【悲報】クソ馬鹿、藍染隊長になる 作:悲しいなぁ@silvie
我等の世界に意味など無く
そこに生きる我等にも意味など無い
無意味な我等は世界を想う
そこに意味は無いと知ることにすら
意味など無いというのに
しかし数多の無意味の中で
ただ貴方の側だけが我等の意味を教えてくれる
「があぁぁっ!!!うざってぇんだよこのクソカス共が!
ハエみてぇに飛び回りやがってよぉ!!」
浅黒い肌をした巨漢の破面は自慢の剛腕を振り回すもその尽くを滅却師達に避けられていた。
「お前のような木偶の坊に用は無い。
この奇襲の首謀者…お前達の首領は何処に居る?」
「ああ゛!?なんで俺がテメェみてぇなゴミに藍染様の居場所を言わなきゃいけねぇんだよ!!」
「藍染…陛下が警戒していた藍染惣右介がこの奇襲の首謀者か」
「あ゛?………だあぁぁ!?やっべぇ!!」
自身が口を滑らせてしまった事実に気付き頭を抱えた破面はその場に蹲りどうする…?と呟いていた──
が、フッと立ち上がるとその身に纏っていた霊圧を爆発させる。
「ケッ!!知っちまったからにゃあ生きて帰せねぇな!!
おいウルキオラァ!アレやんぞアレ!!」
巨漢の破面は傍らで澄まし顔をしていた小柄な破面を呼び寄せる。
「………見るに堪えんな
敵の質問に馬鹿正直に答えるやつがあるか」
「うっせぇ!あのクソカスが悪ぃんだよ!!俺の攻撃をちょこまか避けやがって!!」
完全なる逆上ではあったが巨漢はそう言いながら甲冑のような格好の滅却師に向き直ると自信あり気に言う。
「へっ!見せてやるぜ…テメェらみてぇなハエにゃあちと勿体ねぇがな!」
「……光栄に思え、
巨漢の破面が親指を噛み、小柄な破面は人差し指を爪で切り裂いて血を流す。
二人はその血を自身の霊圧に混ぜるようにし、巨大な霊圧を練り上げていく。
二人の霊圧の塊が徐々に溶け合い一つの巨大な閃光へと姿を変えて───
「「
──前方の滅却師ごと、地平線の彼方まで消し飛ばした。
「藍染様に両腕使わせたコイツがあんなクソカスに耐えれるワケねぇぜ!!」
「つまらん、藍染様がスッゲェ強ぇから気ぃ付けてなと仰られたから警戒してみれば…とんだゴミ共だな」
巨漢の破面…ヤミー・リヤルゴは鼻息を鳴らしながら口元を歪めるが小柄な破面、ウルキオラ・シファーは眉を顰めて嘆息する。
「それとヤミー、あと数メートルズレていれば遠方に居られる藍染様に当たっていた
お前はもう少し
「へーへー、すんませんね」
ウルキオラからの小言にヤミーは肩を竦めながら気安く答える。
両者の息が完全に合わなければ使用出来ない
そして十刃たるウルキオラとヤミーにしか使用出来なかった。
その事実に心を失くした破面である二人がどう思ったのかは定かでは無いが…気安く話す二人は何処となく楽しそうに見えるという。
「残念だったな…貴様の御大層な恐怖とやらが俺に通じる事は無い
俺達破面は…虚とは心を喪った存在だ
感情なぞ、疾うの昔に忘れている」
「………恐怖ガ通ジナい?」
長身長髪の滅却師は不自然な体勢で首を傾げる。
体ごと横に折れ曲がるような見る者を不快にさせる体勢で話す。
「其ンナ訳ハナい」
滅却師…エス・ノトはそう断言する。
「君ノ言ウヨウニ感情ガ無ヰナラバ、確カニ
ダガ、真の恐怖トハ感情ナドトヰウ優シイモノデハナい
真の恐怖トハ、本能だ
真の恐怖トハ、理由モ無ク際限モ無ク只々体ヲ這イ上ル夥シイ羽虫ノ様ナモの
吾々ハ、本能カラハ逃レラレナヰ」
エス・ノトの纏う霊圧が爆発的に膨れ上がるとその姿をより悍ましく、恐ろしく変貌させる。
「【
腐りきった腐乱死体のような姿となったエス・ノトは勝ち誇ったように嗤う。
「終ワリダ、破面」
先のように神聖滅矢を射る必要すら無い、ただその姿を視るだけで恐怖を振り撒く厄災が如き姿となったエス・ノトはウルキオラの視神経より全てを掌握しようと迫り──
「……余程、姿が変わったのが嬉しいと見える」
ウルキオラの氷のように凍てついたその眼に気付いた。
「…ナニ?」
「貴様に面白いモノを見せてやろう…
我らが虚夜宮の天蓋の下で禁じられているものが幾つかある
一つ目は破面同士の殺傷を目的とした闘争
二つ目は16時以降の間食の摂取
三つ目は食事の際の頂きますとご馳走様でしたを言わない事
そして、四つ目は…
ウルキオラが纏っていた霊圧が急激に跳ね上がったかと思えば、突如として消え去った。
エス・ノトにはそうとしか知覚出来なかったが、霊圧が消え去った後に全身を握り潰すかのような圧力が襲い掛かった。
まるで何千メートルもの深海に潜ったかのような尋常ならざる圧力にエス・ノトは指一本動かすどころかうめき声をあげる事すら出来ず立ち竦む。
「死神共の卍解は始解と比べて霊圧が5倍から10倍程に増えるらしいが、刀剣開放第二階層は帰刃と比べて3倍程度にしか霊圧は増えん
……が、貴様にはコレで十二分らしいな」
「……カハッ…!!」
尋常ならざる圧力は肺に空気を貯留させる事すら許さず、エス・ノトは意味のある言葉を話す余裕も余地も無かった。
「どうした?震えているぞ…
そう言えば、立ち竦み震えるしか無いその状況を──貴様ら人間は恐怖と呼ぶのだったな」
凍てつく氷の視線そのままにウルキオラはそっと手を挙げるとエス・ノトに向かって指を差し向ける。
「
黒き霊圧の奔流は死の恐怖に怯えきった憐れな人間の頭部を消し飛ばした。
ウルキオラは頭部を欠いた死体を前に首を傾げる。
「………妙だな、塵一つ残らず消し飛ばすつもりだったが…」
そう呟きながら目線を落とすと、自身の手が僅かに震えていた。
「……これは…」
震える手を無理矢理に握り締め、下らんと無視しようとしたウルキオラの脳裏にふととある人物の顔がよぎる。
『ウルルンはさ、
だから…これからは俺らといっっっぱい旨いモン食べて、楽しい事して、色んなトコ行って、色んなコトして、一緒に笑ってさ──今までの分まで目一杯に遊ぼうぜぇ!!』
この世界に自我を持って初めて聞いたその言葉は今も鮮明に思い出せる。
目しか持たず、全てを視ることでしか知り得なかった俺に藍染様は世界を教えて下さった。
美しき音を聞く耳を、芳しき香りを嗅ぐ鼻を、美味なる美食を堪能する口を、心地よい風を感じる肌を
俺は、初めて──世界を識る事が出来た。
藍染様の陽光が如き破顔も、藍染様の口遊まれる調べも、藍染様の作られる料理の香りも、藍染様から饗される美食も、藍染様と共に在る温もりも、藍染様は俺に全てを教えて下さった。
藍染様は、友として当然だと嘯かれたが──俺はそんな藍染様から賜った全てになんの情動も抱けなかった。
俺達破面を獣ではなく人だと言って下さった藍染様に応えようと口角を上げるも、藍染様の浮かべる笑顔とは似ても似つかん出来損ないとなるばかり
そして、表情筋を酷使しどうにか出来ないかと足掻く俺を見かねたのか──藍染様はそっと俺の頭を撫で、
『ウルルン…俺らはさ──人間ってのは嫌ならやんなくて良いんだぜ?
ヤなこともニガテなこともぜぇーーーっっっんぶブン投げて遊んだって良いし、なんなら遊ばなくたって良い!
ヤなこととニガテなことやんねぇのに理由も要らねぇし好き勝手やりゃ良いんだって!!』
そう…仰られた。
だが──違う
藍染様、俺は──貴方と笑いたかった
ニガテではあっても嫌では無かった
貴方と共に嬉しいと、楽しいと、下らないと、可笑しいと……どうしようもなく笑いあいたかった
「……藍染様、俺は弱くなってしまったのでしょうか」
今の一撃、もし外していれば相手は俺に更なる追撃を加えていただろう。
もし、それらがあれば…負けていたのは俺の方だったかもしれない
…………だが
「藍染様に、報告せねばならんな」
きっと───あの方は俺が弱くなったとは…否
例え本当に弱くなったとしても、きっとそんなことは気にも留められない
そして────あの陽だまりのような笑顔を見せて下さる筈だ
「この掌にあるものが─────」
やっと俺にも少しだけわかったのです、と
胸を張って言えるのかもしれない
「─────心か」
震える手を見つめるその顔は、何処となく笑っているように見えた。