あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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スペース団(1):愛は死より強し

西の空に浮かんでいた太陽が沈み、東の空から月が現れた頃、一機のヘリから2人の男女とメタグロスに乗って飛び降りる。メタグロスが無事着地した事を確認した ヘリは踵を返し、近くの森の方へ飛んで行った。

 

「ここがスペース団の本拠地か。」

 

デンジがそう確認するように呟くと、後ろにした少女がみたいですねと返事をした。少女はメタグロスを様子を気にしていたが、メタグロスは大丈夫と腕を動かせてみせる。

さて、ここで何故少女とデンジ、メタグロスしかいないのかと言うと、シロナの猛反対を押し切って突入組と防衛組で勢力を二分したからである。

 

『スペース団に乗り込むのがデンジくんと貴女の2人だけなんて無謀だわ。全員で行くべきよ。』

 

『スペース団には幹部や下っ端だけじゃなくてゲンシカイキした超古代ポケモンの2体がいます。全員で乗り込んでしまえば2体を抑える人がいません。二手に別れるべきです。』

 

『でもそれなら、私も貴女と一緒に行くわ。デンジくんと2人だけなんて危険すぎるもの。』

 

『いいえ、カイオーガとグラードンの足止めをするためにはシロナさんとカルネさんのお2人の力が必要不可欠です。正直に言いますが、伝説のポケモンを足止めするためにはそれだけでも力不足なんです。』

 

『それでも、、、』

 

『他のジムリーダーや四天王、チャンピオンの増援は見込めないんですね?なら、勢力はスペース団ではなく伝説のポケモンへ注ぐべきです。

大丈夫、あそこにはダイゴさんとミクリさんがいます。きっとミミッキュが2人を手助けしてくれているはずですし、あの御二方なら絶対脱出するでしょう。だから信じてください。』

 

『うぅ〜、、、わかったわ、、、。デンジくん、この子をよろしくね。絶対ダイゴくんたちへ返しあげて。』

 

『あぁ、わかってる。彼らに会えるまで面倒は見るよ。』

 

最後に何かあれば絶対に戦線を離脱することを散々刺され今に至る。少女はシロナとの押し問答を思い出して苦笑した。本当に優しい人だ。

 

「それで、ここからどうする。」

 

「勿論、アジトに入りますよ。」

 

「入口わかるのか?」

 

「いいえ、全くわかりません!でもどうせ、どこから入ったってバレるんですから大胆に行きましょう!

それに、こっちに気を向けてくれた方が好都合です。レントラー!」

 

少女は腰のポーチからモンスターボール出し、空に投げる。呼び声の通りに現れたレントラーが音もなく地に着地する。

 

「地面に向かってワイルドボルト!」

 

レントラーはバチバチと電気を放つと、助走をつけて高くジャンプする。クルクルと空中を回転し、不思議なことに空中でピタリと静止したかと思うとそのまま地面へ落下する。ただ落ちるのではなく、空中にあるはずの無い地面を駆けるようにレントラーは落下していく。恐ろしいほどの身のこなしだ。

レントラーは大きな爆発とともに地面に見事な大穴を開け、少女とデンジ、メタグロスはそこからアジト内に入り込んだ。

 

「君もレントラーを持っていたんだな。よく育てられている。」

 

「ふふ、、、ええ。私のレントラーはかなり強いですよ。」

 

自分のポケモンを褒められるのは自分のこと以上に嬉しい。

大穴を開けたせいで予想通りアジト内に警報音が鳴り響くとバタバタと大勢の足音がこちらに向かって来る。少女とデンジが音の方向を見ると5人以上の下っ端たちがポケモンを出してこちらを睨んでいる。下っ端が使うポケモンにしては強そうなポケモンが揃えられている。

 

「 そう簡単には通してくれないみたいだな。」

 

「ですね。でも、無理にでも通してもらうだけです。」

 

デンジもエレキブルを繰り出し、応戦する。

下っ端のポケモンの中には地面ポケモンもいたが、タイプ相性なんて関係ないとばかりにレントラー、エレキブルは喉を唸らせて威嚇する。

 

「レントラー、ワイルドボルト!」

 

「エレキブル、雷パンチ!」

 

レントラーとエレキブルがそれぞれ下っ端たちのポケモンに向かっていく。下っ端たちも簡単にやれてくれるわけがなくレントラーたちの電気技を受けるために地面タイプのポケモンと特性が蓄電のポケモンが前に出る。

 

「レントラー、氷の牙!」

 

「エレキブル、アイアンテールだ!」

 

電気技が当たりかける寸前で技を切り替えたレントラーとエレキブルにポケモンたちは反応することができずに技を受ける。

吹き飛んだポケモンたちを見て下っ端たちは冷や汗を流す。

 

「奴ら速いぞ!」

 

「こっちも早いポケモンで応戦するんだ!」

 

ポケモンの中でも素早いエンニュートやファイアローが前に出てくる。

2体のポケモンでレントラーとエレキブルを撹乱し、こちらが電気技を放てば先程の蓄電のポケモンが技を受けに来て、いい所で味方諸共地面ポケモンが地面技を放つ、そういう戦法だろうか。どんな手を使ってでも少女たちを止めつもりらしい。

それならばと少女はレントラーに指示を飛ばす。少女自身、あまりやりたくない戦法なのか少し顔が強ばっている。しかし、少女たちにはとやかく言っている時間は無い。

 

「レントラー、ワイルドボルトをエレキブルに!」

 

レントラーのワイルドボルトがエレキブル目掛けて放たれる。エレキブルはワイルドボルトを受けるが、電気エネルギーを吸収して逆に元気に腕を振り回し始めた。エレキブルの特性、電気エンジンである。電気エンジンは電気技の電気を吸収し、自身の素早さを上昇させる効果がある。

電気技の効果がないと分かっていても味方のポケモンに技を放ちたくない少女は少し渋い顔をした。

 

「急を要する状況だ、気にする事はない。エレキブルもちゃんと分かっている。」

 

デンジの言葉に、頷くと頭を降って雑念を飛ばす。そういう戦法を取るトレーナーもいるのもわかっているので、今の戦法は非難されるものでは無い。少女個人の問題であるので、自分の問題で勝利を逃していい場面でない今は少女が自分を曲げるしかない。

電気エンジンで加速したエレキブルに下っ端たちは少し焦る。自分たちが素早さでこちらを上回るしか勝機はないからである。

 

「レントラー、高速移動でエンニュートとファイアローに近づいて!」

 

「エレキブル、レントラーをサポートだ。」

 

レントラーが目にも止まらぬ早さで走る。後援のポケモンたちがレントラーを止めるために技を放ってくるが全てエレキブルが相殺してくれる。レントラーはあっという間にエンニュートとファイアローと間を詰め、2匹を睨みつける。威嚇だ。2匹はレントラーの威嚇に怖気づくとその場でフリーズしてしまう。

 

「何してるファイアロー!お前も高速移動で逃げろ!」

 

「エンニュート、スモッグだ!視界を遮れ!」

 

トレーナーの声に我に返ったファイアローとエンニュートはレントラーから逃れるために技を放とうとする。だが、それを許してくれるレントラーでは無い。

 

「遅い!!電磁波!」

 

蓄電のポケモンもエレキブルに阻まれ、レントラーの素早さに勝てなかったファイアローとエンニュートはそのままレントラーの電磁波を受けてしまう。身体が痺れて動きが鈍くなる。これではレントラーたちを撹乱する役目は務まらない。数で言えば優勢なのは下っ端であるし、ポケモンたちも下っ端の割には育てられている。しかし、育てられていると言っても少女とデンジのポケモンには及ばなかったという訳だ。

 

「畳み掛けるぞ。エレキブル、ワイルドボルトだ!」

 

「はい!レントラー、氷の牙!」

 

ワイルドボルトと氷の牙が下っ端のポケモンたちを捉える。

 

 

 

 

 

 

「トリプルアクセル」

 

どこからともなく現れたチラチーノがレントラーを攻撃した。

不意打ちであったがレントラーは身体を丸めてくるりと回るとチラチーノを飛び越える形で避ける。

 

「ちっ、避けられちゃった。」

 

背中がズクリと脈打つ。

イライラを隠すことをしない声に少女も不快さを隠すことなく顔を顰めた。相手か少女を嫌うように、少女も相手のことが至極苦手だった。

 

「カマスミ、、、。」

 

廊下の奥、下っ端たちの後ろから現れたカマスミはその場に似つかわしくない黒のドレスを纏っており、一見淑女のようであるが性格は全くの正反対。

シュオウといいカマスミといい、見た目と中身のギャップで風邪をひきそうだ。

カマスミの登場に下っ端たちは沸き立つが、少女にとっては最悪の人物である。

 

「死んだと思ったのに、そこのメタグロスが助けてくれたのかしら?ほんと余計なことしてくれたわね。」

 

カマスミのこめかみに青筋が浮かぶ。少女はメタグロスをカマスミから隠すように立つとすっと目を細めた。

 

「ごめんなさいね。し、ぶ、と、く、て。」

 

少女の煽りにカマスミは歯ぎしりをする。心底少女の事が嫌いであることが良くわかる。

 

「デンジさん、そっちの下っ端たちをお願いします。メタグロス、デンジさんと戦ってあげて。」

 

「、、、大丈夫か?お前の背中の傷はあいつが、、、」

 

氷技を受けていたとき死ぬとさえ思った。

そんな相手に怖くないのかと聞かれれば怖くないとは言えない。それでも、逃げる訳にはいかない。

 

(逃げたくない。)

 

少女はデンジとメタグロスに微笑んでみせた。

 

「ケリをつけたいんです。大丈夫、勝ちますから。」

 

そう言い切った少女にデンジはふっと笑う。

少女に背中を向けて下っ端たちの方へ歩いていく。

 

「健闘を祈るよ。」

 

手を挙げて声援を送るデンジを見て、メタグロスも少女を一瞥すると黙って下っ端の方へ向かった。

少女は2人の背中を見届けると、こちらを睨むカマスミに向き合う。

 

「あんたはつくづく私を苛立たせてくれるわね。そのお礼に、あなたの短い人生に幕を下ろしてあげる。」

 

「それは遠慮していただきたいですね。レントラー、ワイルドボルト!」

 

先に仕掛けたのは少女だった。日付が変わるまであと少し。あまり時間を掛けていられない。

レントラーの容赦のないワイルドボルトがチラチーノを襲った。

 

「チラチーノ、地面にタネマシンガン!」

 

チラチーノが地面にタネマシンガンを放つ。

傍から見れば何をしているのか分からないが、少女はカマスミの指示の意図がわかっていた。先程、レントラーの氷の牙のタイミングにチラチーノがトリプルアクセルを合わせていた。それはチラチーノが素早いポケモンだったからでは無い。少女のレントラーとカマスミのチラチーノのでは、素早さ勝負は少女のレントラーに軍杯が上がる。その証拠に不意打ちのチラチーノに対してレントラーは即座に対応し、攻撃を躱せていた。

では、何故チラチーノがトリプルアクセルをレントラーに放てたのか。それはカマスミの指示のタイミングが的確であった為である。今のタネマシンガンもレントラーを迎え撃つのためのものではなく、タネマシンガンをレントラーにわざと避けさせることでレントラーを誘導しているのだ。伊達に幹部ではない、という訳だ。しかし、少女もスランプを脱却して日は浅いがバトルの腕前は目を見張るものがある。そう簡単に罠に嵌るつもりはない。

飛行船でのバトルはレックウザのこともあり、焦りが出てしまったが今は落ち着いていた。それはダイゴやミクリへの信頼であったり、自分たちに協力してくれているデンジやシロナ、カルネ、シトロン、プラターヌ、各地方で天災から人々やポケモンたちを守ってくれているジムリーダーや四天王、公共団体の人達の存在を知っているからだ。彼らのためにも、勝利を掴みたい。

 

「レントラー、もっと早く走って!」

 

「?!」

 

タネマシンガンで誘導することでレントラーの動きを操ろうとしていたのだが、剰え少女はレントラーにもっと早く走れという。早く走れば地面に当たるはずのタネマシンガンに態々レントラーが当たりにいく形になり、それではただの自殺行為。

ところが、タネマシンガンはレントラーに当たる直前に不自然に空中で爆発し始めた。

 

「どうしてタネマシンガンが、、、。」

 

「やってる事はいたってシンプルだよ。レントラーにあたる前にワイルドボルトの電撃でタネマシンガンを先に爆殺させてるの。」

 

そう少女が言った通り、レントラーの纏っている強いワイルドボルトの電撃がタネマシンガンをレントラーに当たる前に爆発させることでレントラーにダメージは届かず、またレントラーの動きは制限されることなく自由に走ることができる。

予想外のレントラーの動きにカマスミは動揺する。

 

「チラチーノ、メロメロ!」

 

「レントラー、気にせずワイルドボルト!」

 

レントラーの動きを封じるためにチラチーノのがメロメロを放つ。チラチーノに直進していくレントラーに当てるのは比較的簡単かと思われた。が、レントラーがチラチーノに接近した瞬間、メロメロに当たる前にレントラーがまた身体を丸めてチラチーノの飛び越える。

 

「チラチーノ、もう一度メロ、、、?!」

 

レントラーに後ろを取られたことでレントラーの動きを封じることを優先させたカマスミはメロメロを指示しようとするが、チラチーノの異変に気づく。パチパチと電気を帯びているチラチーノ。

 

「麻痺、、、?!まさか、電磁波、、、!」

 

「そう、ワイルドボルトで電気を帯びてたからわからなかったでしょう?、、、レントラー、ワイルドボルト!」

 

麻痺により避けることもできなかったチラチーノにワイルドボルトを決めることは簡単で、加えて急所にも当たったのかチラチーノのは一撃で倒れてしまう。

 

「ちっ、、、まぁ、いいわ。」

 

不機嫌そうにチラチーノをモンスターボールに戻すカマスミ。少女もレントラーを戻し、新たなモンスターボールを手に取る。レントラーを続投しても良かったが、体力を温存するべきだと少女は判断した。

 

「ありがとうレントラー。次はお願いね、ラプラス。」

 

ポンッと音を立てて出てきたラプラス。歌声のような美しい鳴き声をあげながらも、その表情はとても好戦的である。

カマスミが次に出して来たのはバイバニラだった。ボーマンダで戦った時は、あと一歩のところで倒しきれなかった雪辱を晴らすために今度は負けられない。

バイバニラの雪降らしによって霰が降り始める。

 

「ラプラス」

 

「バイバニラ」

 

「「フリーズドライ!」」

 

ラプラスとバイバニラがお互い冷たい冷気を放つ。技の性能は五分五分だろうか。

冷気と冷気がぶつかり、氷の結晶の様なものがキラキラと空気中に生まれる。ダイヤモンドダストのようにも見えるそれはミクリが見れば目を輝かせそうだが、ポケモンとトレーナー同士は殺伐としていてその空間の気温はマイナスまで下がっているだろう。実際その場にいるデンジやスペース団の下っ端たちはくしゃみをしていたり寒さでガタガタと震えている。

 

「バイバニラ、吹雪!」

 

「ラプラス、フリーズドライで自分の回りを凍らせて!」

 

ラプラスはフリーズドライを自分を囲むように放つと氷の壁を出現させる。氷の壁によりバイバニラの吹雪を防ぐことに成功した。

 

「それで吹雪を防げたとしても、鈍足なラプラスにとっては邪魔になるんじゃないかしら?」

 

「さて、それはどうかな。ラプラス、地面にハイドロポンプ。」

 

ラプラスが足元にハイドロポンプを撃つと、ラプラスの巨体が中に浮く。200kgを超えるラプラスの体がハイドロポンプだけで中に浮くとは思わなかったカマスミは完全に意表を突かれた。

 

「ラプラス、そのままハイドロポンプ!」

 

「バイバニラ、オーロラベールで防ぐのよ!」

 

空中から放たれたラプラスのハイドロポンプはバイバニラ目掛けて放たれるがオーロラベールによって防がれてしまう。

 

「バイバニラ、吹雪!」

 

ハイドロポンプを放ったあとすぐ落下を始めたラプラスに対し、カマスミはそれのチャンスを逃すことなく攻めに来た。鈍足で巨体ラプラスはいい的だろう。

 

「ラプラス、吹雪をフリーズドライで相殺!着地はハイドロポンプで勢いを殺すんだ!」

 

襲いかかる吹雪をフリーズドライをぶつけることで相殺すると素早くハイドロポンプを床に放つと落下の勢いを殺し、最小限のダメージで着地した。

 

(オーロラベール、あれがある限りこっちのダメージは通りにくい。なら、狙うべきは、、、)

 

「ラプラス、上にハイドロポンプ!」

 

ラプラスが頭上へハイドロポンプを放つ。

 

「は?どこに向けて撃ってるのよ。というか、何がしたいのかしら。隙だらけだし、、、そんなに倒して欲しいならお望み通りにしてあげる。バイバニラ、吹雪!」

 

上へハイドロポンプを撃ち続けるラプラスにバイバニラの吹雪が容赦なく襲う。バイバニラの吹雪は容易にラプラスに当たると思われた。

しかし、吹雪がラプラスに当たることはなかった。溶けたのだ。それにカマスミが何かに気づく。

 

「、、、なるほど。水で溶かしたのね。」

 

ラプラスが放ったハイドロポンプは雲を突き抜け天井に当たり、天井に当たったハイドロポンプはそのまま跳ね返りることで雨のようになって降って来ていた。

吹雪を溶かしたのはこの雨で、少女は水の温度を利用したのだ。氷や雪は水より冷たく、水は氷や雪より温かい、絶えず流れる水は凍ることはなく逆に氷を溶かす。今もラプラスは絶えず天井にハイドロポンプを放ち続けていることで、降っていた霰も溶け、雪雲も水分量が増えすぎたことで無くなりつつある。

 

「屋外だったら流石に雪雲までは消せなかったけど、幸いここは室内、ハイドロポンプは冷えることはない。、、、さて、オーロラベールもこれで貼れなくなったところで、申し訳ないけどさっさと決めさせてもらう。ハイドロポンプ!!」

 

霰がやんだことでバイバニラを守るはずのオーロラベールが貼れなくなった。もうそろそろ先程のオーロラベールも消える。バイバニラにハイドロポンプが直撃し、吹き飛んだバイバニラは壁に激突するのとそのまま目を回してしまう。同時にオーロラベールも無くなってしまう。

 

「ほっっっっとうにうざったいガキ。順調にポケモンを倒せてよかったわねぇ?でも、次からそんな都合よく行くとは考えない方がいいわよ。」

 

倒れているバイバニラを戻してカマスミは新しいポケモンを繰り出す。現れたの重量ポケモン、カバルドン。先程の雪降らしのようにカバルドンの特性砂起こしによって砂嵐がどこからともなく吹いてくる。小さな砂が体に当たって痛く、視界がとても悪い。

 

「ラプラス、このまま戦える?!」

 

少女の声に大丈夫だと言うように鳴き声を上げるラプラスによし、と頷く。

視界不良でカバルドンが何処にいるのかわかりずらく、室内のせいで外でのバトル以上に視界が悪すぎた。

 

「ラプラス、フリーズドライ!」

 

ラプラスが視界不良の中でカバルドンが居るであろう方向にフリーズドライを放つが、攻撃が当たった音もカバルドンが動く音も全くしない。ラプラスも手応えがないのか首を動かしながらキョロキョロも辺りを見渡す。だが、見えるのは砂嵐のみ。

少女はこの視界が悪い環境で心配なことがあった。勿論、このバトルの事もあるが、それと同じくらいにデンジたちの様子が気がかりであった。少女にはこの空間に既視感があったからである。そう、飛行船でのバトルだ。あの時の煙で視界不良になった先で卑劣な手で倒れたボーマンダの姿があった。先程のカマスミのヒステリック状態を見る限り、何をして来てもおかしくない。狙われるのは自分やラプラスとは限らないのだ。

と、その時ラプラスの鳴き声が轟いた。攻撃を受けたのだろう。

 

「ラプラス!」

 

「カバルドン、雷の牙!」

 

「ッ、避けてラプラス!」

 

いつの間にか接近していたカバルドンがラプラスに攻撃したのだ。接近していたカバルドンに気づけなかったラプラスはそのまま攻撃をもろに受けてしまった。攻撃を受けたラプラスはすぐに反撃に転じることができずにいる。生まれた隙を見逃すことなくラプラスに効果抜群の雷の牙を仕掛けるカバルドンに、少女はラプラスに逃げるように指示を出す。ラプラスは指示通りに横に避けようとするが、突然の痛みに唸りそのまま雷の牙を受けてしまう。

 

「ラプラス?!、、、!!」

 

地面に尖った岩が散りばめられていることに気づく。ステルスロックだった。音もなくいつの間にか巻かれていたステルスロックにラプラスは気づくことなく踏んでしまい、痛みで逃げられなかったのだ。

 

「フリーズドライで足を凍らせて!」

 

少女が技を指示を出すがラプラスはその場から動けなかった。

 

「カバルドン、ストーンエッジ!」

 

雷の牙の効果で怯んでしまったラプラスはカバルドンのストーンエッジに対応できずに技を食らってしまう。効果抜群の技に倒れることはなかったものの蓄積されたダメージにラプラスの息が上がり、ラプラスが痛みに耐えるように項垂れ顔を歪めている。

 

(ラプラスの体力が想像以上に削られてる、、、?今まで受けた技だけであれだけ削らたようには思えないのに。)

 

ラプラスは少女の手持ちの中でも耐久力のあるポケモンだ。こんな風に体力を早々に削られるようなことは無いはず。だが、ラプラスは今も痛みに苦しんでいる。

その様子は毒でもなく、火傷でもなく、また麻痺でもない苦しみ方だった。もっと別の異常状態。それは毒麻痺火傷の状態異常と呼ばれるものではなく、状態変化と呼ばれ類のもの。

 

「呪い、、、。

何かするだろうとは思っていたけど、、、貴女って本当に卑劣な人だね。そうすることでしか勝てないの?今も昔も。」

 

少女は至って冷静に話すが、声には怒りが含まれている。

 

「はっ!!罠に落ちる方が悪いのよ!!」

 

カマスミのニヤついた顔はどんどんと歪んだ笑みに変わり、呪いの苦しみに耐えるラプラスに止めだと言わんばかりの雷の牙で攻撃して来た。

 

「ラプラス、苦しいだろうけど頑張って!」

 

ラプラスが少女の思いに応えるように首を擡げ、鳴き声を上げる。しかし、ラプラスは何者かの呪いと蓄積ダメージでもうほとんど気力だけしか残っていない。

 

(あと一撃耐えれるかどうかくらいか、、、でもあのカバルドンは絶対ここで倒す。)

 

「ラプラス、カバルドンを引きつけろ!」

 

ラプラスが向かってくるカバルドンを受け止める姿勢を取る。カバルドンの雷の牙がもう避けきれない所まで迫っていた。

 

「これでそのラプラスは終わりね!」

 

「いいえ!ラプラスは負けない!」

 

価値を確信しているカマスミを少女は否定する。しかし、もうカバルドンはラプラスの首に噛み付こうとしている寸前で逃げることはできない。

 

「だってラプラスが諦めていないんだから!!ラプラス、

 

 

 

 

 

 

 

絶対零度!!!」

 

ラプラスは首を下に向け、己の首に噛み付こうとしているカバルドンに極限の冷気を浴びせる。当たり一体に冷気が立ち込め、ハイドロポンプによって出来ていた水溜まりと撒かれていたステルスロックが固まる。冷気の霧が晴れたそこには氷像のようにピクリともしないカバルドンの姿があった。ラプラスも倒れてはいないものの限界だ。もうすぐ呪いの効果で目を回すだろう。

 

「ありがとう、ラプラス。よく頑張ったね。」

 

ラプラスをモンスターボールに戻した少女は労わるように撫でる。

そこに下っ端たちを倒し終わったデンジとメタグロスがやって来た。

 

「大丈夫か。」

 

心配をしてくれるデンジに、えぇ、と返す少女。デンジは少し安心したような顔をした後、カマスミを見る。

 

「下っ端たちと戦いながらそちらの様子を見ていたが、、、なかなか卑怯な手を使うんだな。」

 

デンジはカマスミに非難を浴びせるが、彼女はそれを鼻で笑う。

 

「私は悪の組織の幹部、正々堂々のバトルをすると思ってるの?あはは、おめでたい頭ですこと、、、。いいえ、そんなことはもういいわ。私の望みはそこの小娘を八つ裂きにすること、、、貴方もそのメタグロスもとっても邪魔だわ、、、。」

 

カマスミは少女に対する憎悪を隠すこともせず、少女を呪う勢いで睨みつけている。何故そこまで少女を忌み嫌うのかデンジは不思議でたまらなかったが、とにかく危険人物であることは認識したようで他の幹部も同じようなものかと考えると身震いしそうになっていた。

少女がポーチから新たなモンスターボールを出すと空中に投げる。鬣を揺らしながら出てきたブースターは、カマスミに牙をむき出して唸り声をあげている。カバルドンによって撒かれていたステルスロックはラプラスの絶対零度によって辺り一面が凍った為足に食い込むことは無かった。

 

「ブースター、上へ鬼火。」

 

ブースターの渡りに幾つもの火の玉が浮かぶ。ブースターがひと鳴きすると火の玉は上へ飛び、空中で1つの火の玉に合わさるとパッと砕けたように弾けるとキラキラと赤い光の粉が辺りに降り注いだ。それはまるでコンテスト技のようで、こんな殺伐とした時でなければ見とれていただろう。光の粉は少女やカマスミに影を作る。その影が一瞬揺らめく。その一瞬を少女は見逃すことは無かった。

 

「そこだブースター、フレアドライブ!」

 

「!影打ち!」

 

ブースターが炎を纏って残ったステルスロックを上手く避けながら影へ突進していく。するとカマスミの影が伸び何かとぶつかる。大きな爆発と共にブースターが後ろへ吹き飛ぶ。上手く身体をしならせて着地したブースターは身体を揺らながら頭を振る。大丈夫かと少女が聞くと、大丈夫だと言うようにブースターが鳴いた。

カマスミの影から何かが現れる。ゴーストポケモンのジュペッタだ。こっちを見ながらチャックのような口を三日月にしてキシキシと笑っている。

 

「ジュペッタだったんだね。ラプラスを呪いをかけたのは。」

 

カマスミは何も答えないが少女の推測は当たっている。砂嵐の中でいつの間にかモンスターボールから出されていたジュペッタが誰に気づかれることなくラプラスを呪い状態にしていたのだ。近づいたのも離れたのもわからないことを考えるとカバルドンとラプラスが戦っている時にジュペッタの体力も回復されているだろう。

 

「ブースター、鬼火!」

 

ブースターの周りに再び火の玉が浮かぶ。ユラユラと揺れる火の玉がジュペッタの方へ飛んで行くと同時にブースターも駆け出す。

 

「ジュペッタ、避けなさい!」

 

鬼火が当たる前に、ジュペッタに影に逃げられてしまう。

 

「ジュペッタ、ゴーストダイブ!」

 

影に入った時にブースターの背後に回ったジュペッタが出現する。

 

「ブースター、炎の牙で向かい撃て!」

 

ジュペッタの爪がブースターを捉えた時、ブースターがすぐ後ろを振り返り炎の牙でゴーストダイブを相殺する。爆発にブースターとジュペッタが後ろへ飛ばされる。威力は互角のようだ。

 

「どこまであんたは小賢しいのよ!!どこまでもアイツに似て!!どこまでも私の邪魔をする!!、、、いいわ!!見せてあげるわよ、私たちの力!!」

 

ヒステリックに叫ぶカマスミの髪が揺れる。揺れた髪からメガピヤスを付けた耳が覗いた。少女が目を開く。

 

「キーストーン、、、!」

 

「そうよ。これで終わらせてあげる、、、。お前の真の姿を見せてあげなさい、ジュペッタ!!

 

全てを呪え、メガシンカ!!」

 

カマスミのキーストーンが光り、それに共鳴するかのようにジュペッタがいつの間にか手に持っていたジュペッタナイトが強い光を放つ。段々ジュペッタの姿が変化していく。ジュペッタの体に口と同じようなチャックが現れるとそこから手足が出てくる。

 

「ジュペッタ、ゴーストダイブ!」

 

ジュペッタが一瞬にして消える。ブースターがジュペッタの出現を警戒するが、出て来る気配がない。少女もどこに行ったのか辺りを見渡す。ブースターがジュペッタを探そうと少し身体を動かしたその時、ブースターの影が少し揺らめいたのが見えた気がした。

 

「ブースター、下だ!ジャンプしながら守る!!」

 

ブースターがジャンプしたタイミングでジュペッタが影から現れる。ジュペッタの手がブースターに触れる寸前で守るが展開され、壁によってブースターはゴーストダイブのダメージは無かったが技がぶつかった爆発に吹き飛ばされた。受身を取れなかったブースターは地面に激闘してしまう。

爆発のダメージを受けたブースターは少し足を挫いたのか痛そうにしながらも立ち上がるが、対してジュペッタは全くダメージが無いのかケロッとしている。

 

「ブースター、交代しよう!」

 

少女がブースターのモンスターボールを取り出すが、ブースターがそれを拒む。自分がやると言っているようだった。

 

「どうして?ここで無理することなんて無いんだよ?!」

 

ブースターには下がれない理由があった。少女のパートナーであるボーマンダがいない今、その次に少女と付き合いが長い自分が頑張らねばという気概があった。それが数年間ともにしたボーマンダと自分の約束でもあったからだ。

ブースターの事情を知らない少女は困惑する。ブースターがやると言うならばトレーナーの自分はそれに応えたい。さりとて、ブースターに無理をさせたくはない。

どうするか考えながら、ジュペッタを捉えようと少女は前を向く。

 

「ブースター、、、ッ!ごめん、ブースター、、、戻って!」

 

少女はブースターの後ろから怪しい光が飛んで来ているのが見え焦ったのだ。あれが当たればブースターは混乱してしまう。今混乱させるのはだめだと判断した少女はブースターを無理矢理モンスターボールに戻し、レントラーのモンスターボールを投げる。

ほぼ目と鼻の先にあった怪しい光をレントラーは高速移動で身体を捻って避ける。

 

(ブースター、、、怒ってるだろうなぁ、、、。)

 

少女は怒ったブースターの姿を想像し、眉を下げる。ボーマンダとブースターは付き合いが長い分、1度怒ると長いのだ。そんな少女にレントラーが鳴いて呼んぶと、少女はハッとするしあの状況で上手く避けてくれたレントラーにお礼を言う。

その時、カマスミが突然笑い出した。少女はカマスミの理解が及ばない笑いに眉間に皺を寄せる。

 

「何がおかしい。」

 

「あはははは!良かったわね、レントラーが怪しい光を避けてくれて!!でも、後ろの子は避けられなかったみたいよ?」

 

少女がバッと振り向くとメタグロスの様子が可笑しいことに気づいた。メタグロスが動きがふらふらしている。怪しい光に当たって混乱したのだ。

 

「カマスミ、お前最初から!!!」

 

「あはははははははは!!!ほら、どうするの?メタグロス、混乱しちゃったわよ??」

 

高笑いをするカマスミに少女は腸が煮えくり返る思いを感じたが、今はメタグロスの混乱をどうにかしなければと混乱を回復できる物をカバンの中から探す。ひっくり返す勢いで探していくと、最後の1個のなっていたなんでも治しがあった。他の回復系アイテムはミミッキュに託しているので正真正銘の最後の1個だった。

混乱してしまったメタグロスは、わけも分からずラスターカノンを辺りに放ったり、ドスンドスンとその場で地団駄を踏むように足を振り下ろしたりしており、誰も近づけないほどに混乱している。普通ならばこれ程酷い混乱状態になることはないが、本来のトレーナーが居ないことへの心理的ストレスが混乱状態を酷くさせていた。

レントラーもラスターカノンを避けることはできているが当たればかなりのダメージになるであろうそれに自由に動けなくなっている。ジュペッタは陰に隠れてしまっていてそもそも姿が見えない。見えないジュペッタに少女が焦る。メタグロスを狙うなら、今のタイミングで仕掛けてくるはずだからだ。この場でいちばん強いポケモンはメタグロスだろう。ならば、先に倒してしまいたいと思うのはメタグロスだ。

 

「メタグロス!!」

 

カマスミの狙いがメタグロスであることから、混乱をどうにか解こうと少女がなんでも治し片手に近づこうとする。混乱したままではジュペッタが何をしてきても応戦できないし、何よりメタグロス自信が自傷してしまうことが心配だ。

 

「おい待て!!」

 

デンジが少女の腕を掴んで止める。少女はそれを振り払おうと腕に力を入れるがデンジの手は腕から離れない。

 

「離してください!!」

 

「できるわけないだろう!!見て分からないのか?!メタグロスのようなポケモンが混乱して暴れている時に近づくなんてただの自殺行為だ!!トレーナーならば誰もがわかることだろう!!」

 

体重550kgと、ポケモンの中でもかなりの重量級であるメタグロスに踏んづけられれでもすれば成人男性であろうと一溜りもなく、簡単に圧死するだろう。それをまだ子供である少女であれば腕に当たった時点で骨折どころの話ではない。それを一端のトレーナーである少女が理解していないはずがない。それにも関わらず、向こう見ずかのようにメタグロスに近づこうとするのだ。デンジが止めるのは当然の事だった。

デンジの言葉にぐっと噛み締めた少女の唇は赤く充血していて今にも血が流れ出しそうだった。しかしデンジも譲らない。

 

「それでも私は行きます!!離してくれないなら全力で抵抗しますよ!!」

 

 少女が更に腕に力を込める。

 

「やれるものならやってみろ!!」

 

 デンジの怒鳴り声に少女が押し黙る。

 

「俺は君をホウエンチャンピオンたちに返すと約束したんだ。ここで君を危険に晒すわけにはいかない。

君の本来の目的は何だ、選択を見誤るな!!」

 

「でも、、、!!」

 

デンジは少女を守る役目があった。少女が望んだなのでは無い。最後まで少女を支えると決めた時、ダイゴたちと会えるその時まで守ると。子どもだからではなくスペース団を倒すため、少女を失うわけにはいかない。別れる際に、シロナともそう約束している。

デンジの言う通り、少女の一番の目的はレックウザを助けることだ。だがしかし、少女も引く気は無い。だって、それと同じくらいに少女はメタグロスが大切だから。

 

「、、、君が引かないのは、ホウエンチャンピオンに合わせる顔が無くなるからか。」

 

少女は首を振った。

 

「違う、私がメタグロスを助けたいんです。メタグロスはここまでずっと私を信じて、助けてくれたんです。私にひとりじゃないって言ってくれた、、、だから、私もメタグロスをひとりにしたくないんです!」

 

そう言った少女の顔に迷いの無いことに呆気に取られたデンジの手が緩んだ。隙をついた少女は手を振りほどくとメタグロスの元へ走っていく。

だが、メタグロスは混乱状態によってあちらこちらに技を放っていて容易に近付くことはできない。いつ自分を攻撃しても可笑しくない様子に少女は焦りそうになる。それにデンジは大きなため息を着いながら頭をかいた。

 

「メタグロスまでの道は俺たちで作ってやる。焦らなくていい。お前が怪我でもしたら一番傷つくのはメタグロスだ。」

 

肩を叩いたデンジは少女を真っ直ぐに見つめる。その目がダイゴやミクリと似たそれで、少女は強く頷いた。

 

「レントラー!貴方は、ジュペッタの足止めをお願い!」

 

「はっ!レントラーだけに何ができるのよ!」

 

カマスミが少女を嘲笑う。メガシンカしたポケモンは通常のポケモンよりも爆発的な力を有している。それはメガボーマンダを使う少女には痛いほど理解している。だが、それ以上に自身のポケモンに対する信頼は大きいのだ。

 

「レントラーはお前なんかに負けない!」

 

少女がそう言い切ると、レントラーが信頼に応えるように大きく鳴く。先程まではメタグロスが連射するラスターカノンを避けるのが精一杯だったが、今では危なげなく避けられている。倒すことはできなくとも足止め役は充分にしてくれるだろう。

 

「メタグロスを傷つけずに道を作るのには、、、お前らが必要だ、出てこい!」

 

デンジがモンスターボールを投げる。ボールから出てきたのはサンダースとスピンロトムだ。

 

「サンダースとロトムでラスターカノンを相殺する。お前は気にせずメタグロスへ走れ。」

 

「はい!」

 

少女がメタグロスへ走る。メタグロスはこちらに走ってくる人の影に敵だと判断したのかラスターカノンを放ってくる。それをサンダースとロトムがそれぞれ10万ボルトやエアスラッシュで相殺してくれ、少女は一直線にメタグロスへの最短距離で走る。一刻も早くメタグロスを苦しみから解放するために。

 

「そのままメタグロスの懐へ飛び込め!」

 

少女はデンジの声に従ってメタグロスの体に接近する。メタグロスは少女に向けて腕を振り下ろす。コメットパンチだ。

 

「サンダース、10万ボルトだ!」

 

サンダースが少女とメタグロスの間に入り込みバチバチと電気の火花の散らした。サンダースは10万ボルトをメタグロスに向けることはなく、10万ボルトの電気は一瞬メタグロスを怯ませただけのものだったが、デンジの狙いは正しくそれだった。

光に怯んだメタグロスが腕を振り上げたまま静止する。その隙を狙って少女がメタグロスへなんでも治しを向けるが、その瞬間メタグロスのサイコキネシスでなんでも治しが弾かれてしまう。怯みからの切り替えの速さにチャンピオンのパートナーポケモンの片鱗が垣間見える。

サイコキネシスによって弾かれてしまったなんでも治しはかなり遠いところに飛んでいってしまい、手が届かない。少女は咄嗟にメタグロスの右足しがみつく。少女は何故しがみついたのか自分自身でもわからなかったが、離れてはいけない、今離れればメタグロスを助けられないと感じたのだ。しかし、メタグロスはしがみつかれたことによって更に混乱を悪化させてしまいラスターカノンを四方八方に放ちながらコメットパンチを出している。踏み鳴らされた地面が抉れる。。

 

「早く離れないと貴女、メタグロスに潰されちゃうわよ?」

 

暴れるメタグロスに必死にしがみつく少女を見てカマスミはケラケラと笑う。カマスミから見れば少女の行動はさぞ滑稽なのだろう。デンジはカマスミをギッと睨む。デンジが強く睨んでもカマスミは何処吹く風かと言ったように鼻を鳴らす。

 

「そんなことにはならない。」

 

少女がカマスミに一瞥もくれず言い放った。

 

「メタグロスは私を傷つけない。」

 

「はぁ?貴女馬鹿なの?」

 

カマスミは絶えず暴れているメタグロスを見て言う。今にもコメットパンチが少女に当たりそうである。けれど、少女はメタグロスが自分を攻撃しないことに確信を持っていた。

 

「見ればわかる。離して欲しいなら、傷つける気があるなら私がしがみついてる腕を動かせばいいのに、メタグロスは逆の足を振り下ろし続けてる。メタグロスは賢くて優しいから、自分が混乱してても人を傷つけることはしない。私はメタグロスを信じてる!」

 

そう強く言い切った少女にカマスミが舌打ちをする。

 

「そう、、、ほんっとうにウザったいガキね。ジュペッタ!メタグロスに影打ち!!」

 

「レントラー、ワイルドボルトで止めて!!」

 

ジュペッタがメタグロスの影を伸ばし攻撃しようとするのをレントラーが素早くワイルドボルトでジュペッタごと吹き飛ばしてくれた。同時に爆発が起こったことにより、メタグロスが驚いてしまい前両足をバタバタと動かし始めてる。少女が捕まっている足も動かしていることで少女がメタグロスの足と地面に挟まれる危険が出てきてしまった。

 

「もうダメだ危険すぎる!!メタグロスから離れるんだ!!」

 

「嫌です離れません!!」

 

「お前、、、!」

 

デンジの言葉を首を振って拒否した少女はメタグロスを止める方法を必死に考える。しかし、混乱状態を治すアイテムは少女の手元にはない。メタグロスの混乱状態が自然に治るのを待つしかないのだろうか。

少女はふと自身の胸元に視線を向ける。そこには輝くメタグロスナイト。

 

「これだ、、、。

デンジさん!!」

 

少女がメタグロスから勢いよく離れてデンジを呼ぶ。

 

「どうした?!」

 

すぐさまデンジが少女に駆け寄る。

 

「メタグロスの動きを一瞬でいいんで封じたいんです。私のレントラーとデンジさんのロトムの電磁波でメタグロスを止めれますか?できれば、メタグロスを麻痺させずに。」

 

「麻痺させずに電磁波とは、とんでもないことを要求するな、、、だが今はそれに賭けるしか無いか。良いだろう、君の思う通りにしてみせよう!」

 

少女とデンジがレントラーとロトムを呼び付ける。ジュペッタはエレキブルが抑えていてくれるらしい。メタグロスを上手く抑えるためにレントラーはデンジの指示によって動くことになった。

 

「エレキブル、そっちは頼んだぞ!

走り出すタイミングはそっちに任せる。準備ができたら走れ。」

 

少女はデンジの言葉に頷くと、精神統一をするかのように一度目を伏せる。そしてゆっくりと目を開くと、メタグロスを真っ直ぐに見据え、1歩、また1歩と足を進める。段々とメタグロスへ向かう足は加速し、一直線にメタグロスへ走る。つま先と足の指で地を踏みしめて、蹴るように少女は走る。メタグロスが少女にラスターカノンを放ち、デンジの傍にいたサンダースがシャドーボールで相殺する。爆発の煙が立ち込め、少女の姿を姿を消す。メタグロスが少女を警戒するように1歩後ろへ退こうとした時、煙の中からレントラーとロトムが飛び出した。

 

「今だ、メタグロスに技をかけずに電磁波!」

 

メタグロスの左右からそれぞれ壁のように電磁波を出す。普段は相手を麻痺させるために使われる電磁波を、本来の使い方を無視して動きを封じるために使うとはジムリーダーであるデンジに鍛えられているロトムと、バトルセンスが卓越している少女のレントラーだからできた芸当だった。

電磁波によってリニアモーターカーの容量で地面から浮かされたメタグロスの動きが一瞬封じられる。メタグロスの動きが止まった瞬間、煙の中から少女がレントラーとロトムと同じように飛び出し、メタグロスへ手を伸ばした。

煙が晴れ、デンジが少女の安否を確認するために目を凝らす。煙が消えた先には、少女とメタグロスの傍に静かに様子を伺うレントラーとロトム、そして先程までの暴走状態が嘘かのようにピタリと動かなくなったメタグロス、そのメタグロスにピッタリと寄り添うように脱力している少女。メタグロスのように動かない少女の左腕だけがしっかりと挙げられ、腕の先の手には少女の首に付けられているはずのメガチョーカーが握られておりメタグロスの右腕に付けられたメガストーンにキーストーンが触れ合うように翳されている。少女のキーストーンとメタグロスのメガストーンがキラキラと輝き、そこから少女とメタグロスの思いが交わされているように見えていた。

 

「メタグロス、、、」

 

ゆっくりと脱力していた少女の首が擡げられ、少女の瞳とメタグロスの瞳が交差する。少女をじっと見つめるメタグロスの瞳は光が灯され混乱している様子は全く見られず、少女はほっと息をついた。

 

「よかった、、、正気に戻ったんだね。怪我はない?」

 

少女とメタグロスの石が離され、少女はメガチョーカーを大切に胸に抱え片方の腕でメタグロスの頬に触れた。優しく、メタグロスを労わるように撫でる手にメタグロスは目を細める。その手が何処か自分のパートナーであるトレーナーと同じ手つきで、メタグロスはそれに身を委ねた。

 

「メタグロス、、、」

 

メタグロスが目を開けて少女を見る。少女はその戦場に似合わない優しい目をしている。

 

「メタグロス、、、ありがとう、ずっと私を助けてくれて、私をここまで支えてくれて。今度は私が君を守るよ。」

 

メタグロスはじっと少女の目を見つめピタリと動かない。少女は微笑を零すと、立ち上がり後ろを向いて数歩歩き、メタグロスを守るように立つ。少女が見る先には此方を不愉快そうに見るカマスミ。その影から先程までデンジのエレキブルと戦っていたジュペッタが姿を現す。少女がデンジの方向へ目線を移すと、デンジの傍にはロトムとサンダース、そしてダメージを負い、ゼェゼェと息を荒くしているエレキブルがいた。エレキブルが倒れていないことに、流石シンオウ地方最強のジムリーダーの切り札だと敬服する。

 

「っ、、、」

少女の体がパチパチと電気を帯びる。電磁波の中に飛び込んたことで体が麻痺したのだ。

痛みに耐える少女にレントラーが心配そうに鳴く。同じように異変に気づいたらしいブースターがモンスターボールから現れ鳴き声を上げる。

 

「大丈夫だよレントラー、この程度で立ち止まる訳には行かないからね。ブースターも出てきちゃダメじゃない。はは、心配して出てきてくれたんだね、もう怒ってないの?、、、っ!!」

 

先程よりも一層強い痺れが身体を駆け巡り、痛みで膝をついてしまう。レントラーは身体を横から支え、ブースターは耳をペタンと提げながら少女の膝に足を着いて見上げる。

 

「おい、大丈夫か?!」

 

異変に気づいたデンジが駆け寄ってくる。少女は大丈夫ですと返すと痺れる体を抱えて立ち上がる。

 

「さっきので麻痺したのか、、、無理するな。」

 

デンジが少女の腕を取り支えるが、少女がそれを拒否しデンジの手を離した。そのやり取りをメタグロスが少女の後ろでじっと見ている。

すると突然ブースターが唸り声を上げ、少女に向かって吠えた。

 

「ブースター、、、?」

 

突然怒り出したブースターに少女は理由がわからず、ただ困惑の色を浮かべる。触れようと手を伸ばすが、パシリとブースターの手によって叩かれてしまう。ブースターは癇癪を起こした子供が泣きじゃくりパニックになるように首をぶんぶんと振りながら、なく。

 

「ブースター、どうして、、、。」

 

普段のブースターは少女のポケモンの中でも冷静沈着であり、ブースターに進化してから感情的になる姿を少女は1度も見た事がなかった。だからこそ、自分に怒りなくブースターに戸惑いを隠せなかった。

 

「わからないのか?」

 

デンジがそんな少女に問う。

どんなに考えても少女にはブースターがどうして怒っているのかわからない。

 

「ブースターはボーマンダの次に君と付き合いが1番長いんだろう?ボーマンダがいない今、君を1番に守りたいはずの自分が戦えず、あまつさえ君は他のもののために無理をしようとする。君の意思で。」

 

「、、、。」

 

「君の意思は揺らがないんだろう。でも、それを周りがどう思うか、君は考えたことがあるか?」

 

考えたことなんてない。少女は10歳から旅に出て5年間、ずっと1人でポケモン達と旅をしてきた。出会った人たちは皆優しかったが、特別懇意にする人はいなかった。家族も少女のすることを賛成してきてくれた。応援こそすれ、心配で何かを反対されることなんてなかった。だから、デンジの言っていることが上手く理解できない。

でも、ブースターが自分を酷く心配してくれていることはわかる。

少女はブースターに手を伸びし、ブースターの足の脇を掴みゆっくりと持ち上げ、ブースターからの抵抗はなくそのまま腕に抱き込む。

 

「ありがとう、ブースター。心配してくれて、、、。」

 

ブースターは少女の胸に顔を埋め、か細く鳴く。ブースターがあれほどに怒る気持ちを全て理解してあげることはできなかったが、少女はその気持ちを全て受け取りたかった。

ブースターがペタンと耳を下げたまま少女を見上げる。少女は場違いにもブースターの可愛らしさにくすりと笑うと、彼は不満を顔いっぱいに出しながらため息をついて少女の顔にてしてしと肉球を押し当てた。しっかりしろよと言うように。少女がそれに頷いて、ブースターを下ろそうとする。

 

「っ?!ブースター!!!」

 

一瞬前を向いた時、少女の正面からジュペッタがブースター目掛けて飛んできているのが目に入った。咄嗟に少女がブースターを抱き込み、身体を捻ってジュペッタに背中を向けた。

デンジは少女とブースターを庇うように腕を出し、レントラーやエレキブル達がトレーナー立ちを守るために前に出た。ジュペッタの大きな爪がレントラー達を捉えた。大きな爆発が起きる。

 

「レントラー!!、、、?!」

 

少女がレントラー達の無事を確認するために顔を上げる。爆発によって出来た煙が晴れると、そこにはレントラー達の目の前でジュペッタの技を防ぐメタグロスの姿があった。

メタグロスはジュペッタを守るで押し返すと、カマスミたちへ威嚇するように足を踏み鳴らす。

 

「メタグロス、何を、、、っ?」

 

少女がメタグロスを凝視していると手の中が何故かあたたかい。ブースターが腕から離れ、少女はゆっくり手を開けるとそこには眩い光を放つキーストーン。そして同時に少女のキーストーンだけでなくメタグロスのメガストーンも強い光を放っていた。

 

「どうしてキーストーンとメガストーンが、、、。」

 

メタグロスの目とかち合うと更に光が強くなる。

 

「、、、。」

 

カマスミは整った顔を歪ませ、少女とメタグロスを忌まわしげに睨む。

 

「メタグロスは、君と、、、」

 

デンジが途中で口を噤む。少女の顔が困惑に染まっていたからだ。

少女はどうするべきか迷っていた。メタグロスが望んでいても自分はそれに応えるべきなのか、応えていいのか。どうしたらいいのかわからなくて、困惑を隠すようにキーストーンを握りこんでしまう。

 

チョン

 

キーストーンを握りこんだ手に何かが触れる。ブースターとレントラーの手だった。レントラーとブースターの手が少女の手に重ねられ、ブースター達は少女に小さく鳴くとメタグロスの方に視線を向け、また少女に戻す。少女は口を結んでから2匹を抱きしめると、手を開けキーストーンを見る。そうして、決意を固めたかのようにぐっと再度握りしめ立ち上がり、メタグロスの横に立つ。メタグロスが最後にもう一度一瞥し大きく咆哮すると、光は1人と1体を包んだ。

 




ラプラス(シェルアーマー)♂
【ハイドロポンプ、フリーズドライ、眠る、絶対零度】
手持ちに入ったのは比較的最近。ガラルのワイルドエリアで篭っていた時に出会った。主人公のことは大好きだけど全く表に出さない。泳ぐのが好きだし、戦うのも好き。キョダイマックス個体。稀な特性を持っていたため、不思議な個体として何度もトレーナーに挑まれていたが全て絶対零度で凍らせていた。何も知らなかった主人公がたまたまカレーをあげたことで胃袋を掴み手持ちになった。
バトルスタイル:絶対零度で全部凍てつかせるのが好き、テンション上がる。キョダイセンリツや眠るで耐久するのも好き。

レントラー(いかく)♀
【ワイルドボルト、電磁波、高速移動、氷の牙】
シンオウ地方を旅した時に初めてバトルを経てのGET。ので手持ちに入ったのは3番目。普段はナナカマド研究所にいる手持ちに入っていないポケモンたちの面倒を見ている。(サトシのフシギダネ位置)プロローグ後に手持ちに再度入ることになった。主人公のポケモンの中では珍しいバトル好きというわけじゃない子。しかし好きじゃないだけで嫌じゃないので普通にする。実は一番バトルセンスが高く歴戦のボーマンダでもレントラーには苦戦を強いられる。誰も頭が上がらない存在。
バトルスタイル:電磁波で麻痺させてから容赦なくワイルドボルトで突っ込む。高速移動は他のポケモンの高速移動より軍を抜けて早いし、捕らえることができないしそもそも技当たらない。ようやく技が当たって吹っ飛んでもすぐ体制を建て直して華麗に着地する。着地した時、上手く地面に衝撃を受け流してダメージの軽減をしてくる。唯一の不利タイプである地面ポケモンが来ても氷の牙で殺りに来る。


カマスミ
手持ちポケモン

チラチーノ(スキルリンク)♂
電磁波、トリプルアクセル、タネマシンガン、メロメロ
バイバニラ(雪降らし)♀
ふぶき、フリーズドライ、挑発、オーロラベール
カバルドン(砂起こし)♂
ストーンエッジ、穴を掘る、ステルスロック、雷の牙
ジュベッタ(呪われボディ)→(悪戯心)♀
のろい、かげうち、ゴーストダイブ、怪しい光
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