あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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生きる力

虹色の光から大きなドラゴンポケモンが現れる。ボーマンダは空中で一回転してから、ダイゴの側へ砂煙を立てながら着地する。咆哮した余波が周囲に広がった。

オニゴーリも好戦的に哮るが、オニゴーリより、何よりもオトギリの興奮は最高潮に高まっていた。

 

「これまでも多くのメガシンカ使いと戦ってきたけどよォ、、、。

メガシンカしたポケモン見ただけて滾るなんざ初めてだぜ??!!楽しもうやこの最高のバトルよォ!!」

 

早くバトルがしたい、戦いたい、血が滾るような熱いバトルを、今、誰よりも欲している。

オトギリからはシュオウやカマスミのようなどろどろとした闇を感じることない。ただ、真っ直ぐに猪突猛進に戦いを好み、バトルを愛していた。純粋ながら狂気、とことんバトル狂な彼はただそれだけで相手を恐怖させた。

今まで歴戦のトレーナーたちと戦ってきたダイゴやミクリでさえも彼ほどの人物には会ったことがない。しかし、彼らが怯むことは決してない。

ボーマンダが首だけをダイゴに寄せる。ダイゴは抱き込むようにボーマンダの頬を撫でた。

 

「今だけは僕が君のパートナーだ。信じているよボーマンダ。」

 

そう言ってダイゴが手を離した瞬間にボーマンダは飛び上がりオニゴーリ目掛けて急降下して行く。

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブ!」

 

「オニゴーリ、頭突きだァ!」

 

技と技がぶつかり合う。拮抗し合う2体のパワーはほぼ互角だった。

両者が後ろへ後退する。パワーは互角と言っても、ポケモン同士のタイプ相性では圧倒的にボーマンダが不利だ。一撃でも喰らえば大きなダメージになる。

 

「氷の牙だァ!」

 

オニゴーリが大きな口を開けてボーマンダへ迫る。

 

「龍の舞で避けるんだ!」

 

大きな巨体ながらボーマンダは龍の舞で身体を大きく捻って氷の牙を避けた。

龍の舞によって上昇した攻撃力とスピードを活かしてどう戦うか。鋼や化石ポケモンを愛するダイゴにとって、ボーマンダのような俊敏なポケモンを使うのは殆ど初めてだ。さて、ダイゴはこれからどう戦うのか。

 

「オニゴーリ、頭突きで追っかけろ!」

 

「ボーマンダ、そのまま避け続けてくれ!」

 

オニゴーリの頭突きをボーマンダは自身のホバリングを活かして避け続ける。

メガシンカしたボーマンダ相手に空中戦で勝てるものは限られている。それはメガボーマンダのこのホバリングからの縦横無尽な動きを捕えることができないからだ。

 

「デカい身体の割にちょこまかと動きやがるなァ。オニゴーリ、冷凍ビームで動きを止めろォ!」

 

接近できないのなら遠距離からの攻撃で間合いを埋めればいい。そうオニゴーリは冷凍ビームを放つ。

 

「龍の舞で間合いを詰めろ!」

 

冷凍ビームの周囲を龍の舞で旋回しながらオニゴーリに接近する。

 

「捨て身タックル!」

 

龍の舞からの捨て身タックルにボーマンダより鈍足なオニゴーリは避けきれない。頭上から捨て身タックルが決まり、オニゴーリは地面へ激突する。

 

「畳み掛けろ、ドラゴンダイブ!」

 

ボーマンダは回転して勢いをつけてからドラゴンダイブでオニゴーリへ突っ込む。オニゴーリは先程の捨て身タックルによってすぐに動けずにいる。

 

「ピクシー、受け止めなさい。」

 

あともう少しでオニゴーリにドラゴンダイブが決まるところで、ピクシーが間に入りボーマンダを受け止める。本来ならばピクシーがボーマンダを受け止めるだけの防御力はないが、ピクシーはフェアリータイプ、ドラゴンダイブを無効化できるのだ。

 

「おい、いい所だったろォ。邪魔すんじゃねェよ。」

 

メガシンカ対決に別のポケモンが割って入ったことにオトギリは難色を示す。

シュオウは苦笑を零しながら、オトギリを宥める。

 

「すまないね、だが君の楽しみを邪魔したいわけではないんだよ。ただ、今君に倒れられるのは私の計画にとって痛手だからね。」

 

「はっ、俺が居なくてもあの伝説たちがいりゃァ問題ねェだろうがよォ。」

 

シュオウの穏やかな笑みにオトギリは先程までの好戦的な笑みを消し、少し不機嫌そうに吐き捨てる。ミクリが盗み聞きした内容からシュオウとオトギリは利害関係で結ばれているだけであって、カマスミのようにシュオウを信仰している訳では無いことがわかっている。

オトギリが一方的にシュオウに対して益を感じられなくなった時彼らの関係は簡単に瓦解するだろう。そのためにもオトギリにバトルという餌を与えておかねばならないのだ。

 

「まァ、いいぜ。あの優男ともまだ戦いたかったからよォ。」

 

ミクリの存在により、オトギリの機嫌を損ねることを回避できたようだ。

 

「そのまま仲違いしてくれ良かったんだけどね。そう上手くはいかないものだ。」

 

ダイゴの辛辣な言葉にシュオウは微笑みを崩すことなく、それはすまなかったねと煽り返す。対するダイゴも煽りに乗る様子もなく、涼しい顔で流していた。

 

「さて、タッグバトルの再開と行こうか。

ダイゴ、君とボーマンダのpowerfulなバトルを期待しているよ。」

 

ミクリの言葉にダイゴは勿論だと強く頷いた。

この勝負は如何にボーマンダが相手の攻撃を受けずにダメージを与えられるかが鍵だ。しかし、タイプ相性ではボーマンダはピクシーとオニゴーリに圧倒的不利。ミロカロスがサポートに徹する必要がある。

 

「ボーマンダ、急上昇からのドラゴンダイブ!」

「ミロカロス、吹雪でピクシーたちの動きを止めるんだ!」

 

ボーマンダが天高く飛び上がり、ホバリングからの急降下によってドラゴンダイブをつける。重力によって落下のスピードがどんどん早くなる。

ミロカロスは吹雪で2体、特にピクシーの足止めを狙う。

 

「ピクシー、火炎放射で吹雪を溶かせ。」

「オニゴーリ、頭突きでドラゴンダイブを押し切れェ!」

 

火炎放射が吹雪を溶かす。視界がクリアになったところから、ボーマンダが姿を現した。火炎放射によって意表をつくことができず、オニゴーリの頭突きと衝突し合う。

ぶつかり合っている境界からバキバキとドラゴンダイブが凍って行く。やはりドラゴン技では氷技に分が悪い。

 

「冷凍ビーム!」

「ッボーマンダ!」

 

頭突きから素早く冷凍ビームに切り替えられたことで、ゼロ距離で技を受けてしまう。ボーマンダの身体が凍り、壁に激突してから地面へ落下する。衝撃で氷は身体から離れるが、かなりのダメージだ。ボーマンダが首を振りながら起き上がる。

 

「ピクシー、ムーンフォース。ボーマンダに止めを。」

 

「ミロカロス、ハイドロポンプで相殺してくれ!」

 

ピクシーの追撃が降りかかるが、ミロカロスのハイドロポンプによりムーンフォースはボーマンダに届くことなく爆発する。

煙が開けて直ぐにオニゴーリが大口を開けてボーマンダへ襲いかかる。氷の牙だ。あれを喰らえば致命傷は免れない。

 

「ボーマンダ、羽休めでできるだけ受け流せ!」

 

ボーマンダが羽休めで体力を回復する。羽休めの効果として一定時間飛行タイプで無くなるが、氷の牙を受け流すにはこの選択が最善だった。

氷の牙でボーマンダの羽に噛み付く。ボーマンダは痛みに耐えるが、羽休めによって体力が回復されたことで余裕がある。

 

ボーマンダはオニゴーリに噛み付かれたまま身体を浮上させる。そのまま飛ぶ気なのだろう。空を飛ぶポケモンにとって羽は最も重要な身体部分、そこを傷害されればたちまち空を飛ぶことは困難になることは明白だ。特にスピードに重きを置くメガボーマンダならば、致命的であると言えるだろう。加えてメガオニゴーリの体重は約350kg、ボーマンダがいくら大きくとも2倍以上の差がある。それにも関わらずボーマンダはオニゴーリを羽にぶら下げたまま飛ぼうというのだ。

到底無茶と言える行動にダイゴさえも驚きを隠せない。対するオトギリはボーマンダの無茶苦茶を大変気に入った様子だ。

しかし、ボーマンダがただの無茶でそんなことをしているとはダイゴは思えなかった。トレーナーの考えをポケモンが汲み取るように、トレーナーも同じようにポケモンの考えを理解しなければならない。

チャンピオンであるダイゴはそれを誰よりも理解している。ミクリも同様だ。

 

「やっぱり良いなァ!!オニゴーリ、ボーマンダを離すなよォ!」

 

オニゴーリが更に牙をたてて深く噛み付く。羽が段々と凍り、ボーマンダは痛みに顔を歪めていた。

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブで飛び上がるんだ!」

 

ボーマンダはダイゴの指示通りドラゴンダイブで身体に力を入れると、オニゴーリごと飛び上がる。オニゴーリはその頑丈な顎で振り落とされることなくボーマンダに噛みつき続けている。オニゴーリがいることでボーマンダのスピードががぐりと置いており、重さで身体が下に落ちそうになる。

 

「ムーンフォースで堕としてあげなさい。」

 

ボーマンダのスピードが落ちているところにピクシーのムーンフォースが放たれる。オニゴーリをぶら下げている状態ならば、ピクシーでも技を当てることはそう難しくはない。だが、それを防ぐのがミクリたちの役目だ。

 

「ハイドロポンプでムーンフォースを消し飛ばしてそのままピクシーを捉えてくれ!」

 

ムーンフォースをハイドロポンプが打ち消すと、ミロカロスはピクシーに巻き付き縛り上げる。ミロカロスは逃れようとするピクシーを強く締め上げ、押さえつけた。

 

ボーマンダはオニゴーリの重さに上手く飛べずふらふらしている。

 

「ピクシー、火炎放射で逃れなさい。至近距離で炎技をくらうのは水タイプだとしても堪えるでしょう。」

 

ミロカロスに火炎放射が放たれ、ジュゥと身体が焼ける音が聞こえる。

 

「私のミロカロスの耐久を舐めないで欲しいね!それに至近距離でまずいのはそちらもだよ、ハイドロポンプだ!」

 

至近距離で受ける火炎放射にミロカロスは少しダメージを負う素振りを見せたが、すぐに反撃のハイドロポンプをピクシーに放つ。火炎放射の炎を消し飛ばした。

ハイドロポンプの圧によってミロカロスの身体から押し出されたピクシーが地面にぶつかり空中へ投げ出される。

 

「ボーマンダ、龍の舞で遠心力をつけろ!」

 

オニゴーリを抱えたままドラゴンダイブから龍の舞に切替える。オニゴーリの重さに身体が下に引っ張られるが、落ちる気流を利用してぐるりぐるりと回転を加えていく。生まれた遠心力と共に落下していくその下には投げ出されたピクシーがいる。

 

「捨て身タックルでオニゴーリをピクシーにぶつけるんだ!」

 

重力と捨て身タックル本来の力を合わせて、自分の身体ごとピクシーに激突する。オニゴーリとボーマンダの重さで押しつぶされたピクシーは酷い声を上げて地面にめり込んだ。捨て身タックルとピクシーに激突した衝撃がオニゴーリにも及び、羽から口を離してしまう。

ついでに砕けた羽の氷が光を反射して飛び散る様は場に似合わず美しい。

 

「いいなァ、そのボーマンダァ、、、今までの戦いの中で一番楽しいバトルだァ。だから、もっと俺を楽しませてくれェ!!

オニゴーリ、破壊光線!!」

 

オニゴーリの口から極大の氷の冷気が発射される。

あれが当たれば終わる。

その直感と捨て身タックルの反動によってボーマンダの身体が硬直する。

 

「避けろボーマンダ!」

 

ダイゴの声に意識を取り戻したボーマンダはギリギリの所で破壊光線を避ける。

破壊光線の当たった所がたちまち凍てつき、氷のオブジェクトを作り出していた。

 

「なんてパワーだ、、、。」

 

ミクリがゴクリと喉を鳴らす。

技が当てれば例え炎ポケモンであっても一溜りもないだろう。技自体の威力はもちろん、メガオニゴーリの特性による火力の底上げによりあらゆるポケモンを凍てつかせるほどまでになっている。しかし破壊光線を打つことは相手にとってデメリットもある。反動で動けなくなるということは大きな隙になり、こちらの攻撃のチャンスだ。

 

「だからといって対策をしていないとは思えないんだよね、、、。」

 

バトル経験が豊富なトレーナーは必ず反動技の対策をしてくる。威力が高い技や効果が大きい変化技は反動と呼ばれるデメリットを持つものも多く、先程の破壊光線の反動しかり混乱や自身の能力の低下やボーマンダの捨て身タックルも反動技の一つだ。捨て身タックルは相手にダメージを与えた時、自身もダメージを受けてしまう。その対策のためにボーマンダは羽休めを覚えている。

だが、チャンスはチャンス。ピクシーもオニゴーリの下敷きになってしまって身動きを取れていない。ここで攻めないわけが無い。

 

「ミロカロス、ハイドロポンプ!」

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブ!」

 

ミロカロス、ボーマンダが攻撃を仕掛ける。

挟撃にオニゴーリたちが追い込まれる。

オトギリがニヤリと不穏な笑みを浮かべた。

 

「?!

止まってくれボーマンダ!!」

 

「おせェなァ、、、?

 

オニゴーリィ、破壊光線!!!」

 

本来あるクールタイムを無視してオニゴーリから再び極大の冷気が発射される。

空中で急停止したボーマンダの回避が間に合わず破壊光線にその巨体ごと飲み込まれた。

大きな爆発とともに氷に包まれたボーマンダが墜落する。地面に激突した氷塊が砕けるが、ボーマンダはピクリとも動かない。

 

「ボーマンダッ!!」

 

氷塊を避けながら、ボーマンダに駆け寄るダイゴ。ミクリの肩で大人しくしていたミミッキュも慌てて降り、ダイゴの後を追う。

ダイゴとミミッキュがボーマンダを挟む氷塊を退かし、彼女の頭を抱き上げる。ボーマンダは虫の息だが、なんとか持ちこたえていた。

 

「オニゴーリの破壊光線を受けて耐えるたァ、大したもんだなァ。

俺のオニゴーリはこの破壊光線で色んなやつをぶっ飛ばして来ててよォ。使いすぎて反動からの回復がくそ早くなったんだよなァ。」

 

そんなのありか。

使いすぎて反動がほぼ無いに等しくなったなんて見たことも聞いたことも無い。それは反動に対する対策ではなく、ただの個体の問題だ。

どこまで行っても脳筋すぎるオトギリにダイゴとミクリは翻弄されてしまう。

ダイゴはボーマンダの抱き抱えたまま、別のポケモンを呼び出そうとモンスターボールに手をかける。だがしかし、それをボーマンダ本人が止める。

 

――嫌だ、私はまだ戦える。私に戦わせて、信じて、お願い。

 

ボーマンダがダイゴにそう訴える。ボーマンダの瞳に光は絶えていなかった。

よろよろとボーマンダが身体を起こし、足を何とか地に着け踏ん張る。ミミッキュがどうにか支えるが、ボーマンダが首を振って拒否する。もういつ目を回して倒れてもおかしくない。けれどもボーマンダの身体は地に沈むことなく、ただ一点、オニゴーリとオトギリをその目に捉えていた。

 

「ボーマンダ、、、」

 

ボーマンダがダイゴの方を向き、指示をよこせと訴える。ミミッキュはその姿にボーマンダを止められないことを悟るとあからさまに肩を落としてしまう。

ダイゴはそんな2匹の姿を見て、大きなため息つき本日二度目の覚悟を決めた。

 

「全く、トレーナーとポケモンは似るなんてよく言ったものだ。揃って無茶ばかりするよね、、、。

良いだろう!!それなら僕も無茶を通させてもらうよ!!

ミクリ、ボーマンダの準備ができるまでサポート頼む!ボーマンダ、羽休めで回復してくれ!」

 

ダイゴの言葉にミクリは仕方ないなと笑うと、強く頷いた。

ボーマンダが回復するまでミロカロスでオニゴーリとピクシーを止めねばならない。ミロカロスの正念場は今この時だ。

ボーマンダが羽を下げて回復を始める。

 

「ミロカロス、ハイドロポンプ!!」

 

オトギリが狂気的な笑みを作り上げ、哮る。

ミロカロスのハイドロポンプが一直線に伸びていく。

 

「ピクシー、ムーンフォース。」

 

ハイドロポンプとムーンフォースがぶつかり、水の色とピンクの光が弾ける。

 

「なんとbeautiful、、、僕のミロカロスの美しさはとどまることを知らないね。そして、美しさの中に確かな強さがある、、、存分にお見せしよう!

ミロカロス、吹雪!美しく舞え!」

 

ミロカロスが回転しながら吹雪を放つ。

氷の冷気と共にくるくると回るミロカロスの美しさたるや。ミロカロスの動きに冷気が巻き込まれ、波紋のように広がっている。

その美しさにうっとりと魅せられて仕舞いそうになるが、遠心力が付いた吹雪が礫状になりオニゴーリとピクシーを襲う。

 

「面白ェことするなァ。嫌いじゃねェぜ?

オニゴーリ、頭突きだァ!」

 

オニゴーリが頭突きでミロカロスへ突っ込む。

ミロカロスは避けるでもなく、オニゴーリを正面で受け止めた。

 

「おォ?!」

 

オニゴーリの頭突きを受け止めるとは思っていなかったオトギリはどこか嬉しそうな声を上げた。

よく見るとミロカロスの身体からぼっと炎が浮かび上がっている。先程の火炎放射で火傷状態になったのだろう。それにより、ミロカロスの特性である不思議な鱗が発動したのだ。不思議な鱗の効果により防御力があがり、オニゴーリの頭突きを受け止めることができた。

 

「ミロカロス、ハイドロポンプ!」

 

至近距離でオニゴーリがハイドロポンプを受ける。

吹き飛ばされたオニゴーリはすぐに立て直し、反撃の体勢を取る。大口を開けてエネルギーを集めているようだ。恐らく、破壊光線の準備だろう。それも先程よりも大きな破壊光線を打つつもりだ。

 

「あぁ、これは少し好ましくないかな。ミロカロスの自己再生が間に合うか、、、。」

 

例え自己再生で体力を回復し破壊光線を受けきったとしてもピクシーが止めをさしてくるだろう。

ミクリは困ったなと言いながらもその笑みを絶やしていなかった。何故ならば彼には自分が一番信頼できる人物がそこにいるからだ。

 

「待たせたねミクリ、ミロカロス、、、こっちの準備は整ったよ。」

 

離れた場所から声が届く。

ミクリがそちらに目を向けると、風を纏ったボーマンダとその傍らの自身の親友の姿が見えた。まるでこの空間の空気を吸っているかのようだ。

 

「遅いかったね、ダイゴ。」

 

「はは、すまない。

何せ、あの破壊光線を突き破る力が必要だからね。」

 

ダイゴが優しい顔でボーマンダの頬を無でる。ダイゴの手が離れると、ボーマンダはダイゴの頭上に浮上する。足を殻の中に折り畳んだ。

オトギリがニヤリと笑う。

 

「ボーマンダ、彼らに僕らが1番強くて凄いこと、知らしめてあげようか。」

 

ダイゴを目を閉じ、穏やかな顔つきから凛とした表情に変わりオトギリたちを見据える。

ボーマンダの咆哮があたりに響く。

 

「ボーマンダ!!」

「オニゴーリ!!」

 

「捨て身タックル/破壊光線!!」

 

ボーマンダが空を翔け、オニゴーリが最大の冷気を放つ。

ボーマンダが氷の冷気を裂きながら進む。裂かれた冷気はあちこちにあたり、当たったところから氷のオブジェが造られる。

拮抗し合う2体のメガシンカポケモンはどちらも押し切ることができずに停滞する。

 

「ピクシー、月の光。そこから、ボーマンダにムーンフォースだ。」

 

ピクシーが光り出す。回復するつもりだ。

だがその時、素早くピクシーの身体をミロカロスが拘束する。

シュオウの眉がぴくりと動いく。

 

「私たちの存在を忘れないでくれ。

ミロカロス、ピクシーを上に放り投げろ!そのまま龍の波動!」

 

ピクシーを器用に空中に投げるミロカロス。続けて龍の波動をピクシーへ放った。

 

「ピクシーにドラゴン技は効果がないのだけれどね、追い詰められて判断がおかしくなったか。」

 

「いいや、そうではないよ。

狙いはそこじゃないからね。ピクシーを龍の波動で巻き上げろ!」

 

龍の波動を攻撃として使うのではなく、ピクシーを更に上に押し上げるために放つ。

ミクリの狙い通り、ピクシーにダメージを与えることなく龍の波動はピクシーの身体を持ち上げた。それによりピクシーがボーマンダに近づく。

 

「何がしたいのか検討がつかないな。わざわざボーマンダの高さまで上げて、判断ミスもいい所だ。」

 

シュオウの手厳しい言葉にもミクリは表情を崩さない。それどころか、ふっと子供のいたずらが成功したかのように笑った。

 

「そんなに焦らないでおくれ。

私たちの目的はもう一つあるんだよ。」

 

シュオウが上を見上げる。ピクシーを押し上げていた龍の波動が横にそれ、ボーマンダへ向かって伸びる。

シュオウはミクリの考えが読めなかった。ボーマンダに攻撃を仕掛けたというのか。ボーマンダに当たれば破壊光線がボーマンダを貫くぞ。

 

「ダイゴがボーマンダを信じているように、私もボーマンダを信じている。

受け取ってくれ、ボーマンダ!!」

 

ボーマンダに龍の波動がぶつかる。

何が信じるだ、頭がおかしくなったのかとシュオウは思ったが、ボーマンダにぶつかった龍の波動は爆発することなくボーマンダの周囲に渦巻いた。

龍の波動は攻撃ではなく、ボーマンダにドラゴンエネルギーを送るために使われたのだ。龍の波動がボーマンダのドラゴンエネルギーとして還元されたならば、それはドラゴンダイブへと転じる。

二種の技が破壊光線を裂いていく。

だがしかし、オニゴーリは更に破壊光線の威力を上げてきた。ボーマンダの身体が後ろに下がっていく。

 

「これでもダメなのか、、、!」

 

ダイゴが悔しそうに顔を強ばらせる。ミクリも冷や汗をかいた。

 

「!!

いや、まだだよ。ボーマンダをよく見るんだ!」

 

ミクリの声にダイゴがボーマンダを凝視する。

そこにはボーマンダが破壊光線を吸収している姿があった。それだけでは無い、室内の空気が先程よりも多く吸収されている。ボーマンダの身体が白く発行しているように見える。

 

「あの光は、、、まさか!

ここで新しい技を得ようと言うのか?!」

 

技を習得するにはポケモンが成長すること、進化することが必須である。ポケモンの弛まぬ努力が実を結び、新しい技を得る。それは日常で得るときもあれば、今のように窮地に陥った時に得るものもいる。

今がその時だったのだ。

捨て身タックルがだめならば、もっと強い力が必要だ。捨て身タックルよりも強く、破壊光線と同等の威力を有するもの。ボーマンダは破壊光線を吸収し、自分の力に還元している。

ボーマンダの無茶苦茶にダイゴはもう笑うしか無く、目を伏せた瞼に少女の姿を見た。

 

(本当に、君たちは似たもの同士だね。いつも必死で全力で、僕たちは置いてけぼりを食らってしまっているようだ、、、。けれど、今はそれがとても心地いい。)

「いくよボーマンダ。君の全力を見せてくれ!!

 

 

 

 

ギガインパクト!!!」

 

ボーマンダが咆哮と共にギガインパクトを発動する。周囲に取り巻くドラゴンエネルギーと共に破壊光線を切り裂き進む。氷の咆哮の中を進む姿はドラゴンそのもの。

ボーマンダがオニゴーリを捉えた。全身でオニゴーリに激突し、オニゴーリを押しながら空中を舞うように翔ける。空中に居たピクシーも巻き込まれ、目で追うことも困難なスピードと圧倒的な力でオニゴーリたちを押し潰していく。反撃すら許されない。

 

「押し切れボーマンダ!!」

 

残像が螺旋のように流れ、壁に衝突した3体。ボーマンダがギガインパクトのまま壁を突き破り、爆発が起きる。

ガラガラと崩れるコンクリート壁と、落ちる影が2つ。

一体のポケモンが光に包まれ、姿を元に戻した。

そして煙の中から飛来するポケモンが1体。

 

「ボーマンダ、、、」

 

オニゴーリとピクシーは見事に目を回し、地に倒れていた。

ボーマンダの咆哮が辺りに轟く。

オニゴーリが倒れたのを確認したオトギリが、肩を震わせる。

 

「はは、ははは!はははははははは!!

最高だったぜェ、お前らとのバトルはよォ!!

おい、ボスゥこれからどうすんだァ?」

 

オトギリは自身の負けに怒りを表すことはなく、ただダイゴたちとのバトルで得た快感に満足していた。

オトギリの問いを聴きながらシュオウはピクシーをモンスターボールに戻す。

 

「そうだね、私も本気を出す必要が出てきてしまった。」

 

シュオウが新たなモンスターボールを取り出す。

オトギリはくつくつ笑いながらその場から離れ観戦者の立場を決め込むようだ。

 

「さて、きみの出番だ。頼むよ、フーディン。」

 

投げ込まれたモンスターボールから飛び出したのは念力ポケモンフーディン。エスパーポケモンの中でも強力なポケモンである。

オトギリが離脱したことで敵はあとシュオウ1人になったが、ダイゴたちは先程よりも更に顔を険しくさせ周囲を警戒していた。

おかしいのだ。いくらボーマンダとオニゴーリのバトルに満足したからと言ってあの戦闘狂であるオトギリが自分の意思でバトル場を離れるなど考えられない。ニドキングがまだ残っていることはダイゴたちも気づいている。本来ならばニドキングを出し、バトルを続行するはずなのだ。シュオウとの利害関係が解消されたわけでもない。嫌の予感がする。

そしてその予感は的中することになる。

 

「さぁ、来たれ。大地の化身よ。」

 

シュオウがそう言葉を発した時、崩れ落ちた壁の向こう側から大きな影が表れた。

 

「ゲンシグラードン、、、」

 

ゲンシグラードンが現れた瞬間、その場の気温が一気に上昇したのがわかった。

 

「ゲンシグラードンの登場とはね、、、分が悪いのにも程がある。」

 

こちらの陣営は体力が削られているボーマンダとミロカロス。対してあちら側は元気溌剌なフーディンとグラードン。

ダイゴとミクリは勘弁して欲しいと思う他なかった。武者震いを起こすほどのプレッシャーに、彼らは苦々しく笑った。

 

 

 

伝説に対峙するボーマンダ、ミロカロス。

メタグロス、デンジと共に廊下を走る少女に虫の知らせが届く。

 

「ボーマンダ、ダイゴさん、ミクリさん。どうか無事で、、、。」

 

さぁ、決戦の火蓋は切られた。譲ることのできない信念が今ぶつかり合う。

 

 

 

 

 




ニドキング(力づく)♂
毒づき、地ならし、がんせきふうじ、カウンター
【後】ヘドロウェーブ、冷凍ビーム、大文字、大地の力
オノノクス(闘争心)♂
ドラゴンクロー、瓦割り、馬鹿力、逆鱗
デスバーン(彷徨う魂)♂
トリックルーム、黒い眼差し、ボディプレス、ゴーストダイブ
【後】トリックルーム、ボディプレス→シャドークロー、地震
オニゴーリ(ムラっけ)→(フリーズスキン)♂
冷凍ビーム、頭突き、破壊光線、氷のキバ
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