【悲報】クソ馬鹿、藍染隊長になる   作:悲しいなぁ@silvie

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メリークリスマス


クソ馬鹿、原作キャラと絡む

市丸ギンの場合

 

「銀君さぁ…何時になったら乱菊ちゃんに告んの?」

 

「……………は?」

 

市丸は自身の所属する隊の隊長である藍染惣右介からポンとお出しされた言葉を飲み込めず、小首をかしげる事しか出来なかった。

 

「いや、は?じゃなくてさ

いい加減告白すればいいじゃん…あんまし待たせたら乱菊ちゃんが可哀想だぜぇ?」

 

いつも通りに書類仕事をほっぽりだして何処からか買ってきた団子を頬張りながら諭すように話す隊長に市丸は普段通りの愛想笑いを浮かべて取り繕う。

 

「いやですわ〜藍染隊長、いつも言うてるやないですか

僕と乱菊はそういうんやないですって」

 

この言葉に嘘は無い

市丸ギンにとっての松本乱菊とは何よりも優先すべき対象であるが、其処に恋愛感情は介在しない。

あくまでも乱菊が幸せであれば良いのだ

乱菊の隣に立つのが自分である必要は無い。

だから───

 

「いや、流石に拗らせ過ぎだろ殴り飛ばすぞ」

 

「え…?」

 

そんな内心を見透かしたように藍染惣右介は真顔でそう言った。

常の笑顔も消え、整っているが故に冷たさすら感じるその眼差しが市丸に突き刺さる。

 

「銀君さぁ…別にそういう自己犠牲とかを否定する気はねぇけどあんまし相手を神聖視し過ぎんのは駄目だぜ?

乱菊ちゃんだって一人の女の子なんだから待たされたら不安になるし、相手の気持ちがわかんなくなっちまうぜ?」

 

「いやいやいや、やめてくださいよ藍染隊長

それやとまるで乱菊が僕の事好いとるみたいやないですか」

 

市丸は手を振りながらその言葉を否定する。

市丸ギンが松本乱菊の側に居たのはもうずっと前の話だ

今はもう隊も違えば交流だってほとんど無い。

乱菊だってもう自分の事など忘れてもっと良い人を見付けている筈で──

 

「いや何言ってんだよ、どう見たって惚れてんだろ眼ぇ閉じ過ぎて腐ってんの?」

 

「なんか今日はえらいキツないですか!?」

 

此方を憐れむような目で見てくる藍染に市丸はついつい声を荒らげてしまった。

 

「別にぃ〜?銀君がてめぇの肥え太った羞恥心とクソみてぇに凝り固まった偶像視で乱菊ちゃんを美化美化(ビカビカ)にしようが俺にはぜぇん然関係ねぇけどさぁ〜」

 

藍染は食べかけの団子を皿に置くとゆっくり市丸の側まで歩み寄り、市丸の顔を覗き込むように見つめる。

 

「乱菊ちゃんの為って言って勘違い甚だしい馬鹿すんなら…

ちょぉっとだけ──お話しようかなぁって思ってさ」

 

「こらすんません、藍染隊長に其処まで気ぃ回させてしもて

確かに僕も周りが見えてへんかったかもしれません

これからはもう少し乱菊の事も気に掛けて──」

 

「何故其処で今から告白しに行きますと言わん!」

 

視線に耐えかねた市丸が無理矢理に話を打ち切ろうと纏めていると後ろから思い切り頭をはたかれた。

 

「──ッ!?な、四楓院隊長!いきなり何しはるんですか!」

 

「何じゃと?はっ!知れた事よ

乙女が一世一代の覚悟でアピールしておるというのに意にも介さん唐変木の性根を叩き直しに来たんじゃ!」

 

慌てて振り向いた先には隠密機動の長を務める二番隊の隊長、四楓院夜一がこめかみに大きな血管を浮かべながら拳を鳴らしていた。

 

「市丸、お主は乱菊が好き好んであんなに露出の多い格好をしておるとでも思うか?

お主に会う前に姿見で入念に手入れするのは何故じゃと思う…

それを、それをお主はどうしてきた!!

乱菊が僕の事を好いとるみたい〜?

よう似合っとるな、抱いてやろうかの一言ぐらい言えんのかクソガキが!!」

 

鬼気迫る表情で詰め寄る夜一に気圧され後ずさる市丸。

しかし、その後ろには───

 

「乱菊ちゃんだって勇気出してるのにね〜

市丸だけ逃げてるのは駄目だよ?」

 

ピンク髪の小さな死神、草鹿やちるが

 

「おどれどんだけダサい事すんねん!

さっさとチューの一つでもしてこんかい!!」

 

三つ編み眼鏡の死神、矢胴丸リサが

 

「………市丸副隊長、女性を待たせるのは感心しませんよ」

 

鋭い目付きの死神、卯ノ花烈が

それぞれ市丸の退路を塞いでいた。

 

「…………こら、皆さんお揃いで

一体どうしはったんです?今日はなんや祭りでもあったり─」

 

「女性死神協会の集まりがあったんだよ」

 

滝のように汗を流しながら辺りを見渡し逃げ場を探る市丸の肩を後ろから掴むと藍染惣右介は耳元でそう言った。

 

「協会でもよく議題に上がるからなぁ〜銀君と乱菊ちゃんの話はさ」

 

万力のような力で掴まれた市丸は自身の末路を察し、静かにため息をついた。

 

「乱菊、僕──胃潰瘍になってまうわ」

 

藍染惣右介、護廷十三隊で唯一卍解を使えない隊長であり─

──女性死神協会で唯一の男性会員である。

市丸の受難はまだまだ続く

 

 

 

涅マユリの場合

 

藍染惣右介の朝は早い。

毎朝6時には身支度を終え、日課の筋トレに励む。

しかし、例外的に水曜日のこの時だけは筋トレをせずとある場所へと向かう。

その場所とは──

 

「ネ〜ム〜ちゃあ〜ん!入〜れ〜て〜!!」

 

「─!お待ちしていました藍染隊長、お入り下さい」

 

技術開発局である。

藍染はいつも通りネムに扉を開けて貰い技術開発局の内部へと入る。

勝手知ったるといった風情で迷いなく向かった先には大衆食堂もかくやと言わんばかりの巨大な調理器具が並んだ厨房が有った。

此処は涅マユリのあまりの不摂生ぶりに世話を焼き続けた結果半ば強引に設置された技術開発局局員専用の厨房である。

………と言っても利用するのは藍染惣右介ただ一人である。

藍染は厨房の火を入れると道すがら購入してきた山のような具材達を下ろすとテキパキと下処理を開始する。

徹夜など日常茶飯事、今が何徹目かすらもあやふやなこの世の地獄めいた技術開発局において食事とは真っ先に削られる時間である。

マユリ印の怪しい丸薬を瞳孔を開かせながらガリガリと摂取しては眼の前の操作端末で日夜新しき何かを模索する彼らは正に護廷の鑑と言えよう。

だが、一つ言うことがあるとすれば確かにマユリ印の丸薬で肉体的な栄養は摂れるかも知れない

しかし、食事とは栄養が摂れれば良いというものではない。

食事とは本来、心の栄養を摂る為に必要なのだ。

包丁の規則正しい音、鰹節や煮干しの出汁の香り、米を炊く水蒸気により僅かに上がる室温。

枯れ果てた心と身体に染み入るように五感を刺激するその光景をネムは食い入るように観ていた。

 

「ネムちゃん、そこのお皿とってぇ〜」

 

「只今!」

 

次々と出来上がっていく料理を色とりどりの皿に盛り付けていく藍染。

勿論、これらの食器も藍染が一つ一つ自分で選び抜いたものだ。

料理とは、単に舌で味わうだけではない。

目で見て、鼻で嗅ぎ、舌で味わい、肌で感じ、耳で楽しむ。

五感全てを総動員する事で初めて心と身体で栄養を摂取出来る

ならば、それら全てを満足させるものを作る事こそが至高。

午前7時半、藍染惣右介は無事二十人分の朝食を盛り付けまで完璧に作り終えるとネムと共に足早に局員達の元へと向かった。

 

「皆ぁ〜!ご飯出来たよ〜!!」

 

拡声器無しでもガラスを粉砕出来る程の声量を持つ藍染は馬鹿でかい声で叫ぶ。

藍染の声を聞いた面々は次々にゾンビのような足取りでヨタヨタと厨房へ向かい歩き出す。

しかし───

 

「うるさいヤツだネ、食事など非効率的な事をせずとも栄養ならばきちんと摂っているヨ」

 

瓶からザラザラと錠剤を呑み込むと再び端末を弄りだす胴乱塗りの男。

彼こそが技術開発局の二代目局長にして十二番隊の隊長を務める死神、涅マユリである。

マユリは藍染に目もくれずモニターを観ては端末で操作を続ける。

 

「………ふぅ~ん、そっかぁ〜

浦ちゃんはしっかり三食喰ってたけど、まゆちんは食べねぇんだ〜

まぁ、浦ちゃんはそれでもきょくちょーもたいちょーもしっかり出来てたけど……まゆちんは忙しいみてぇだし邪魔しちまったなぁ〜

行こうぜネムちゃん、お味噌汁が冷めちまうぜ」

 

わざとらしく大きな声でそう言うと藍染はネムの手を引いて歩き出し──

 

「待て、浦原喜助に出来てこの私に出来ないとでも…?

ふ、フフフ……丁度今から局員全員に休息を取らせようと思っていた所だヨ!!

浦原喜助は高々三食しか摂取出来ない程に仕事に追われていたようだが…私は五食程摂取しておこうか!何せヤツと違って優秀な私は時間が有り余っているからネ!!」

 

青筋をバキバキに立てたマユリはネムの手を引きながら足早に厨房へと向かう。

藍染はそんな二人の後ろ姿に頬を緩め

 

「早くしろ!キサマ以外の誰が飯をよそうんだネ!!」

 

「にっひっひっ、すぐ行きますよ〜!」

 

自身を急かす声に声を上げて笑うのだった。

 

 

 

平子真子の場合

 

「惣右介、コレの続きは?」

 

「あい〜」

 

「悪いのぅ」

 

金色の長髪が特徴的な死神、平子真子は自身の受け持つ五番隊の副隊長と共に炬燵でゴロ寝しながら漫画を読み耽っていた。

おコタの上にはしっかりとミカンまで完備しておりだらけ切る気満々である。

 

「アカン…外が寒過ぎてコタツから出れんようになっとる」

 

「うーん、なんでおコタってこんなに引き寄せられるんだろうなぁ…?」

 

「クッ…アカン、届かん…!」

 

炬燵から少し離れた位置に積んである漫画本を炬燵に入ったまま取ろうと目一杯に腕を伸ばす平子。

 

「もう…ちょい…!」

 

平子の指先が本のカバー部分に引っ掛かり、それを繰り返しながら少しずつ平子の方へと近付いて──

 

「仕事サボって何しとんねんハゲ!!!」

 

「ア゛アァァァ!!?」

 

あと少しで手に取れる程の距離になったところで平子の手は小さい草履に踏み潰された。

踏まれた手をもう片方の手で抑えながらのたうち回る平子を見下ろしながら手を踏んだ張本人である猿柿ひよ里はフンと鼻を鳴らしいやらしい笑みを浮かべる。

 

「なんや、えらい踏んで欲しそうに伸ばしとったから踏んだったちゅうんに礼も無しかい!アホシンジ!!」

 

「オドレどんな神経しとったら人の手ぇ踏んで礼まで求められんねん!!」

 

熟年の漫才師のような掛け合いに目を細めながら藍染はミカンを剥いていく。

 

「平和だなぁ〜」

 

「惣右介ェ!このアホ二人でいてもうたるぞ!」

 

「うっさいわハゲシンジ!惣右介は今からウチと一緒にオマエの毛根にトドメ刺すんじゃ!!」

 

二人に見つめられる藍染はミカンの房の一つを自身の口に放り込むともう二つの房を平子とひよ里の口に放り込む。

 

「「酸っぱッッッ!!!」」

 

二人は口に入れられたミカンを反射的に食べ、その味に悶絶しのたうち回る。

 

「とらドラ…懐かしいなぁ〜」

 

藍染は涙を流しながら水を探しさまよう二人を見ながらミカンを食べる。

 

「平和だなぁ〜」

 

だらけ切った藍染はそう言うとにへらと笑った。

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