモンからも少し嫌厭されていた。少女のポケモンになってからは人からお礼を言われたり褒められたり撫でられたり抱っこされるのが大好きになり、イタズラは少なくなった。褒められる方が好きなので。一番新人のため超絶末っ子ムーブ。泥棒もビックリするほど色んなところに入り込むのが得意。元々前向きな性格からかピカチュウを見ても特に反応はない不思議なミミッキュ。
バトルスタイル:剣の舞を積んで戦う典型的なバトルスタイルだが、ボーマンダの戦い方をリスペクトした結果そうなっただけである。危なくなったら道連れで絶対に一体は倒す執念がある。ミミッキュZもちゃんとあります。
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