ご注意ください。
少女とデンジがアジトへ突入した時、ダイゴ、ミクリは現れる下っ端たちを片っ端からちぎっては投げちぎっては投げを繰り返していた。2人を背に乗せているボーマンダに疲れた様子はなく、その頭にはミミッキュがちょこんと乗っていた。可愛い。
「先程の音、何処か爆発でもあったのだろうか。」
「きっとお嬢さんだろう。ふふ、なかなか大胆な子なんだね。ほら、彼らがそわそわしているのがその証拠さ、トレーナーが来たのを不思議と察知したみたいだ。」
ダイゴの言う通りボーマンダとミミッキュはそわそわと少々落ち着きがなく、加えてやる気に満ち満ちている顔つきである。ポケモンたちは知っているのだ、自分たちのトレーナーが案外大胆で、時にアグレッシブな娘であることを。故に少女の行動の意図にも気づいている。
ボーマンダが更にスピードを上げ廊下を滑空する。曲がり角でばったりあった下っ端は突然ボーマンダが飛び出してきた事に悲鳴をあげポケモンを反射的に出すが、すかさずミミッキュがじゃれつくで吹き飛ばす。下っ端は自分より大きさのポケモンがペットボトルほどの小さなポケモンに出てすぐ鳴き声もあげられずに倒れたことに腰が抜ける。
「やぁ、君。レックウザがいる部屋はどこか教えてくれるかい?」
「だ、誰がおしえ「教えてくれるよね?」ヒィッ!!こ、この廊下の突き当たりの部屋から行けます!!」
圧に負けた下っ端にありがとうとミクリが笑うとボーマンダは羽を大きく羽ばたかせ廊下の突き当たりの部屋へ急ぐ。
ピッタリと締切った部屋のドアをミクリのルンパッパがエナジーボールで壊し、ボーマンダが通れるほどの穴を開けてくれる。穴から部屋に入ると、そこはスペース団の集会場となっている所なのか数百人が入れるほどの広さがあった。
トントンとダイゴの肩をミクリが叩く。
「ダイゴ、部屋の奥のあの扉、今までの扉と作りが少し違う。」
ミクリが指さす方向には今までの扉よりも重厚に厳重に作られているのがわかる扉があった。
ここの先に何かあります!と言わんばかりのデザインにダイゴは苦笑する。
「やっぱり何故かあからさまだな、、、ボーマンダ、あの扉に向かってくれ。」
ボーマンダがひと鳴きして扉に向かうと、死角から冷凍ビームが飛んでくる。ボーマンダはいち早くそれに気づくと、羽を羽ばたかせ上昇し躱す。続けて同じ方向からエアスラッシュが襲いかかってきた。
「ルンパッパ、熱湯!」
ルンパッパが素早く放った熱湯はエアスラッシュに押し勝ち、そのまま敵のポケモンに直撃したようでポケモンの倒れる音が聞こえた。
「死角からの攻撃とは、なかなか狡い手を使うんだね。全く美しくない、、、どうせ正体は分かってるんだ、出てきたらどうだ。」
ミクリき言われるままに死角から出てきたのは者たちはこのスペース団のボスであるシュオウ、そして一番の危険人物であるオトギリだった。
「ははっ!いいなぁ!!そのルンパッパ。見た目以上の強さだァ。」
「さすが、ホウエンチャンピオンと元ホウエン最強のジムリーダーと言ったところかな。」
いつも通りニヤニヤと好戦的な笑みを浮かべるオトギリと胡散臭く微笑むシュオウ。シュオウの笑みは、本当に少女を飛行船から落とした者と同一人物とは思えないほど穏やかであった。颯爽、寒気ささえ覚える。
「予想はしていたけどやはり来たようだね。」
「あまり会いたい人達ではないけどね。」
ダイゴたちは苦虫を噛み潰したような顔を向ける。あの2人は少女の命を直接奪おうとした危険人物だ。
必要でなければ人生の中で一度でも会いたくない。
「おや、そんな連れないことを言うのかい?寂しいじゃないか。」
白白しいシュオウに眉がピクつく。
「思ってもいないことを言わないでくれるかな。正直、君の言葉の一つ一つに虫唾が走るんだ。」
ダイゴの辛辣な言葉に酷いなあ、と言いながらもその顔は笑みを崩していない。その笑みだけを見ると紳士であるが、想像できないほどの凄惨な行いをしていることを知っている者からすれば風邪をひきそうなほど寒気がする笑みでだった。
ダイゴはボーマンダの背から飛び降り、シュオウと真正面に向き合う。ボーマンダもダイゴの傍に降り立ち、後ろからシュオウたちを威嚇した。
ボーマンダにとっては何よりも恨めしい人物だ。牙を向けて唸り、今にも襲い掛かりそうなオーラを出している。
「酷い?それはこちらの台詞だね。何度もお嬢さんにあんな仕打ちをしておいて、どの口が言っているんだい。」
「おぉ、怖い。たしかにあの子には悪いと思っているが、仕方ないことなんだ。私の計画にとってあの娘は君たち以上の障害だからね。その理由は君たちもわかっているんだろう?」
ホウエンチャンピオンであるダイゴやバトルの腕前はダイゴとも引けを取らないミクリも邪魔な存在であるが、レックウザと繋がった少女はシュオウの計画にとっては最大の危険因子と言える。ダイゴたち自身も少女を利用した側の人間だ、その考えは理解できる。
「、、、そうだね、察することはできるとも。だからこそ、あの子の覚悟を君たちに邪魔させやしないさ。僕達は、あの子の仲間だからね。」
理解できるからこそ、譲れないものができた。
きっぱりと言い切るダイゴの目に迷いはない。手にはモンスターボールが握られており、隣に立ったミクリも同じだ。
「素晴らしい!!その尊き信頼関係、賞賛に値するよ。いやはや、、、あれだけ利用して今度は仲間とは、チャンピオン殿はなかなかな人格者のようだ。」
わざとらしく手を叩いて言葉を述べるシュオウは心底愉快そうであった。隣にいるオトギリは、相も変わらずにたにたと好戦的な笑みを浮かべ、ポケモンバトルを今か今かと待ちわびている。
「いいだろう。では、こちらも私の望みを叶えるため、ここで君たちを潰させてもらうよ。」
懐から出されたモンスターボール。それを合図に戦いの火蓋は切って落とされた。
「いけ、ボスゴドラ!」
「頼んだよルンパッパ!」
「出番だよ、ジバコイル。」
「行けや、デスバーン!!」
場に出揃ったポケモンたち。一触即発の雰囲気が漂う。さぁ、誰が先に動くのか。
「デスバーン、ゴーストダイブだァ!!」
一番最初に動いたのはやはりこの男だった。デスバーンが陰へ飛び込む。
「ジバコイル、私たちはサポートだね。リフレクターを」
ボスゴドラの地震を警戒したのか、リフレクターで物理防御をあげようとシュオウが動く。ジバコイルが透明な壁を展開しようと技を発動する。
「そうはさせないさ。ルンパッパ、猫騙し!」
ルンパッパが、瞬時にジバコイルへ迫りリフレクターを発動する前のジバコイルの目の前で両手を叩こうと構える。
「デスバーン、ルンパッパを狙えェ!」
「ボスゴドラ、ルンパッパをしっぽで投げろ!そのままアイアンテールで地面を叩け!」
デスバーンが影から現れルンパッパを攻撃しようとしたが、それより早くボスゴドラがしっぽを踏み台にルンパッパを上に投げることでゴーストダイブを避けた。そのままアイアンテールで地面を叩いくと、アイアンテールがぶつかった地面は凹み、地面が割れたことで生まれた破片がデスバーンとジバコイルを襲った。ダメージはほとんど無いものの、ジバコイルのリフレクターを止め、デスバーンにはカウンターとして機能させることができた。
「ほお、流石チャンピオンと言うべきかな。ならば、これはどうだい?ジバコイル、ラスターカノン。」
比較的に至近距離で放たれたラスターカノンはボスゴドラを押し返し、軽度のダメージを与える。
「デスバーン、地震でボスゴドラの体勢を崩せ!」
「私のことも忘れないでいただきたいね。ルンパッパ、デスバーンの足元に冷凍ビーム!」
デスバーンの身体が地面に触れるよりも早くルンパッパの冷凍ビームが地面に氷を作り出し、クッションにすることで地震の威力を弱めることができた。少々のダメージは負ったものの体勢を崩すことはできず、ボスゴドラはプレッシャーを掛けるように咆哮する。
「ボスゴドラ、デスバーンにドラゴンクロー!」
ボスゴドラは大きな爪を振り上げてデスバーンに迫る。
「ジバコイル、デスバーンの前でリフレクターだ。」
リフレクターでボスゴドラの攻撃をいなそうと、ジバコイルが前に割って入る。このジバコイルも相当素早い。
「ルンパッパ、熱湯!」
「ジバコイル、ラスターカノンで相殺。」
横から飛んでくる熱湯にジバコイルはラスターカノンで応戦する。打ち合われた技が衝突し爆発するかに思われたが、熱湯とラスターカノンは爆発せずに弾け飛びキラキラと光の粒になって4匹を包み込む。
そこは美しい水と光の粒が舞うには全くもって場違いな殺伐とした空間だった。
「ルンパッパ、エナジーボール!」
その場にいた誰よりも先に動いたルンパッパのエナジーボールがデスバーンを捉える。鈍足なデスバーンが避けるには難しい素早い猛攻だが、すかさず割って入ったジバコイルが光の壁を貼る。
光の壁によって防がれたエナジーボールが爆発する。
「ドラゴンクローでジバコイルを叩き伏せろ!」
巨体からは想像ができないほど俊敏に動いたボスゴドラが、ジバコイルの頭部にドラゴンクローを叩き込む。
ドラゴンクローの勢いのまま地面に叩きつけられるジバコイル。
「ボスゴドラ、地震!」
「ルンパッパ、ハイドロポンプで空中へ逃げろ!」
ダイゴの緩まることない猛攻がジバコイルを襲う。ルンパッパはハイドロポンプを地面に放ち地震に巻き込まれないように空へ飛び上がる。
鋼・電気タイプのジバコイルに地面技はかなりの大ダメージになり、恐らく目を回すことになるだろう。
しかし、敵も簡単には倒させてはくれなかった。
「ジバコイル、ボルトチェンジ」
地震を起こす寸前だったボスゴドラに至近距離からボルトチェンジが直撃してしまう。ボスゴドラはボルトチェンジの衝突を物とはせずそのまま地震を起こした。
ボルトチェンジにより、ジバコイルはシュオウの下へ戻り新たなモンスターボールが投げ込まれ、中から飛び出したのは、
「頼んだよ、ネンドール」
「!!」
土偶ポケモン、ネンドール。同じくそのポケモンを持つダイゴはやられた、と口角を引き攣らせる。ネンドールの特性、浮遊によってボスゴドラの地震は当たることがなかった。唯一地上に居たデスバーンだけが地震のダメージを受けた。しかし、それでも決定的なダメージにはなっていない。
「デスバーン、ルンパッパにシャドークローォ!!」
攻撃を受けてもなお攻めに攻めるオトギリ。デスバーンのシャドークローが空中にいるルンパッパを捉え、そのまま地面へ叩きつける。
「ネンドール、ルンパッパに大地の力。」
叩きつけられ、体勢が整わないままネンドールが追撃を加えようと地面の底から大地の力を放出させる。
「 ドラゴンクローでネンドールを吹き飛ばせ!」
ボスゴドラがルンパッパを守るために技を発動するネンドールに向かってドラゴンクローを横からたたき込む。ルンパッパはその隙に体勢を整え、いつものように軽快なステップを踏む。
ボスゴドラに吹き飛ばされたネンドールは真横に吹き飛び、デスバーンにぶつかる。持ち前の防御力でネンドールを受け止めるデスバーンだが、身動きが取りづらくなる。
「今だルンパッパ、熱湯!!」
ルンパッパの強力な熱湯が2体を襲う。効果抜群の技を受け、デスバーンもようやく苦しみの声を上げる。ルンパッパの熱湯の当たり所が良かったのか、2体はぜぇぜぇと息を荒くしふらついている。
ポケモンの持つパワーは然る事乍ら、動きを読みお互いのフォローをしつつも確実にポケモンにダメージを与える、バトルにおける経験値、技量そのものがダイゴとミクリは卓越していた。一撃一撃が重く、何よりバトルの流れがとてつもなく早い。一度でも気を抜けば隙をつかれ負けてしまうことがわかる。
だが、シュオウとオトギリのポケモンもよく育てられている。ボスゴドラ、ルンパッパの攻撃が直撃してもなお立ち続けていることが何よりの証拠である。
「飛行船の時は美しくない姿を晒してしまったけれど、今度は美しく勝ってみせるよ。
ルンパッパ、エナジーボール!」
ルンパッパが2体へエナジーボールを放つ。
「 ネンドール、草結び。ルンパッパとボスゴドラを捕まえるんだ。」
「「?!」」
地面から突き破って出てきた蔓がルンパッパとボスゴドラの足に絡みつき、2体を捕まえる。
「デスバーン、黒い眼差し」
草結びから逃れようとしたルンパッパとボスゴドラだが、デスバーンの黒い眼差しによって逃れられなくなる。
シュオウが怪しく笑う。
「ネンドール、自爆」
「ッ!!
ボスゴドラ、ストーンエッジで威力を抑えろ!!」
ストーンエッジをネンドールの周りに展開し、自爆の威力を抑える。が、近くで発動された自爆の威力は凄まじく、ボスゴドラは比較的余裕であるがルンパッパはかなりのダメージを負ってしまった。
自爆により倒れるネンドールをモンスターボールに戻す。再びジバコイルが現れる。
「自爆、、、とはね。デスバーンというポケモンは初めて見たけど、ダメージを受けていないということはゴーストタイプかな?」
ご明察、とでも言うようにシュオウがクスリと笑う。
ゴーストタイプとノーマルタイプはそれぞれ技に効果がない。先程の自爆はノーマルタイプの技であるため、ゴーストタイプのデスバーンには効果がない。
「オトギリはわかっていたが、シュオウも予想以上にバトル慣れしているね。バトルが長引けばスペース団の本来の計画は止められても、外の超古代ポケモンによって世界は未曾有の天変地異に見舞われる。」
「あぁ、分かっているとも。早々に倒す必要がある。ルンパッパの体力も危うい、、、。ダイゴ、次の技で片をつけてくれ。」
ミクリの言葉にダイゴが頷く。
オトギリが興奮を顔に染める。
「デスバーン、シャドークローォ!!」
デスバーンの黒い爪がボスゴドラとルンパッパに襲いかかる。
「ストーンエッジで相殺してくれ!」
ストーンエッジがシャドークローとぶつかり合い、また爆発の煙がポケモンたちを包み込む。
「ジバコイル、リフレクター」
煙の中で警戒するべきはこの場で1番火力があるボスゴドラだ。ボスゴドラの攻撃を防ぐことを最優先にジバコイルにリフレクターの指示を出す。
「今だルンパッパ、猫騙し!!」
煙の中からジバコイル目掛けて突撃するルンパッパ。反応しきれなかったジバコイルにルンパッパの猫騙しが決まり、怯む。
本来猫騙しはその場に出た瞬間にのみ効果を発揮する技なのだが、煙で視界が閉ざされどこから飛んでくるか分からない攻撃に対する状況に緊張感が高まり猫騙しの効果が十分に発揮されたのだ。
猫騙しにより怯んだジバコイルが、地面に身体をぶつける。
「デスバーン、シャドークローォ!」
ルンパッパにデスバーンのシャドークローが伸びる。
「ルンパッパ、冷凍ビーム!続けてデスバーンを踏み台にジャンプだ!」
ルンパッパの冷凍ビームがシャドークローを伝ってデスバーンの体を凍りつかせる。ルンパッパはシャドークローを踏み台にジャンプする。
「これで終わらせてもらうよ。
地震!!」
ボスゴドラが力強く地面を強打し、地震を起こす。
地震の振動でデスバーンを凍らせた氷が砕け、キラキラと光を反射しながら飛び散る。
効果抜群の技を受けたジバコイルはもちろん、今までの蓄積ダメージに加えボスゴドラの会心の一撃とも呼べる地震を受けたデスバーンも、その場に崩れ落ちた。
「流石、チャンピオンと元最強のジムリーダー、ということか。私たちのポケモンが一度に倒されてしまうとは。」
「いいなァ、、いいなァいいなァァァ!!さいっっこうに楽しいぜェ!?こんな血が湧くようなバトル久しぶりだァ!!」
ホウエン地方のチャンピオンとして、そしてホウエン地方元最強のジムリーダーとして、悪の組織の前に倒れることは許されなかった。ポケモンたちも同様に、自身のトレーナーのために倒れることはならないと、確固たるプライドがある。
「さぁ、次だ。
僕たちを止められるかな?チャンピオン?」
現れる新たなポケモン。
シュオウから繰り出されたのは妖精ポケモンピクシー、オトギリからはあごオノポケモンオノノクス。
「ルンパッパ、冷凍ビーム!」
「ボスゴドラ、ストーンエッジ!」
「オノノクス、ドラゴンクローで切り裂けェ!」
「ピクシー、火炎放射」
4匹の技が一斉に放たれる。冷凍ビームを火炎放射が溶かし、ストーンエッジをドラゴンクローが切り裂く。
同性に対し技の威力が上がる特性、闘争心のオノノクスの火力はボスゴドラに匹敵することがわかる。
「、アイアンテールでストーンエッジを打て!」
砕かれたストーンエッジをアイアンテールで打ち付け、オノノクスたちへ飛ばす。
「ピクシー、ムーンフォース」
岩の礫とムーンフォースぶつかり、相殺される。
「ルンパッパ、地面へ冷凍ビーム!」
「ボスゴドラ、氷の床に乗れ!」
ルンパッパが地面を氷漬けにすると、その上をボスゴドラが滑り移動する。滑ることで勢いが着いたボスゴドラがドラゴンクローでオノノクス目掛けて突っ込む。
「オノノクス、こらえるだァ!顎を使えェ!」
オノノクスがドラゴンクローを自身の発達したあごオノで受け止める。ドラゴンクローのダメージは受けているが、致命傷では無い。上手く受け止められていた。
「馬鹿力で振り払えェ!続けて起死回生!」
渾身の馬鹿力でボスゴドラを振り払い、体勢が崩れた所に起死回生を決めにかかる。先程のボスゴドラのドラゴンクローを受けたことでオノノクスの体力は残りわずかだった。ならば、今この場で1番威力があるのは起死回生だろう。
「ルンパッパ、エナジーボールでオノノクスを止めるんだ!」
「ピクシー、この指とまれ」
ボスゴドラを守るためにオノノクスを止めようとするが、ピクシーのこの指とまれによりエナジーボールがピクシーに吸い寄せられる。
誰にも邪魔されることなくボスゴドラに起死回生が決まり、壁へ吹き飛ばされる。よろよろと立ち上がるボスゴドラ。あの起死回生を耐えるのは流石チャンピオンのポケモンと言えるが、ダメージ量は相当なものだ。
「ひとつお聞かせ願いたい。」
突如としてシュオウが話し出す。
「チャンピオン殿は先程、あの娘を仲間と仰ったが、、、。
何故ただの娘をそこまで信じられる?利用するだけ存在だっただろう?」
シュオウの言葉にダイゴが目を伏せる。
数時間前まで利用する側とされる側という関係で、ダイゴたち自身も少女を仲間だなんて1ミリも思っていなかった。傍から見たらただの華麗な手のひら返しにも思うだろう。仕方のないことだ。
「そうだね。レックウザの動向を知り、守るためお嬢さんを利用させもらっていた。だから、彼女が任務に参加し続けると決めた時は安心したよ。ホウエンチャンピオンとして。」
「しかし、お嬢さんはそれを知りながらも私たちを信じてくれた。今度は私たちがその信頼に応える番だ。虫がいいと言われようと私たちはお嬢さんを信じ、その道行を共に歩み、見守る。あの子の仲間として。」
ミクリはそう言った後、少し目を見開いて、困ったように笑った。
(あぁ、なんだ。ダイゴに言えないほどに私もだいぶお嬢さんに入れ込んでいたんだな。)
信頼なんてなかった、仲間意識なんてなかった。ただ、任務のために少女に仲間だといい、心のうちでは大人と子ども、使命のあるチャンピオン、元ジムリーダーとただの一般トレーナーであると線引きをしていた。少女はそれを理解していた。
第三者から見れば歪な関係だ。表面上で良い顔をしながら腹の中で真っ黒な感情を抱えたダイゴたちも、それを知っていながら受け入れている少女も。
シュオウはそれが信じられなかった。
「信頼などこの世で最も愚かな感情だ。どれだけこちらが信じていようとも愛していようとも、相手は平然と裏切ってくる。自分の手からこぼれ落ちるものを私たちはただ呆然と見ている事しかできない。
話はこれで終わりだ。礼を言うよ、くだらない話をどうもありがとう。
ピクシー、ムーンフォース」
「オノノクス、馬鹿力ァ!」
2匹の攻撃が迫る。
「あぁ、こちらもお礼を言わせてもらうよ。」
ミクリが一歩前に出る。
「どうもありがとう、これでやっと私はお嬢さんの仲間だと断言できる。」
(やっと、ダイゴと同じ所に立てたね。)
誰かが息を飲む音が聞こえた。
ダイゴの話を聞いてからまだミクリの中にあった少女への後ろめたさが、大人と子どもという壁が、自身の先程の言葉によって取り払われた。
やっとダイゴのように、自分も少女を信じることができる。
「ダイゴ!」
ミクリの呼ぶ声に、ダイゴが頷く。
「ストーンエッジ!」
「冷凍ビーム!」
オノノクスとムーンフォースの前に岩が突き出ると、ルンパッパの冷凍ビームによって岩が固まる。小さな氷岩がオノノクスたちの攻撃からボスゴドラたちを守る。
「オノノクス、起死回生で砕けェ!」
オノノクスが起死回生によって氷岩を砕く。圧倒的パワーに砕け散る氷岩、オノノクスの目の前にはボスゴドラ。
「ルンパッパ、冷凍ビームでオノノクスを止めろ!!」
ボスゴドラとオノノクスの間に現れたルンパッパの冷凍ビームと、オノノクスの起死回生がぶつかり合う。ゼロ距離でぶつかりあった技はオノノクスとルンパッパを爆発で包み込む。
煙が開けた先には、目を回したルンパッパとオノノクス。相打ちだった。
「ありがとう、ルンパッパ。よく頑張ったね。とてもbeautifulでwonderfulだったよ。」
モンスターボールに収まったルンパッパに言葉をかける。オトギリもオノノクスをモンスターボールに戻していた。
「あぁ、あァ、アァ!!最高だなァ、、!!!???ここまで楽しい戦いは久しぶりだァ、、、。」
楽しそうに、愉快そうに、バトルを純粋に楽しむオトギリにダイゴたちは身震いしそうになる。
ポケモンバトルが熱狂的に好きな者は少なくない。ダイゴたち本人もバトルが好きだ。じゃないとホウエンチャンピオンにも、ジムリーダーにもならない。
しかし、オトギリのバトルへの心酔具合は常軌を逸していた。
「いけやオニゴーリ!!」
オトギリが出したのはオニゴーリ。今までの戦いの中で初めて見るポケモンだった。どうやらオトギリの切り札のようだ。
「おや、もうやるのかい?ニドキングが残っているだろう?」
「こんなに楽しい戦いなんだぜェ?我慢なんてできねぇよなァ?オニゴーリィ」
オニゴーリが肯定するように鳴き声をあげる。オニゴーリの口からは冷たい冷気が立ち込めている。
オトギリの服の間から鎖のような大きさのネックレスがジャラりと垂れる。その真ん中にはキーストーンがあった。
「もっともっと楽しませてくれやチャンピオン、元ジムリーダーァ、、、
この世の全てをぶっ壊しやがれ、オニゴーリ!!メガシンカァ!!!」
オニゴーリを虹色の光が包み、周囲の大気を吸い込む。追い風により足元がふらつきそうなるダイゴとミクリを守るようにボーマンダが前に立ち塞がる。
光が飛び散ると、額に氷の角を生やし口を大きく開け肺が凍るような冷気を発するオニゴーリがその姿を見せた。
ダイゴたちはそのプレッシャーにゴクリと生唾を飲んだ。ミクリはモンスターボールは構える。
「頼んだよ、ミロカロス!」
美しい声を上げるミロカロス。
これでポケモンがバトル場に出揃った。
「オニゴーリィ、冷凍ビームだァ!!」
オニゴーリの苛烈な冷凍ビームが放たれる。
通常ならば、ボスゴドラにとって氷技は今ひとつなのだが、蓄積ダメージによって技が当たれば今一つと言えど耐えれるか分からない。
「ミロカロス、ハイドロポンプでボスゴドラを守るんだ!」
ハイドロポンプと冷凍ビームがぶつかる。冷凍ビームがハイドロポンプを凍てつかせる。氷柱の完成だ。
「ボスゴドラ、ストーンエッジ!」
地面から突き出る岩が氷柱を壊しながらオニゴーリへ迫る。
「ピクシー、ムーンフォース」
ストーンエッジをムーンフォースが壊し、オニゴーリを守った。
「ピクシー、ボスゴドラに火炎放射」
「ミロカロス、龍の波動!」
今度はボスゴドラをピクシーの火炎放射が襲う。すぐさまミロカロスから応戦に入る。
「オニゴーリ、頭突きだァ!龍の波動を突っ切れェ!」
オニゴーリが龍の波動目掛けて突進する。オニゴーリを避けるように龍の波動が裂ける。オニゴーリの頭に冷気が集まっているのがわかった。
メガオニゴーリの特性はフリーズスキン。メガボーマンダの特性、スカイスキンと同じようにノーマルタイプの技を氷タイプに変化させ攻撃力をあげる効果を持っていた。
故に龍の波動が氷技に変化した頭突きに押し負けているのだ。
「オニゴーリにアイアンテール!」
ボスゴドラのアイアンテールとオニゴーリの頭突きが衝突する。
爆発の後、遂にボスゴドラが地に伏せた。
「よく頑張ってくれたボスゴドラ。ありがとう、、、。」
ボスゴドラをモンスターボールに戻したダイゴは、新たなモンスターボールを取り出す。
すぐ投げられるはずのモンスターボールは、ダイゴの手に握られままだった。
そのモンスターボールはメタグロスのものだった。
他のポケモンも優秀だ。しかし、メガシンカポケモンを相手にする時、相棒がいてくれたらと考えてしまうのは仕方ないことだろう。
「ダイゴ、、、。
!」
ミクリがダイゴに声をかけるより先にボーマンダがダイゴに擦り寄ったことで、ミクリは黙った。
ボーマンダはダイゴの持つモンスターボールにグリグリと頭を擦り付ける。
「ボーマンダ?」
ボーマンダの意図が分からず困ってしまう。ボーマンダを避けようと頭をダイゴが優しく撫でる。ボーマンダはご機嫌に撫でられるが、ダイゴから離れようとはしない。
すると、ミミッキュがダイゴの肩に飛び乗りモンスターボールを持つ手にボーマンダのメガストーンを置いた。スペース団取られていたメガストーンをいつの間にかミミッキュが取り返してたのだ。
「もしかしてメガシンカ、したいのかい、、、?」
ボーマンダが力強く鳴く。
無理だ。本来、メガシンカはトレーナーとポケモンの強い絆があって初めてできる現象。正しいトレーナーとそのポケモンであっても、実力や絆が十分でなければメガシンカは成立しない。ボーマンダにとって、ダイゴは本当のトレーナーではない。メガシンカが成立するわけがない、誰もがわかる事だ。
「自分のトレーナー以外とメガシンカはできない。そんなの、わかりきったことなのに、、、。
でも、君が望んでいるならそういうことなんだね、ボーマンダ。」
ボーマンダがこくりと頷く。
半信半疑、全くもってありえない話だと思っていながらもダイゴは分かったよと笑った。
ボーマンダが少女を溺愛しているのも、誰より大事に想っていることは知っている。そんなボーマンダが自らメガシンカを願った。なら掛けてみたくなった。
ミミッキュをミクリに預ける。
心を落ち着けるように目を伏せる。目を開けた先にはこちらをじっと眺めるシュオウ、予想外の展開に顔のニヤケが止まらないオトギリ。
ふぅっと、一息つける。モンスターボールをしまい、胸のメガラペルピンを取る。
「いくよ、ボーマンダ。君の力を貸してくれ。」
ボーマンダの咆哮が轟く。
キーストーンとメガストーンが強く輝くいた。