あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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心配と期待

リビングを出た少女は直ぐにガラル地方に訪れた時貰ったスマホロトムを取り出し、ナナカマド博士へ電話をかける。

 

「はい、こちらナナカマドだ。」

 

スマホの奥からいつものナナカマドの声が聞こえる。少女はふっと息を吐いた。

 

「ナナカマド博士。」

 

「ああ、君か。無事にホウエンに着けたようだな。」

 

「はい。ツワブキさんとミクリさんとも会えました。」

 

「そうか。それでは例のポケモンの正体はわかったのかね?」

 

「はい。伝説のポケモン、レックウザだったようです。」

 

「そうか。やはりな。」

 

電話越しの博士は少しも驚いた様子はない。少女の眉が少し動く。

 

「レックウザがある組織に狙われるようで、ツワブキさんたちの元、私も組織壊滅に協力することになりました。」

 

「!、そうか。」

 

ナナカマドの喉が震えたのが画面越しでもわかった。

 

「それで、ナナカマド博士。」

 

「どうした。」

 

「私を嵌めましたね?

テンガン山での話を聞いた時からあのポケモンがレックウザであることは気づいていたんでしょう。レックウザを狙う組織のこともツワブキさんとミクリさんがその組織を追っているこも含めて。わかっていたから態々私をこの地方まで来させて、ツワブキさんとミクリさんに私を実力を直接見定めて貰ったんですよね。」

 

「、、、。」

 

何も答えないナナカマドを少女は気にせず話を進める。そこの声には怒りが含まれているようだ。

 

「2人と合流してすぐ、ツワブキさんが私の戦歴を話していました。私の戦歴は誰にも知られないようにしてもらったはずです。今回初めて会うツワブキさんが私の戦歴を知ってるはずないんですよ。じゃぁ、なんで知っているか。ナナカマド博士しかいませんよね。

博士は2人に私の戦歴を持って掛け合ったんじゃないですか。組織壊滅のミッションに私を参加させて欲しいと。流石に博士からの頼みといえども、実力の分からない人を簡単に受け入れられるはずのない2人は自分たちの目で直接見て検討すると言った。加えて、私が断れないようにギラティナのことも伝えていたようですね。違いますか。」 

 

「あぁ、そうだ。君の推測通りだ。」

 

ナナカマドは肯定する。少女は眉間にシワがよるのを自分でも感じ取った。

 

「どうして、私をミッションに参加するように仕向けたんですか。、、、私がバトルできなくなったからですか。」

 

「、、、。」

 

普段ナナカマドはここまで人に干渉することは無い。加えてその外見や威圧感から冷たい人だと怖がられることが多かった。しかし彼は他の地方の博士たちと変わりなく子供が好きだった。だから、最初の初心者ポケモンを少年少女に授ける役割をになっている。その中でも少女はナナカマドにとって孫のような存在だった。だから、バトルが出来なくなってしまった少女をどうにかしてやりたいと普段彼がしないようなお節介と言われることまでしてしまった。

少女もそのことは薄々感じていた。ナナカマドが、自分のことを思ってホウエンに来させたことをわかっていたから参加しても良い思った。だからこそ、ナナカマドの善意を受け取りきれない自分に嫌気が差し、余計な心配を掛けていることにも酷い罪悪感を感じた。眉間のシワはナナカマドに対する怒りや不満ではなく、自分自身に向けたものだった。

少女は深く深呼吸し、感情を落ち着かせる。

 

「博士が望んでいるようにはなれないと思います。けど、参加すると決めたのは私です。できる限り頑張ります。」

 

「ああ、呉々も気をつけるようにな。」

 

「はい。それでは、また。」

 

少女は通話を切り。端末機をしまう。

少女はリビングへ戻ると、再びソファに腰掛け再びダイゴたちに向き合う。

 

「電話はもういいのかい?」

 

「ええ。お時間を取らせてしまって申し訳ありません。」

 

「気にする事はないよ。」

 

ミクリが微笑む。

その時、少女は改めて2人の顔をじっくり見る。両方眉目秀麗な青年たちだと思った。歳もそう離れていないだろう。若いのにも関わらずチャンピオンにコンテストマスターとは、立派なことだ。相当の努力をしたのだろう。

そう少女が感心しているとダイゴが口を開く。

 

「さて、では今僕たちが得ている情報を教えよう。」

 

ダイゴさんの話ではこうだ。

1つ目、組織の名前やボスの名前、容姿、レックウザを狙う目的はまだ分かっていない。団員の左手に惑星の刺青のようなものがある。

2つ目、今はまだ組織に大きな動きはなく、目撃情報によるとホウエンのおくりびやま付近やキナギタウンの東向きにある131番水道、地方を跨いでカロス地方を中心にその組織と思われる不審な団体をみたという報告例が上がった。そして、数件の博物館からレックウザに関する書物が盗まれたことで、不審組織がレックウザを狙っているのではないかという見解に至った。そして、最近ピタリと目撃したという情報は無いらしい。

 

「目撃され無くなったんですか?」

 

「あぁ、きっと計画を進められるだけのデータや情報が集まったんだろう。きっとそろそろ大きな動きを見せるはずだ。」

 

「そうですか。あの、1つ質問したいのですが、よろしいでしょうか。」

 

「なんだい?」

 

「どうしてそんな組織に対してこちらの構成員が3人だけなんでしょうか?」

 

それもそうである。実態が掴めていない組織に対して中心メンバーが3人では釣り合いが取れない。もっとほかのメンバーがいてもおかしくないのだ。

それに対してダイゴは苦笑する。

 

「あぁ、そうか。気になるよね。それはね少し前にある事件が起きてしまってね。それが味方だと思っていた人物が首謀者だったんだ。その目的は人とポケモンの存在を消すという恐ろしいものだった。今回の組織の狙いは恐らくレックウザだ。ほかの公共団体にスパイがいないとも限らない。だから最少人数でこのミッションに当たろと考えたのさ。一応、何かあった時すぐに応援を出してもらえるようにポケモン協会や警察、レンジャーの1番上の人には情報は伝えてある。直接、組織を追うのが僕達だけってことさ。」

 

「なるほど、わかりました。しかし、現チャンピオンでも裏切られることってあるんですね。それともその人がかなりのやり手だったんでしょうか。、、、安心してくださいね、私は裏切ることは致しませんので。」

 

少女はいい笑顔でダイゴに笑いかける。先程の意趣返しのようなものだった。

そんな少女にダイゴの笑顔が若干引き攣り、ミクリはぷッと笑う。少女は思った以上に気が強い所があるらしい。

 

「そうか、それは安心だよ。はは」

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