【悲報】クソ馬鹿、藍染隊長になる 作:悲しいなぁ@silvie
太陽の色って知ってますか?夜一サン。
……そうっスね、黄色とかオレンジ…赤ってのもありますしなんなら白いって言う人も居るでしょうね。
でもね、夜一サン──アタシの太陽はブラウンなんすよ。
………へ?衆道…?………!?いやいやいや!!なに言ってんスか!!別にアタシが言いたいのはそう言うのじゃないッスよ!!
んんっ!……夜一サンはアタシが昔どんな奴だったか知ってますか?
……ネクラの引き籠もりって…いやまぁ間違いじゃありませんけど…夜一サンに初めて会った時もそんな感じだったから?
んー…実際はアレよりよっぽど酷いもんでした。
ほら、自分で言うのもなんスけどアタシって要領良いでしょ?
…良くある話ッスよ、自分は特別だと周囲を見下して壁を作って外には目も向けない。
その典型みたいな奴でしたよ。
……だから、夜一サンと会った時には更生した後だったんスって。
………アタシがいつも通り自分の部屋の中で研究をしていた時でした、急に屋敷が騒がしくなったかと思えば障子戸が吹き飛ぶんじゃないかって勢いで開いて…あの人が立ってました。
「頼もぉぉう!!此処に、スッゲェアタマ良いヤツが居るって聞いて来たぁ!!」
閉め切ってた部屋に一気に陽の光が差し込んで、思わずその眩しさに目を細めました。でも、その光の先に居たその人は…何故かその時陽の光よりも眩しく感じたんス。
…その人はアタシの部屋でまるで自分の部屋みたいに寛ぎ始めちゃうような人でして、追い出しに来た屋敷の人達を無視しながら部屋にあった発明品を片っ端からアタシに聞いてきました。
……それで、素直に答えたかって?ええ、答えましたよ。あんまりにも唐突過ぎて呆気にとられて流されるままに言ってました。
今から考えれば、あの人にとって面白いものなんてほとんど無かったでしょうに…それでもあの人はアタシの説明に逐一目を輝かせて心底楽しそうに聞いてました。
…アタシだって科学者です。自分の研究成果や発明を褒められれば嬉しいですし気分だって良くなります。…我ながら単純っスけどね。
だから、最後の方なんてアタシから屋敷の人間を下がらせて夢中になって発明品を見せびらかしてました。
いつの間にか陽の光に慣れた目は、その光を眩しいと感じなくなっていて…只々、温かく心地良いものだと理解してました。
アタシが次はどれを見せようかと選んでいると、その人は急に立ち上がって──
「ヤベェ!そろそろ帰んねぇとじいちゃんと平ちゃんに怒られちまう!!
悪ぃけど帰るわ!!今日はあんがとなぁ浦ちゃん!!」
嵐みたいに来て嵐みたいに帰っていくその人を見て、アタシは自然と…本当に考え無しに手を伸ばしてました。
「…??ああ!!よっしゃ!!」
ソレを勘違いしたのかアタシの手を握ってブンブン振り回しながらその人は笑って言いました。
「明日も来るからさ!またなぁ浦ちゃん!!」
日向みたいに温かい笑顔でした。
あんまりにも唐突な出会い方だったもんで…研究疲れで夢でも見たかと思いましたけど、手にはしっかりと彼の温もりが残ってました。
それから…アタシの日課が一つ増えました。
現世の玩具を見て、研究して、アタシ自身で新しい玩具を作る。
……まぁ、そうっスね。あの人に喜んで欲しくて始めた日課ですけどそれが高じて今は商店までやってるんスから人生わかんないもんスねぇ。
あの人は宣言通り、毎日アタシの所まで来て飽きもせずにアタシの話を楽しそうに聞いて笑ってました。
でも、幾らアタシが一日中研究に開発に没頭してたって言っても限度があります。
要は説明する発明も研究も無くなっちゃったんスよね。
その日、アタシは生まれて初めて怖くて震えてました。
あんなに楽しみだった彼の訪問が怖くて…いえ、彼がアタシの所に来る理由が無くなってしまった事がどうしょうもなく恐ろしかったんス。
アタシが往生際悪く一つでも増やそうと手当り次第に機材を弄っていると、彼がいつも通りに障子戸を開けて入って来ました。
いやぁ~あの時はドキドキしましたよ。なにせ、あの時のアタシは彼にもう見限られるかと思ってたんスから。
人間、不思議なもので…持ってない事には耐えられても持ってるものを失う事には耐えられ無いんス。
最初はどうにかして話が途切れないようにと必死で…でも、そんなのも長くは保ちませんでした。
完全に万策尽きて、黙りこくったアタシはいつ彼にもう来ないと言われるかと震えてました。
でも───
「浦ちゃん!今から茶屋行かねぇ?旨いぜんざい出す店知ってんだぁ♪」
思わず呆けて、何を言われたか理解するのに時間が掛かりました。
なんて事ありません、彼は最初からアタシの研究と発明品じゃなくアタシ自身を見てたんスよ。
それから…アタシはよく外に出るようになりました。
彼と一緒に茶屋巡りしたり、彼と一緒に流魂街で子供と遊んだり…少し前の自分が聞けばつまらない冗談だと無視するような──でも、最高に楽しい日々でした。
ある時、彼に聞いたんス。
なんでアタシなんかに声を掛けてくれたのかって。
あの頃のアタシは、お世辞にも面白い人間でも良い人間でも無かったでしょうにって。
そしたら──
「浦ちゃん、俺さぁ…霊術院で鬼道と剣術が出来なくて8年ぐれぇ卒業出来なかったんだよ。」
アタシの疑問に、彼はそう言いました。
……ふふ、確かに何言ってんだって思うッスよね。
「今さぁ、何言ってんだコイツ?って思ったろ?
そんなもんさぁ!自分の恥ずかしい事なんてさ!!
自分じゃあ、あ゛〜ってなるぐれぇ嫌で恥ずかしい事でもはたからすりゃあ何だそんなもんじゃんってなる事ばっかなんだって!!
じゃあ…さ!恥ずかしいとか駄目だなぁってなるよか、笑ってた方が楽しいぜぇ!!
折角生きてんだし、楽しまなきゃ損だぜ浦ちゃん!!」
………本当に、藍染サンらしいっスよね。
だから、アタシにとっての空って言うのは…アタシにとっての太陽は藍染サンなんです。
あの優しいブラウンが…アタシの日向です。
だから……だから!
「今度は、ボクが貴方を助けて見せます…藍染サン!」
アタシはそう言って目の前に降ってきた藍染サンに対峙する。
相手は護廷で総隊長に次ぐ実力者。一線を離れて長いアタシに勝てる相手じゃありません。
けど、そんなんで諦められる程に安い覚悟で来てないんスよ。
覚悟を決め、紅姫を杖から抜いて構えようとしたアタシの後ろで轟音が響く。
チラとそちらに視線を送ると黒崎サンが瀞霊廷の壁にめり込んでました。
…悪い事をしました。藍染サンは朽木サンや阿散井サンとは比べ物にならない相手です、黒崎サンでは反応すら出来ない攻撃だったでしょう。
ですが…アタシと夜一サンの前で隙を見せたっスね!
黒崎サンを攻撃した藍染サンに夜一サンが白打で応戦する。
瞬神とまで呼ばれた夜一サン相手にあそこまで打ち合えるのなんて藍染サンくらいでしょう…でも、貴方の相手は一人じゃ無いんスよ!
「千手の
届かざる闇の御手 写らざる天の射手
光を落とす道 火種を煽る風
集いて惑うな 我が指を見よ
光弾・八身・九条・天経
疾宝・大輪・灰色の砲塔
弓引く彼方 皎皎として消ゆ
破道の九十一 千手皎天汰炮ッ!!」
アタシが下準備無しに使える中で最も威力の高い九十番台の鬼道、直撃すれば流石の藍染サンでも──
「んおっ!?さっすが浦ちゃん!なら俺も……ドカーン!!」
放たれた無数の光の矢は藍染サンの拳の一振りで全てが掻き消されました。
……本当に、馬鹿げてるっスね。
「クッ…惣右介!お主、何故儂らを狙うんじゃ!?」
藍染サンとの打ち合いの最中、夜一サンがそう尋ねると藍染サンは軽く首を傾げ──
「んぁ?ん~皆が止めてこいって言うからさぁ…なんか、ほっとくとマズいんだってさ。」
皆…普通に考えれば護廷十三隊でしょう。
ですが、アタシは直ぐにそうでは無いと確信しました。
理由なんて無い、科学者としてあるまじき勘による決めつけでしたが…アタシは声を張り上げました。
「その皆って言うのは、護廷の皆さんっスか!?」
「え…?いや、違ぇよ?」
見付けた!遂に…現世に追放されて、それでも探し続けた相手のその尻尾を掴んだ!
「夜一サン!!」
「分かっておる!!」
アタシの叫びに一も二もなく夜一サンは答えると肩と背中から高密度に圧縮された鬼道の塊を噴出する。
ソレは彼女の背後で太鼓のような形をとる、これこそが元刑軍軍団長四楓院夜一の奥の手。
「瞬閧!雷神戦形!!」
夜一サンの卓越した白打の技術に、鬼道の炸裂による威力の上乗せ。
ですが、それでも藍染サンは…
「カッケェェ!!スゲ、ヤッベェ!!何それ夜一ちゃん!!
滅茶苦茶カッケェ必殺技じゃん!!」
と、笑顔を崩さずに打ち合い続けてます。
でも、さっきよりも確実に隙は増えてます…なら!
「縛道の六十一 六杖光牢!」
「こんぐらい!効かねぇぜぇ!!」
詠唱破棄だったとはいえ六杖光牢をすぐさま破った藍染サン。
ですが…
「
縛道の六十三 鎖条鎖縛!
縛道の七十九 九曜縛!!」
詠唱破棄の縛道三連続、隊長格相手でも数分程度なら稼げる自信があるソレは──
「んんん〜!効かーーん!!!」
時間にして僅か一秒程を止めるのが限界でした。
ですがね、藍染サン…その一秒で十分なんスよ。
だって…貴方の相手はアタシ一人じゃないんスから。
「貰ったぁ!」
「うおっ!?」
藍染サンの意識が逸れた内に夜一サンは藍染サンの足を思い切り払う。
普通の死神相手ではまるで意味の無い行為っス。なにせ、死神は霊子を足場にして空を浮かべるんスから…でも、鬼道がからっきしの藍染サンなら───ッ!
「卍解!!観音開紅姫改メ!!」
完全に無防備な今なら…勝てる!
貴方を引き摺ってでも、一緒に帰ります!!
「ホント…カッケェな、でもさぁ、俺も……負けてらんねぇんだ!!
グワラゴワラキィーン!!」
藍染サンはアタシの卍解が回避不可能と悟ると…夜一サンの腕を掴んでアタシの卍解に激突させました。
「ガッ─!?」
「────っ!??」
凄まじい衝撃に立つことも出来ず吹き飛ぶアタシと尋常ならない威力で振り回されて一瞬で気絶した夜一サン。
…チャンスと思って攻撃した結果がこれとは、流石のアタシも折れそうッスよ…
でもね、現世に来た時に決めたんス。
例え、貴方に恨まれる事になったとしても──貴方という日向を奪わせはしないと!
何処の誰とも知らない輩に、アタシの─尸魂界の日向は渡せないんスよ!!
近くに倒れていた夜一サンを紅姫で触れる。
観音開紅姫改メの能力は、触れた対象の改造。
……あまり使いたくない手ではあったんですが、仕方ありません。
「瞬閧、雷獣戦形──瞬霳黒猫戦妃。」
「シャアアア!!」
夜一サンがまるで本物の大型猫科動物のように吠える。
コレが、正真正銘の切り札。
アタシしか制御出来ず、発動中は夜一サン本人ですら気分でしか解除出来ないデメリットこそあれ…その戦力は雷神戦形を上回る。
「………夜一ちゃん、女の子がそんなにお腹とか出すもんじゃ…うおっ!?いだぁ!!?」
そして、気紛れな猫は白打の達人である藍染サンをもってしても予測不能でしょう。
これで、また隙を──
「………なるほどね、ソレも立派に必殺技って訳だ。
なら……俺も使うぜ、必殺技をよ。」
スッと藍染サンの顔から笑顔が消える。
──マズい!!
「夜一サンッ!逃げ──」
「一骨!!」
ミシリ、と夜一サンの腹部に藍染サンの拳がめり込む。
カハッと肺の空気が吐き出され、夜一サンが横たわり瞬霳黒猫戦妃が解除される。
一撃っスか…本当に滅茶苦茶だ。
「でも…それでも!諦めるなんてごめんッスよ!!」
アタシは必死に手を伸ばす。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
身体が壊れようと問題無い。
傷とは、この身体に刻まれるものではないから。
傷とは、気構えに負うものだから。
「紅姫ェェェェ!!」
だから、だから…手を伸ばせ紅姫。
今このときだけで良い…だから、あの人の…藍染サンの所まで…手を───
「ごめんな、浦ちゃん…」
アタシが最後に見たのは、そう言って悲しそうにこちらを見る藍染サンの姿と
「双骨!!」
砕け散る紅姫でした。
ああ…アタシは、貴方を助けられなかったんスね…
藍染サン