あるトレーナーの話   作:撹拌された抹茶

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ホウエン神話(2):おくりび山

いしの洞窟から北東、ミナモシティの方向にあるおくりび山へ少女は向かっていた。勿論移動手段はボーマンダである。

 

『お嬢さん、どう?おくりび山は見えてきたかな?』

 

インカムからミクリの声が聞こえる。

 

「はい、もうあと目と鼻の先です。飛行中の通信も安定しています。」

 

『そうか、それは重畳。今少しダイゴは席を外しているから、おくりび山は私が案内させて貰うよ。』

 

「お忙しいのであれば、お気遣い頂かなくても結構です。」

 

『ふふ、大丈夫だよ。そもそも少し強引に参加させてしまったしね。それに先程も言った通り、ホウエン神話を知ってもらいたいからね、これは必要なことなんだよ。だから、君が気を使う必要はないよ。』

 

インカムの向こうでミクリが柔らかい笑みを浮かべているように少女は思った。

 

 

「ミクリさんはツワブキさんより優しいですね。」

 

『え?そうかな。ダイゴは君に期待しているだよ。』

 

「はぁ、、、。」

 

ダイゴと少女は今日あったばかりだ、期待されるほどの関係を築いてないだろうと少女はどうも解せない。

 

そんな少女の気持ちに気づいたのか、ミクリは楽しそうに笑う。

 

そんなミクリに少女はなんとも言えない気持ちを抱いたが、ボーマンダが鳴き声を上げたことで意識はそちらに持っていかれた。

 

「ミクリさん、おくりび山に着きました。」

 

『じゃぁ、着陸してくれていいよ。階段が見えるだろう?その階段を登って山頂に行ってくれ。』

 

ボーマンダから降り、感謝の言葉と共に彼女をボールに戻す。

ミクリに言われた通りに階段を上る。

 

『おくりび山はホウエン慰霊スポットでね。その時期になれば人がよくいるんだけど、今は時期は外れてるから基本は人がいなくてそこを管理してる老夫婦がいるくらいだと思うよ。』

 

「?でも人、いますよ。」

 

階段の見上げると、上から人が降りて来るのが見える。中年くらいの男性だった。暑いホウエン地方では珍しいスーツの男性だった。ダイゴも正装ではあるが、彼はチャンピオンである立場上だからであろう。或いはスーツの方が落ち着くか。しかし、ダイゴと違う点として男性は手袋をしていた。山の山頂ということもあり、地上よりかは幾分か涼しいと言ってもそれでも暑いことには変わりない気候だった。しかし、服装は個人の自由だ、仕事柄、ということもあるだろうと少女はあまり気に停めなかった。

 

『お墓参りだろう。時期外だと人は少ないけど珍しくないさ。』

 

「そうですね。」

 

少女が階段を上がっていくとだんだんと男性と近づく。すれ違う瞬間、少しだけ頭を軽く下げる。

 

「こんにちは。」

 

「はい、こんにちは。」

 

少女の挨拶に、男性も会釈しながら返した。

 

『お嬢さん、上に着いたかな?』

 

「はい。今祭壇のようなところの前にいます。何も飾られていないようですが、この祭壇は何でしょう?」

 

『お嬢さんが見ている祭壇は元々2つの宝玉が祀られていたんだ。元々あった2つの宝玉は【あいいろのたま】【べにいろのたま】と呼ばれいた。宝玉はグラードンとカイオーガとの関係が示唆されており、過去、それぞれグラードンとカイオーガを操るために2つの悪の組織に盗まれ悪用されたんだ。』

 

「シンオウ神話のこんごうだまとしらたまのようなものですか。」

 

 少女の問いにインカム越しにミクリが頷く。

 

『あぁ、そうだね。でもシンオウと違うのは2つの宝玉はそれぞれのポケモンをコントロールするために使われたことだ。【あいいろのたま】はグラードン、【べにいろのたま】はカイオーガ…結局宝玉でコントロールすることはできなかったようだけどね。』

 

 伝説のポケモンを制御しようなどと何と無謀な行いだろうか。あのテンガン山で見たレックウザの凄まじい気迫を感じて、伝説のポケモンが制御出るなんて考えを少女は持てなかった。

 いや、本来ならば伝説のポケモンを制御し、使役することは到底叶わない。熟練したトレーナー、それこそダイゴやミクリなどならば可能かもしれないが。

 

「逆に力の源だった、とかでしょうか。」

 

『いや、文献では宝玉はそれぞれを制御する力を有すると書かれているだけで、力の源になるとは書かれていない。』

 

「でも制御する力はなかったと。」

 

『そう。伝説のポケモンを人がコントロールする術なんてないよ。伝説のポケモンの力は人智を超えているからね。』

 

ミクリの言葉に同感し、今度は少女が頷く。

 

「それで、その宝玉はどこに?別に保管されてるんですか?」

 

『いや、砕けたらしいよ。』

 

「??」

 

『砕けた。』

 

「く、砕けた、ですか?」

 

 予想外の答えに少女は驚きを隠せなかった。大切な宝が砕けたなんて、国際問題に発展しそうな大事だからだ。

 

『争いの後、独りでに宝玉は融合し砕けたらしい。それはきっとグラードンとカイオーガの意思だったのかもしれないね。』

 

「グラードンとカイオーガの意思、ですか。」

 

『伝説のポケモンはお互いに均衡を守っている。それに害をなす宝玉が邪魔だと判断したんじゃないかな。』

 

 ナナカマドも伝説のポケモンは世界の均衡を保っていると言っていた。自分たちの意思ではないのにも関わらず、それを脅かすであろうものならば当然と言えば当然とな事だろう。誰だってそうだ。

 

「でも、ダイゴさんはさっき力得るために争ったって仰られてましたよね?」

 

 自分たちが争わないため、害になる宝玉を砕いたのならば巨石のエネルギーを求めて争うことは大きな矛盾となる。

 

『うーん、そこなんだよね。僕達も何故だろうと不思議に思っているよ。』

 

「謎が多いですね。」

 

『この世界は不思議に溢れているからね、わからないことだらけさ。』

 

「ツワブキさんも仰られてましたね。」

 

『うん、そうだね、、、。

宝玉、実物を見れなくて残念だね。でも、2つの宝玉は伝説のポケモンに関わるもの。砕けたとしてもこの世界のどこかで存在しているかもしれない。いつか見れたらいいね!』

 

「そうですね。その機会があれば。」

 

少女は何か胸がモヤつくが、その理由がわからないまま気のせいだと深く考えないようにした。

 

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