【悲報】クソ馬鹿、藍染隊長になる 作:悲しいなぁ@silvie
主よ、我々は
孔雀を見るような目つきで
あなたを見る
それは期待と、渇仰と
恐怖に似た底知れぬものに
縁取られているのだ
主よ、貴方は
友柄を見るような目つきで
我々を見る
それは友愛と、交誼と
親愛に似た底知れぬものに
縁取られているのだ
「鏡花水月の卍解、鏡憑きは自身を周囲の認識から除外する能力です
虚像を偽る始解と実像を偽る卍解、在りもしないモノを見せる始解と在るモノを見せない卍解…エスプリとはこういうものを言うのですよバカ者」
薄い胸をこれでもかと張りながら鏡花水月は自慢気に語る。
………が
「?????……!!…………???????」
眼の前に座る男は半笑いで首を傾げる。
その目は雄弁に語っていた
『そっだらコト言われてもオラわっかんねぇ…』
…と。
「はぁ…お前のようなバカ者に理解出来る筈もありませんでしたね
要するに、卍解中はお前が何をしようとそれは誰にも全くわからないのです
全ての生命はこの時間の中で動いた足跡を認識できない
空の雲はちぎれ飛んだ事に気付かず、消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ認識しない
この私が永く瀞霊廷に降りる事なく二枚屋王悦の元に留められたのは始解の万能さではなく、発動すれば何者であろうとも抗う事すら出来ないこの強力無比な卍解故だったのです」
「……??????」
「チッ……要するにジェイル・ハウス・ロックを受けた徐倫みたいになります」
「なるほどぉ!!!」
合点がいったと手鼓を打つ男に鏡花水月は眉間に皺を寄せながら特大の舌打ちをかます。
主人たる藍染惣右介のサブカル学習に付き合った成果であったが、鏡花水月はサブカルに染まる主人など見たくなかったのである。
「…………なんか、地味だな」あっけらかーん
「……………あ゛?」
そして、ただでさえ機嫌が悪くなっていたところに飛んできたそんな台詞にお淑やかさのペルソナが掻き消された鏡花水月は男の胸倉を掴んで叫ぶ。
「テメェ!!言うに事欠いてこの私の卍解が地味だとぉ!?
眼の前から相手の首を絞めて縊り殺す事すら容易なこの鏡花水月の卍解が地味ぃ〜!??
テメェのその
「でも、藍ちゃんは卍解使わなかったんだろ?」
──瞬間、時が止まった。
先程まで般若の形相で、男の顔に唾を飛ばしながら叫んでいた鏡花水月は一瞬にして表情を消し去り口も半開きで魂が抜けたように虚空をみつめる。
「違うもん………藍じぇんしゃまは……
違うもん…鏡花水月は…要らない娘じゃないもん……強いもん……!
そう…そう!私が始解ですら既に卍解級に強く万能であった為に御主人様程の御方であれば卍解を使うまでも無いのです!
だというのにこのクソバカは!!はーっ!!本当に自分の無能を棚に上げ私に文句を言うなど…
恥を知りなさい!!」
「なに?クスリやってる??」
急に泣き出したかと思えば怒り出した眼の前の少女に本気で薬物使用を疑いながら男はなすがままに殴られる。
涙でぐしゃぐしゃの顔でプンプンと怒る少女を咎める程に男は狭量では無かったし、悪い事を言った自覚はあったから。
「………そろそろ行きなさい
言っておきますが、お前が卍解出来る時間はあまり長くはありませんよ
今の今まで始解すらマトモに使った事のない
三分、長く見積もってもそれを過ぎればお前の身体は自身の肥大化した霊圧に耐えきれず内側から炸裂するものと思いなさい」
「難しい!!もっと優しく言って!!」
「チッ…オマエ、ウルトラマン
サンプンスギレババクハツスル
ソレマデニテキナグルOK?」
「オッケイ!!」
好戦的な笑顔と共に男は拳を打ち合わせた。
「待ち給えよ、
全速力にて走る総隊長含む隊長格達相手に誰が界間を抜ける為の装置を持っていると思っているんだネ!!とブチ切れながら叫ぶ涅マユリを見て、自身もそちらに向かう為歩を進めようとした一護にそう声が掛かった。
「…あんたは…」
「吾輩は、
藍染様と十刃が出払っている今、この虚夜宮の一応の最高責任者というやつさ」
ドルドーニのその言葉に一護は目を見開く。
「最っ、高…って……あんたが?」
「なんだその馬鹿を見る目は!!?
ママンに教わらなかったのかね!ヒトを見かけで判断するなと!!」
「見かけで判断してねぇから馬鹿にしてんだよ!!」
如何にも心外だとオーバーリアクションをとるドルドーニに一護は声を張り上げる。
虚圏に来てからずっと一人で孤独にツッコミを担う高校生の叫びであった。
「と、
「ブローマってなんだよ!冗談とかか!そうだろ!!なぁ!」
青筋を立てて叫ぶ一護の前でドルドーニは膝を折り正座の形を取る。
「
…ならば、どうかあの方を───藍染様を助けてくれ」
「なっ──!なにしてんだよあんた!!」
一護は地に額を着け土下座の姿勢をとるドルドーニに駆け寄るとその肩を掴む。
「止めてくれるな!
吾輩の頭なぞで足りぬ事は百も承知だ──その上で、恥を承知で頼む!!
我らが主の力となってくれ!!」
掴んだ肩がびくともしない
ドルドーニの膂力ではなく、その気構えに特異な生い立ちとはいえ一介の高校生である一護は気圧される。
「……そんなに…あいつが、藍染が大事なのか?」
自身のルキアを救うという覚悟以上のものを感じとった一護は眼の前の破面に訊ねる。
「───
だからこそ──あの方に焦がれるのだ
誰よりも清廉で高潔な、あの心に焦がれ──惹かれる
他の破面達が恋や愛だと言うように、他の破面達が憧憬や羨望だと言うように、他の破面達が不愉快や不気味と言うように
あの方は我らには眩し過ぎる
心を持たず、触れる事も無かった我らにはなんの企図もなく微笑みかけるあの眩しさがたまらなく身を焦がすのだ」
決して顔を上げず、ドルドーニはゆっくりと語る
懐かしむように、嬉しそうに──少し寂しそうに
「藍染様が虚圏に来られると、我ら破面達皆の顔に光が差す
藍染様は白い砂が広がるばかりのこの枯れた大地に花を咲かせ、我ら破面達に美しき花々を…信じられぬ美食の数々を味わわせて下さった
秋には芋を焼き、冬には鍋を囲み、春には山菜とやらを摘みに行き、夏には氷を砕いて饗して下さった
分かるか
あの方が吾輩と共に遊ぼうと釣竿を手に笑って居られた時、吾輩の胸に溢れたものが分かるか?
空虚な孔しか無いこの胸が熱くなり、ふつふつとこみ上げる
あの方が、藍染様が大事かと訊いたな
勿論だとも、藍染様は──我ら破面達の全てだ」
頭を地に着け、ふざけた態度で話していた破面
情けない筈のその破面の全てが、一護には堪らなく輝いて貴いものに見えた。
「頭、上げてくれよ」
「くどいぞ
恥知らずと笑いたくば笑うといい…だが、吾輩は──」
「笑うかよ…あんたの覚悟も全部、俺が背負う
頭上げてくれってのは…そういう意味だ」
一護は眼の前の破面を無理矢理に立たせるとその目を見つめそう宣言した。
覚悟の籠もった目…霊界の英雄と称えられるに相応しい戦士の目
そして何よりも──慈愛の籠もった誰よりも
その目を見た破面は微笑む。
その目は──その目こそが、破面の皆が羨み敬愛する目だから。
「藍染様が言っておられた通りだな
「おう!」
駆け出していく少年の後ろ姿は坊やと呼ぶにはあまりにも大きく、英雄と呼ぶにはあまりにも等身大であった。
「何そのクソカッケェのは!?」
藍染は黒い長髪を振り乱し戦う一護を見てそう叫ぶ。
だが、その叫びに答える者は誰も居なかった。
「………?アレぇ…なんか……俺、いじめられてる?」
『認識から除外されると言ったでしょう
今お前の一挙手一投足に反応出来る者はこの世に存在しません』
寂しそうに呟いた藍染に鏡花水月が呆れたように答える。
どうせ使えないからという理由で、卍解中でありながらまさかの鞘に納まった状態である。
「あーね……ちなみにさ、コレって俺だけなの?」
『俺だけ…?……あぁ、そういう事ですか
別に認識から除外される対象は卍解した本人のみに限りません…が、この鏡憑きの霊圧に耐えられる事が絶対条件です』
そういう意味では黒崎一護と共有する事は可能ですね、と鏡花水月が伝えると藍染は一目散に一護に駆け寄る。
「どうすんの?手とか繋ぐ??」
滅茶苦茶シリアスに斬り合う一護とユーハバッハを尻目に目を輝かせる藍染に鏡花水月はクソデカため息を漏らす。
『私の刀身に触れるだけで構いません』
「よっしゃ!」
藍染は聞くや否や一護に鏡花水月を握らせた。
「くっ…月牙…天───おわあッッ!??」
結果、突如として眼の前にニッコニコの馬鹿が現れた一護は死ぬ程たまげた。
「一護ちゃん!!ソレ…クソカッケェなぁ!!」
「どどど!?ど、どうなってんだぁ!!?
いや!それより、ユーハバッハは──」
一護は死ぬ程たまげながらも先程まで切り結んでいた相手を見る。
しかし──
「なんだ…?何故私はこんな所に…ぐっ!?
こ、この負傷は…!?どうなっている!?」
当のユーハバッハは自身の負傷に困惑するばかりでこちらには目もくれない。
「なんだ……これ…?」
「にっひっひっ…俺の卍解だぜぇ!!!」
状況の滅茶苦茶さに固まる一護に馬鹿がドヤ顔で答える。
「卍解…だと…?」
「おう!!鏡花水月の卍解!……まぁ、ちっと地味だけどな」
馬鹿の発言でようやく事態を呑み込めた一護はまじまじと藍染惣右介の姿を見る。
「卍解……使えたのか…いや、そりゃ解号無しに始解してたし出来はするだろうけど……」
ぶつぶつと呟きながら一護は考え込む
しかし、考え込む一護を尻目に馬鹿は馬鹿らしく馬鹿な事をしていた。
「よっしゃあ!!ギッチギチに縛ったし…
これより!!大会を開く!!!!」
馬鹿はユーハバッハの手首と足首を手錠にて拘束し、そう叫んだ。
……ちなみに、その手錠はザエルアポロの私物をドルドーニが殴り飛ばして没収したものであった。
「大会…?」
「おう!!一護ちゃんも参加すっかぁ?
最強の大会によぉ!!」
「あんた…何言ってんだ?」
藍染は腕をぐるぐると回しながら自信たっぷりに笑う。
「コイツぁ皆の
ならよぉ〜…コイツだって
馬鹿にしては珍しく…そして藍染惣右介にとってはありふれた、そんな悪い顔で──嗤った。
「今から互いにコイツのキンタマを蹴っていって…俺の卍解が切れるまでに一番デッケェ悲鳴を出させた奴の勝ち!!
ってのは…どーよ!!」
「…………プッ…アッハッハ!!
んだよソレ……」
一護は腹の底から笑った。
下らねぇとか、パクりじゃねぇかよとか言いながら…心底笑った。
「なぁ、藍染…もしかしてあんたも──
いや、いいや」
一護は何かを言い掛けて、頭を振って微笑む
「んで、勝ったら何くれんだ?」
「そりゃもちろん…コイツの玉金よ!」
少年は大いに笑って、思い切り蹴り飛ばした。
男は満足そうに頷いて、普通に殴った。
殴って蹴って…そもそも互いに蹴れと言ったのは馬鹿では?という当然の疑問すら抱かずに、互いに心ゆくまで暴行を加えた。
「はぁ…はぁ…クソっ……卍解切れちった…」
「はぁ…はぁ…へっ……なら、勝負は俺の勝ちだな?」
「ちくしょう……もう…蹴っても、痙攣しかしねぇや……」
数分後、肩で息をする程疲弊した二人は息も絶え絶えに喋る。
ユーハバッハは口から泡を吹いて痙攣していた。
二人はソレを見てゲラゲラ笑った。
傍から見ると凄惨なオヤジ狩りでしかないのは言わぬが花というヤツである。
「…………良くやった、
そして、笑う二人の上に突如として現れた影はそう言って痙攣するユーハバッハを消し飛ばした。
「「──ッ!?」」
さりとて、二人もただのオヤジ狩り犯ではない。
方や己の死神の力を失う代わりに限界以上の霊圧を引き出した前代未聞の死神代行
方や鬼道も斬術もからっきしでありながらその白打と霊圧のみで隊長にまで登り詰めた前代未聞の隊長
二人は上空に現れた謎の影にいち早く反応すると距離をとり、その正体を見定め──驚愕した。
「「……なん………だと……!?」」
そこに立つのは、先程まで二人が喜々として睾丸を蹴り続けていた哀れなオヤジ狩り被害者──ユーハバッハであった。
「何を驚く?まさか…影武者の存在を考慮すらしなかったとでも言う気か?」
「おう!!!」
「影武者…っ!ロイド・ロイド……なら、あんたが本物って訳かよ…ッ!」
ユーハバッハから憐れむような視線を受けながら元気一杯に返答する馬鹿
多分ヒーローショーに参加する小2と同じぐらいには元気に溢れていた。
「兄である”L“のロイドは、姿形以外に相手の技術と力の全てを
そして弟である"R“のロイドは、姿形以外に相手の記憶と精神の全てを
それぞれ真似る事ができる
本来ならば、兄のロイドでは黒崎一護の成長速度に間に合わず
弟のロイドでは藍染惣右介の莫大な霊圧に相手にすらならん
だが…ロイド・ロイド達は、我が帝国を滅ぼさんとするお前達の足止めにその身を捧げると言った
兄のロイドは弟に、弟のロイドは兄に自分の力を託した
今お前達が相手をしていたのは私の技術と力、そして記憶と精神を完璧に模倣したロイド・ロイドだったという訳だ」
「へっ…なら話が早いじゃねぇかよ!
もっぺんあんたを倒しゃ良いんだろ?やってやる!」
「??????ごめん…もっとこう……ない?」
ユーハバッハの言葉に気丈に吠える一護
しかし、藍染は途中から全く意味が理解出来ず遠い目をしていた。
「………今お前達が倒したのは、私と全く同じ強さの偽物だったのだ」
「おぉ……なるほど……悪ぃな説明してもらっちゃって
サンキューな!!」
律儀にも簡潔に説明し直したユーハバッハに馬鹿はサムズアップで応える
「構わん…誰であろうと、死者には敬意を払うものだ」
斯くして、霊界でも最大と呼ばれる千年に渡る血の決戦は最終局面へと突入した
………約1名は、未だに『なんで斬月のオッサンと戦ってんだろうなぁ…』と内心で首をひねっているが
とにかく、最終局面に突入した!
上手く行けば次回が最終回です
上手く行かなければ私をぶって下さい