【悲報】クソ馬鹿、藍染隊長になる   作:悲しいなぁ@silvie

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活動報告で番外編のネタを募集してるので皆様の晩御飯に食べたいものかリクエストをお待ちしています


スレ民、やらかす

「恥じる事は無い

霊王を吸収し完成した我が全知全能(ジ・オールマイティ)を前にして戦闘が成立するのはお前達ぐらいなものだ」

 

息を荒げながら膝を付く二人とは対照的に傷一つ無く二人を見下ろすユーハバッハ。

台詞通り、その顔に浮かべているのは侮蔑でも酷薄な笑みでもない…むしろ二人を憐れむような、悲しげな表情ですらあった。

 

「故に、惜しい…

黒崎一護よ、莫迦なコトをしたな…お前が使ったソレは最後の月牙天衝などという死神の技術ではない

ソレの本当の名は滅却師最終形態(クインシー・レットシュティール)…自身の霊能と引き換えに限界を超えた力を齎す我ら滅却師の旧き悪習だ」

 

「だったら…どうしたってんだ!」

 

一護は歯を食いしばり立ち上がる。

既に、一護の霊圧は目減りし始めその身体には無事な部分が見当たらない程に多くの傷が刻まれている。

最後の月牙天衝による反動とロイド・ロイドからの連戦による疲労も相まって、立つことすら苦痛に感じる程に疲弊している。

それでも、一護は構えた。

 

「俺の護るモンにてめえが手ぇ出した…

俺が此処に立ってる理由なんて、それで十分だ!」

 

「一時のヒロイズムでそれ程の才を棒に振るとは…愚かな」

 

「ハッ…護る為の力だ──此処で使わなきゃいつ使うってんだよ!」

 

一護は目にも止まらぬ速度でユーハバッハに近寄ると横薙ぎに斬月を振り切る。

 

「青いな…如何に才能に恵まれ、霊界の英雄と讃えられようと所詮は眼の前の不都合に喚く稚児と変わらんか」

 

ユーハバッハはその斬撃を()()()()()()()ように事もなげに躱す。

否、ようにではなく実際に予め知っているのだ。

未来を見通すその双眸は一護が振るう斬月を、その死力を尽くし闘う全てを観察し終えていた。

 

「無駄だ…一護、如何にお前の霊圧が膨大であろうとも我が全知全能を超える事は無い

誰もお前を責める事はしないだろう──もう諦めろ一護」

 

僅かに目を伏せそう言うとユーハバッハは一護の腹を蹴り飛ばす。

一護達の行動の全てを見通し、一撃すら受ける事なく闘うユーハバッハはその実未だに一護達に致命傷一つ与える事なく物憂げな顔で二人を見る。

その手には神聖滅矢も滅却師の弓すらも握られず、ただ祈るように固く握り締められている。

 

「ハァ……グッ…誰が、諦めるかよ──ッ!」

 

歯を食いしばり斬月を杖代わりに立ち上がる一護を見てユーハバッハは項垂れる。

長髪に隠れその表情は一切伺い知れない。

 

「何故だ、何故まだ立ち上がる…

惜しくは思わないのか?それ程の力…才能だけでは説明出来ん

血の滲むような苦行と研鑽の末に得た己が力を何故そうも簡単に投げ出せる…?

お前の護るモノとやらは──そこまで価値が有るとでも言うのか」

 

未だ震える脚に鞭打って立ち上がった一護は正面からユーハバッハを見据える。

その力強い眼差しには一点の曇りすら無かった。

 

「後悔とか価値とか…んな小難しいコトなんて考えたこともねぇよ

ただ、ここでそんなことに足引っ張られて諦めた俺を──明日の俺は笑うだろうぜ」

 

そう言い切ると同時、一護の身体から霊圧が噴き出した。

物理的な衝撃波すら伴う程の圧倒的霊力の奔流。

一護は大上段に斬月を構えると、自身のもてる最後にして最大の一撃の名を叫ぶ。

 

無月!!

 

黒い月牙は唸りをあげて滅却師の王へと迫り──

硝子のように砕け散った

 

「敬意を……表そう、一護…お前の力とその気高き精神に

お前の最後の月牙天衝、恐るべき一撃だった

そう判断したから…“未来で砕いておいたのだ”」

 

「……ぐ……くそ……」

 

力無く倒れた一護はもう指先一つ動かなかった。

 

「一護…もう立ってくれるなよ

そこで暫し待っていろ──私がこの世界の均衡を打ち崩し…この下らぬ軛を外すのをな」

 

ユーハバッハは倒れ伏す一護にそう告げると踵を返しもう一人の敵対者へと向き直る。

一護よりも更に前からロイド・ロイドと闘い、満身創痍となりながらも卍解を習得し見事にロイド・ロイドを打ち破った稀代の天才。

異例に次ぐ異例の昇進と更に異例な鬼道も剣術も使えない唯一の隊長──藍染惣右介

 

「お前もだ、もう立つな…立ってくれるな

───────天路々天音(てんろじあまね)よ」

 

藍染はユーハバッハの言葉に目を見開くと不思議そうに見つめる。

 

「なんで…知って……?」

 

「知っているとも…

お前の事ならば、お前が()()()()()()()()()()

だからこそ──お前はここで見ているがいい

お前が護ろうとするこの世界が、如何に醜く不条理に溢れたものかを

犠牲の上に立つしか無い不平等で不完全なこの世界の終焉を…その目で見届けるといい」

 

「ふ……ざけんな…!誰が…行かすかよ…っ!!」

 

度重なる戦闘で最早無事である場所を探す事すら困難な身体で、それでも立ち上がろうと藻掻く藍染を見遣るとユーハバッハは眉根を顰め背を向けた。

まるで、自身の表情を気取られたくないように。

 

「さらばだ───霊王の心を持つ者よ

恨むなら、貴女の未来を見通せなかった…この無力な王を呪うがいい」

 

そう言うと今度こそ二人に背を向け立ち去ろうとするユーハバッハに、再びの待ったが掛かった。

三界の隔たりを誰よりも早く越えて来た者達

藍染惣右介が肉体的な戦闘の天才であるならば、彼等は頭脳的な思考の天才。

 

「言ったでしょう藍染サン──あんな程度で折れる程、安い覚悟で来ちゃいないって!」

 

「おや?これはこれは…随分と研究し甲斐のある輩が居るじゃあないかネ!」

 

元護廷十三隊十二番隊隊長兼技術開発局初代局長

浦原喜助

現護廷十三隊十二番隊隊長兼技術開発局二代目局長

涅マユリ

 

「特記戦力…いや、それももう過去のものか」

 

ユーハバッハは二人の前に立つとその手に神聖滅矢を握る。

目にはもう、生物的な温度を感じる事すら出来ぬ機械的な殺意の色が浮かんでいた。

 

「滅却師…それも生きた個体での実験など殆ど出来ていなくてネ

この私が恥を忍んで頼もうと言うんだ…勿論快く頷いてくれるネ?

なに、悩むようなら最高級の待遇で迎えようじゃないかね!

薬物投与は一日八回!機械実験も一日五時間までにしよう!

食事も経口で与えるし睡眠時には衣服もやろう!

改造だって死ぬようなものは、極力控えるようにするヨ!!

どうだね? 研究体としては破格の待遇だと思うが…

ああ、礼なら構わないよ…慈愛に脊髄が生えて動き回っているような私からすると当然の配慮というものだからネ!」

 

殺意の王の前に立つは道化を思わせる派手な胴乱塗りの男。

その目には狂喜と、見果てぬ好奇心…

涅マユリはユーハバッハが動こうとしたその出鼻に肩をすくめやれやれと嘆息した。

 

「ふむ…これだから頭の少ない輩は嫌いなんだ

大いなる科学の発展に寄与出来ると…この私がその身体を細胞の一片まで有効に使ってやろうと言うのがなぜわからん?

まぁいいヨ…研究は───動かなくなった君でするとしよう」

 

腰に佩いた斬魄刀を一息に抜き去ると涅マユリは己の研究の粋を集めたソレの名を呼ぶ。

ソレとは即ち──

 

「卍解──金色疋殺地蔵

 

大きな赤子に無数の手脚を継ぎ合せた巨大な芋虫が如き異形

被造死神計画による成果の粋を集め造られた尸魂界でも類を見ない生物型の卍解である。

 

「だからどうしたと言うのだ」

 

互いに話し合う声が聞こえる程の近距離にて発動した卍解は本来ならばユーハバッハをその巨体にて圧し潰し噴き出る毒霧により衰弱させる──筈だった。

 

「ほう…中々興味深いネ」

 

一閃、その場から身動ぎ一つせずにユーハバッハは卍解と同時に金色疋殺地蔵を斬り伏せた。

しかし、斬り伏せられようともソレは持ち主によって改造に次ぐ改造を受けた卍解。

分かたれたその巨体からは人間サイズの生物ならば一吸いで致命的な症状を引き起こす毒霧が立ち込める。

 

「愚かな…霊子を操る滅却師に霊子で出来た毒が効くとでも思うか?」

 

「別に思っちゃいませんよ…ただ、アナタの視界を遮るのと──一つ検証がしたかっただけっス」

 

毒霧が吸い込まれるようにユーハバッハの手に集まり辺りが晴れると浦原喜助がユーハバッハの肩を掴みそう話す。

 

「涅サンの卍解は破壊されてもそれに付随する毒霧の生成自体は成されている

なら──アナタの力はただ迅速に物事に対処しているに過ぎない…違いますか?」

 

ユーハバッハの肩を掴むその手に万力が如き力が籠もる。

 

「一瞬でも発動するなら…卍解そのものを止めるもので無いならこれで詰みっス

卍解──観音開紅姫改メ

 

瞬間、浦原喜助の身体が肩口から袈裟斬られた。

 

「───っ!!?」

 

噴き出す血と共に膝をつく浦原を見下ろしながらユーハバッハは煩わし気に口を開く。

 

「お前達が私の力を勘案するのは勝手だが──希望的観測に全てを賭けるのはよせ…不愉快だ」

 

浦原は自身の斬魄刀を見遣ると─そこには無惨に圧し折られた自身の斬魄刀紅姫があった。

 

「発動すら許さない…って事スか……こりゃあ参ったっスね」

 

片膝の体勢で見上げるように語る浦原にユーハバッハは眉根を寄せる。

 

「何度同じ事を言わせるつもりだ浦原喜助」

 

ユーハバッハは自身の全知全能を打破せんとする二人の天才に──否、全知全能を打破しようと思い上がる愚者へ残酷な真実を突きつける。

 

「一体いつから───私が全知全能を使っていると錯覚していた?」

 

その言葉に浦原喜助は目を見開く。

 

「なん…ですって…!なら…今までのは──っ!」

 

「この神聖滅矢にて卍解を斬り裂き、お前の自慢の卍解とやらが発動する前にその斬魄刀を折ったまでの事

思い上がるな…貴様等如きに振るう程に我が力は安くは無いぞ」

 

その言葉に二人の隊長格の戦意が削り取られたのを確認するとユーハバッハはゆっくりと歩みを再開し──

 

「───カハッ!?」

 

その胸に、一つの矢を受けた。

 

「やれやれ…随分と勿体つけたものだよ

お陰で下らん講釈まで垂れられるハメになるとはネ」

 

「うるさいな…アンタに言われなくても解ってるさ

ただ…僕の師と母の仇に撃つこの一本だけは──最高の一射にしたかっただけさ」

 

不満気に語る涅マユリの目線の先、そこには一人の滅却師が居た。

かつて聖別(アウスヴェーレン)にて祖父と母を喪った青年

石田雨竜は燃え盛る炎のように凍える目でユーハバッハを見る。

 

「静止の銀…と言うそうじゃないかネ?」

 

一切の身動きが出来なくなったユーハバッハにマユリは喜色満面と言った風に語る。

 

「私が一体何人の滅却師の死体を解剖したと思うかネ?

一部の滅却師達の死体の心室内から採れる銀に似た未知の物質…こんなものに気付かん阿呆が居たら見てみたいくらいなものだヨ」

 

マユリは未だに動かない身体に歯を食いしばり命令を飛ばすユーハバッハにゆっくりと歩み寄る。

 

「動けないだろう?そうだろうとも…ソレは私の研究成果の一つでね

君の血と反応させる事で能力を無効化し、更に脳の神経伝達を阻害するようにしてある」

 

雨竜はマユリの後ろについてゆっくりとユーハバッハを通り過ぎ浦原に肩を貸して立ち上がらせる。

 

「いや〜藍染サンに悪い事するなって止められた生きた滅却師の解剖が…結果的にこう繋がるとは、本当に驚きっスねぇ」

 

「ふん…私ならばあんな阿呆にとやかく言われずともこの程度の情報、必ず辿り着いていただろうがネ」

 

「浦原さん、涅マユリ…そろそろ離れましょう

この距離では僕らまで()()()()()()

 

雨竜はそう言うと負傷した浦原に気を遣いながらゆっくりとその場を離れて行く。

この計画の要となる彼の卍解の射程距離外へと

 

「卍解──清虫終式・閻魔蟋蟀

 

静かな鈴の音と共に、塗り潰すような暗闇が二人を包む。

 

「ユーハバッハ…霊王の落とし子、か

恨みが無いと言えば嘘になる…しかし、お前を斬るのは恨みに染まった故では無い」

 

東仙の口元が微かに緩む。

その脳裏に浮かぶのは

昼の陽光が如き声

夜の星々が如き声

そして…心地良き友の声

 

「言ったろう狛村…私のこの眼に映るのは最も血に染まぬ道だけだ

君と歩む道は今も同じだと信じているよ」

 

ユーハバッハと東仙、二人から遥か遠く

距離にして優に数キロ程に離れた其処に、一人の男が座っていた。

白い髪に整った顔立ち…そして、氷のように凍てついた静かな殺意を振り撒く男。

 

「霊王の子供…なんやろ?

僕、あんましそこら辺の事情は詳しないんやけど──君らが乱菊に要らんコトしたせいっちゅうんは解っとるつもりや」

 

市丸ギンはゆっくりと立ち上がると腰の斬魄刀を引き抜き水平に構える。

ソレはまるで熟練の狙撃手が如き構えで…少なくとも刀を使うようではなかった。

 

「でも、霊王は君が殺してもうた

したら──親の責任は子がとらな

卍解──神殺鎗

 

音を超える速度にて飛来したその剣閃は五感の全てを失い身動きすら封じられたユーハバッハの胸に突き刺さった。

 

「乱菊の幸せを邪魔するんなら、そら全員僕の敵や

滅却師の親玉が胸に孔があいて死ぬやなんて…中々、皮肉が利いてますやろ

(ころ)せ神殺鎗」

 

ユーハバッハの胸に背後が見通せる程の孔が穿たれ、滅却師の王は音すら奪われた暗闇で斃れ伏した。

 

「終わったか…結局、メダリオンとやらの対策に用意していた虚化は使わずじまいだったな」

 

東仙は倒れている二人の英雄を介抱せんと卍解を解除すると駆け出し──

───その背を斬り裂かれた。

 

「なっ!?」

 

倒れる東仙と()()()()()ユーハバッハに雨竜達は声を上げる。

 

「……正直、驚いたぞ

よくぞここまで練り上げたと称賛しておこう

だが──無意味だ」

 

「一体どうなってる!?静止の銀は確かに撃ち込んだ筈だろう!」

 

雨竜は眼の前の仇敵に吠える。

その横で浦原とマユリは最悪の可能性に静かに汗を流していた。

 

「まさか…」

「それ以外、考えられんヨ」

 

ユーハバッハは答え合わせのように自身の力を語る。

全知全能すら霞む程の新たなる力を

 

「何を驚く…私はただ、自身の死と静止の銀を撃ち込まれたという事実を()()()()()()()()()だけだ

我が過負荷(マイナス)──大嘘憑き(オールフィクション)でな」

 

ユーハバッハ

聖文字(シュリフト)

全知全能(The Almighty)

大嘘憑き(The Allfiction)

 

「さぁ…平和の為の最後に流れる血となるがいい」

 

滅却師の王の手には大きな螺子が握られていた。

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