あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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前回よりキャラ同士の距離が近い気がします。ご注意ください…




かつての

グツグツ

 

トントン

 

ジュゥ

 

 湯が沸く音、リズム良い包丁音、そして焼き物をグリルで焼く音がリビングに反響している。

 朝の陽射しが部屋の中にコントラストを造っていた。

 

「う〜ん…眠い…」

「あはは、おはよう。寝ぼけてるね、お嬢さん。」

「おはようございます…」

 

 目を擦りながらリビングに入ってきた少女は珍しく寝ぼけた様子で、朝食を作っていたダイゴは思わず笑ってしまった。起きてすぐ洗面台へ行っていたので身なりは整っているが、服は寝衣のままだし足取りは覚束無い。

 それもそのはず、昨夜寝床に着いたときには時計は日付を超えていたし、外は既にゴーストポケモンがかなり活発に動いていた。

 ご飯を食べてすぐポケモンバトルを二戦もし、ダンバルに夜景を見せようとカナズミシティまで足を運んだ。そのままトクサネシティの宇宙センターまでボーマンダに飛んでもらい、天体観測までした。それだけならよかったのだが、家に帰ったあともハウスの近くに民家が無いことをいいことにポケモンたちと遊び倒し、途中からメガボーマンダとメガメタグロスで飛行勝負なんてものも始まって、ふたりとポケモンたちしかいないはずのハウスは見事などんちゃん騒ぎだった。ポケモンたちが寝静まってもハイテンションだったふたりはダイゴの石トークで盛り上がり、さすがに寝ろとパートナーたちに叱られてから大人しく寝床についた。

 

「ほらお嬢さん起きて、ご飯できたよ。」

「う〜…」

「うー、じゃなくて」

 

 ソファで船を漕ぐ少女の手を引いてキッチンテーブルへ案内する。椅子に座らせて、それでもふらふらしている少女を心配しつつも出来上がった朝食をテーブルへ運ぶ。

 白米、味噌汁、焼き魚、ほうれん草の胡麻和えというシンプルな朝食だが、味噌汁の匂いに半分覚醒した少女は目を輝かせる。

 いただきますと手を合わせて早速味噌汁をこくりとひと飲みすると、ほうっと頬を桃色に染めた。

 

「ふあ…美味しい〜」

「ふふ、それは良かった。」

 

 ようやく覚醒し始めたことを確認して自身も朝食にありつく。やはり朝は味噌汁だな、なんて思いながら啜り、程よく焼けた魚は香ばしい皮と旨味の詰まった白身に脳が起こされた。

 上手くできた朝食に満足していると目の前からへへへ、なんて締りのない声が聞こえた。

 

「どうしたの?」

「ダイゴさんとダイゴさんが作った朝ごはん食べれるなんて贅沢だなぁって」

「なにそれ。お嬢さんまだ寝惚けてるね。」

 

 ぽやぽやしながら笑う少女に微苦笑が出た。

 ここにポケモンたちが入れば一瞬で覚醒するだろうが、生憎彼らは既に朝食を済ませて元気いっぱいに外へ飛び出してしまった。

 呑気に笑う彼女も年相応で可愛らしいが、このままでは朝食を喉に詰まらせかねない。ちゃんと起きてもらわねば。

 起きなさいと言いながら、それもこれも昨日夜更かしさせた自分のせいだなと諦めて少女の世話をすることに決めたダイゴだった。

 

 

…………

 

 

「サンドー、こっちおいでー」

 

 冷却タオルを持って庭に出ていく少女。ご飯を食べ終わる頃には全覚醒した少女は食べ終わった食器をテキパキ片付け、服も着替えていつもの彼女になっていた。

 朝とはいえ高い気温であることは変わりなく、日に当たってはふはふと息を切らしたサンドを抱っこして冷却タオルで体躯を拭いてやる。ひんやりとしたタオルはサンドにはまだぬるいようで身動ぎしていた。

 

「あらら、これでもダメか。やっぱり凍らせないとサンドに合わないね。」

 

 彼女の身体をそのまま抱き上げてハウスの中へ入った。冷房が効いたリビングはサンドには天国で、ある程度少女の膝で休むとすぐ復活してお気に入りのクッションへダイブしに行った。

 

「サンド、大丈夫かい?」

「はい、もう少し涼めば。」

 

 ぱたぱたと団扇で扇いで風を送ってあげる。氷ポケモン用の体温計を使って体温を確認しながら、サンドの様子をみる。

 

「凍らせるタイプのタオルじゃないとダメだったか。」

「みたいです。前に使っていたものは駄目になっちゃったので、今はこれしか無いんですけど…。」

「じゃあ、今日の帰りに買いに行こう。」

「はい、そうして頂けると嬉しいです。」

 

 ピピッと体温計がなる。平熱ほどになった身体を触ってサンドの体調を伺う。彼女はご機嫌で少女の手に絡みついてじゃれ始めた。体調は良さそうだ。

 

「準備はできた?それじゃ、行こうか。」

 

 サンドをモンスターボールに戻してダイゴの後を追う。玄関を出て、外で遊んでいたポケモンたちも回収してボーマンダの上に乗っかった。ちらりと向こう側を見るとダイゴもエアームドに乗り込んで、準備は万端だ。

 ボーマンダによろしくねと言って身体を撫でる。

 

「よし、じゃあ、行こう。」

「はい。ところで、今日はどこに行くんですか?」

「んー…それはお楽しみに、かな!」

「お楽しみ、なんですね。」

 

 ふふふ、と笑う姿にこれは何か企んでるなと微苦笑が出たのは今度は少女の方だった。

 

………

 

「というわけで、やって来ました警察署!」

「そのノリで来る所じゃないですよね、ここ。」

 

 うきうきとしているダイゴを横目に聳え立つ警察署を見上げた。

 なぜ警察署。そんな洞窟やショッピングモールに行く勢いで連れてこられる場所では無いはずだ。

 

「でもここに来たことが無いわけじゃないだろう?」

「そうですけど、そういう事じゃないです。」

 

 ここに来ることは幾度もあった。いや、誰かに言えないことをした、という訳ではなく、手続きや預かっているポケモンたちの状態報告などをしに来ていた。

 しかし、だからといって気軽に来るところでは無いのは確かだ。ダイゴが理由もなくここに連れてきた訳では無いことはわかるが、ノリが違うのだ、ノリが。

 

「ふふふ、まぁ、ここに来た理由は後ほど教えてあげるよ。まずは入ろう。外は暑いからね。」

 

 歩き出すダイゴを追いかけるように彼の右隣を陣取る。暑いねえ、なんて言って手で汗を拭う彼にハンカチを差し出す。汗を拭う姿すら様になるのは素直に羨ましいと思うのは仕方ないことだ。と言っても、そんな彼や今はいない麗しいもう一人の友人を見て、見蕩れたりしないのが少女という女の子だった。

 

 許可証を発行してもらい、エレベーターに乗り込む。目的の階へ着いたことを報せるベルに従って降りると、目の前にはずらりと無機質なドアが羅列していた。

 

「左側の最奥の部屋だよ。」

 

 若干の緊張を抱きながら、先を進む後ろをまるで親鳥を追いかける雛のように追いかける。

 

「スペース団と戦った時、僕たちとキミは一度分断されただろう。あの時はシロナさんや他の人たちが助けてくれたけど、次はどうなるかわからない。」

 

 確かにそうだ。あの時、海岸に打ち上げられた自分とメタグロスを助けてくれたのがデンジでなかったら、スペース団のアジトへあんなに早く辿り着けたかわからない。気難しい人なら話を信じてくれたかもわからない。ひとつ何かが違えば自分は今ここにいなかった。本当に運が良かったと思う。

 

「だから君に、味方を作りたいんだ。」

「味方…?」

「そう。警察やポケモンレンジャー、ポケモンGメン、とかね。協力者は多ければ多いほど良い。君を助けてくれる人を作ろう。」

 

 助けて、くれる人。

 決して少女の実力がないと言っている訳では無い。

 ただ、自身の経験とあの時の反省から信頼できる協力者を作るという結論を出しただけ。再び来る悪意への危惧というわけだ。

 

 脚が止まり、見上げると目的の扉の前まで来ていた。

 

「なかでも君と年齢が近く、優秀な人を紹介して貰えるように頼んだよ。」

 

 扉を開けるダイゴに促されるまま、部屋の中へ脚を踏み入れる。グレーのカーペットからナチュラルブラウンのカーペットに切り替わった。

 扉の向こう側に佇んだレッドバイオレットをウルフカットにしたの女性。ユニセックスなスーツを纏った姿は正に男装の麗人と言えた。

 

 少女とダイゴの姿を確認した彼女の上司と思えるジュンサーが敬礼する。

 

「お久しぶりですチャンピオン!今日はここまで御足労頂き感謝致します!」

「こちらこそ、無理を言ってすみません。貴重なお時間をありがとうございます。」

 

 上司にあたる者同士が挨拶を交わし、今度は君たちの番だというように前に出される。

 

「こちらは私の部下のヘレンです。まだ私と同じジュンサーではありますが、この年齢とは思えないほどの目覚しい功績を上げています。」

「それは素晴らしい。こちらは先日にお伝えしていた僕の友人です。」

「彼の事件解決の立役者になった方ですね。」

 

 お会いできて嬉しいです、と差し出される手に慌てて手を出して握手を交わす。

 立役者なんて恐れ多い。なぜそんな誇張評価をされているのだろうか。

 

「ヘレン、あなたも挨拶を…ヘレン?」

 

 上司ジュンサーがヘレンと部下ジュンサーを呼ぶが、彼女は少女を見たままぽかんと口を開けて固まっている。目は見開かれ、凝視される視線が痛い。

 何かしてしまったのだろうかと、不安と美人に見つめられる恥ずかしさでいたたまれなかった。

 

「お、お…」

「お?」

 

 プルプルと震える唇から母音がほのかに零れる。

 微かな声を聞き逃さないように一歩近づくために、脚を前に踏み出そうとした、その時。

 

「お前!!!!シンオウのボーマンダ使い!!!!!」

 

 

「…へ?」

 

 

 

………………

 

 

「…へ?」

「へ?じゃない!まさか、私のことを忘れたのかッ」

「え、えっと…」

「ストップ。お嬢さんが混乱している、少し待ってくれ。」

「落ち着きなさいヘレン。冷静な貴女らしくないわ。」

 

 ものすごい剣幕で詰め寄られる。美人の怒り顔より怖いものは無い。

 

(ど、どうしよう。ほんとに誰かわからない…!)

 

 人違いという可能性はないだろうか。できればそうであって欲しかった。いやでも目の前の彼女はシンオウのボーマンダ使いと呼んだ。シンオウでボーマンダを使う女性がどれだけいるのかは知らないが、初対面でシンオウ地方出身ということとボーマンダが手持ちにいることを当てられれば、こちらの願いは虚しく散るしかなかった。

 これでは完全なる非常識人のレッテルが貼られる。申し訳ない気持ちで少女は泣きそうだ。

 

「ヘレン、彼女のことを知っているの?」

「…はい。彼女自身は覚えてないようですが。」

「ご、ごめんなさい…」

 

 ヘレンはため息をついた。少女は咋に肩をびくつかせ、まるで叱られてるような感覚だった。

 

「先輩、ポケモンを出しても宜しいでしょうか?」

「理由を教えて」

「きっと、この子を見れば思い出すはずです。」

「…どうしますか?」

 

 どうやら決定権はこちらにあるらしい。

 そんなもの、答えはひとつだ。

 

「お、お願いします!」

「わかりました。それでは、ヘレン、ポケモンの使用を許可します。…といっても、ポケモンで思い出すなんて難しいわよ。」

 

 ポケモンの姿はある程度一緒だ。たまに独特な特徴をもつ(少女のボーマンダのような)個体でないと見分けがつかない。

 だが、どうしてかヘレンには謎の確信があるようだ。ヘレンはモンスターボールを取り出して軽く中に投げる。

 

「!サザンドラだ…!」

 

 凶暴ポケモン、サザンドラ。珍しい三つ又の頭を持つドラゴンポケモンであり、赤く鋭い眼光と左右対称に冷えた6枚の羽をもつその存在は気性が荒く、育てにくいポケモンの代表格だ。

 

「凄い、やっぱりかっこ…いい…」

(この子、見覚えが、)

「お嬢さん?」

「ようやく、思い出したか?」

 

 確かに、この子を少女は知っていた。海馬ではなく大脳皮質という脳のタンスから、遠い、されど鮮明な記憶が引き出される。

 そうだ、思い出した。

 

「キッサキ神殿の前で、出会った、エンブオーがパートナーの、」

「そう、久しぶりだな。」

 

 目の前の彼女はようやく思い出してくれたかと、ふわりと笑った。

 

 七年前、キッサキジムを突破して観光目的で入ったキッサキ神殿の前で出会った一人の女の子。赤みがかった髪を揺らした、眼鏡をかけた子だった。イッシュ地方からシンオウ地方にやって来て、勢い付いた少女の噂を聞き付けて態々バトルのために追いかけてきたという。捕まえたばかりのユキノオーの力を試すためだとバトルを仕掛けてきたが、進化したてほやほや生き生きのボーマンダに倒されていた、あのトレーナー。

 

「眼鏡、掛けてないんだね。」

「…よく覚えてるな。」

「へへ、サザンドラたち、格好良かったから。」

 

「そんな、一目見て思い出すものなの…?」

「もうこれは、流石お嬢さんと言うしかないね。」

 

 ははは、と空笑いをしている上司たちを置いてけぼりにして、少女はかつての知り合いとの再会に胸を踊らせた。先程まで忘れていたことには目をつぶって欲しい。

 

「でも、えっと「ヘレンでいい。」…ヘレンこそよく覚えてたね、私のこと。」

「…そうだな。こんなポケモンバカ、後にも先にも出会ったことがなかったからだろう。」

「ポケモン、バカ?」

「なんでもない、気にするな。」

 

 ヘレンは目を細めて少女を見た。少女は首を傾げるが、ヘレンに気にしなくていいと言われてしまえばそれまでだ。追求はしなかった。

 

「でも良かった。昔からの友人ならお嬢さんも関わりやすくなる。」

「えぇ、良いスタートがきれたようで喜ばしいです。」

 

「お嬢さん、ヘレンさん、君たちには良い関係性を築いて欲しい。この友好関係はお嬢さんにとっても、ヘレンさんにとってもいつか大きな利益になる。」

 

 ホウエン神話を守る少女と警察官であるヘレン。最初の話では少女だけに得があるような話だったが、どうやら違うらしい。

 ホウエン神話を守るということは、神話そのものであるホウエン地方を守ることでもある。ホウエン地方が驚異に晒された時、守護の役目を持つ少女はそれを根絶やしに掛かるだろう。つまり、少女の存在は大きな武器になるということだ。

 レックウザや超古代ポケモンたちと関係が深い少女とは警察としても良い関係を結びたいらしい。ダイゴが言った通り、この協力関係は双方の益がある。

 

 「今日はお互いの存在を知るための初顔合わせ。これから2人には小さな事件を一緒に請け負ってもらおうと思ってる。今すぐ、という訳では無いから安心してね。」

 

 にっこりと笑うダイゴ。

 じゃあ、お嬢さんは先に外で待っていてくれとダイゴに言われ、少女はヘレンにまたねと手を振って扉の向こうへ消えていった。

 

「ヘレンさん」

「はい」

 

 神妙な面持ちの彼はさすものチャンピオンということもあり、迫力がある。いくら好青年の出で立ちであっても、彼はこの地方のトップだ。

 

「お嬢さんと出会ったのは?」

「七年ほど前です。あの頃私は一年間イッシュ地方で旅をして、その後に腕試しとしてシンオウ地方へ行きました。その時あの子は新人トレーナーだったはずです。」

「…よく覚えているんだね。」

「ええ…それは。」

 

 含みのある返事。目を横に流した表情はどこか懐かしげに、どこか憂鬱さを孕んだようだ。

 

「あんな怖いトレーナー、私はあの子以外出会ったことがありません。」

「怖い…?」

 

 怖い、とは。少女は極めて人畜無害な性格であり、人に恐怖を与えるような娘には見えないのだが。

 しかしヘレンはかぶりを降って答えた。

 

「怖いのは性格や言動ではありません。トレーナーとしての恐怖です。」

「と、言うと?」 

「…彼女は良くも悪くも、ポケモンしか見ていませんでした。」

 

 あぁ、それは分かる。

 少女は自分の安全よりポケモンの安全を取る子だ。ポケモンに攻撃された後も「良い経験ができて良かったです!」と言って笑っていた。曰く、バトルの痛みを知れて嬉しいとのこと。怖い。

 

「自分を含たトレーナーなんて眼中になく、彼女は目の前にいるポケモンばかりで、トレーナーの顔を覚えるよりポケモンで覚えるような子でした。なにより…

 

彼女はトレーナーとしての癖がありませんでした。」

 

「ポケモン一匹一匹の個性を最大限に、まるでトレーナー自身の戦い方なんて邪魔だと言わんばかりのバトルは、誰もが異常だと、戦きました。」

 

 ヘレンはイッシュ地方で一年間、少女も早くポケモントレーナーとして旅をしていた。ヘレンがイッシュリーグをその年に優勝していたことは、彼女の情報を貰った時に確認している。

 リーグ優勝という功績を持ちながらもシンオウ地方で、新人トレーナーである少女に負けた。悔しさもあっただろう、だがそれ以上に彼女の心には少女のポケモンへの無類なき愛が恐怖として植え付けられた。

 ポケモンバトルはトレーナーとポケモンが共に戦い、共に勝利を分け合うもの。だが、少女はポケモンに勝利を【捧げる】ために戦っていた。ポケモンたちが勝利を得るために、少女は自らを彼らの目と脳として使用した。まぁ、その献身さが後のブランクに繋がったわけだが。

 

 そうだったのかと相槌を打つダイゴでさえ、自身がただのトレーナーだったときに少女と出会い戦っていたのなら、ヘレンと同じように少女に恐怖を抱いただろう。今でも彼女のポケモンに対する愛情には感服してしまうのだから。

 

「あの子がシンオウ地方を旅していた時はトレーナー界隈では名の通ったトレーナーでした。大きなボーマンダを使うという点もありますし、棚上げになりますが、新人でリーグ優勝もしていたので。どうせ彼女自身はそんなこと露も知らないでしょうが。」

 

 以上です。その言葉と共にヘレンは口を閉じた。

 彼女にとって少女はなかなか大きな存在だったらしい。七年前のことをこんなにも鮮明に覚えているなんて、しかも少女自身は彼女を覚えていなかったのだ、思わず迫ってしまったのも頷ける。

 ダイゴへの口ぶりは淡々としていたが、少女へ向ける眼差しや声の色からも関係構築には問題なさそうだ。逆に良好に進むだろうと予想できる。

 

「ありがとう、話を聞かせてくれて。なにぶん、あの子の過去を知る者が少ないのでね。」

 

 そうだろうなとヘレンは首肯く。

 少女はポケモンの話は嬉々としてするが、自分のことはてんで興味無いとばかりに無口だ。過去の話を彼女の口から聞いたのはあのカルデラの上で話した時以来一度もない。彼女の性格上、彼女らしいと言えば彼女らしいので、既知の人ならば納得しかしない。

 

「それでは今日は貴重なお時間をありがとうございました。

 ヘレンさん、お嬢さんのことを宜しく頼みます。」

 

 ヘレンは何も言わぬままその場で手本のような敬礼を見せた。

 これが彼女の最大の返答だとダイゴは解釈し、上司ジュンサーにもう一度お礼を述べたあと部屋を出る。

 

「モスノウもふもふー!」

 

 廊下を出た先にはウルガモスを頭に乗せ、モスノウのもふもふの胸毛に顔を埋める少女がいた。

 可愛い可愛い、えへへへへ、2匹にでれでれの少女の姿にダイゴはこれがお嬢さんだなと再び首肯くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







かっこいい女性好き
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