あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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スペース団(3):写り変わらぬ気持ち

スペース団アジト外、隣接した海は大荒れで津波サイズの波が押し寄せては戻りを繰り返していた。アジトから少し離れた崖には人とポケモンの姿があった。彼らは押し寄せる海と対峙し、その怒りを鎮めようと奮闘していた。

 

「ガブリアス、ドラゴンクロー!」

 

ブロンドの髪が美しい女性が自身のパートナーポケモンに指示を出す。

鋭い爪で海を切り裂くその姿の勇ましさたるや。

海の怒号が辺りに響き渡る。

 

「サーナイト、ムーンフォース!」

 

襲い来る津波を美しい白いドレスを着たサーナイトがムーンフォースで消し飛ばす。メガシンカすることでドレスを纏うサーナイトに合わせた白い服の女性は、才色兼備のオーラを漂わせている。

この2人の女性こそシンオウチャンピオンシロナとカロスチャンピオンカルネである。

海が大きく揺らめいて、波が引いていく。

 

「次の攻撃で引きずり出します!構えてください!」

 

カルネが振り返って檄を飛ばす。カルネの声に後ろに控えるシトロンとプラターヌはそれぞれ自身のポケモンたちを攻撃の指令を出し、身構えた。

一段と大きな津波が押し寄せる。

 

「サーナイト、サイコキネシス!」

 

サーナイトが津波を操り停止させる。

 

「ガブリアス、逆鱗!」

 

ガブリアスの目がギンっと輝き、海へ入ると爪や足を連続です叩き込む様子が影から見て取れる。海の中であれだけ俊敏に動けるものなのかとガブリアスのレベルの高さが伺える。

ガブリアスが海から飛び出すと、波が大きく畝り、その奥から大きな影が浮かび上がる。影は怪しく光、荒れた天候とも相まってその容貌に恐れを抱いてしまう。

 

「ゲンシカイオーガが来るわ!シトロンくん、プラターヌ博士お願いします!」

 

シロナが言うが早いか、海の中から唸り声を上げてカイオーガが現れる。

シトロンとプラターヌがゴクリと唾を飲む。

 

「レントラーは放電!エレザードはパラボラチャージです!」

 

「ガブリアス、破壊光線!」

 

2つの電撃と破壊光線が放たれるが、カイオーガは微動だにしない。効果抜群の電気技でさえも今のカイオーガには録なダメージにならないというのか。

 

「ガブリアス、もう一度逆鱗!」

 

「サーナイト、ムーンフォース!」

 

先程の逆鱗による混乱を無視してガブリアスがカイオーガに自身の爪を叩きつける。まだ混乱は解けきっていないが、カイオーガのプレッシャーによって意識を保てていた。

ガブリアスがカイオーガから離れた瞬間にサーナイトのムーンフォースが放たれる。腹部に当たったムーンフォースはカイオーガの身体を後ろに押し返すと、カイオーガは身体を大きく跳ねさせ海へ再び戻っていく。

カイオーガが海へ入った時の水しぶきをポケモンたちが防ぎ、トレーナーたちを守った。

 

「カルネさんとシロナさんの攻撃しか殆どカイオーガに効いてません!」

 

「グラードンがどこかに行ったおかげで幾分か楽になるかと思ったんだけどね。逆にカイオーガの動きが良くなりすぎている気がするよ。」

 

先程まで同じように足止めしていたグラードンが何かに呼ばれたかのようにどこかに行き、カイオーガだけならば抑えきれるかと考えたが全くと言っていいほど歯が立たない。シロナとカルネの攻撃はカイオーガに有効打になっているが、それでも決定的なダメージにはなってはいなかった。

 

「さぁ、皆さん、ここが正念場です!頑張りましょう!」

 

カルネの激励に3人が強く頷く。

シロナは荒れる海からスペース団アジトへ視線を向ける。シロナは眉を下げ、心配気な表情だった。

 

「頑張って、みんな、、、。」

 

 

 

 

……

 

 

 

『ねぇ、あなた?ちょっとこちらに来てくれない?』

 

昔、長年の夢である自分の研究所を持つことができて今まで以上に研究に没頭していた時期。帰宅後も研究に使う文献を読み漁っていた私を不意に妻が呼んだものだから、放ったらかしにしすぎだと怒られるかと思いながらも彼女の元へ行く。ソファに座っていた彼女はその手に長細い箱を大事そうに抱えてにこにことしていた。

 

『どうしたんだい?ご機嫌さんだね。』

 

妻の太陽のような笑顔につられながら私が聞くと、妻は鈴を転がしたような声で笑いだした。私は彼女の様子に首を傾げるが、彼女の可愛らしさに心が暖かくなるのがわかった。

妻はひとしきり笑ったあと、大事に抱えていたはずの箱を私にずいっと差し出した。私は差し出されたのを何も考えことなく受けった。箱はシンプルなデザインながらも丁寧にラッピングされており、ラッピングした者の几帳面さが垣間見えた。

 

『ふふ、あのね、この前買い物に出かけた時に素敵なお店があってね。思わず入ってしまったんだけど、あなたに似合いそうな素敵なものを見つけてしまって、、、堪らず買っちゃった。』

 

誕生日や記念日でもないというのに態々私のために買ってくれたのかと思うと、申し訳ない気持ちとそれ以上に嬉しい気持ちが溢れてしまう。

うずうずと私の手の中のプレゼントを見るものだから今開けて欲しいんだなと察し、開けていいかい?という言葉と共にラッピングのリボンを解く。妻はもう開けてるじゃないと少し照れくさそうに身じろいだ。しかしやはりその目はきらきらと輝いていて、隠しきれていない期待に吹き出しそうになる。妻の可愛らしさにもう私は満足だったが、それでは妻が拗ねてしまうとプレゼントを開けていく。

パカりと開けた箱の中には腕時計が入っていた。デザインはごく普通のアナログ時計だが、ダイアルの部分が淡く虹色に輝く石で作られていてその高級感に驚いて妻を見る。妻はくすくすといたずらが成功した子供のように笑っていて、自分が間抜けな顔している事がわかった。

 

『どう、素敵でしょう?』

 

『あ、ああ。とても素敵だけど、こんな良いものを貰っていいのかい?』

 

『あら、何言ってるの。私はあなたに着けて欲しくて贈ったのよ?使ってくれないと泣いちゃうわ。』

 

時計に萎縮して大切に保管しようと考えたのがバレたのか、妻はしくしくと泣き真似をしながら先手を取ってきた。だって仕方ないだろう、妻から貰ったというだけで大切に保管して愛でたいというのに、こんなあからさまに値の張るもの、恐縮してしまう。冗談だとしても妻に悲しい思いをして欲しくないため、明日から大切に使うよと言うと妻は嬉しそうに笑ってくれた。

だというのに、妻は突然ふっと顔を背けてしまう。

 

『どうしたんだい?』

 

何か気に触ることをしてしまっただろうか。焦る私に妻がくすりと眉を下げながら困ったように笑う。再びこちらを見てくれたことにほっと安堵する。

 

『ねぇ、あなたは時計を異性に送る意味を知っている?』

 

徐ろにそんなことを聞いてきた妻にぽかんとしながらも知らないなと首を振った。教えてくれるものだと思っていたが、妻は私の返答を聞いて口をきゅっと結んでしまう。その姿も大変可愛らしいが、焦らされては気になる。

 

『教えてくれないのかい?』

 

『、、、教えて欲しい?』

 

『是非とも。』

 

妻に近寄りなら言うと、私に急かされた妻がもじもじと恥ずかしそうにする。意味を知っているか確かめるからには、知っておいて欲しいのだろう。しかし、それを口に出すのが恥ずかしいのか妻はなかなか教えてくれない。

今度は私がくすりと笑うと、妻はむっと口を尖らせた。形勢逆転だね。

 

『時計を人に贈るのはね、、、』

 

やっと妻の口を開いた。声は恥ずかしさで震えていた。

 

『【同じ時を歩みたい】、、、って意味よ。

 

ひゃあ!!だめね、恥ずかしさに耐えられないわ!!』

 

妻が火照った顔を自身の手で覆う。ぷすぷすと湯気が出そうになるほど、赤らんだその頬に何度愛おしくなったことか。

答えを教えたのにも関わらず私が何も言わないものだから、妻が指の間からこちらをじとりと睨みつける。

 

『同じ時を歩みたい、、、か。あぁ、私もそう思うよ。君との時間を永遠に過ごしていたい。君のそばに居たい。この先も、ずっと。

だからとても嬉しいよ、ありがとう。』

 

妻をそっと抱きしめる。優しく、けれど強く。長く長く、君と同じ時を過ごせるように。

 

『えぇ、私も、、、嬉しい。』

 

背中に回る細い腕を感じながら、私はそっと目を閉じた。

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

――――――――――

 

――――――

 

――

 

 

 

あぁ、、、

 

 

あの時に戻りたい

 

 

君にもう一度会いたい

 

 

君はまた笑ってくれるかな

 

 

ねぇ、―――。

 

 

 

……

 

崩れた壁の向こう側からグラードンがこちらに近づいてくる。強い日差しが照りつける。

熱帯地域であるホウエン地方に住み慣れているダイゴやミクリでさえもその日差しに汗がぶわりと吹き出してくるのがわかった。水タイプであるミロカロスは皮膚から自身の水分が奪われている感覚がして、今すぐ水の中に飛び込みたい衝動が湧いてくる。ボーマンダは地面に降り立ち、その暑さに羽を地面に下げながらハァハァと口呼吸を繰り返していた。

これはゲンシグラードンの特性、終わりの大地によるものである。特性日照りや、技の日本晴れによるものよりも更に強い日差しである。体の水分が抜けていき、いつしか干からびてしまうのではないのかと思ってしまうほどだ。

 

「さて、余興はここまで。君たちには退場願おう。」

 

シュオウの左腕の時計が輝く。

 

 

 

「歪め。フーディン、メガシンカ」

 

時計とフーディンが持つメガストーンから現れる光の蔓が現れ、結びつく。何度も見たその光景にダイゴたちは臨戦態勢を取る。

メガシンカすることで髭が伸び、また手に持っていたスプーンは周囲に飛ぶ。坐禅を組んだ姿はどこかの神的存在のようなものだ。

 

「フーディン、サイコキネシス」

 

周囲一体にサイコパワーが広がる。波紋のように広がる念力の波を避けるためにボーマンダは空に飛び上がる。ミロカロスはサイコキネシスが当たる前に自己再生で体力を回復し、技の衝撃に耐えようとする。

 

「ボーマンダを追え。」

 

波のように広がっていたサイコパワーが一点に集まると、空を飛ぶボーマンダを追いかけ始める。技を発動してからその軌道を変えることは容易ではない。メガフーディンの増強された念力はフーディンの頃とは俄然異なる力だと言えるまでに増幅し、進化している。念力ポケモンという名に相応しい力だ。

サイコキネシスがボーマンダを捉える。

 

 

「ドラゴンダイブでサイコキネシスを弾け!」

 

 

サイコキネシスがボーマンダを包もうとした時、ボーマンダはドラゴンダイブを発動させ自身の体を回転させる。回転とドラゴンダイブにより生まれるドラゴンエネルギーの壁をサイコキネシスと反発させる。サイコキネシスを打ち消すとともにドラゴンダイブも解除されるが、致し方ない。

 

「龍の舞では防ぐことができないと判断したか。自身のポケモンではないというのに、、、流石はチャンピオンだと言おうか。」

 

龍の舞は本来変化技と呼ばれる類のものであるため、そこに攻撃性は含まれていないのだが、ボーマンダ自身の能力に加え、ボーマンダと龍の舞の効果の相性の良さ、そしてそこに発生するドラゴンエネルギーの流れを使い、防御や回避に転じる方法を少女とボーマンダは編み出した。しかし、今回は敵ポケモンのパワーが強く龍の舞では防ぎきることができない。だからダイゴは龍の舞ではなく、ドラゴンダイブを応用することで攻撃性を含ませサイコキネシスを弾いたのだ。

ボーマンダの能力を理解した上で、その場で有効な技の判断。自身のポケモンでなくともそのポケモンの特徴、能力を瞬時に理解することはチャンピオンとして、多くの経験を積んだ者だからできることだ。それはダイゴだけでなく、ミクリや他地方のチャンピオンはもちろん、四天王でもして見せるだろう。戦い慣れていないから負けるなど、彼らにとっては言い訳にならない。

だが、シュオウにとってもそんなことはボーマンダがメガシンカした時からわかりきっている事だ。

 

「さて、ではこれはどうかな。シャドーボール。」

 

フーディンが周囲にシャドーボールを複数出現させる。数での勝負ということだろうか。シャドーボールを放っては次から次へと出現させる。

 

「ミロカロス、龍の波動を広げてシャドーボールを壊せ!」

 

ミロカロスが龍の波動を広範囲に広げながら放つ。技の威力は分散され攻撃力は下がるが、シャドーボールを相殺することだけでは目的ではなかった。シャドーボールは爆発するのではなく、光の粒になり弾ける。ミクリは爆発により視界が閉ざされるのを避けたかった。

光が飛び散る先にはグラードンの姿。グラードンの口から大きな炎が飛ばされる。あの炎は大文字だ。

そう、こうして視界が閉ざされることで生まれる隙をグラードンで突いてくることを予想したのだ。

かといって、グラードンの大文字を相殺する手立てがあるとは限らない。伝説のポケモンによって放たれた大文字ら通常の倍の大きさだ。視界を奪われるのは防げたが、グラードンの技を防ぐ方法がない。いつもならハイドロポンプで相殺するが今は大日照り状態。大日照りは水タイプの技を全て消してしまう厄介な状態だ。空の柱の時はカイオーガがいたおかげで効果が相殺されていたが、今いるのはグラードンのみ。対策のしようがない。

 

「ダイゴ、ボーマンダをミロカロスの後ろに!」

 

「ミロカロスで受け止めるつもりなのかい?!守るもないのに、、、!」

 

「つべこべ言っている暇はないよ。ボーマンダを失うわけにはいかないだろう。」

 

ダイゴの今の手持ちで倒れたボスゴドラ以外にメガシンカできるポケモンはいる。だが、そのポケモンを出したとしてもメガシンカの余地を与えられずに倒されるだろう。つまり今、勝利の鍵になるのはボーマンダということになる。ボーマンダを失えばフーディンとグラードンを止める存在がいなくなり、それこそ一巻の終わりだ。

ミロカロスに大文字を防ぐ技を持っていなくとも、優先するべきはボーマンダを守ること。ミクリに自分の判断を変える気は無い。

 

「大丈夫、信じてくれ。」

 

ミクリは、基本いつも優美な笑みを浮かべている。それは自身がコンテストマスターであるからだろう。ポケモンコンテストという存在の品を落とさぬよう、多くのポケモンコーディネーターたちの頂点にいることの責任を持って日々振舞っている。それはコンテスト以外のバトルでも同じだ。相手が例え友人であるダイゴだとしても美しく流麗に戦う姿はまさに水のアーティストだ。

そんなミクリが、今は好戦的な笑みを浮かべ相手と敵対している。相手は伝説のポケモン、緊迫した現状がミクリを昂らせていた。

ダイゴは険しい面持ちでミクリを見ていたが、次には諦めたようにため息ついた。

 

「任せたよ、ミクリ。

ボーマンダ!ミロカロスの後ろに回ってくれ!」

 

ボーマンダがミロカロスの後ろに下がる。戸惑いながらミロカロスを見るが、ミロカロスは任せてと強く鳴く。

大文字がミロカロスとボーマンダに迫る。2体を容易に飲み込んでしまうサイズの大文字は流石伝説のポケモンだというしかない。

ミロカロスが前進する。ミクリは冷や汗を流しながら口角を上げた。

 

「ミロカロス、自己再生!大文字を受け流すんだ!」

 

「正気かい?!」

 

「!」

 

ミロカロスが自己再生の光に包まれながら大文字を受け止める。大文字によって与えられるダメージを自己再生で片っ端から回復していくつもりらしい。ミクリらしかぬ無茶苦茶な戦法にダイゴだけでなくシュオウまでも驚きを隠せなかった。

 

(自分らしくない。あぁ、そうだろう。)

 

驚く2人を目の片隅で見ながら、ミクリは自虐的笑う。こんな無理な方法を取るなんて自分自身も思ってもみなかった。でも悪い気はしなかった。新しい自分を知ることができたと、ミクリは何故か達成感のような物を感じていた。何を達成したのか自分でもわからなかったが、もう十分だと不思議と思ってしまう。だが、終われない。ここで終えることなんて、できやしない。ミクリの強い思いが、ミロカロスに伝わる。

より一層の強い光に包まれたミロカロスが大文字を突き破った。掻き消える大文字。ミロカロスは美しい声が辺りに響く。

 

「ははァ!伝説の技を受けきるたァ、あのミロカロスも最高だなァ!」

 

外野でオトギリが満足気に笑う。

満身創痍でありながらも、まだまだ倒れそうにない相棒にミクリは拍手を送る。よくやった、言葉にはしなかったがミロカロスはその賞賛を確かに受け取った。彼女の美しさと強さにもはや言葉は必要ない。

 

「ミロカロス、フーディンに龍の波動!」

 

勢いに乗ったミクリが攻める。

しかし、相手もそれを易々と許してくれるほど優しい訳では無い。

 

「サイコキネシスで龍の波動を流せ。」

 

サイコキネシスのサイコパワーが龍の波動を明後日の方向へ流す。流された龍の波動が壁に穴を開けた。

 

「あまり調子に乗られては困る。

フーディン、瞑想。」

 

フーディンが目を閉ざし、エネルギーを貯める。フーディンの防御力と攻撃力が増加する。

それを止めようとミロカロスとボーマンダが攻撃力を仕掛けるが、グラードンの大日照り下によりノータイムでのソーラービームに邪魔をされる。

 

「シャドーボール。」

 

複数展開したシャドーボールが連射される。

 

「ドラゴンダイブ!」

 

ボーマンダがシャドーボールを相殺していく。数の多さに飲まれそうになるが、翼で切り裂いては爆発するまでに離脱しダメージを軽減する。

その間にもグラードンがヒートスタンプで襲い掛かるが、龍の舞で上昇したスピードでぎりぎり避ける。

 

「グラードンがいる限りボーマンダの行動が制限されてしまう、、、。」

 

先程のような直接攻撃ならばボーマンダのスピードで避けることができるが、大文字のような広範囲技の技ならば避けるのが難しい。

ダイゴが険しい顔をしながら思考を巡らせる。

 

「ダイゴ、フーディンとグラードンを近づけられるかい?」

 

徐ろにそう尋ねてきたミクリにダイゴが首を傾げる。

 

「策があるのかい?」

 

「、、、上手くいくかわからないけどね。けれど、グラードンにダメージを与えるならこれ以外の方法は考えつかない。」

 

どんな方法を考えているのかダイゴはわからなかった

が、あの大文字を防いだのならば掛けてみるのもいい。なによりミクリはダイゴの旧来の友人だ。任せる以外の選択肢はダイゴに無い。

任せると笑うダイゴに、ミクリは強く頷いた。

 

「ボーマンダ、フーディンに接近してくれ!」

 

「何を考えているの知らないが、そう上手くいくと思わないでくれ。

フーディン、引き付けてサイコキネシス。グラードンの的にしてあげなさい。」

 

高いスピードを活かしてフーディンに接近するボーマンダ。ぐるぐると空を回りながら捉えどころのない動きで翻弄する。そんなもの構うものかとフーディンはサイコキネシスで近づいてくるボーマンダを捕まえようとする。

びたり。

サイコキネシスによりボーマンダが捕らえられる。自由を封じられたボーマンダに再びグラードンのヒートスタンプが襲い掛かる。

 

「今だ!ギガインパクト!」

 

反動で動けなくなることを忌避していたのだが、今出し惜しみする必要は無い。ミクリを信じてギガインパクトを選択した。

サイコキネシスをギガインパクトの力で打ち消し、フーディンの身体に突進する。衝突したと同時にプーティンの身体を押し上げてグラードンのヒートスタンプ目掛けてぶち当てる。

ヒートスタンプとギガインパクトに挟まれ双方から掛けられる圧に苦しむが、ボーマンダはお構い無しにフーディンの身体ごとヒートスタンプを押し切って2体の体勢を崩す。

 

「ミロカロス、吹雪を自分の周囲に留めてくれ。」

 

ミロカロスは口から氷の粒を放ちながらコンテストで培われたコントロール力を駆使して吹雪を自身の周囲に渦巻かせる。雪のドームはミロカロスの身体を冷やしていく。雪が大日照りによりどんどん溶かされていく。ピト、ピトと溶けた雪が水滴となってミロカロスの身体に降る。潤ったミロカロスの体が水滴によって輝き出す。

 

「水のアーティストとして、元ジムリーダーとしての底意地、、、さぁ篤と味わうがいい!

ミロカロス、ハイドロポンプ!!」

 

大日照り下において水技は全て蒸発させられ使うことはできない。しかし、ミロカロスは自身の技である吹雪を大日照りで溶かすことで水分を補給したのだ。水を得たことでミロカロスはハイドロポンプを1度だけ使用可能にさせたのだ。ダイゴに2体を近づけるように頼んだのはハイドロポンプを放つ隙を作るためだったのだ。

一点集中で放たれたハイドロポンプはフーディンを飲み込みながらグラードンに決まる。

グラードンはメガシンカすることで地面の単タイプから地面・炎の複合タイプに変化している。水技は効果抜群だ。

 

傾く身体にグラードンが倒れる。そう思った。

 

 

 

 

バキンッッ

 

 

グラードンの身体が勢いよく起き上がり、鋭い目がミロカロスを捉えたその時、地面から大きく突きだした岩の刃がミロカロスを貫いた。

爆発と共に吹き飛ぶミロカロス。空中へ投げ出された身体は重力に従って地面に叩きつけられる。

ハイドロポンプへの反撃は容赦のないものだった。

 

ミクリはミロカロスの傍により、眉を下げて微笑む。ハイドロポンプを打つことも、その前の自己再生で大文字を受け止めたことも無茶だということは分かっていた。ミロカロスがとっくに限界であったことも。ハイドロポンプを打ったその時からミロカロスの役目は終わっていたと言っていい。だが、自分の思いに応え無茶を通してくれたパートナーにミクリは心から賞賛を述べたい。

優しくモンスターボールにミロカロスを戻す。

 

「よく頑張ってくれた、君は私の最高のパートナーだ。」

 

そう言ってモンスターボールを撫で、胸に抱く。

ミクリの肩にミミッキュが飛び乗り、黒い手で頭を撫でた。ミクリはミミッキュを見て、優しく笑うと抱き寄せる。

ありがとうと言おうとした時、ミクリはハッと目を見開いてミミッキュをダイゴの方に投げた。

ダイゴは驚きながらもミミッキュを抱きとめ、ミクリの方を見る。ミミッキュは何があったのか分からず混乱しながら振り向くと、ミクリがサイコパワーに締め付けられていた。フーディンのサイコキネシスだった。フーディンのサイコキネシスをいち早く察知したミクリは自分のことを顧みず、ミミッキュを助けたのだ。

なんでそんなことを、私の事なんて気にしなくて良かったのに、ミミッキュは自分のせいでミクリが捕まってしまったことに泣き出す。どうにかミクリを助けようと黒い手を伸ばすが、フーディンによって更に締めあげられたミクリが呻き声を上げミミッキュは固まってしまう。

 

「ミクリ!!」

 

ダイゴがミクリを呼ぶ。ミクリは辛そうに顔を強ばらせていたが、意識ははっきりしているようでダイゴは一先ずほっとする。そしてシュオウをぎっと睨みつけた。シュオウは薄く微笑みながら彼らを見ている。

 

「調子に乗られては困る、、、私はそう言ったはずだが。全く、、、ほとほとうんざりだよ。君たちにはね。」

 

だから、もう消えてくれ。そういって手を掲げるとグラードンが炎を前方に集め出す。恐らく大文字のエネルギーを集めているのだろう。先程より多く集中した炎の球にゴクリと唾を飲む。

ボーマンダは大文字を邪魔しようと動くが、更に締め付けられるミクリを見て足を止める。

 

 

「私のことはいい、グラードンを止めるんだ。」

 

 

ミクリの言葉にダイゴはぎりっと歯を噛み締める。どうするダイゴ、そう自分に問いながらダイゴは必死に考える。そして、結局首を振った。

 

「何をしてるんだダイゴ!早くしないとボーマンダが、

「できるわけがないだろう!!」

、、、。」

 

ミクリの咎めるような言葉をダイゴが珍しく声を荒らげて遮る。ミクリは少し驚いて、何故だと眉をひそめる。

ダイゴは再度首を振る。

 

「できるわけない、、、!ミクリは僕の友人だ、見捨てることなんてできない!

君が傷つけばお嬢さんも、、、」

 

きっと悲しむ、そういって悔しそうに顔を背けたダイゴにミクリは目を伏せて項垂れた。ミクリも自分がダイゴと同じ立場なら同じことをするだろう。だからといってここで負けるわけにはいかない、やるべきことがあるだろうとそう口にしようとしたが、それはグラードンによって阻まれる。

グラードンの大文字が膨れ上がっており、その膨大な熱にどのポケモンを出そうと受け止めることは難しいと悟る。ボーマンダとミミッキュがダイゴとミクリの前に立ちはだかり、どう切り抜けるが頭を一生懸命働かせる。

だが、大文字の熱射に当てられて上手く頭が働かない。

あれを喰らえば人もポケモンも只では済まない。最悪の結果を頭に浮かべながら衝撃に耐えるように目を伏せる。

 

 

 

 

――すまない、お嬢さん

 

 

 

2人が瞼の裏に見たのは、たったひとりの少女の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




手持ちポケモン
ジバコイル(頑丈)
リフレクター、光の壁、ボルトチェンジ、ラスターカノン
ネンドール(浮遊)
リフレクター、草結び、大地の力、大爆発
ピクシー(天然)♂
月の光、ムーンフォース、火炎放射、この指とまれ
フーディン(マジックガード)→(トレース)♂
シャドーボール、サイコキネシス、未来予知、迷走
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