あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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画竜点睛

スペース団アジトを隠していた森を抜けると、海崖に出る。崖にはシロナたちと先に合流していたデンジの姿が見え、海で暴れ回るグラードンとカイオーガをレックウザが抑えるために奮闘していた。

レックウザの傍らにはボーマンダの存在もあって、少女の頼み通りにレックウザを守っていてくれていた。他にも沢山のポケモンが見える。グラードンたちを止めようとしているのは少女と共に来てくれたシロナ達だけではなく、野生のポケモンたちも彼らを何とかしようと必死だった。

少女はこの時、ナナカマドの言葉を思い出した。

 

野生のポケモンたちは伝説のポケモンに助けを求め、それに伝説のポケモンは応える。

 

きっと野生のポケモンたちは彼らが争うことによって世界が滅ぶのを防ぐためだけではなく、彼らを助けるために戦っているのだと、少女は思った。ポケモンたちにとって伝説のポケモンの存在はただ助けてもらうだけの存在だけでは無いのだ。そこには常に感謝がある。あの夢の人々のように。

野生のポケモンたちの姿により一層、グラードンとカイオーガを助けたいという思いが強く湧いた。

 

「皆さん、無事で良かったです!」

 

メタグロスの上から飛び降りた少女はいち早くシロナたちへ駆け寄る。

シロナたちは少女と、少女を追うようにこちらに駆け寄るダイゴとミクリの存在に安堵した。

 

「やっとダイゴくんたちと会えたのね!良かった、、、」

 

誰よりも先に反応したシロナは感極まったように少女を抱き締めた。少女はシロナに抱き締められたことに硬直すると、すかさずダイゴがシロナたち引き離した。

 

「お久しぶりです、シロナさん。

まさか貴女もここに来てくれていたとは驚きですよ。」

 

「えぇ、お久しぶりね。

だってこんな健気なトレーナーさんに助けを求められたら応えるしかないじゃない?」

 

ふふふ、と笑う2人。ダイゴは至って通常運転なのだがシロナの目が全くと言っていいほど笑っておらず、周りは何故かシロナだけでなくダイゴの微笑みにさえも身震いを起こした。唯一少女とカルネだけが、ケロリとしていた。

 

「挨拶は程々にしよう。私たちにあまり時間は許されていないからね。」

 

ミクリが間に入る。シロナはじとりとミクリにも睨みを効かせるが、ミクリは気付かぬふりをした。

 

「それで、今は何が起こっているの?

2つの宝玉はデンジくんが止めてくれたはずでは、、、」

 

「あぁ、俺も宝玉の無力化は確認している。俺は使命を果たせなかったのか、、、」

 

何も事情を知らないシロナたちは何故、超古代ポケモン2体が今だゲンシカイキをしたまま暴れ回っているのかわからない。一番困惑しているのはデンジだ。宝玉の無力化をしてくれたのは彼であるため、無力化しきれていなかったのかと責任を感じているのだろう。

また、自分の考えが間違えていたのかとシトロンも不安そうな様子だった。

 

「違います!それは、」

 

「お嬢さん」

 

デンジとシトロンの様子に少女は慌てて否定しようとする。が、それをミクリに阻まれる。少女はミクリが何故自分を止めるのかわからなかったが、彼の有無を言わせない眼光に大人しく口を閉じた。

 

「ミクリ、彼らは」

 

「わかっているとも。彼女らはチャンピオンで、皆お嬢さんが信じた人だ。私も信用しているさ。

だが、信頼できるかは私の目で確かめさせてくれ。」

 

行動を咎めるダイゴだが、ミクリがきっぱりと言い切ったことではやれやれと首を振った。

チャンピオンとして何度も顔を合わせたシロナと、カロスで共に戦ったカルネ、シトロン、プラターヌのことをダイゴは信頼できる人物と認識ている。ミクリはシロナとは面識があり、デンジは一度話した時から変わり者だが信頼できる人物だと理解している。だが、他3人は初めましてだ。ミクリの中ではまだ信頼できる人物だと考えられていない。ダイゴと少女が話しても大丈夫だと考え、少女とレックウザの繋がりを利用しようとする者はいないとわかっていても、ミクリは自分自身で彼らがどういう人物なのかを判断したい。それは少女を守るためでもあるが、なによりカルネたちに対する敬意だった。

だからダイゴもミクリに何も言えず、少女自身もまたシロナたちに夢の話のことは話せていなかった事実に自分の中でも少しの不安があることを理解しているのか黙ったままだった。

ダイゴは仕方ないと肩を竦めた。

 

「混乱させてすまない。こちらが言えることは、超古代ポケモンたちの暴走に今はもう宝玉は関係ないということ。彼は確かに宝玉を無力化に成功していたし、グラードンが一度は宝玉から解放されていたこともわかっている。

恐らく長い時間スペース団に操られていたため、エネルギーが吹き出し暴走していると考えられる。」

 

「兎に角、私たちは超古代ポケモンたちを止めればいい、という訳ね。請け負ったわ。」

 

少女の夢の話は触れないままダイゴは簡潔に必要な情報のみをシロナたちに伝える。シロナたちは様子がおかしいことに対しては触れずに、頷いてくれた。

ここまで手を貸してくれたシロナたちに全てを話さないことは失礼に値することはダイゴたちもわかっている。対するシロナたちも少女とレックウザの間に何かがあることは気づいているが、彼らもまた人の悪や歪みに触れたことのある者たちだ。まだ出会って間もない人間に全てを話していいと思えないミクリの気持ちも理解できた。

それに、ミクリが言ったように今は悠長に話している時間はない。早くグラードンとカイオーガを解放しなければより長く彼らを苦しめることになり、また世界の終わりに近づくことになる。それは何としてでも止めなければならない。

 

(でもその前に)

「来てボーマンダ!」

 

少女がボーマンダを呼ぶ。戦いの中でも距離が遠くても少女の声をボーマンダが聞き逃すことはない。視界に少女の姿を入れたボーマンダは爆速で飛んでいく。

激突するのではないかと思うほどのスピードでボーマンダが迫ってくるものだから、シロナたちは色々な意味でぎょっとする。危ないのではとシトロンが焦り出した時、少女の目の前でボーマンダが急停止した。とんでもないスピードから見事な急停止を見せたボーマンダにも、トレーナーである少女はともかく同じように全く動揺しないダイゴとミクリにも、周りは驚くばかりだ。

明らかにボーマンダは怒り心頭の様子なのだが、少女は再会にたいそう喜んでいた。シトロンとプラターヌはどこか既視感を覚え、シロナとカルネはふふふと笑った。

 

一方でボーマンダは再会した少女にプンスカ怒りながら文句を言っている。瓦礫に埋もれた少女のことも気が気ではなかったか、メガシンカで繋がっているダイゴの異常も筒抜けだったため、普段冷静な彼女であっても今回ばかりは不安と心配で情緒が大変なことになっていた。だが、少女の頼まれたからにはレックウザから離れる訳にはいかず、ボーマンダとしてはとんでもない状況だった。本当にとんでもなかったのだ。

 

ボーマンダにとって、この世で一番大事なのは少女だ。本当はもう二度と離れたくなんて無かったのだが、少女が必死に訴えるものだから仕方なく、本当に仕方なくレックウザを追ったのだ。少女だけではない、彼女の中ではダイゴたちも大切な存在だ。

だから、彼女にとって少女の指示は何より辛かった。少女もダイゴたちもそれを理解しているため、少女に抱き締められながら文句が止まらないボーマンダにダイゴもミクリも、メタグロスまでもが横から一生懸命宥めた。特にメタグロスはボーマンダの気持ちが痛いほどわかるのか、積極的にボーマンダに語りかけていた。シロナたちから見ると少しシュールだった。

思いのほかすぐに落ち着いたボーマンダは、気持ちを切り替えてメタグロスの横に並んだ。

本当に頼りになるパートナーだと、少女は有難く思う。

 

「さぁ、彼らを助けに行こう!」

 

ダイゴの言葉に全員が強く頷いた。

 

 

レックウザがグラードンとカイオーガから離れる。

全てのポケモンの動きが止まり、一触即発の空気が流れた。ぐるぐると唸る声は地響きだ。

 

 

一瞬、だが長い時間、不自然に静寂が辺りを包む。

遠くでゴロゴロと雷鳴が響く。

 

 

 

レックウザの咆哮が轟く、開戦の合図だ。

 

 

グラードンとカイオーガが哮ると、岩の剣と海の波動が現れる。

 

「ボーマンダ、ドラゴンダイブで岩を砕いて!」

 

「メタグロス、レックウザの目の前でサイコキネシスを展開!」

 

ボーマンダが断崖の剣を砕き、メタグロスがサイコキネシスで根源の波動を歪ませる。

レックウザはその隙に神速でグラードンとカイオーガに接近し、暴風で巻き上げる。

 

「ボーマンダ、出し惜しみは無しでお願い!ギガインパクト!」

 

「メタグロスも頼んだよ!コメットパンチ!」

 

暴風に動きを奪われた2体へボーマンダとメタグロスがそれぞれの最大火力をぶつけて行く。

無抵抗の2体の鳩尾へボーマンダたちの技が炸裂した。

 

海に落下する2体。

 

「ゲンシカイキした2体を暴風だけで動きを封じてしまうなんて。なんてパワーなのかしら、、、」

 

「Marvelous!

ボーマンダとメタグロスも息がぴったりだ!」

 

レックウザのパワーも然る事乍ら、ボーマンダとメタグロスのハイスピードな連携にプラターヌたちは驚きを隠せなかった。

1ヶ月も共に過ごしていたことは知っていたが、あの連携を見てすぐにわかる。彼らが強い信頼で結ばれていることを。

ただ1人、少女の隣にいてくれていたデンジだけがくすりと笑っていた。少し誇らしげに、好戦的に2体を見上げた。自分の知らない所にはまだまだ自分を痺れさせるトレーナーがいる、あの少年のような、と。

 

「2人に続きましょう!」

 

「ええ!サーナイト、ムーンフォース!」

 

「ガブリアス、ドラゴンクロー!」

 

「エレザードはパラボラチャージ、レントラーは放電です!」

 

「ライチュウ、10万ボルト!」

 

シロナの言葉と共に、一斉攻撃が開始される。野生のポケモンたちも次々と技を放つ。

だが、それだけで倒させてくれるほど伝説のポケモンと呼ばれる彼らは甘くない。

グラードンはムーンフォースを大文字でかき消すと、突っ込んできたプラターヌのガブリアスをヒートスタンプで叩き落とす。カイオーガは効果抜群の電気技から逃れるため、海へ入り、津波を立てる。放った電気技は津波に当たり、分厚い海のベールに塞がれてしまう。

 

カイオーガがシトロンたちの目の前に海の中から飛び出す。至近距離のカイオーガのプレッシャーに当てられた野生のポケモンたちがパニックに陥った。

 

「ガブリアス、逆鱗!」

 

シロナのガブリアスがカイオーガの左頬に逆鱗を打ち込み、海へと押し返す。さすがのパワーだ。

カイオーガは海へ入水する前に頭上からレックウザの神速によって更に海の奥へ押し込められてしまう。

 

「ミクリ、野生のポケモンたちを逃がしてくれ!」

 

「あぁ、わかった!」

 

パニックになった野生のポケモンたちを安全に森に返すために、ミクリが誘導をする。

ミクリが離れる前に少女の腰のポケットからブースターとミミッキュが飛び出し、ミクリに連れて行けと訴えた。少女も連れて行ってあげてくださいと頼むと、ミクリは宜しく頼むよと2匹を撫でた。

足を怪我しているブースターを抱え、ミミッキュはいつも通りに肩に飛び乗る。ミミッキュのじんわりとした重さに少し安心感を覚えてしまうことにミクリは絆されてるなぁと笑ってしまった。

ブースターが鬼火の光で進路を示し、溢れたポケモンたちをミミッキュが正しい方向へ矯正していく。

野生のポケモンはこれで大丈夫だろうと、ダイゴたちはバトルへ集中する。

 

「ガブリアス、スケイルショット!」

 

「エレザード、気合い玉!レントラーはスピードスターです!」

 

プラターヌのガブリアスとエレザード、レントラーの攻撃がカイオーガへ飛んでいく。

カイオーガは技の上に雷を落として爆発させると、根源の波動で反撃する。

 

「メタグロス、ラスターカノン!」

 

「サーナイト、シャドーボール!」

 

根源の波動をメタグロスとサーナイトが相殺する。が、相殺しきれなかった幾つかの水の柱がプラターヌのガブリアスとエレザードにぶつかる。

地面に叩きつけられた2匹は目を回してしまった。

今までのカイオーガとのバトルでもかなり消耗していた中で頑張ってくれたのだ、ゆっくり休んでくれと2人はポケモンをモンスターボールへ戻す。

 

「エレザードの分まで頑張りましょうレントラー!」

 

シトロンの声にレントラーは強く鳴き声をあげる。

 

そんな2人の様子をちらりと見ていたデンジが突然、何かを思いついたかのように不敵に笑った。

デンジが少女を呼ぶと、少女は不思議そうに振り返る。

 

「レントラーを出してくれないか?」

 

突然の要求に少女は首を傾げるが、言う通りにレントラーを出した。すると、同じようにデンジも自身のレントラーを出す。

 

「シトロンくん、と言ったかな?いきなりですまないが、俺の作戦に協力してくれないか?」

 

そんなことを言い出したデンジだったが、シトロンと少女は協力しない理由は無いため二つ返事で了承する。

 

「カイオーガにダメージを与えるためには、電気技を当てるしかない。だから、3匹のレントラーの力を借りたい。」

 

短時間で倒すためには効果抜群技を当てることが有効打になる。それは普通のバトルでも基礎と言える。そして、ダブルバトル以上でバトルで警戒するのは体力が多い方のポケモンだ。グラードンは一度、少女とダイゴに倒されているため復活としたと言えど、体力はカイオーガよりも少ないだろう。

だが、相手はゲンシカイオーガ。そんな上手くいくものかとシトロンは悩む。先程のカイオーガもエレザードたちの電気技をあからさまに避け、その手段を持っている。技が届かなければ幾ら効果抜群と言えど意味がない。

 

「分かりました。でしたら私がカイオーガの隙を作ります。」

 

「!

できるんですか?!」

 

「ボーマンダとメタグロス、ライチュウの力を借りれば、何とか。

ダイゴさん、協力してください!」

 

方法があるのかというシトロンに少女は大丈夫だと笑う。

少女の言葉にダイゴは勿論と頷く。

 

「ボーマンダ、カイオーガをこっちに連れてきて!」

 

ボーマンダはカイオーガの頭をドラゴンダイブで小突いて挑発する。ボーマンダを捉えたカイオーガは、彼女を沈めてやろうと追いかけくる。普通ならばこうは上手くいかないだろうが、今は暴走状態であるため釣りやすい。

カイオーガが根源の波動を打つ構えに入る直前にボーマンダはホバリングからの急上昇でカイオーガの視界から外れる。

ボーマンダが居なくなった目の前にはラスターカノンと10万ボルトの準備をしたメタグロスとライチュウ。

カイオーガと目が合った瞬間に、メタグロスたちは一斉に攻撃を放つ。カイオーガは技から逃げるために再び、海を叩いて水壁を作ることでラスターカノンと10万ボルトを防ぐ。

 

「今ですレントラー!エレキフィールド!」

 

「レントラー、ライジングボルト!」

 

シトロンのレントラーがエレキフィールドを展開し、エレキフィールドの効果により攻撃力が最大まで跳ね上がったライジングボルトをデンジのレントラーが放つ。

放たれたライジングボルトの電撃は海の壁を越えカイオーガまで届くが、壁の上方に放ったためカイオーガには全く当たらない所だった。

 

「レントラー、ライジングボルトの上を走って!」

 

「「「!!」」」

 

少女のレントラーがライジングボルトの上を走り出す。当然の行動、しかもライジングボルトを走るなんて、そんなことができるとは思っていなかったシロナ、カルネ、プラターヌは目を大きく見開けた。

ダイゴは面白いことを考えつくものだと関心した。

 

ライジングボルトの上を走り、海を越えた先にカイオーガを捉える。カイオーガは海へ入水する直前だった。

 

「今だよレントラー、ワイルドボルト!!」

 

隙だらけなカイオーガの背中へワイルドボルトを叩き込む少女のレントラー。

ワイルドボルトを受けたカイオーガは入水直前だったこともあり、海に入ったことでワイルドボルトの電撃によって海の中で感電を起こした。海の中で電気の光が広範囲で広がり、中でカイオーガが苦しんでいる様子が見えるほどだった。

レントラーたちの容赦の無さにシロナたちは恐れ戦いた。一方で作戦が成功した少女たちは嬉しそうである。

 

レントラーはワイルドボルトで跳ね返ってきた反動を利用して、身体を跳ねさせて崖の上まで戻ってくる。着地と同時に地面へ衝撃を肉球を通して上手く流して反動ダメージを軽減する。

少女のレントラーは身のこなしは群を抜いていることを知っているデンジだからこそ今回の作戦を思いついた。波を越えるまでの距離長さでライジングボルトの上を走るなんて普通ならば不可能、ワイルドボルトの反動だけで離れた崖の上まで戻っても来れない。少女のレントラーだからこそできる芸当だ。

 

大ダメージを与えることはできたようで、海から出現したカイオーガはバチバチと今だ電気を帯びていた。

 

「だがやはり耐えてくるか、、、すごいタフネスだな」

 

カイオーガが光を集め始める。

先程の攻撃よりももっと攻撃力が高い大技が来ることが容易に予想できる。

 

「絶対零度が来るわ!皆さん注意してください!」

 

カルネの声と共にそれぞれ防御体勢に入る。

 

「メタグロス、レックウザの前で守るだ!」

 

レックウザの目の前でメタグロスが守るを展開し、防御する。ボーマンダは少女たちのもとに戻ると、自分自身で壁となる。

少女はモンスターボールを投げ、ラプラスを出す。

 

カイオーガが絶対零度を発動する。カイオーガを中心に極限の冷気が溢れ出す。想像以上の広範囲で絶対零度が展開されたため、防御態勢に入っていても防御技を持っていなければ防ぎきれない。少女のボーマンダも防御技を持たないポケモンだ。

だから、少女はラプラスを出した。

 

「ラプラス、絶対零度に絶対零度をぶつけて!!」

 

伝説のポケモンであるカイオーガの絶対零度に押し勝つことはできずとも、絶対零度の進みを止めることはできる。

ラプラスは口から同じように絶対零度を放つと、カイオーガの絶対零度にぶつける。

接触したところからばきばきと凍り、光が収まった頃には崖は絶対零度によって凍てついていた。まるで城だ。

ミクリの誘導のおかげで野生のポケモンたちが被害に合わなくて本当に良かったと少女たちはたらりと汗かいた。

 

体力を案じ、ラプラスをモンスターボールに戻す。だが、体力を消耗しているのはラプラスだけではない。

他のポケモンたちの息も荒く、連戦続きのボーマンダとメタグロスはかなり摩耗している。それはサーナイトとシロナのガブリアスも同じで、カイオーガを抑えている間も彼女らが中心となっていため体力が磨り減っている。

 

短期戦に持ち込みたいというのに全く倒れる気配を出してくれない超古代ポケモン2体に唇を噛む。

超古代ポケモンたちに隙がなく、有効打を与えられていない。彼らを早期に倒すには圧倒的火力が必要だ。

恐らく、それが可能なのはメガレックウザの力。だが、どういう訳かレックウザはメガシンカできていない。

シロナたちはそのことについてずっと気になっていた。

 

「【もえぎいろのたま】はここにあるのに、どうしてレックウザはメガシンカしないのかしら、、、」

 

「しないのではなく、できない。という方が正しいんじゃないかな?」

 

シロナの言葉に予想外にプラターヌが答えた。

 

「実はレックウザはメガシンカの祖であることが最近の調査でわかったんだ。

キーストーンとメガストーンはカロスにしか無いにも関わらず、メガシンカの起源はホウエンにあった。メガシンカの発生とキーストーン、メガストーンの発生は別物なのかもしれない。

つまり、レックウザのメガシンカにはキーストーンやメガストーンは要せず、別のものが必要だと僕は思うんだ。」

 

メガシンカを研究テーマに持つプラターヌはホウエンの壁画も早々に見に行っていたのだろう。カロスの一件でダイゴとも連絡を取り合っていても何ら不思議ではない。

プラターヌの推測に、シロナたちは納得する。

本来、【もえぎいろのたま】は2つの宝玉とは違って力を宿していない。2つの宝玉同様に【もえぎいろのたま】自体がレックウザのエネルギーと癒着したことで、少女に夢を見せるほどの役割は持ったが逆を言えばそれだけなのだ。実際、レックウザに宝玉を返したときもレックウザは目覚めたもののメガシンカする気配はなかった。

ならば、レックウザがメガシンカを果たすための必要な何かを突き止めなければならない。この戦いにはレックウザの力が必要不可欠だからだ。

本当ならば人の力だけでグラードンとカイオーガを助けたいのだが、彼らだけでは世界の崩壊の方が早い。

それに姿を見せないシュオウやカマスミの存在も気になる。

 

「ダイゴさん、メガシンカしたレックウザのデータはありますか?」

 

「、、、あったはずだよ。ある組織がデータを得ていた。保管の管轄は僕ではなく、プラターヌ博士だけどね。」

 

あの時、利用されていたことがこんなところで力になるとは思ってもみなかったとダイゴは自虐的に笑った。

それに幸運なことにその組織が得たデータを全て保管してくれているプラターヌがここにいることで、データを問題なく引っ張り出せる。プラターヌは懐から電子端末を出すとニコリと笑った。

 

「組織がホウエンで得ていたデータならここにあるよ。何があるか分からないからね」

 

備えあれば憂いなしさと彼は笑う。

普段気の抜けた様子を見せるプラターヌだが、やはり博士まで登り詰めるだけはある。頼りになるというのが素直な気持ちだ。

 

「すまないがシトロンくんとデンジくん、また手伝ってくれるかい?」

 

「勿論です!」

 

「こちらからも頼みます、協力させてください。」

 

シトロンは背負っていたカバンから大きな機械類を取り出す。デンジもそれを手伝うと、プラターヌが持っていた電子端末を受け取り機械と接続し始めた。

グラードンとカイオーガを前に戦力を欠くことは痛手だが、3人がいなければメガシンカへの鍵は見つけ出せない。

 

「3人は私が守るよ」

 

野生のポケモンたちの避難が終わったミクリがブースターとミミッキュを連れてやってくる。

グラードンとカイオーガが暴走しているような危険な場所で無防備になることは命を差し出しているということ。ボディガードが必要だろうとミクリはウインクをして見せた。少女のレントラーもミクリに着くようで、腰あたりを包むようにミクリの後ろに回る。

ダイゴたちはそちらは任せるよと伝え、グラードンとカイオーガに向き直る。

 

「シトロンくんたちが頑張ってくれるんだもの、私も全力を出さないと。」

 

シロナはそう言ってから不敵に笑うと、ポケットからひとつの口紅を取り出した。唇に口紅を塗る。艶めかしいその姿に少女は釘付けになった。

シロナはふっと微笑む。口紅をくるりと回すとそこには虹色に輝くキーストーン。

 

「ガブリアス、メガシンカ!!」

 

キーストーンを天に掲げると、ガブリアスのメガストーンと光が結ばれていく。

腕の鰭が赤い大鎌へと変化する。

 

「シロナさんのガブリアスもメガシンカを、、、?」

 

「メガシンカしたポケモンがあれだけ揃うと圧巻だな。」

 

データの解析の手は休ませないまま、シトロンとデンジはダイゴたちの姿を見ていた。

メガシンカしたポケモンが4体も揃うのもそうそうないことないことだが、何よりポケモンのレベルが圧倒的だ。唯一、チャンピオンではない少女だが今までの戦いの中でぐんぐんと成長を遂げチャンピオンたちと肩を並べても違和感を感じさせなかった。

 

プラターヌは酷い隈と涙跡を作りながらカロス地方を出ると言って去っていった姿と今を重ねる。

 

 

「成長したね、」

 

ポツリと呟かれた言葉は誰の耳にも届かずに、風に流された。

 

 

「ガブリアス、ドラゴンクロー!」

 

ガブリアスが先陣を切って、グラードンとカイオーガを迫っていく。

グラードンは大文字で、カイオーガは冷凍ビームでガブリアスを拒む。

 

「ラスターカノンで冷凍ビームを防げ!」

 

カイオーガの冷凍ビームをラスターカノンで打ち消す。ガブリアスはグラードンの大文字を切り裂くと、そのままグラードンの頭へドラゴンクローを叩き込んだ。

あの時のような溜めはなかったもののボーマンダやメタグロス、ミロカロスが苦戦した大文字をあっさりと切り裂き、そのままグラードンへ攻撃を届かせるガブリアスにダイゴとミクリは少し苦笑いを浮かべた。

女帝の名は伊達じゃない。

少女は目を輝かせ頬を赤らめながらシロナとガブリアスを眺めていた。

 

「サーナイト、ムーンフォース!」

 

頭を殴られたことで身体が前傾になった所をサーナイトがムーンフォースで攻め立てる。グラードンは前傾姿勢のまま大文字を海を向けて放つ。大文字は海を蒸発させることで蒸気でムーンフォースをかき消した。

カイオーガがサーナイトを標的に、雷を落とす。

 

「ボーマンダ、サーナイトを守って!」

 

雷が落ちる前に素早さを駆使してサーナイトを背中に受け止めるとボーマンダは空に飛び立つ。

雷はボーマンダとサーナイトを追いかけて何発も雨雲から落ちてくる。海面すれすれを飛ぶことで避雷針にならないように注意しながら雷を回避していく。ボーマンダとサーナイトを追うことに集中しているカイオーガにレックウザが巻き付き、上空へ連れていく。カイオーガは突然のことに無抵抗で空に投げ出され、追い打ちにメタグロスのコメントパンチとガブリアスのドラゴンクローに吹き飛ばされる。

カイオーガが飛ばされた方向はボーマンダたちのいる方向で、カイオーガは身体を反転させて攻撃を仕掛けようとする。だがレックウザに標高の高い所に連れ出されていたために鬼畜にも雷の避雷針となってしまったようで自分が放った雷に撃たれた。

自身の高火力の雷を受けたことでカイオーガが海へ崩れ落ちる。

容赦のない猛攻にカイオーガと同じ水のポケモンを使うミクリは身震いを起こした。

 

トントンとカルネが少女の肩を叩き、何かを耳打ちする。少女はカルネとの距離に場違いにも少しドキドキしながら耳を傾けた。そうしてカルネの話しを聞いた少女は面白そうですねと言って2人で含み笑う。

 

「ボーマンダ、グラードンとカイオーガに接近して!」

 

ボーマンダがグラードンとカイオーガに接近し、小回りを活かして2体の注意を引きつける。

2体がボーマンダとサーナイトを追いかける。カイオーガが海に潜り海中から彼女たちを追う。

 

「危ない、挟み撃ちだ!」

 

ダイゴがそう言うやいなや、ボーマンダたちの目の前にカイオーガが海中から飛び出し、カイオーガとグラードンに挟まれる。

カイオーガが根源の波動を、グラードンが大文字を放つ。

 

2人の唇が弧を描く。

 

大文字と根源の波動がぶつかる寸前に、ボーマンダが急降下し避ける。

2つの技はぶつかり合い、爆発とともに水蒸気が辺りを包むんだ。

超古代ポケモンたちと、ボーマンダたちの姿が水蒸気がに包まれ全く見えない。あれではどこに誰がいるのか分からない。ただ1人を除いては。

 

「グラードンは右、カイオーガは左にいるわ!」

 

カルネの声に少女が頷いた。

 

「ボーマンダ、左にドラゴンダイブ!!」

 

「サーナイト、右にムーンフォース!!」

 

ボーマンダとサーナイトがそれぞれ技を当てる。

ボーマンダはドラゴンダイブでカイオーガの頭に突っ込み、サーナイトは特大のムーンフォースをグラードンの胸部に当てる。

死角からの攻撃にグラードンたちは無抵抗で技を受けた。

 

カルネはサーナイトと離れていてもお互いがどこにいるのかわかる。言葉通りに心が繋がっているのだ。

だから水蒸気で姿が見えなくてもサーナイトの存在を見つけ出し、サーナイトは強いサイコパワーで彼らの場所を突き止めカルネに伝えることができた。

 

「作戦成功ね!」

 

嬉しそうに少女とハイタッチするカルネはとてもいたずらっ子のようだった。カルネはチャンピオンや女優をこなすところを見るととてもストイックで孤高の存在という部分が目立つが、お茶目な部分も持ち合わせている。

うふふと微笑むカルネにシロナとダイゴは底が知れないなと思うのだった。

 

「それにしても、さすが伝説のポケモンと言ったところかしら。全く倒れてくれる気配がないわね。」

 

「かなりのダメージは与えているはずなのだけれど、、、」

 

カイオーガに比べてグラードンはボーマンダとメタグロスとの戦闘で体力が削れているはずなのだが、まだ余力がある。

 

「プラターヌ博士、解析は」

 

「もう少し待ってくれ!前回はレックウザが巨石のエネルギーを使ってメガシンカしていることはわかっているんだが、今のレックウザに何が必要なのか分からない!」

 

レックウザがメガシンカするのに必要なのは巨石のエネルギーまたは人の祈り。それはわかっている。巨石のエネルギーでメガシンカしているのならば、巨石のエネルギーか同等の力が必要になる。もし巨石のエネルギーが鍵ならば、巨石からの発生ではないとしても同様の力を持っているキーストーンがあるこの状況でメガシンカしていても不思議でない。

人の祈りも少女がいる時点でその条件は満たしているはず。ということは、レックウザがメガシンカしていないのはエネルギーが不足しているということになる。

レックウザはオゾン層に住むポケモン。その主食は隕石と言われ、カロス地方に存在する日時計も宇宙からやってきたとも言われている。どちらもメガシンカに関係している存在であることから、レックウザのメガシンカは主食としている隕石のエネルギーが関わっているとも考えられるが、真偽は分からない。

主食である隕石の力なのか、もっと別の特別なものが必要なのか、プラターヌたちは考えあぐねていた。

 

プラターヌたちが待ってくれというのならば、少女たちは信じて待つしかない。彼らが余裕を持てるように時間を稼ぐしかない。

少女は大きく深呼吸して集中力を高める。自分にできることをしよう、そう前を向いた時、ただ一言が脳内で再生される。

 

『レックウザの道こそ空の柱なり』

 

あの言葉を聞いた時、少女はレックウザに辿り着けるのがそらのはしらだけ、という意味だと解釈していた。

だが、それが違っていたら?

何故あの老人は《レックウザへの道》、ではなく《レックウザの道》と表現したのか。

レックウザの姿が柱にみえたからではないか。よく思い出せばそらのはしらも形も不思議だった、あの、夢の緑のメガレックウザの額に描かれていた模様と同じ形。それにレックウザはドラゴンポケモン、本来なら龍の柱などと呼ばれても納得する。なぜ、わざわざそらのはしらなのか、レックウザが宇宙に住むからなのか。それならばやはり老人の言葉は《レックウザへの道》になるはずだ。

考えすぎかと思うかもしれない、だが、レックウザがあの夢をわざわざ少女に見せたということは理由が必ずなるのだ。

 

そら 空 宙 宇宙

 

空の柱はレックウザの姿

 

ならば、それはドラゴンではなく、別のもの。

 

――『あのレックウザは神としては未熟だね』

 

(未熟、、、。ポケモンの未熟と言われるのは個体としてのレベルや熟練度が低い場合。ポケモンの成長は技の習得や進化によって可視化される。

なら、レックウザは?レックウザが使う技は神速と暴風。シュオウは技を見て未熟と言ったの?)

 

(神としてのレックウザって何?神話で言うならグラードンとカイオーガを止める存在、それができなかったから未熟?

あぁもうわからない!!)

 

纏まらない思考に少女は頭が痛くなる。何かが出かかっているというのに、思考がクリアにならない。

 

ふわり、少女の髪を風が撫でる。

息を飲んだ。

 

 

「ひこう、わざ、、、?」

 

 

少女の呟いた声を聞き逃さなかったプラターヌたちは直ぐにパソコンに向き直る。

指を動かす動作が早い。指がつりそうになるが、プラターヌたちは止めることは決してなかった。

 

「!!

わかったよ、レックウザに足りたいのは飛行エネルギーだ!ダイゴすんが出会ったメガレックウザは強大な飛行エネルギーを持っていたが、あのレックウザは飛行エネルギーが不足している!」

 

「レックウザが隕石を主食としていることで体内にメガストーンやキーストーンと同じエネルギーを宿しているんです。この隕石のエネルギーと巨石が反応したことで原初のメガシンカとなったんです!」

 

「あのレックウザにはキーストーンとメガストーンのエネルギーは十分ある。残りの飛行エネルギーを与えてやればメガシンカができるはずだ!」

 

興奮気味に、珍しく早口で話す3人。はぁはぁと息が荒く、額には汗が滲んでいた。

プラターヌはMarvelous!と嬉しそうに、少女の肩を揺らした。少女の零した一言がなければ虱潰しでエネルギーを探ることになっただろう。少女は自分の声が漏れていたことに気づかず、プラターヌがなぜ自分を褒めるのか見当がつかなかった。

プラターヌとシトロン、デンジがいなければなし得なかったことだ、賞賛を受けるべきはプラターヌたちだと少女は思うのだが、彼本人に揺さぶられるせいで言葉が出せない。

 

「でも、ここにはその術がない。

これじゃレックウザにエネルギーを与えることはできない。」

 

デンジの言葉に全員がピタリと止まる。

確かにそうだ。レックウザがメガシンカできる鍵はわかったとしても、エネルギーが与えられなければレックウザを満たすことはできない。

ここまで来たのにと、少女が顔を伏せる。

皆が落胆する中、1人だけ肩を震わせる者がいた。

 

「そうか、そういうことだったんだ。ふふふ、はは、あはははは!」

 

突然笑い出すダイゴに少女たちは目を大きく開けて驚いた。

普段冷静でクールな彼があんな風に笑うことは珍しい。それにこの状況で気の抜けたように笑うなんて普通ではない。どうかしてしまったのではないか、やっぱり頭を強く打ってしまったからか、そう思った少女とミクリは心配でダイゴに近寄る。

 

「ダイゴさん?どうかしましたか、わっ!?」

 

「え、ダイゴ、、ちょっ、とっ!!」

 

少女とミクリがダイゴに引っ張られ前に倒れかける。

ミクリは肩に腕を回され、少女は腰を抱えられてダイゴに抱き締められていた。

ミクリと少女はダイゴの行動に狼狽えた。

 

「ダイゴ、どうしたんだい?」

「大丈夫ですか?」

 

ダイゴが非常事態にこんなふざけたことをしないとわかっている2人は、何か理由があるのだろうとダイゴを伺う。ミクリは上から、少女は下からダイゴを覗き込むと、ダイゴは嬉しそうに笑っていた。再び2人の頭にハテナが浮かぶ。

 

「運命だったんだ」

 

「運命、、、?」

 

つい復唱してしまった少女に、ダイゴは頷いた。

 

「そうだよ、君がレックウザに出会ったこと、僕たちが出会ったこと、全て運命だったんだ。いまこの時のためのね。」

 

ダイゴと少女がそれぞれボーマンダとメタグロスをメガシンカさせたこと

ボーマンダにミロカロスが力を与えたこと

ボーマンダがギガインパクトを覚えたこと

ボーマンダとメタグロスが共にグラードンを倒したこと

 

「1人でも欠けていたらだめだった。

僕たちだからできることなんだ。」

 

そう言って笑うダイゴに少女とミクリは何も言えなかった。

ダイゴのしようとしていることが何となくわかった。普通ならば不可能だと、言うだろう。それなのに何故か、私たちならできると確信が沸いた。本当に何となくだ。でも、これまでの戦いの一つ一つの行動が、今に繋がっているのならば認めるしかないかった。

 

「どうしたの、3人とも?」

 

シロナが心配気に声を掛けた。

3人はお互いの顔を見ると、ふっと笑ってシロナたちに向き合った。

 

「レックウザをメガシンカさせます、私たちの手で。」

 

「!!そんなこと、できるの?」

 

カルネの問に頷く。カルネたちは信じられないと言う顔をする。そしてすぐに顔を明るくさせて、少女たちを見た。

 

「そうだね、できるかもしれない。他の誰でもない、君たちが言うのなら。」

 

プラターヌたちは知っている、彼らの信頼関係を。

少女たち3人だけではない、少女のポケモンたちも強い信頼関係で繋がっている。認めるしかないじゃないか、そうプラターヌは満足そうに笑った。

 

「グラードンとカイオーガのことはお任せ下さい!」

 

「餞別として、これを渡しておくよ。後は頼んだ。」

 

シトロンは頼もしく自身の胸を叩き、デンジはミクリにある物を渡す。

それは虹色に輝いており、ダイゴや少女たちが持つそれに似ていた。

 

「キーストーン、、、!」

 

「アジトで使われていたキーストーンだ。何かに使えないかとくすねておいたのが役に立ちそうだな。」

 

絶対に自分の改造に使う気だったでしょうとシロナが困ったように笑う。ミクリはちゃっかりしているねと笑いながら、デンジにお礼を言った。

シロナたちは少女たちに手を振って、後は任せたよとグラードンとカイオーガの方へ向かって行った。

少女たちは頷き合うと、ボーマンダとメタグロス、そしてレックウザを呼ぶ。

2体はどうしたのかと少女たちのもとに戻り、レックウザは一定の距離を保ちつつ、こちらの様子を伺う。

 

「メタグロス、ボーマンダ、君たちの力を貸してくれ」

 

ダイゴに2体は勿論だと声を上げる。ダイゴはありがとうと言いながら、2体の頬を撫でて抱き込んだ。

 

「レックウザ、貴方に私たちの想いを受け取って欲しい!」

 

そう叫ぶ少女をレックウザはじっと見つめる。

レックウザを見る少女の目は真っ直ぐで、目を逸らすことなかった。

初めてそらのはしらで目を合わせた時とは比べ物にならない。あの時は不安と失望の目だったが、今は覚悟と信頼と自信と、そして強さを宿した目だ。

レックウザは少女たちに咆哮する。受け入れてくれた。

少女はレックウザにありがとうと笑った。

 

 

 

 

「始めるよ。いいね?」

 

ダイゴに少女とミクリが頷く。準備はいつでも出来ている。

 

少女がボーマンダの身体を包み込んだ。密着したところが暖かい。

 

「ボーマンダ、ギガインパクトの力を身体に留めて。」

 

ボーマンダは少女の温もりを感じながら、その温もりを逃さないように、身体の中のエネルギーを増大させて身体の内側に留める。

 

「捨て身タックルじゃエネルギーが足りなかったかもしれない。けれど、ギガインパクトに変化したことでエネルギーが必要量に届いた。

外へ放出するはずのエネルギー、それも膨大なエネルギーを内に溜めるのはかなりの根気も技のコントロール力も必要になる。ミクリに技の操作性は飛躍しても許容がオーバーすれば、意味をなさない。

だが、お嬢さんの存在によってそれは不可能から可能へと変化する。ボーマンダ、絶対にお嬢さんを傷つけない。」

 

メガボーマンダの特性、スカイスキンによってギガインパクトの威力も底上げされている。エネルギー量は充分だろう。

外に放出するはずのギガインパクトのエネルギーを身体に留めることは、エネルギーが多くなれば多くなるほどコントロールは難しくなる。だが、少女がボーマンダに触れることでボーマンダは少女を傷つけないために絶対にエネルギーをコントロールしてみせる。ダイゴもミクリも確信している。信じているのだ、ボーマンダと少女の絆を。

ボーマンダのエネルギーに引き寄せられるかのように大気がボーマンダの身体を取り巻く。エネルギーが最高潮まで高まった。

ダイゴはメタグロスをひと撫でする。

 

「大丈夫、君とボーマンダならできるよ。

 

メタグロス、サイコキネシスでボーマンダのエネルギーを集めてくれ。」

 

メタグロスが目を光らせ、ボーマンダの身体をサイコキネシスの光で包む。

サイコキネシスに包まれる感覚がしてもボーマンダは驚くこともなく、エネルギーの集約に集中している。ボーマンダの身体から内に溜まっていた大きなエネルギーが抜けていく。全て抜け出した後、ボーマンダは膝をつき少女にもたれかかった。ボーマンダと一緒に倒れないようにミクリに背中を支えてもらいなが、少女はボーマンダを抱き締めた。ミクリもボーマンダの頭を撫でて労る。

 

(よく頑張ったね、ボーマンダ)

 

ダイゴは心の中でボーマンダを褒めると、メタグロスへ目線を戻す。メタグロスはボーマンダから取り出した飛行エネルギーをひとつのエネルギー体に纏めあげる。

 

「さあ、僕たちの想いと希望を受け取ってくれレックウザ!!」

 

メタグロスがレックウザにエネルギー体を放つ。

飛行エネルギーはレックウザの身体にぶつかり、大きな竜巻になってレックウザを包んだ。

 

 

(ボーマンダとメタグロスの信頼関係がなければボーマンダから飛行エネルギーを取り出すことなんてできなかった。

ミロカロスがボーマンダにドラゴンエネルギーを渡すなんてことをしていなければ、こんな到底不可能なことを考えつくことなんてなかった。

これまでに築いた信頼に、研鑽に全て意味があった。それはもう運命と言っていいだろう、いや、言わせてくれ。たとえ、偶然だったとしても、僕は必然だったと言うだろう。なぜなら、僕たちは今ここで奇跡を起こすからだ。)

 

グラードンとカイオーガがなにかの存在にピタリと動きを止めた。

 

天まで伸びる竜巻の中を龍が登る。大きな影は、少女たちを呑んだ。

 

「お嬢さん、これを。」

 

ミクリは持っていたキーストーンの原石を少女に手渡し、少女の手を自分の手で下から支える。その下にダイゴの手も加わる。

 

「お嬢さんだけに負担は掛けさせないよ。」

「僕たち全員で成し遂げるんだ。」

 

少女は目をつぶり、深く息を吐き出す。

初めてボーマンダがメガシンカした時のような緊張感だった。上手くいくか不安でドギマギしたなと少女は笑みを零した。でも、今は1人じゃない。ダイゴ、ミクリ、そしてボーマンダとメタグロスがいる。ポケモンたちが見守ってくれている。

 

 

――何も怖くない

 

 

 

 

「レックウザ メガシンカ」

 

 

 

――――――――――――!!!!!

 

七色の光が竜巻の中から溢れ出し、黒い影が現れる。

轟く咆哮に、グラードンとカイオーガが後ろに下がる。

 

漆黒に輝く身体に頭から伸びる黄金の髭。顎は幅広な刃状になって前に突き出し、額にΔが浮かんでいる。

 

「メガ、レックウザ」

 

少女がレックウザを見上げる。色は違ってもあの夢と同じ姿だ。

レックウザはグラードンとカイオーガから視線を少女に移す。そしてダイゴやミクリ、ボーマンダ、メタグロスを順に見つめ、そして頭を下に提げて少し唸った。

 

レックウザは前を向き、再びグラードンとカイオーガに咆哮を上げる。

天まで響くその声は混乱していた空を落ち着かせ、代わりに乱気流を起こした。メガレックウザの特性、デルタストームだ。ゲンシグラードンとゲンシカイオーガが起こした天変地異を抑えたのだ。

 

レックウザは自身の前にエネルギーを貯める。身体は淡い紫色に包まれていた。

 

「あれは新しい技、、、?」

 

「はは、、、まさか、このタイミングでそれも習得するとはね。

お嬢さんとの繋がりを形にしたのか、レックウザ」

 

レックウザが天にエネルギー体を放つ。エネルギー体は天高くで割れ、地上に降り注いだ。

そう、ドラゴン技では最強クラスの技、流星群だ。

 

流星群がカイオーガとグラードンに降り注ぐ。レックウザの攻撃に遂にグラードンが膝を着いた。

 

「レックウザと共に戦いましょう!」

 

「グラードンとカイオーガを助けられるチャンスです!」

 

ポケモンたちが一斉に動き出す。メタグロスとボーマンダも共に飛び出し、レックウザと共にグラードンとカイオーガの方へ向かう。

 

メタグロスとレックウザをメガシンカさせている少女はその場で膝を折った。身体にメガシンカの負担が掛かっているのだ。だが、少女はすぐに立ち上がる。ミクリが支えようと腕を出すが、少女は首を振って断った。

 

「ボーマンダたちは誰かの支えもなく、戦ってくれているんです。トレーナーの私が支えて貰う訳にはいきません。」

 

少女の目は真っ直ぐに前を向いている。少女は支えなんて必要としない。見た目が子どもだろうと、少女は自分の足で立つことができる強いトレーナーだ。

ミクリは少女の姿に苦笑を零す。

 

「なら私は信じるよ。」

 

少女はミクリの方を向くと、にかりと嬉しそうに笑った。

 

「ガブリアス、ドラゴンクロー!!」

「サーナイト、ムーンフォース!!」

「レントラー、ライジングボルト!!ライチュウ、10万ボルト!!」

「レントラー、放電です!!」

「メタグロス、コメットパンチ!!」

「ボーマンダ、ドラゴンダイブ!!」

 

ポケモンたちが一斉に攻撃を仕掛ける。

 

グラードンとカイオーガはポケモンを拒むように咆哮する。

グラードンは断崖の剣でポケモンたちの行く手を阻み、カイオーガは再び絶対零度で一掃するつもりだ。

ボーマンダとメタグロスはスピードを上げ、前に躍り出ると断崖の剣を砕いていく。

レックウザはカイオーガを包むように暴風を起こし、カイオーガを竜巻の中に閉じ込める。竜巻は絶対零度によって凍てつき、氷の柱を作り上げた。

少女のレントラーがミミッキュとブースターを背中に乗せて、シトロンとデンジのレントラーたちが作った電気の道の上を走る。レントラーはメタグロスとボーマンダが砕いた断崖の剣の破片を足場に高くジャンプし、カイオーガの上を取る。

邪魔をするようにグラードンが大文字をレントラーに向けて放つ。

レントラーは身体をムチのように身体をしならせると、反動をつけて大文字へブースターを投げる。ブースターは特性のもらい火で大文字を全て吸収する。ミミッキュがブースターを黒い手で捕まえると、今度はカイオーガへブースターを投げた。ブースターが炎を身体に纏い、レントラーはブースターに合わせて身体に電気を帯びる。ブースターのフレアドライブとレントラーのワイルドボルトが合わさり、赤と黄色のグラデーションを作りながらカイオーガに激突した。

レントラーはブースターとミミッキュを背中でキャッチすると、氷や岩の破片を使って再び崖の上まで戻る。

 

大文字が吸収され無防備になったグラードンの顎にガブリアスがドラゴンクローを叩き込む。よろけたグラードンの上からサーナイトがムーンフォースを連射し、追い打ちをかけた。

グラードンは小賢しいとばかりにヒートスタンプでサーナイトとガブリアスをなぎ払う。掠ったヒートスタンプの熱波にサーナイトとガブリアスが後ろに飛ばされる。横からお返しとばかりにカイオーガが彼女らに根源の波動を放つ。

熱風に身体を取られたことで無抵抗で技を受けそうになるが、メタグロスが割り込み根源の波動を守るで受け止める。吹き飛ばされていたサーナイトたちをボーマンダがキャッチし、少し離れた安全な場所まで運ぶ。

 

グラードンとカイオーガの息は荒い。勝利は目前だ。

 

 

最後はみんなの力で一気に決める。

 

 

シロナが手を天に掲げる。

 

「降り注げ天空の星々、流星群!!」

 

ガブリアスが天空に流星群を放つ。ガブリアスに合わせてレックウザも流星群を放つと、空中でぶつかりあった流星群は技の威力を上げ、まるで彗星のように降り注いだ。

 

「サーナイト、サイコキネシスで流星群を2体へ集中させるのよ!!」

 

サーナイトがサイコキネシスで流星群をアシストし、落下地点を2体の上に限局する。

 

「行くよお嬢さん!

メタグロス、コメットパンチ!!」

 

「任せてくださいダイゴさん!

ボーマンダ、ギガインパクト!!」

 

メタグロスは降り注ぐ流星群の落下地点を優れた演算能力を駆使することで予測し、カイオーガまでの道を導き出す。流星群に邪魔されることなく、カイオーガへコメットパンチで突っ込む。ボーマンダはその高い旋回性と素早さで逆に流星群を利用し、ギガインパクトに遠心力でぐんぐんと勢いを付けていく。

コメットパンチとギガインパクトが2体を押し上げて、空中でぶつけ合った。

 

 

打ち上げれる超古代ポケモンたち。

 

 

 

遠くで輝く1柱の龍。空を切り裂き、海を割り、その身体を一本の槍のようにして滑空する。

 

メガシンカに必要な最後のピースであり、超古代ポケモンを止めるための伝承最後の技。

事を完成させるための最後の大事な仕上げを意味する言葉が由来となった、その技の名は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画竜点睛

 

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