あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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スペース団:決戦

ここで倒れるわけにはいかない。

チャンピオンとして、そしてあの子の仲間として。

あの子はダイゴの意志を継いであの宝玉の正体を見つけ出し、ここまで来てくれた。ならば自分たちもその想いに応えなければならない。だと言うのに。

巨大な火の玉を見るとそれは叶わないと悟ってしまう。

 

 

(すまない、お嬢さん)

 

 

 

彼らはゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メタグロス!!!!ラスターカノン!!!!」

 

 

 

声とともに3階ほどの高さから白銀の閃光が壁を突き破り、一直線に伸びると大文字を貫通してグラードンの顔面に直撃する。グラードンの身体が後ろに一歩下がる。シュオウが目を見開き、オトギリは待ってましたと言わんばかりに笑った。

グラードンを後ろに引かせるほどのパワーを持つポケモンをダイゴとミクリは1体しか知らない。

穴の空いた壁をさらに突破って現れたのは白銀のメガメタグロス。

 

「メタグロス!!!」

 

ダイゴはその顔を輝かせて自身のパートナーの名を呼ぶ。メタグロスも自身のトレーナーの姿を目に入れると、嬉しそうに鳴き声を上げた。また、メタグロスの足の影から姿を見せる1人の人物。

 

「「お嬢さん!!!」」

 

「ダイゴさんにミクリさん!!」

 

3人はお互いの顔を見合わせるとぱっと顔を明るくさせる。

だが、次の瞬間にミクリがサイコキネシスで縛られることに気づいた少女はぎろりとシュオウと、サイコキネシスを操るフーディンを睨む。

 

「一度ならず二度までも、、、!

メタグロス、容赦なんていらない。サイコキネシス!!」

 

メタグロスが目を怪しく光らせると、フーディンをサイコキネシスで壁に叩きつける。衝撃で崩れた壁の瓦礫にフーディンが挟まれる。その瞬間にミクリがサイコキネシスから解放され、ダイゴが受け止めた。

 

「フーディンがエスパー技に押されただと、、、?!」

 

シュオウがたらりと一筋、汗を流した。

ラスターカノンによって後ろに退かされたグラードンがメタグロスに大文字を放とうとする。メタグロスは上に乗る少女を守るためにも、防御技を前方に展開する。グラードンは技ごと飲み込んでやろうとエネルギーを貯める。

だが、それを許さないものがここにいる。

 

「ボーマンダ、ギガインパクト!!」

 

強いエネルギーを纏ったボーマンダが大砲のようにグラードンに突っ込み、グラードンの腹部に激突すると再び後退させる。さらにボーマンダの背中にしがみついていたミミッキュが追い討ちと言わんばかりにじゃれつき吹き飛ばす。

彼女らのパワーが上昇しているのは気のせいだろうか。いやきっと、気のせいではないだろう。

 

「ボーマンダ、ミミッキュ!!!」

 

少女が心底嬉しそうにボーマンダとミミッキュを呼ぶ。ボーマンダは嬉しそうにメタグロスの周りを飛び回る。ミミッキュも可愛らしく鳴いている。

メタグロスとボーマンダはダイゴとミクリの元へ飛んでいく。

ダイゴとミクリが少女に手を伸ばす。少女はメタグロスの上から飛び降りると、2人の手を取りながら着地した。

 

3人の間に言葉はなかった。再会を喜ぶ言葉も無事を確認する言葉もなく、欠けたピースが揃った安堵感、充足感に浸っていた。

どうやってここまで来たのかダイゴとミクリは知らないが、少女が身を粉にしてきたことはわかる。1日の間で少し変わった顔つき。顔が砂や埃で汚れていて、ここに来るまでの壮絶なバトルが容易に想像できる。ダイゴたちも麻痺は木の実で治ったものの手首には縄で縛り上げられた後がくっきりと残っていた。

ここに揃うまで必死に戦ってきた。

 

――無事だと信じていた

 

――来ると信じていた

 

少女は張り詰めていた緊張が切れたように、とても泣きたくて仕方がなかった。底から湧き出る安心感に少女は胸が締め付けられる。

ダイゴたちも同じで、飛行船から落とされた少女が自分の力でここまで来てくれた、自分たちの信頼に応えてくれたことのなんと誇らしいことか。

するとボーマンダとメタグロスが自身のトレーナーの下に戻り、ぐりぐりと擦り寄る。

 

「ボーマンダ!無事でよかった、、、新しくギガインパクトを覚えたんだね。格好良かったよ。

ミミッキュもダイゴさんとミクリさんを助けてくれてありがとう。」

 

胸に飛び込んできたミミッキュを抱きとめ、優しく撫でながらボーマンダと額を合わせてパートナーの無事を確認し合う。腰のボールからブースターが飛び出し、ボーマンダとお互いを労るように寄り添う。お互いの怪我を気遣い合う姿は、2匹の仲の良さが伺える。

 

「メタグロス、、、君もメガシンカしたんだな。よく頑張ってくれた、偉いぞ。」

 

メタグロスを撫でて再会を噛み締めるダイゴ。

それぞれが再会を喜んでいると、少女とメタグロスが飛び出した穴から別の人物が現れる。

 

「デンジさん!」

 

エレキブルに抱えられたデンジだった。元々一緒にいた2人だったが、グラードンの存在を感じ取った少女とメタグロスが先に進む形になり、一時別行動の様になったのだ。デンジの傍らには案内役になっていた少女のレントラーも確認できる。

エレキブルは瓦礫を伝って降りると少女の傍までいってデンジを降ろす。レントラーはボーマンダと鼻をくっつけて再会を喜んでいる。

デンジは少女の後ろのダイゴとミクリの姿を確認する。

 

「よく頑張ったな。」

 

「ありがとうございます、デンジのお陰です。あの時、助けてくれたのがデンジさんでなければ私はここまで来れたかわかりません、、、。」

 

デンジは自分の一番の使命をやり遂げ、一つ肩の荷が下りたことに息をついた。そして、少女が仲間に再会できたことに対して嬉しくも思っていた。

 

「僕達からもお礼を言わせてくれ。」

 

「私たちの大事な子に手を貸してくれてどうもありがとう。」

 

デンジは気にするなと片手をあげる。

少女がほっと安心しているとバチりと身体を電流が駆け巡る。痛みで少しふらつくと慌ててデンジが少女の腕を持ち上げて支える。

 

「お嬢さん、、、?!」

 

ミクリが少女を様子を心配そうに伺う。支えるように後ろに回ったボーマンダが少女の頬にすり寄って不安そうに覗き込む。

 

「また麻痺していること忘れてたのか。」

 

デンジが呆れたように言うと、ははと少女が苦笑いをこぼした。

 

「でも、もう大丈夫です。

ミミッキュ、ラムの実持ってる?」

 

ミミッキュが急いで布の中からラムの実を探し出し、少女に手渡した。

少女はお礼を言ってから、ラムの実に齧り付く。ふっと身体の痺れが取れる感覚に顔を明るくさせた。

麻痺のことを何も知らないダイゴたちは心配そうに少女の顔を覗き込むが、少女はにこりと笑って大丈夫だと伝えた。

 

ふぅっと、一息ついた時、後方から瓦礫が崩れる音が聞こえた。

瓦礫に埋もれていたフーディンが瓦礫を吹き飛ばした音だった。また同時にグラードンも体勢を立て直したようで少女たちにプレッシャーを放っていた。

 

「シュオウ、、、」

 

少女がシュオウをじっと見る。

シュオウはその目が前のものと違っていることに違和感を感じる。何か言いたげな、哀れみを宿したような目に居心地が悪そうに目を細める。

少女はシュオウから視線を逸らしオトギリに目を向ける。オトギリは少女が登場しても傍観者の立ち位置を変える気はないようで、ただ役者の追加に気分は最高潮になっているようだ。

少女はバトルに参加しないオトギリを訝しみながらも、手を出さないのならばそれでいいだろうとオトギリの存在自体を気にしないことを決める。

 

(今はバトルに集中しよう。邪念を抱けばそれだけ隙になる、、、グラードンはは倒せない。)

 

少女がシュオウに向き直ると、後ろからデンジが声をかけてきた。

 

「俺の役目はこれで終わりだ。これからは手筈通り【あいいろのたま】と【べにいろのたま】の無力化に向かう。」

 

「わかりました。

レントラー、そのままデンジさんに着いててくれる?」

 

デンジのトレーナーとしての腕ならばスペース団の下っ端程度に負けるはずはないが、隠し球がないとは限らない。それにデンジをここまで連れてきたのは少女だ。それではお願いしますというのはあまりにも無責任だろう。

デンジは少女の考えを察したのかレントラーを快く受け入れた。

 

「ならば私も同行しよう。

ダイゴ、お嬢さんを頼んだよ。」

 

不意に掛けられた言葉に驚く。

ミクリは決定事項のようにデンジの隣に立った。

 

「、、、いいのか?」

 

再会してすぐに再び別れるとはデンジも予想外だった。デンジがダイゴと少女の方を見ると、ダイゴは分かっていたかのように勿論だと返していたが少女は眉を下げてミクリを見ていた

そんな少女にミクリが苦笑を漏らす。

 

「大丈夫だよ、お嬢さん。この前とは状況が違う。私はお嬢さんを信じている、心の底から。

だから、、、

 

ダイゴのことをよろしく頼むよ。」

 

飛行船のときは少女はミクリにとって守るべき対象だったが、今は共に戦い支え合う仲間という認識に変わっているのだ。

ミクリの言葉にに少女は眉を下げていたのを首を振って振り払うと、キリッと凛とした表情を見せた。

 

「任せてください!

ミミッキュ、ミクリさんに協力して。」

 

ミクリは少女の答えに満足すると、ミミッキュを肩に乗せてデンジと共に部屋の隅の重厚な扉へ走っていく。

 

「そうはさせない。フーディン、シャドーボール。」

 

シュオウがデンジとミクリの行く手を阻むためにフーディンにシャドーボールを指示する。

しかし、素早くフーディンの前に回り込んだボーマンダによってシャドーボールを無力化される。

ミクリたちが扉を開け走っていく。足止めは叶わなかったようだ。

 

少女はブースターをモンスターボールに戻しと、ボーマンダはぐるりと旋回しながら戻ってきた。メタグロスも臨戦態勢だ。

ダイゴはメタグロスとボーマンダを交互に見やった。

 

「ふふ、、、」

 

徐ろに笑いだすダイゴ。少女は不思議そうにダイゴを見上げた。

 

「いやすまない。パートナーポケモンたちがそれぞれ別のトレーナーの手でメガシンカしているなんて不思議で堪らなくてね。

本来ならならメタグロスと繋がっているはずのキーストーンがボーマンダと繋がっているなんて、事実は小説よりも奇なりってこういうことを言うのかな。」

 

少女はダイゴの言葉に確かに、と考える。

パートナーポケモンとトレーナーはこの場に揃っているのに、メガシンカさせているのはそれぞれ逆だ。第三者から見ればメガシンカしている状況は変わらないため、その不思議な感覚を共有できるのはダイゴと少女の2人しか居ないことも拍車をかけている。

 

「でも、、、」

 

ダイゴが言葉を続ける。

 

「でもメタグロスの存在もキーストーンから確かに感じるんだ、驚きを越して神秘的だよ。」

 

ダイゴのキーストーンはボーマンダと繋がっている。しかし、キーストーンからはボーマンダだけではなくメタグロスとの繋がりも流れ込んでくる。それは少女も同じだった。緊迫した状況下にあるにも関わらず、心の波が穏やかになる。

ボーマンダが少女に擦り寄り、メタグロスがダイゴの傍らに控える。2人はそれぞれのパートナーをするりと撫でた。

 

「さぁ、お嬢さん!彼らに結局どちらが強くて凄いか知ってもらおうか!!」

 

「はい!!」

 

ボーマンダとメタグロスが咆哮する。それをかき消すかのようにグラードンも雄叫びを上げる。

バトルフィールドを埋め尽くす緊迫感に、心臓が律動する。

 

これより始まるは天下分け目の大勝負、文字通りの決戦だ。

 

「メタグロス、コメットパンチ!」

「フーディン、シャドーボール」

「ボーマンダ、ドラゴンダイブでメタグロスの援護をお願い!」

 

メタグロスがコメットパンチでグラードンへ突進していく。グラードンは断崖の剣、フーディンがシャドーボールでその行く手を阻むが、ボーマンダが鋭い翼でシャドーボールを切り裂き、地面から突き出してくる岩の剣を正面から破壊する。

止まらないメタグロスをグラードンはヒートスタンプで上から押さえつけようとする。振り下ろされる炎の手がメタグロスとぶつかり合う。激突した衝撃波が少女たちの所まで届く。

メタグロスがヒートスタンプを押し上げながら、横に流すと技の反動で爆発が起きる。煙でグラードンの視界が奪われる。

 

「ギガインパクト!」

 

煙を利用し、死角を突いてグラードンへギガインパクトを叩き込む。顎を狙ったことで脳震盪を起こしたグラードンがよろめく。これでギガインパクトの反動で動けなくなったところをグラードンに攻められることは無い。

 

「サイコキネシスでボーマンダを墜とせ」

「ラスターカノンでボーマンダを守れ!」

 

ボーマンダに攻撃を仕掛けるフーディンをメタグロスが邪魔をする。

ここでギガインパクトのクールタイムが終わる。グラードンも脳の揺れを振り払うとまたバトル場へと戻ってきた。

その時、グラードンが陽の光を集め始め、ひとつのエネルギー体を作り出した。

 

「!

ダイゴさん、ソーラービームが来ます!」

 

「ああ!メタグロス、守るだ!」

 

大日照りによりソーラービームの貯めの時間が短くなる。グラードンからソーラービームが発射される。

ボーマンダはメタグロスの後ろに下がり、守るでソーラービームを受け止める。

 

「フーディン、 瞑想。からのシャドーボールだ。」

 

ソーラービームを受け止めている間に、フーディンが攻撃力を更に上げる。そして複数に展開されるシャドーボール。

メタグロスがソーラービームを防いでいる以上、シャドーボールを止められるのはボーマンダだけだ。だが、ボーマンダの龍の舞で巻き取れる量のシャドーボールではなかった。

 

(あの量は龍の舞じゃ追い付かない。捨て身で受け切るしか、、、でも今ダメージを受けるのは)

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブで回転しながら巻き取ってくれ!君ならできる!」

 

少女が思考を巡らせていた時、ダイゴが素早くボーマンダへ指示を出す。

ボーマンダはダイゴの指示に動揺することなく、ドラゴンダイブを発動させながら回転をすることで気流を操りシャドーボールを巻き取った。

 

「ドラゴンダイブでシャドーボールを、、、。」

 

「龍の舞を応用しただけさ。お嬢さんたちのこれまでの努力のお陰でできたんだ。」

 

だからあれは君たちの力だよ、そう言ってダイゴは笑った。

しかし、あれでシャドーボールを完封できたわけでない。ボーマンダの周囲を回る複数のシャドーボールを何とかしなければ身動きが取れない。ソーラービームを守るで防ぎきったメタグロスにサイコキネシスでシャドーボールを吹き飛ばしてもらおうかと考えたが技をぶつけることで爆発する可能性がある。そうなれば爆発がボーマンダまで及ぶだろう。今ボーマンダに隙を作らせる訳にはいかず、ダイゴと少女が難しい顔をする。

その時少女があっ、と何かを思いついたような声を上げ、少し得意気に笑う。

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブから龍の舞に切り替えて!」

 

龍の舞に切り替えれば、ドラゴンダイブで巻き取ったシャドーボールが当たってしまう。龍の舞ではシャドーボールを巻き取れないからドラゴンダイブを選択したというのに、ただの自殺行為では無いかと思われた。だが、龍の舞を発動すると周囲にあったシャドーボールはボーマンダに当たることも、爆発することもなく龍の舞の波動に押されたかと思うと舞と共に弾けるように消えてしまった。

攻撃性を持つドラゴンダイブから龍の舞に切り替えたことで爆発することがなく、また龍の舞による力の波によってシャドーボールを寄せ付けずに弾けさせたのだ。

まるでコンテスト技だ。コンテストでは美しくポケモンを見せるために技の威力や使い方のコントロール力が不可欠。ボーマンダに龍の波動をぶつけた時も技を自由自在に扱う力が卓越している彼だからこそあれが可能だった。

そのミクリを彷彿とさせる少女にダイゴは思わず目をぱちくりさせる。

 

(ミクリめ、お嬢さんにしこんでたな?)

 

オトギリに敗れてから少女がポケモンたちとバトルの練習をしていた時にミクリが指南でもしていたのだろうと当たりをつけた。それなら自分が知らなかったミミッキュをミクリが既知だったことにも説明がつく。3人で生活してきた一ヶ月間、ミクリは誰よりも何かと少女を気にかけていたのを知っていた。

ミクリの教えを少女は余すことなく吸収し、自分の力へと変えている。子どもの吸収力とはなんと凄い、教えごたえの塊だ。

 

「いい判断だ。」

 

そう褒めるダイゴに少女はミクリさんに教えてもらったんですと嬉しそうに笑った。

メタグロスのところへボーマンダが近寄り、体勢を立て直す。

安否を確認するようにメタグロスが鳴くとボーマンダは首を振ってからグッとこりを取るように伸ばしてから、メタグロスに大丈夫だと鳴く。

 

足並みが揃った。

グラードンの怒号が響き渡る。それを合図にポケモンたちが一斉に飛び出した。

 

「フーディン、未来予知」

 

「ここで未来予知を選択するか、、、!」

 

未来予知は数分後の未来へ向けて攻撃を行う技、ゲンシグラードンというポケモンの存在に加え緊迫したこの場面で未来予知をされたことは少女たちにとって不利だ。グラードンを止め、尚且つダメージを与える中で未来予知の対応まで手が行き届くか怪しい。

ダイゴはまずい状況になったかと顔を顰めた。だが攻撃をやめて防御に徹することもできない。ダイゴたちにあまり時間は残されていないからだ。計画の最終的な決行にはシュオウの存在は必要だが、計画の準備段階ではシュオウがいなくとも部下が進めているだろう。そうだとすればレックウザを命が危うくなる。それは絶対に避けなければならない。

 

「メタグロス、コメットパンチ!」

 

「ボーマンダ、フォローをお願い!」

 

トッ トッ トッ、、、

(10、 11、 12、、、)

 

メタグロスが突進して行くと同時に、ボーマンダが飛び出す。並走する2体にグラードンが断崖の剣で行く手を阻む。

メタグロスを押しのけたボーマンダが断崖の剣に囲まれる。

 

「ドラゴンダイブの力を翼に集中させて岩を切り裂いて!」

 

メガシンカしたことで得た鋭利な翼にドラゴンエネルギーを集中させ、岩を両断して行く。

 

トッ トッ トッ、、、

(46、 47、 48、、、)

 

「シャドーボール」

 

「ラスターカノンで迎え撃て!」

 

フーディンが展開したシャドーボールを薙ぎ払うように次々にラスターカノンで吹き飛ばしていく。続けてグラードンの大文字が降りかかる。

 

「サイコキネシスで大文字を打ち消せ!」

 

「サイコキネシスで相殺しなさい。」

 

サイコキネシス同士がぶつかり合い、シュオウの狙い通り相殺される。そしてそのままメタグロスはノーガードで大文字を受けてしまう。

壁に激突したメタグロスは地面へ墜落し、上から降ってきた瓦礫に埋まる。

無防備になったメタグロスを守ろうとボーマンダは空を飛ぶが、上からグラードンのヒートスタンプで地面に叩きつけられる。衝撃で2回ほど地面に激突したボーマンダはそのまま地面を滑るように吹き飛ばされてしまう。

 

「ボーマンダ!」

 

「メタグロス、、、!」

 

少女がボーマンダに駆け寄り、ボーマンダの身体を支える。よろ着きながらボーマンダは起き上がり、羽を地面に降ろして回復する。グラードンの思い一撃をくらってもボーマンダは耐え忍んでいる。それはメタグロスも同じで上の瓦礫を押し退けながら浮き上がった。彼の鉄の身体からは煙が立っていて、所々焦げ付いていた。

ポケモンたちが立ち上がってくれたことには一先ず安心だが、ダイゴは険しい顔を見せていた。メタグロスの動きがやや不自然だからだ。

メガシンカさせているのが少女だから、という訳では無い。恐らくはこの気候だろう。夜になっているというのにも関わらず、全てを干上がらせるほどの熱射がバトルフィールドを照りつけているのだ。メタグロスは元々暑い気候のところよりも寒い気候を好むポケモン。ホウエン地方でも見かけることはないほどだ。だと言うのに今のこの天気はいくらダイゴのメタグロスでも苦痛だろう。

メタグロスはスーパーコンピューター並の演算能力があると言われ、メガメタグロスはそれ以上の能力を有している。その突出した演算能力、いや予知能力と言ってもいいそれを駆使して戦うメガメタグロスの破壊力は凄まじい。だが、今メタグロスを蝕むこの熱射は彼の思考を鈍らせ、その演算能力を阻害している。メガジュペッタとのバトルは姿を見せないジュペッタのバトルスタイルによって行動の予測ができなかったが、演算能力が低下したわけでは無いためジュペッタが姿を現した瞬間に能力をフルに使うことはできた。だからこそ、どこから飛んでくるかわからない攻撃も対応できていた。

しかし今はメタグロスの演算能力は熱によって機能を鈍らせられている。圧倒的にメタグロスにとって分が悪い戦いだ。それに何か他のことを考えているのか余計に隙が生まれている。

メタグロスの状態をダイゴは気づいているのだ。

 

シュオウのフーディンはケロリとして問題なく戦っている。フーディンはメガシンカしたことで自分の全ての力、筋力さえもサイコパワーに変換していると言われ見るだけで相手の誕生から死までを知ることができるらしい。そんなメガフーディンならばそのサイコパワーで熱射を避けるを避けることだって可能かもしれない。現状で救いなのはシンオウ地方だけでなく、暑い気候のアローラ地方、天候が変わりやすいワイルドエリアによって環境に対する順応性を鍛えられたボーマンダがいる事だ。メタグロスだけが熱射に脅かされている。グラードンの圧倒的な力の前にダイゴは逆笑いが込上がった。

 

「メタグロス」

 

少女が不意にメタグロスを呼ぶ。少女はボーマンダを支えながらフーディンとグラードンから目を離していない。ボーマンダが少女の手から離れて空に飛び立つ。

 

「他のことは考えなくていい。ただダイゴさんの声を聞いて、ボーマンダと私を信じて。」

 

メタグロスに訴える少女の眼光は強く光っていた。

メタグロスが少女を真っ直ぐに見る。そしてゆっくり目線をグラードンたちに戻し、強く声を上げた。

調子を取り戻したようだ。

 

「、、、メタグロスをありがとう。」

 

ダイゴが少し眉を下げて少女に言うと、少女はキョトンとした顔をしてからくすりと笑った。

 

「さっきのお返しです。

それに、今のあの子たちのトレーナーは一人じゃない、そう思いません?」

 

トレーナーが2人いれば強さも2倍、2体揃えば4倍ですねと少女は笑う。

本来ポケモンにとってのトレーナーは1人。だが、今は違うのだ。

メタグロスの本来のトレーナーはダイゴであってもメガストーンが繋がっているのは少女。逆も然り、ボーマンダの本来のトレーナーは少女だがメガストーンはダイゴと繋がっている。

トレーナーと再会を果たした時点で指示する人は元に戻ったが、メタグロスとボーマンダは少女とダイゴの存在を無かったものとは考えていない。だからこそ、ボーマンダは少女がいてもダイゴの指示に従い、メタグロスは少女の言葉を聞き入れた。

1体のポケモンにトレーナーが2人、普通ならばありえない状態だが今の2体にとっては今以上に心強いことは無い。だが、間違えないで欲しい。たとえ1人だとしてもトレーナーがいるならば彼らは自身の全力を持って戦うだろう。

ダイゴは何か吹っ切れたように笑う。

 

「あぁ、、、確かにそうだね。

メタグロス、ラスターカノン!ボーマンダ、フォローを頼むよ!」

 

ダイゴの声にメタグロスとボーマンダが鳴き声を上げる。

メタグロスがラスターカノンの光を集め、ボーマンダはその周りをぐるぐると飛び回る。

 

「フーディン、シャドーボール」

 

再び複数のシャドーボールが展開される。

グラードンは断崖の剣を発動し、地面から突き出る岩の剣が2体に迫っていく。

 

「メタグロス、ラスターカノンで一点を貫け!

お嬢さん、頼む!」

 

「はい!

ボーマンダ、ラスターカノンの周りを龍の舞で旋回しながら進んで!」

 

迫り来る断崖の剣をメタグロスがラスターカノンを一点に集約することで、断崖の剣でさえも貫いていく。その周りをボーマンダが龍の舞で旋回することでラスターカノンが開けた穴を通り抜け、ぐんぐんとフーディンとグラードンに接近していく。

 

トッ トッ トッ、、、

(104、105、106、、、)

 

フーディンのシャドーボールがボーマンダに向けて放たれる。スピードが更に上昇したボーマンダはそれらを躱し、ラスターカノンがシャドーボールを爆発させる。

 

「フーディンにドラゴンダイブ!」

 

ドラゴンダイブがフーディンへ決まり、そのままフーディンを壁へと激突させる。

 

「フーディン、サイコキネシスでボーマンダを押し退けなさい」

 

フーディンがボーマンダの身体をサイコキネシスで操り、上へ押しのける。ボーマンダはサイコキネシスに抵抗することなくそのまま上へ上昇する。

 

トッ トッ トッ、、、

(137、138、139、、、)

 

ボーマンダが退けたことで目の前の視界が開かれたフーディンはボーマンダへ追撃を行おうと目を怪しく光らせる。しかし、シャドーボールの爆発の煙からメタグロスが現れる。

 

「また煙を利用したか、、、。」

「メタグロス、コメットパンチ!グラードンまで吹き飛ばせ!」

 

シュオウの言葉をかき消すようにダイゴの声が響き、メタグロスは大きな手を前へ突き出しフーディンへコメットパンチで突進する。

再びコメットパンチを受けたフーディンは身体を押し上げられ、グラードンに激突に激闘する。コメットパンチとグラードンに挟まれたフーディンは、技のダメージに加え、グラードンのマグマのような体表温度の皮膚に身体を焼かれて苦しんだ。

グラードンがソーラービームをメタグロスへ放つ。

 

「ラスターカノンで迎え撃て!」

 

先のソーラービームとは違い溜めないためラスターカノンで相殺することができる。しかし、やはり威力はグラードンに軍杯が上がるのは仕方ない。技の余波でメタグロスが後ろに後退させられる。

フーディンとグラードンが体勢を立て直す。

 

「メタグロス/フーディン」

「「サイコキネシス!」」

 

サイコキネシス同士が再びぶつかり合う。サイコパワーの衝撃が少女とダイゴの所まで届く。

 

トッ トッ トッ、、、

(160、161、162、、、)

 

グラードンが断崖の剣でメタグロスに襲いかかる。

 

「ドラゴンダイブで岩を砕いて!」

 

メタグロスを襲う断崖の剣をボーマンダは片っ端から粉砕していく。

 

「メタグロス、コメットパンチ!」

 

メタグロスがグラードンの顔目掛けてコメットパンチを炸裂させる。よろめくグラードンはヒートスタンプをメタグロスに振り下ろすが、位置を見誤りメタグロスの横の空を切る。

 

トッ トッ トッ、、、

(174、175、176、、、)

 

しかし、ヒートスタンプが振り下ろされた熱風でメタグロスの身体が吹き飛ばされる。伝説のポケモンのパワーたるや。一つ一つの攻撃に冷や汗がつたう。

少女は口を開いて深く息を吐き出す。それほどのプレッシャーがバトルフィールドを覆い尽くしているというのか。

 

トッ トッ トッ

(178、179、180、、、!)

 

少女が勢いよく空を見上げた。ダイゴが少女に驚き、動きを止める。

 

「メタグロス!!空に向かってラスターカノン!!」

 

少女が空を指さしながらメタグロスへ指示を飛ばす。メタグロスはハッとすると、指示通り空に向けてラスターカノンを放った。

その瞬間、空に穴が開き中から紫色の光が飛来する。

紫色の光とラスターカノンがぶつかり合い、大きな爆発を起こした。

 

「まさか、あれは未来予知、、、?!」

 

ダイゴが少女を見ると、ダイゴの視線に気づいた少女は得意気に笑う。

まさか、未来予知を感知できるというのか。

これにはシュオウも大きく目を見開いて驚きを隠せなかった。

 

「極度に緊張すると心臓の音が聞こえることってありますよね。カロスに未来予知をよく使ってくるジムリーダーがいたので、その時に心臓の音で未来予知が発動するまでの時間をある程度計る技術を身につけたんですよ。」

 

ほら、基本心臓のリズムは一定ですし。そう言って笑う少女にダイゴは無茶苦茶だねと拍子抜けした笑いをするしかなかった。確かに心臓の音、心拍は1分間で60〜90回拍動どうすると言われている。緊張していれば拍動は早くなるが、リズムは安定度一定だ。しかしどこに心臓の音で時間を計る人がいるんだ?ここか。ダイゴはそう1人で自問自答をする。

だが少女は自身の出身地であるシンオウ地方だけでなく、複数の地方を旅している。多くの戦術に触れてきたことを考えると納得だろう。

 

「でもあれはメタグロスじゃなかったら未来予知に合わせることはできなかったと思います。」

 

メタグロスを見上げながら少女が笑う。

それを聞いたボーマンダが少女を咎めるように鳴くと少女は慌ててごめんねと、苦笑いをした。

だが、少女が言ったことは正しくそうなのだ。卓越した演算能力を持つメタグロスでなければ未来予知のタイミングに細かく合わせることはできなかっただろう。しかし、それは少女とメタグロス、2人の力があってこそ成し遂げられたことだ。

普段のメガメタグロスであれば未来予知までの時間を脳内で予測することは容易いが、ゲンシグラードンと対峙する今、未来予知を予測し気にかけていられるほどの余裕が無かった。途中までバトル中の動きが少し鈍くなっていたのはそういう事だった。

少女がある程度の時間を計り、最後の微調整をメタグロスが行う。更にラスターカノンを覚えていたことでリスクなく未来予知を完封することができた。

予想外な行動を取ってくる少女にダイゴは翻弄されてばかりだと天を仰ぐ。

 

「さぁバトルの続きです。行きましょう、ダイゴさん。」

 

少女が誘うようにダイゴを呼びかける。

少女の後ろではメタグロスとボーマンダがこちらを後ろ目で見ていた。

ダイゴはゆくっりと目を瞑る。そして次に目を開けた時、彼は微笑んだ。とても、楽しそうな笑みで。

 

「あぁ、決着の時だ。」

 

………

 

タッタッタッ

軽快な足音がスペース団アジトの廊下に響いている。

あの重厚な扉から一直線に伸びる長い廊下をミクリとデンジは駆け抜けていた。

 

「本当に良かったのか?」

 

徐にデンジから投げかけられた質問は恐らく少女のことだろう。ダイゴはチャンピオンであるためその実力は言わずもがな。少女の実力も相当なものだが、伝説、しかもゲンシカイキしたグラードンならば話は別だ。

デンジの問にミクリは最初はきょとんした顔を見せたすぐにふふっと笑い始めた。

 

「大丈夫、あの子は強い。あの2人なら伝説にだって負けやしないさ。」

 

ねっ、とミクリはミミッキュとレントラーに同意を求めた。2匹は勿論だと鳴く。

 

「それに」

 

ミクリが不敵に笑いだしたことに、訝しみながらデンジが前方を見やると廊下の奥にまた大きな扉が見えた。その前には警備を任されたのだろう、スペース団の下っ端の存在も確認できる。ミクリとデンジの存在に気づいた下っ端はゴーレムポケモンのゴルーグを繰り出してきた。その大きさは確かに門番にはうってつけだろう。レントラーとミミッキュを見ての選出なら尚のこと良い選択だ。だが、相手が悪い。

レントラーが目にも止まらぬ速さで一気に近づき氷の牙でゴルーグを凍てつかせ、止めにミミッキュがゴーストダイブを決める。電光石火の連撃にゴルーグは為す術なく崩れ落ちる。

 

「この子たちは強い」

 

レントラーがミクリの後ろに周り、ミミッキュはミクリの肩に乗るとスリスリと擦り寄る。ミクリは後ろ手でレントラーを撫で、ミミッキュに擽ったそうに笑う。

そんな彼らの関係性を垣間見たデンジは杞憂だったなと嘲笑した。

 

ミクリとデンジが扉を開けた先にはこのアジトの中核を担っているかのような電子機器が鎮座しており、向こう側はガラス張りになっていた。

ミクリたちがガラスに近づくと、そこは地下の様子が一望でき、地下には青と赤の宝玉が強い存在感を光とともに放っていた。

 

「あれが【あいいろのたま】と【べにいろのたま】か、、、」

 

2つの宝玉を祀るようにしている機械仕掛けの祭壇からはこれまた物々しいチューブが無数に張り巡らされていた。

 

「、、、!あれは」

 

デンジは2つの宝玉から少し目を逸らした先になにか別の存在がいることに気づく。それを視認すると、ミクリたちにも見ろと急かした。

 

「レックウザ、、、!」

 

身体を機械に拘束されたレックウザはぐったりしており、ぴくりとも動かない。だがミクリたちの気配には気づいたのか少し目を開いた。無事とは言い難いもののレックウザがまだ意識がある事にミクリはほっと安堵する。

デンジはモニターが幾つも並ぶパソコンへと向き合い、何かを操作し始める。

 

「それは何を、、、?」

 

ミクリの問に手を止めることなくデンジは答える。

 

「宝玉の無力化さ。

このアジトを突き止めるために巨石と宝玉のデータを照合した時、あの子の発言からちょっと気になることがあってな。」

 

カロス地方に渡った時、少女は本来宝玉が人の手に負えるものではないこと、ゲンシカイキしたグラードン、カイオーガならば尚のこと不可能だと言うことを口にしていた。その言葉にメガシンカを研究対象としているプラターヌがとても食いつき、何故という所に議論を繰り広げていた。

 

「オレはメガシンカを扱わないからあまり話についていけなかったが、縛っている対象が人より大きいものならどうかという話になったんだ。」。

 

……

 

発言はシトロンだった。

 

『人がだめならそれより大きい存在ならどうでしょう。心が取り込まれてしまうなら、、、例えば無機物、それこそ機械などですね。』

 

彼の考えは正しく青天の霹靂だった。それにいち早く反応したのはプラターヌだ。

 

『そうか、シトロンくんのシトロイドのような心を持つ例外もいるが、基本機械に感情はない。けれど、それらと宝玉を繋ぐものが必要になるだろう?無機物では到底、、、』

 

『、、、それがメガシンカならどうです?』

 

声を発したのは少女だった。少女の言葉にプラターヌたちは首を傾げる。ゲンシカイキとメガシンカは別の存在、それは少女もよく分かっているはずだ。そのとき、カルネがはっとなにかに気づいた。

 

『まさか、キーストーン、、、?!』

 

カルネの言葉にプラターヌやシトロン達も一斉に少女の言葉の意味を理解する。

 

『確かに、もしスペース団が起こしているゲンシカイキがメガシンカのメカニズムを応用しているのなら、宝玉はメガストーン。それを繋げているのがキーストーンとすれば辻褄が合うかもしれない、、、!』

 

原理は違えど宝玉でゲンシカイキを起こし、2体を操っているのならばスペース団が行っているのは、少女たちのメガシンカと同じものだと言える。

 

……

 

「ならば、キーストーンと繋がっているものを切断すれば超古代ポケモンを止めることができるんじゃないか、そう考えたんだ」

 

デンジの話にミクリはなるほどと頷き、自身たちの知らないところで話が大きく進んでいることに少し驚いていた。

スペース団を止めるためレックウザを救うため、飛行船から落とされた後もデンジだけでなく他地方のチャンピオンや博士までも巻き込んで来ていたとは。

自分たちが捕まっている間に東奔西走の如く走り回っていた少女の姿を想像すると、よく頑張ったとミクリは褒めたくなる。

 

「俺に与えられた役割はふたつ。ひとつはあの子をあんたらに返すこと。そして最後は大元を宝玉と引き離して超古代ポケモン2体を解放すること。」

 

大役だよ全く、とデンジは嫌味のような口上だったがその目には火が灯っていてデンジという人間がどのような男であるか表していた。ミクリはそんな彼に微笑を零す。

デンジがズボンのポケットからひとつのUSBを取り出し、機械のポートへ差し込んだ。差し込まれた途端に機械画面には赤いバーが現れゆっくりとゲージが上がっていく。

 

「こいつはあいつが持ってたUSBを改造して、接続したもののシステムを強制にダウンさせるウイルスを入れたんだ。

流石、デボンコーポレーションが開発した製品。特性のウイルスなんだが、仕込んでも壊れやしない。」

 

ウイルスといってもただのウイルスでは無い。シトロンとデンジが自分たちが持っている最大の悪意を込めてを作った特性ウイルス。仕込めばたちまち壊れてしまう猛毒のはずなのだが、故障する気配すらなかったようだ。デンジはその時デボンコーポレーションの製品全て片っ端から解体することを天に誓った程だった。

 

「ちなみにキーストーンが宝玉と繋げているものは一体なんだい?この機械かな。」

 

ミクリの言葉にデンジは首を振った。ミクリが首を傾げならデンジを見る。

 

「いや、こいつじゃ宝玉を繋ぎ止めるには力不足だ。もっとでかい質量が必要なる。

恐らくこれはキーストーンの力の増大、そして宝玉をコントロールするための装置だ。ちょっと弄ったら中からキーストーンのエネルギーデータが出てきたよ。中にキーストーンが内蔵されてるようだ。」

 

ならばキーストーンと繋がっているものは何だと、ミクリがデンジに問う。

するとデンジは指を上に向けたかと思うと、下を指す。

 

スペース団アジト(ここ)だよ。」

 

 

……

 

 

「お嬢さん」

 

ダイゴの方を少女が見る。

 

「メタグロスとボーマンダ、今どちらがパワーが上かと言われればボーマンダだ。

今度は僕たちがサポートする、君たちはまっすぐグラードンに突っ込んでくれ。」

 

ボーマンダもメタグロスもだいぶ体力を消耗している。グラードンもダメージを負っている。デンジが宝玉の無力化に向かってくれているならば、チャンスは今しかない。龍の舞によって上昇した攻撃力は今やメタグロスを超えている。グラードンを撃破するためにはボーマンダで今できる最高火力を叩き込むしかない。

 

「大丈夫、勝てるよ。僕たちならね」

 

ダイゴが自信を持ってそう言うものだから、少女の中には不安も恐怖も何も無かった。にこりとダイゴに笑い返すと、ボーマンダとメタグロスにも微笑みを向ける。

 

「ボーマンダ」

 

少女はボーマンダに手を伸ばし、彼女の首にくすりと腕を回した。

考えてみれば少女とボーマンダにとって悪の組織と戦うことも伝説と戦うことも初めてだった。初めてのことが多すぎて右も左もわからない状況で、彼女はただ少女を想い続け、守るためにただ戦い続けた。少女の選択にボーマンダ以外のポケモンたちも何も言わなかった。少女の選択を良しとし、健気に少女の傍にいてくれていた。その中でボーマンダは少女のパートナーとして最前線で頑張ってくれていた。そこに不安や困惑、心配もあっただろう。

 

「ボーマンダ、いつもありがとう。大好き。」

 

その瞬間にボーマンダが咆哮が辺りに轟いた。

彼女の願いはただひとつ、この子を守る。それだけなんだ。

大気がボーマンダを包む。強いエネルギーだ。

グラードンが哮り、日差しの強さが更に増す。身体の中の水分まで蒸発させるほどの熱に呑まれても、それでも彼らは勝利を掴もうと藻掻く。

 

「メタグロス、ボーマンダを頼んだよ。

お嬢さん、準備はいいね?」

 

ダイゴの言葉に少女が頷く。

 

「いって、ボーマンダ!」

「いけ、メタグロス!」

 

2体が一斉にグラードン目掛けて飛んでいく。

グラードンは2体を拒むように地面に爪を突き立て断崖の剣を発動する。

 

「コメットパンチ!」

 

メタグロスはボーマンダの前に飛び出すと断崖の剣を次々に突き破っていく。

破壊された断崖の剣を問題なく避けて進むと、今度はフーディンが目の前に現れる。

 

「フーディン、シャドーボール」

「メタグロス、ラスターカノン!」

 

フーディンがシャドーボールを連射する。シャドーボールはまっすぐボーマンダに向かうが、コメットパンチからラスターカノンに即座に切り替えたメタグロスによって爆発されていく。

グラードンが大文字を発射する。ミロカロスが受け止めてくれたものと同じ規模の大文字だ。ボーマンダの視界が炎で覆われる。

メタグロスの守るで受け止めようとするが、それではボーマンダの足が止まってしまう。

少女が悔しそうに声を漏らすが、ダイゴの冷静な声が響く。

 

「メタグロス、サイコキネシスを前方に広げろ!大文字の一部だけでいい、炎を操るんだ!!」

 

メタグロスが目を怪しく光らせて、サイコキネシスを前方に展開する。サイコキネシスが広がり、大文字と衝突する。ぶつかった瞬間、サイコキネシスは大文字と拮抗するのではなく、大文字の一部をぐにゃりと歪ませ炎を弱めた。

メタグロスとダイゴが作った道だ。無駄にする訳にはいかない。

 

「ボーマンダ、炎が歪んでいるところをドラゴンダイブで突っ切って!」

 

炎の弱まっている所をドラゴンダイブで自身を守りながら大文字を突き抜ける。

大文字を抜けた先にはグラードン。少女とダイゴがゴクリと生唾を飲む。

 

この一撃に全てを掛けろ。

 

「ボーマンダ、ギガインパクト!!」

 

ボーマンダの苛烈なギガインパクトがグラードンの鳩尾に入る。グラードンが呻き声をあげ、後ろによろめく。だが、まだ倒れない。なんというタフネスだろうか。

 

「フーディン、サイコキネシスでボーマンダを操りなさい」

 

フーディンのサイコキネシスによってボーマンダの体が淡く光る。

 

「?!

なぜ、ボーマンダの身体が動かない?!」

 

そう、ボーマンダはフーディンによって操られているはずなのにも関わらずボーマンダの身体もピクリとも動かない。

どうしたのかとフーディンを見ると、フーディンの身体もサイコキネシスの光によって自由を奪われていた。

 

「メタグロスか、、、!」

 

フーディンに接近するメタグロス、その目は同様に妖しく光っていた。

目と鼻の先までの距離に近づいたメタグロスに、フーディンはもう逃れることができない。

 

 

「これで終わりだ!

メタグロス、コメットパンチ!!」

 

メタグロスのコメットパンチにフーディンが押しつぶされる。サイコキネシスで押し返そうにもメタグロスの純粋なパワーが上回り、コメットパンチから脱出することができなかった。

コメットパンチの力がフーディンへ集中し、中心で爆発した。

爆発により煤を被りながらフーディンが地面に倒れたまま、ピクリとも動かない。そのうちにメガシンカが解除され、いつものフーディンの姿に変化していた。それはフーディンが戦闘不能になったことを表していた。

 

「よし、、、!

残るはゲンシグラードンだ!」

 

グラードンは自身の鳩尾を圧迫し、押し飛ばそうとしてくるボーマンダ目掛けて炎の拳を振り下ろす。

ヒートスタンプに上から押さえつけられながら、それでも尚ボーマンダは後ろに引くことは無かった。

否、ボーマンダには引けない理由があった。例え、グラードンから溢れ出る熱に身を焼かれようとも、強烈なプレッシャーに押し潰されそうになっても、ボーマンダはただひとつ、パートナー“たち”の想いのために一歩たりとも後ろに退くことはできなかった。

だが、グラードンもボーマンダを止めようと必死の抵抗を見せる。一層威力を増すヒートスタンプにボーマンダの体勢が崩れる。

 

「頑張ってボーマンダ!

デンジさん、宝玉の無力化をどうか早く、、、」

 

 

………

 

「くそっ、なんで動かない、、、?!

あともう少しだというのに!」

 

「どうしたんだい?」

 

焦りを見せ始めたデンジをミクリが何かあったのかと様子を伺う。

デンジは黙ってモニター画面を指差し、ミクリも指の先を見る。そこには先程まで順調に進んでいたゲージがあと少しのところでピタリと止まっていた。

 

「きっとグラードンだ、、、。

グラードンの力が強まってウイルスが侵食でき無くなったんだろう。」

 

デンジとミクリが前を見ると、先程よりも一段と【べにいろのたま】から放たれる光が強まっていた。

ボーマンダとメタグロスとの戦いで身の危険を感じたグラードンに宝玉が反応し、その力を強めていた。

どうすればとデンジがヒントを探るために機械を弄るが、皆目見当がつかない。万事休すかとデンジからから笑いが出た。

 

「いや、、、」

 

ミクリがぽろりと言葉を零す。デンジはどうしたとミクリに問う。

 

「グラードンの力を【あいいろのたま】が、カイオーガの力を【べにいろのたま】が抑える力を持っているなら、、、」

 

「今、【べにいろのたま】に【あいいろのたま】のエネルギーを流せば力を弱めることができる、、、ってことか?」

 

「、、、できるかい?」

 

ミクリが切羽詰まりながら挑発するように言うと、デンジは不敵な笑みを見せながらふっと笑う。

 

「伊達に改造マニアしてないもんでね。

例え、できなくてもやってやるさ!」

 

デンジの指が意志を宿したかのように軽快に、滑らかに動く。

 

「【あいいろのたま】からキーストーンに流れる動線の一本を【べにいろのたま】に接続してやれば、、、!

よし、なんとかできそうだぞ!」

 

「素晴らしい!そのまま頼むよ!」

 

【あいいろのたま】のエネルギーが一本のチューブを逆流し、【べにいろのたま】へ流れる。

僅かに、ゆっくりと、されど確実に上昇するゲージにミクリとデンジは柄にもなく拳を作る。

 

「お嬢さん、ダイゴ、あと少しだ頑張ってくれ!」

 

………

 

反発し合うグラードンとボーマンダ。押し返そうとするグラードンに、ボーマンダは必死で押し返されまいと踏ん張る。

あと少し、あと一歩でグラードンを押し切れるところまで来たというのに、その一歩がどうしても重い。

ボーマンダは歯を食いしばって攻撃の手が緩まないように必死で耐える。体力も絶え絶えで、体勢も安定していない。墜落していないのが不思議なくらいだと、ボーマンダ自身驚きだった。

と、その時ぐんっと前に体が押される。少し軽くなったヒートスタンプの圧に何事かとボーマンダは目だけで後ろを確認する。

 

メタグロスだった。

 

メタグロスがコメットパンチでボーマンダを後ろから支えるように押してくれていた。

このメタグロスの行動に少女もダイゴも驚いた。何せ2人はメタグロスに何も指示を出していなかった。誰の指示もなく、彼は自分の意思でボーマンダを手助けしたのだ。

更に不思議なことにギガインパクトを発動しているボーマンダにコメットパンチで後ろから押し支えているというのに、技同士が反発し合っていないのだ。比較的攻撃の威力が弱い技どうしならばコンテスト技のように上手く合わさってくれる可能性もあるが、上昇した攻撃力に加え特性によって一段と威力を高めたギガインパクトに対し、メガメタグロスの特性でこれまた威力が上がったコメットパンチがぶつかり合わないことは普通なら有り得ない。強いパワーを宿すものをコントロールすることは至難の業だ。

それにも関わず、2体はは上手く技を掛け合わせ、メタグロスは崩れたボーマンダの体勢を元に戻していた。

 

「信頼しているのは僕たちだけじゃない。あの子たちもそれぞれを信頼し、支え合っているんだね。」

 

それはここにいる4人だけではない。捕らえられたダイゴとミクリを助け出してくれたミミッキュ、カマスミとの戦いに勝利を齎したブースター、ラプラス、レントラー、そのタフネスとパワーを持ってシュオウとオトギリのポケモンを倒してくれたボスゴドラ、ボスゴドラをサポートしながらあのオノノクスと相打ちまで持って行ったルンパッパ、限界を超えてボーマンダに全てを託してくれたミロカロス、2人を信じて宝玉の無力化に向かったミクリ。

全ての人が、ポケモンが一ヶ月という期間の中で絆を結び、全力を尽くしてきた。

全員の想いを背負ってボーマンダとメタグロスはグラードンを打ち破るのだ。

 

 

 

 

 

画面のゲージがあと1%の所まで来ていた。

 

あともう少し、あともう少しだ。

 

ゲージのパーセンテージがミクリの焦りを囃し立てる。

【あいいろのたま】の青いエネルギーが【べにいろのたま】を飲み込み、紫色の光へと変色していた。恐ろしくも、なんと美しいことか。

 

 

 

早く、

 

1分でも1秒でも早く、

 

勝たなければ、

 

勝つんだ、

 

私/僕たちが!!!

 

 

「「「行けーーーー!!!!」」」

 

 

 

ビィーーーー!!

 

けたたましい警報音と赤いライトを放つ機械。

そのゲージは100%の数を示し、波のようにアジト内の全ての機能を停止させていく。

【あいいろのたま】と【べにいろのたま】も例外ではなく、アジトが停止したことにより繋がっていた大きな質量を失い光を失ってそのエネルギーの放出を止めた。

 

 

 

一瞬に緩まるグラードンの力。その隙を逃すことなく、ボーマンダとメタグロスがグラードンの体を押し切って、突き抜けた。

グラードンを飲み込むほどの爆発が起こる。

肌を焦がすほどの爆風にボーマンダとメタグロスは2体でお互いを支え合いながら耐える。

その余波は少女たちの所まで届いていた。

熱と光が一帯を包み込む。

 

 

2人がゆっくりと目を開ける。

目の前にはモンスターボールに入っているはずのブースターがこちらをじっと見ていた。

ブースターが2人を熱風から守ったのだ。

ブースターの特性はもらい火、襲ってきた熱風を全て体内に飲み込んだようだ。

 

「ブースター!ありがとう!」

 

少女がブースターを抱き上げる。ブースターは身を捩って、少女の頬に肉球を押し付けて前を向けと鳴いた。

ブースターに促されるままグラードンへ目を向ける。グラードンの身体は大きく傾いており、そのまま海の中へ崩れ落ちた。大きな水飛沫は雨のように降り注ぎ、自慢の鬣が畝ることを嫌ったブースターは勝手にモンスターボールへ戻ってしまう。

照りつけていた太陽は消え失せ、夜の帳が降りた。空はどんよりと分厚い雲に覆われ美しい星はなりを潜めていたが、それは即ち、少女たちの勝利を表していた。

少女とダイゴはハッと意識を取り戻すと、辺りを見渡するとそこにシュオウ、フーディンの姿は無く、オトギリでさえもどこかへ行ってしまっていた。恐らく、戦いを最後まで見ていたはずだが、光に包まれた時に姿を眩ませたのだろう。

シュオウたちが消えたことに少女とダイゴは険しい顔を見せたが、戻ってきたパートナーたちを確認すると筋肉の強ばりを解いた。

 

「ボーマンダ、よく頑張ったね。偉いよ、凄いよ、格好よかったよ。私の一番のパートナー。

メタグロスもボーマンダを信じてくれてありがとう。ずっと、私を支えてくれてありがとう。」

 

「メタグロス、僕たちに全力で応えてくれてありがとう。君は僕の最高のパートナーだ。

ボーマンダ、君のパワーは凄まじいね。僕を信じてくれてありがとう。

メタグロス、ボーマンダ。君たちの絆はどんな石、宝石よりも美しく輝かしく、素晴らしい。僕は君たちを誇らしく思うよ。」

 

少女とダイゴは交代で2体を目いっぱい抱きしめる。

ボーマンダとメタグロスは2人を潰さないように加減しながら、擦り寄った。2体もお互いを讃えるように、身体を寄せ合った。

 

「さて、ミクリの元へ急がなければ。最後の仕事が残っている。」

 

「はい。行きましょう、

 

レックウザを助けに。」

 

ボーマンダとメタグロスに少女とダイゴを載せると、ミクリたちが走っていった方向へ飛んでいく。

少女はバッグのショルダー部分をグッと持つ。

バッグの中では彼の新緑の宝玉が淡く輝いていた。

 

 

………

 

「なんとか止まったな。」

 

「あぁ、そうだね。

君がいなければ宝玉の無力化は不可能だった。感謝しても仕切れないよ。」

 

「俺だけじゃ宝玉のエネルギーを逆流させようとは考えつかなかったよ。貴方が来てくれて良かった。

それにだ、俺を連れてきたのはアイツだ。俺に礼を言うなら、全部の功労者を褒めてやってくれ。」

 

そうだねと、ミクリが笑う。

しかし、これで全てが終わった訳では無い。アジトの機能を全て停止させたことでレックウザの生命エネルギーを奪う機能も止めることはできたが、レックウザはまだピクリとも動かない。

レックウザを復活させるのはミクリとデンジでは不可能だ。

 

「ミクリさん、デンジさん!」

「ミクリ!」

 

ミクリが部屋の入口を振り向くと、そこにはボーマンダとメタグロスに乗った少女とダイゴがいた。

少女の登場にミクリとデンジのそばに居たミミッキュとレントラーが少女の下へ駆け寄った。少女は2匹を抱きしめ、頬を擦り寄せる。

 

「グラードンを倒したんだな。」

 

ミクリとデンジが少女とダイゴに近寄る。ダイゴは少女と2匹の様子を微笑ましく眺めていたが、2人が近づいてきたことに気づくと、頭を擡げる。少女も膝を着き、レントラーたちを抱きしめたまま上を見上げて話を聞く。

 

「あぁ、強かったよ。でも、僕たちなら勝てるとわかっていたさ。」

 

ミクリはそうだねと口角を上げた。

少女は2匹にお礼を言ってからモンスターボールに戻すと、立ち上がる。

 

「後はお前の仕事だ、俺は外の連中と合流する。」

 

「はい、ここまで本当にありがとうございました。」

 

デンジは少女にそう言うと、出口に向けて歩みを進める。

少女を横切ろうとした時、デンジが歩み止めた。

 

「お前との短い旅、悪くなかった。

あともうひと踏ん張りだ、頑張れよ。」

 

デンジはそう言うと少女の頭をポンと叩き、そのまま出口へと消えていった。少女はデンジの背を見送ると、小さな声でもう一度お礼を言った。

少女は地下に繋がる扉を開けると、続く階段を降りていく。ダイゴたちも少女を追うように階段を降りる。

床に広がるチューブ類を避けながらレックウザへ近づいていく。

レックウザの目の前まで辿り着くと、少女はバッグを下ろし中からひとつのケースを取り出す。

ケースの中から出されたものは布に包まれており、其の姿は見えないが、少女がゆっくりと布を解いていく。布の中は現れたのは2つの宝玉に酷似した緑色の宝石。

 

「それは、、、!」

 

「【べにいろのたま】と【あいいろのたま】とは違う宝玉、、、?」

 

ダイゴとミクリに少女がこくりと頷いた。

レックウザが少女と宝玉の存在に、重い瞼を上げる。レックウザと少女の目が合うと、少女はレックウザの様子に苦しそうな表情を見せた。

 

「私の役目はレックウザにこの宝玉を、【もえぎいろのたま】を返すことです。

 

、、、メタグロス、サイコキネシスでレックウザの拘束具を破壊して!」

 

メタグロスがレックウザを拘束していた鉄の塊をサイコキネシスで破壊する。開放されたレックウザの身体は重力に従って、地面に崩れ落ちそうになる。

 

「受け取ってレックウザ!!」

 

少女はレックウザに向けて高く、【もえぎいろのたま】を投げた。

 

レックウザの目の前で【もえぎいろのたま】が強く光り輝く。光はレックウザの身体を包み込み、瞳は段々と見開いて輝きを宿していく。レックウザの目に少女が映った。

 

 

 

やっと、やっとあなたに会えた。

 

 

レックウザが少女へ顔を近づけていく。少女もそれに応えるように手を伸ばした。

ボーマンダもダイゴも、そこに居た誰もがその光景を黙って見ていた。

 

少女とレックウザが触れようとした。

その時。

 

 

 

 

 

 

ドオオオオォォォン!!!

 

 

 

 

地面を揺らしながら酷い轟音が響き、なにかの衝撃によってアジトの屋根が崩れ落ちてくる。

 

レックウザは空を見上げると身体を大きく伸ばして飛び立つ。外に何かがあるのか、レックウザの様子がおかしい。

ガラガラと瓦礫の雨が降る。少女は瓦礫を避けながら飛び立つレックウザの名を叫ぶが彼は振り向かない。

 

「ボーマンダ、レックウザはまだ回復しきっていない!お願い、レックウザを守って!!」

 

ボーマンダは少女とレックウザを交互に見て、困惑する。自分が守りたいのはトレーナーである少女であって、レックウザではない。けれど少女は自身にレックウザを守れと言う。

どうする、どうすればと、ボーマンダはその場で固まってしまった。

 

 

 

「ボーマンダ、お願い!!!」

 

 

少女がボーマンダにそう叫ぶ。切羽詰まったように、懇願するように自分を呼ぶ少女に、ボーマンダは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。そして、少女の願いの通りに、レックウザを追うように飛び立った。

少女はほっと息をつきながら、瓦礫に潰されないように避難する。

が、その時大きな地震が少女たちを襲った。

グラグラと大きく揺れたかと思うと、地面が真っ二つに割れ、少女を孤立させる。

ダイゴたちが少女の下へ駆けつけようとするが、瓦礫の雨に足止めをくらいこれっぽっちも近づくことができない。

メタグロスは少女たちを守るために、守るやラスターカノンで瓦礫を壊していくが数に押され、瓦礫の雨に埋もれてしまう。

少女がダイゴとミクリの安否を確認しようとするが、瓦礫の雨に閉ざされて、少女たちは分断される。

降り注ぐ瓦礫を見上げながら、少女は縋るように何かに祈った。

 

あぁ、レックウザ。どうか無事で、、、

 

少女の目の前は真っ暗になった。

 

 

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