「その……先程はお見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、こっちこそ、大した事もできなくて……ごめんね」
現在、二人は山から下山して、ユミルにある温泉に
今日の修行での疲れを癒す事も目的であったが、それ以上に、
だが、実はこの入浴、リョウではなくデュバリィの方から誘ってきたものであった。
「昨日貴方がお話になられた、温泉に含まれる様々なメリットを有効活用しないというのは、あまりにも不自然だと思います!」
という感じでリョウの事を誘ってきたのである。
勿論リョウとしては別々に入ったほうが良いのでは? と提案したのだが、デュバリィは頑なに「一緒に入りたいのです」と言い張り続けた結果、リョウが折れる形で一緒に入る事になってしまったのだ。
(一体どういうことだ? ……まさか、泣き顔をみた俺を殺そうと!? ……もしそれが本当だったら、彼女に対する対応は猟兵殺害の真相とは別として、本部の指示に従うことになるだろうな)
もし、本当にそうなってしまった場合、それはそれで仕方がないと割り切ることも出来るが……非常に後味が悪い事は確実だ。
これまでの数日間。一応彼なりに努力して来たつもりだが、そんな結果になったのなら勿論嬉しくはないし、それまでの努力が水の泡だ。
しかし、彼はとある可能性を頭の中から排除していた。
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そういう事で、とりあえずリョウはデュバリィに引っ張られる形で温泉に入ることになったのだが。
「その……いい湯……ですね?」
「そうですわね……」
二人で温泉に入ってから既に10分。二人の間には特に会話と言えるものは発生せず、声を出したとしても、お互いに相槌を打つ程度であり、ただ淡々と時間だけが過ぎていった。
「……あの……」
そして、その沈黙を破ったのはデュバリィであった。
「なんですか?」
「その……実は……ここへ誘ったのには理由があるのです」
デュバリィ自らリョウを温泉に誘った理由。
彼女は俯き、温泉の水面に映る自分の顔を見つめながら、小さな声で自分の過去について、デュバリィはリョウに話し始めた。
リョウはデュバリィの言葉を遮ること無く、じっと黙って聞いていた。
「わたくし、貴方に嘘をついていました……私の出身は帝都ではありません。大陸辺境の小さな田舎町……そこがわたくしの故郷です。わたくしはその村の領主の娘として……つまり、辺境の貴族令嬢として生活していたのです……四年前のあの日までは」
「…………」
「それまでわたくしは、家族と共に貧しいながらも幸せな日常を送っていました…………」
そこでデュバリィの話は一旦途切れる。
リョウをこの場所に誘った理由は、彼に自分の過去を知ってもらいたい。という思いからであった。
彼を誘う際に言った、温泉の特効云々はただの口実だ。
この数日間。彼と様々な形で接した結果、彼女の中で小さな、しかし確実に
修行の為に訪れたアイゼンガルド連峰で彼と鉢合わせ、不幸な行違いがあったものの激しく戦い、そのまま彼に命を救われた事。
麓にあるユミルのシュヴァルツァー男爵家にリョウと共にお世話になり、戦闘で受けた傷を男爵一家と
ユミルの街中をエリゼ嬢のガイド付きでリョウと共に軽く散策し、下らないと言いつつも、心の奥では
そして今日、リョウと二人っきりで非常にキツい謎の特訓をして、そこで改めて彼の凄さを目の当たりにし、過去のリョウと今の自分を比較し、失った家族。命を救ってくれたマスター。そして自分自身の不甲斐なさといった様々な思いが混じり合い、彼の目の前で無様にも大泣きしてしまった事。
この数日間、一言では現せない程の変化が、彼女の中で起きていた。
(彼と一緒に居るとき……何故か心の奥に温かさを感じました……これはもしや……)
リョウは温泉の特効だと話していたが、
今の自分では到底辿り着けない強さを持っているのにも拘らず、理不尽にも攻撃してきた相手を思いやる優しさを持っている男。
(本当に、マスターの様な男ですわね……)
(わたくしは、この男のマスターに通ずる部分を気に入ってしまったのでしょう。ですが……例え、例え
この人ならば。
自分のよく知るマスターにそっくりなこの男なら、自分の過去については話しても構わない。
そう思えるほどには、デュバリィは彼に対して
彼に泣き顔を見せてしまったのも、影響しているのだろう。
だが、彼女は気付いていなかった。いや、此時はまだ気付かないふりをしていた。
本当は自分でも分かっていた筈なのに、生まれながらの彼女の性格が、
生まれてはじめて、