Legend of Champion 拳の軌跡   作:ひげ根

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皆様、大変お久しぶりです。
またぼちぼち連載を再開致しますので、何卒宜しくお願い致します。


第十六話 悲報、リョウ・スメラギ22歳。教授(変人)に目を付けられる

 

 七曜暦1202年八月中旬。

 

 遊撃士協会ツァイス支部にて。

 

 

 

(一体どういうつもりなのかしら?)

 

 ツァイス支部のキリカは受話器を固く握り締め、思い詰めた表情で立ち尽くしていた。

 

(まさか支部長の私が問い合わせても、殆ど何も教えてくれないなんて……) 

 

 キリカは先程出会った青年が請け負っていた依頼に関して、協会本部へと問い合わせていた。

 青年の依頼は“伝説のアノ虫の捕獲”。

 別に依頼内容に関しては何もおかしな所は無い。だが、彼女はその依頼の人選に対して不可解なものを感じていた。

 

 昆虫採取経験ゼロの者を()()()()()()の昆虫採取依頼に指名した本部の意向。

 いくらA級とはいえ、そのような無茶な人選に対してキリカは微々たる怒りを覚えていた。

 

(何度確認しても“お答えできません”の一点張り。元々受ける予定だった者が()()()()()で重症を負って、それで彼に白羽の矢が立ったという事は聞き出せたけど……本当にそれだけなのかしら?)

 

 協会本部はこの事に関してあまり触れてほしくないのだろうか。

 

(……ちょっと色々と調べる必要があるかもしれないわね)

 

 キリカはそう思い立つと、早速リョウと遊撃士協会の上層部に関する情報を集めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 七曜暦1202年九月。リベール王国、王都グランセル。

 

 

 

「ほう! お前さん達リョウを知ってたのか!」

 

「ええ、ジンさんと出会う前日にツァイスで出会ったの。お互いに依頼があったから、すぐにお別れしちゃったけどね」

 

 リベール出身の若き準遊撃士エステルとヨシュアの二人組は、共和国出身の遊撃士であるジン・ヴァセックと仲良く話し合っていた。

 

 場所は王都・グランセルにある酒場だ。 

 

 ジン・ヴァセック 30歳

 

 東方三大武術と呼ばれる武術の一つ、泰斗流を修めた達人で、共和国においてリョウと同じくA級遊撃士の称号を持つ凄腕の遊撃士だ。

 階級はリョウと同じA級だが、年齢も、遊撃士としての経歴も、ジンの方が圧倒的に上である。

 

 そんな彼が、一体どの様にしてエステル達と知り合ったのだろうか。

 彼等が初めて出会ったのはツァイスとエルモの中間地点。時間としては、エステル達がリョウと別れた直後にまで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 エステル達はリョウと別れた後、ラッセル博士やZCFの全面的な協力によって、例の黒の導力器の解明に全力を尽くしていた。作業は順調に進んで、導力器の解明も時間の問題……だったのだが、その時ツァイスで大きな事件が発生した。

 

 ZCF本社にて黒の導力器の解明作業中だったラッセル博士が、突如として謎の集団に誘拐されてしまったのだ。

 

 事件発生後、すぐにラッセル博士の救出作戦が決行され、あと一歩という所まで犯人を追い詰めたものの、その際エステル達に協力していた正遊撃士のアガットが、敵の毒弾を受けてしまい、一時的に生死を彷徨う危険な状態に陥ってしまう事となる。

 

 毒弾を食らった原因は、救出隊の後をこっそり付けていたティータを庇ってのものだった。

 

 そして、二人がジンと出会ったのは、そんな危機的状況に陥った時だった。

 

 エステル達の状況を瞬時に理解したジンは、一切迷うことなくエステル達と共に、解毒剤を作るための材料調達に尽力してくれたのだ。

 

 彼の活躍もあって、幸いにも解毒薬はその日の内に完成し、アガットも翌日に危険な状態から脱して、大事には至らなかった。

 

 残念ながらジンはその後王都へと飛行船で旅立ってしまい、博士救出の作戦には参加できなかった。が、その後事件の調査は順調に進み、博士を救出することに成功し、事件は無事に解決したのだった。

 

 そしてこのまま黒の導力器が解明されてめでたしめでたし…………とはいかなかったのである。 

 

 本当の問題は、事件が解決する直前に出てきたのだ。

 

 なんと、ラッセル博士を誘拐した犯人が、リベール王国軍の情報部であることが発覚したのだ。

 

 情報部というのは、最近になってリベール軍に新設された新しい部署だ。

 近年加速化する導力器の性能向上や、各国の大規模な軍事転用等に対応するため、迅速かつ的確な情報収集を目的として、若手のトップであるリシャール大佐を中心とした、新しい部署を王国軍は設立していたのだ。

 

 本来であれば迅速な情報収集を行うことは軍としては悪い事ではないのだが、今回はそれが裏目に出てしまったのだ。

 

 そこに所属している軍人達が、リベール軍のトップであるモルガン将軍をはじめ、将官佐官といった上級士官を巧みな情報収集によって監禁や懐柔、軟禁又は強制服従といった具合に彼等の自由を奪ったのだ。

 つまり、軍の全指揮系統を情報部という一部署にほぼ完璧に掌握されてしまったのだ。

 

 所謂クーデターである。

 

 何故彼等がクーデターを引き起こしたのか、その詳細は分かっていないが、実際に彼等に囚われたラッセル博士の話によれば彼等は例の黒の導力器(情報部は福音(ゴスペル)と読んでいたらしい)を使い、王都で何かを企んでいるとの事だった。

 博士を誘拐したのも、博士本人が必要というより、博士が持っていた福音を奪い取る事が目的だったようだ。

 

 その話を博士と、博士を情報部からの指示でレイストン要塞に監禁していたシード少佐から聞いた彼女達は、その事を女王陛下へと直接伝えるために、博士直筆の手紙を携えてこの王都にやって来たのだが……一足遅かった。

 

 情報部はこの王都にまでその手を伸ばしていたのだ。

 

 先のラッセル博士誘拐事件の犯人を女王陛下直属の部隊である王室親衛隊に仕立て上げた彼等は、新たな女王陛下の護衛という形で王城を占拠していたのだ。

 

 街の方には親衛隊をテロリスト集団と位置づけた厳戒態勢を敷くことで、親衛隊や遊撃士が王城を奪還する機会を潰し、さらに王城への入城にも極端な制限を行うという、万全の体制を作り上げていた。

 

 まさに八方塞がり……しかし、ここにきて再びジンの存在がエステル達に僅かな希望を抱かせたのだ。

 

 ジンは()()()()()理由があってこのリベール王国へと来ているのだが、その理由の一つが、現在王都で開催されている武術大会に出場する事であった。

 

 ジンにとっては単なる腕試しのつもりでいたのだが、実はこの大会、なんと優勝したあかつきには王城で開かれる晩餐会に招待されるのだ。

 元は女王陛下の甥であるデュナン公爵の突然の思いつきなのだが、彼女達からすればまたとないチャンス。

 だが、エステル達が王都に来たときにはすでに大会が始まっていた。

 

 流石に途中参加は難しいと考えた二人は、最初は諦めようとしていた。

 

 だがまたしても運が彼女等に味方した。

 

 この大会、本来は個人戦として開催される予定だったのだが、開催当日になって急遽団体戦へと切り替わってしまったのだ。

 実はこれも情報部が裏で操った結果なのだが、当然ながら大会運営陣、出場選手、観客と、多くの人々の間で混乱が生じた。

 

 そんな状況で大会は開催される事になったのだが……なんと、個人戦から団体戦へと変更になったこの大会で、たった一人で予選を勝ち上がった男がいた。

 

 ジンである。

 

 彼は外国人という事がネックとなり、チームを組んでくれる者が一人としていなかったのだ。

 

『一人で頑張っているジンには報われて欲しい』

 

 予選が終わる頃には、そんな思いが観客だけではなく、出場者や大会運営陣にまで拡がっていた。

 

 エステル達は、その状況下を利用した。

 

 ジンと手を組みたいという申請は大会が始まってしまった今、本来であれば難しいものだったが、そういった雰囲気が蔓延していたのが幸いし、運営側から特例で受理された。

 

 ジンと手を組んで優勝し、晩餐会で王城へと潜入して、女王陛下へ手紙を直接渡すという作戦は、こうして無事に決行されたのだ。

 

 ちなみにジンは、途中からでも一緒に出場したいという二人の願いを快く受け入れてくれた。

 

 作戦が上手く行きそうな感じで話が纏まった所で、エステルが何気なく、ジンと出会う少し前に会ったリョウの事を話し始め、現在に至るというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「そうか。リョウの奴もこっちに来てたのか……もっとしっかり誘っておけば良かったな」

 

「ジンさんとリョウって仲が良いの?」

 

「ああ。彼奴とは何度も一緒に依頼をこなしたからな。実はリョウの奴にもこの大会に出ないかと誘ったんだが。結局断られて……」

 

「? どうかしたんですか?」

 

「……あぁ。いや、何でもねぇよ」

 

 話の途中で突然口を閉ざしたジン。

 不思議に思ったヨシュアが声を掛けるも、ジンはなんでもないと、そう言うだけだった。

 

「そうですか。なら良いですけど」

 

 カンの鋭いヨシュアは、ジンが何かを隠している事を瞬時に理解したものの、流石に好意的な関係を築いている相手に対して食って掛かる気は無かったのだろう。

 

 そしてジンは、先程エステルが言っていた、リョウがリベールへとやって来た理由について考えていた。

 

(リョウの奴、確か休暇を取るって言ってたよな?)

 

 実はジン、リベールへ来る数日前にリョウをこの大会に誘っていたのだが『すみませんジンさん。僕は暫く休暇を取るつもりなんです。申し訳ないですけど、今回は辞退させてもらいます』

 と断られてしまったのだ。

 だがエステルは、先程お互いに“依頼”があったと言っていた。

 リョウはジンから見ても真面目な性格をした好青年だ。ヘビースモーカーで尚且つ()()()()()()()()()、仕事はサボらず真面目に解決するし、変に嘘をつくタイプでもない。

 そんな彼が珍しく長期の休暇を取ると言ったものだから、誘いを断られた時の事はよく覚えている。

 リョウは()()()()()()休暇を楽しみにしていたのだ。

 

(急遽依頼が入っちまったのか? ……本当にそうならご愁傷様としか言えねぇな)

 

 リョウの詳しい依頼内容や、彼の置かれた状況を知らないジンは、軽い違和感を感じたものの、キリカと違ってそこまで深く問題視はせず、楽しみにしていた休暇を返上して、緊急の依頼に振り回されているリョウを想像しながら、心のなかで両手を合わせるのだった。

 

(まぁ、取り敢えず今は旦那から頼まれた事をやり遂げるだけだ)

 

 エステルとヨシュア。二人の父親であるカシウスから頼まれた私的な依頼。

 難しい依頼ではあるが、信頼を寄せられている現状、蔑ろにすることは出来ない。

 今のジンには、リョウを気に掛ける余裕など一切無かったのである。

 

 ちなみにエステル達は、この後ジンの他にもう一人の協力者を得て、共に武術大会を勝ち抜き見事優勝を果たし、女王陛下に手紙を直接お渡しする事に成功する。

 その後、女王陛下や親衛隊をはじめとした、多くの人々の協力を得て、リシャール大佐率いる情報部のクーデターの鎮圧にも成功し、黒の導力器を巡る事件は一旦の収束を見せるのだが……

 

 

 

 

 闇の香りは、着々としてエステル達の側へと迫って来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 七曜暦1202年十一月。リベール王国某所。

 

 

 

 

 

 

 ここはリベール王国に存在する、結社、身喰らう蛇の基地である。

 

 鉄とコンクリートで作られた鋼の要塞に、一機の臙脂(えんじ)色をした最新鋭の小型飛行艇が降り立った。

 

『ウィ────ン』

 

 飛行艇の後部から、スライド式の足場が地面に向けてゆっくりと伸びていく。

 その足場の根元の先には小さな後部甲板があり、飛行艇の艦橋と思われる場所へ続いている。

 

「ふーん、中々いい所じゃない?」

 

 足場が完全に地面へと伸びきったと同時に、艦橋から甲板へと出入りする為の小さな扉が開くと、そこから一人の少年が、そう呟きながらスタスタと足場を通って地面まで降り立った。

 

 身長は150後半程度だろうか。小柄で童顔。髪は緑色で、濃い赤紫色をした燕尾服を身に纏っている。

 その姿は、一般の人が見れば、いいところのお坊ちゃんといった感想を抱くだろう。

 

「遅かったな、カンパネルラ」

 

 そう呟きながら、誰かが少年の下へと近付いてくる。

 カンパネルラと呼ばれた少年は声のした方向へと振り返ると、そこには灰色のコートを身に纏った銀髪の男が立っていた。

 

「やぁ剣帝。ずいぶん久し振りだねぇ」

 

 カンパネルラはニコッとした軽い表情で、後ろから近付いてきた男に対して軽い口調で話しかけた。

 

「あぁ、半年ぶりか? 帝国の各遊撃士協会支部への連続襲撃事件はお前が担当したと聞いているが……」

 

 剣帝と呼ばれた男は、そう言いながら鋭い視線をカンパネルラへと向けた。

 だが、その視線からは特にカンパネルラを責めるようなオーラは無く、むしろ少し呆れているような視線であった。

 

 灰色のコートを羽織った銀髪の青年と、赤紫色のタキシードを身に纏った緑髪の少年。

 

 彼等は結社、身喰らう蛇に所属する執行者である。

 

 身喰らう蛇。またの名を結社。

 盟主と言われる人物をトップとする、謎の組織である。

 

 その全貌は不明だが、盟主の下には使徒と呼ばれる幹部が。そしてその幹部の下には、執行者と呼ばれるメンバーが複数名存在している。

 

(ちなみに我らがデュバリィちゃんは、使徒第七柱の直属の部下という位置づけであり、使徒や執行者とはまた違った存在である)

 

「まぁねぇ~……あのオジサン本当に凄いよね。手駒にしてた猟兵団をひとつ壊滅させられちゃったよ」

 

「カシウス・ブライト。ゼムリア大陸西部で唯一、S級の称号を持つ遊撃士か」

 

「僕らの存在には気付いていない筈なのに、次から次へと的確な判断で作戦を片っ端から潰してきたからね。控えめに言っても化物だよ」

 

 帝国遊撃士協会支部連続襲撃事件。

 

 ユミルのシュヴァルツァー男爵も語っていた、例の襲撃事件の事である。

 

 中小規模の猟兵団である『ジェスター猟兵団』によって引き起こされた事件として帝国では認知されているのだが、その事件の裏ではこの男。カンパネルラと、その大本である身喰らう蛇という真の黒幕が存在するのだ。

 

「でもまぁ、君の工作完了まで足止めは出来たから、取り敢えず成功とは言えるかな?」

 

「そうか……」

 

「ふふふっ。彼と戦えなかった事。少し残念に思ってるのかい?」

 

「ああ、少し。な」

 

 剣帝。読んで字の如く、“剣の帝”である。

 

 その実力は、他の執行者メンバーと比べても頭一つ抜きん出ている。いや、最高幹部である七柱の使徒まで含めても、その実力は間違いなく上から数えた方が早い。

 戦闘狂というわけではない為、誰彼構わず襲いかかるような人間ではないが、未知の強者へ挑みたいという感情は、人一倍強い方である。

 

「だが、これで野に放たれていた虎も軍務という鎖に縛られた。もはや正攻法で我等を止めることは叶わんだろう」

 

「教授の計画が見事図に嵌った感じかな?」

 

 剣帝はニヤリと小さな笑みを浮かべながら、計画を次の段階へと進める準備が整いつつある現状を、カンパネルラに伝えた。

 

「既に他の執行者メンバーも続々とリベール入りを果たしている。怪盗紳士・瘦せ狼・幻惑の鈴・殲滅天使。もっとも、ブルブラン(怪盗紳士)の奴は以前から下見をしていたらしいが……そろいもそろってクセの強い奴らばかり集まったものだ」

 

「ふふっ、そういう君だって相当にクセが強いと思うけどねw」

 

 カンパネルラはクスクスと笑いながらそう締め括ると、話の内容を仕事からプライベートな所へと変えていった。

 

「そういえば“彼”……行方をくらましたんだよね?」

 

「…………」

 

「うふふ、愉しみだなぁ……僕たち執行者の中でも、隠密行動はピカイチだったからね。剣帝と白面を相手にどこまでやってくれるのか」

 

「……所詮、何年も前に結社から足を洗った人間だ。たいした脅威にはならん」

 

 カンパネルラが熱心に話している最中、剣帝は硬い表情でじっと話を聞いていたが、ポツリと呟くように“彼”の存在は計画への妨げにはならないと、そう結論付けようとした。

 

 が、それに異を唱える人物が居た。

 

「いやいや、そんな事はないと思うよ?」

 

 剣帝が“彼”を否定した直後、それに異を唱える男が二人の側へと近寄ってきた。

 

「少し前に“彼”とは何度か邂逅してね……多少の衰えは確認出来たが、すぐ元通りになるレベルだったよ。()()()()()()()()()()()()の話だが……ね?」

 

 白と紫を基調とし、所々に金色の刺繍が施された、足首まである長いローブを身に纏い、紺色の髪で金縁眼鏡を掛けた、なんとも胡散臭い雰囲気を醸し出している男。

 

 この男こそ、昨年リベールで発生した、リシャール大尉率いる情報部のクーデターを裏で操っていた人物。

 

 身喰らう蛇の使徒第三柱『白面のワイスマン』別名、教授である。

 

 ワイスマンは二人の側で立ち止まり、カンパネルラの方へと顔を向けながら、帝国での彼の立ち回りについて、感謝の言葉を告げた。

 

「やぁ、カンパネルラ。色々とご苦労だったね。君がカシウス・ブライトを引き付けてくれたおかげで、こちらは順調に事が進んだよ」

 

「ふふっ、結構愉しい仕事だったよ。ただ、教授の計画書を見させてもらったけど……こっちもかなり面白そうな事になってるじゃないw」

 

「はははっ、()()()たる君にそう言われるのは、中々に光栄だな。だけど、実際に計画が進行すれば、もっと面白いと思うよ? なにせ、今回の計画に参加する者は、皆それぞれ個人的な目的があるからね? 私も、そして彼も……ね」

 

「否定はしないが……貴方に言われたくはないな」

 

 ワイスマンは、剣帝の顔を横目でチラリと見ながらそう言い放ったが、対する剣帝はあまり乗り気という感じではなかった。

 

「なーるほど。色々と事情がありそうだ……けどまぁ、教授の悪趣味はもはや芸術的とすら言えるからね。存分に愉しませてもらうよ」

 

 カンパネルラとしては、それぞれのメンバーが思い描いている事以上に、ワイスマンの計画の方が重要なのだろう。

 二人に対して深く追及することは無かった。

 

「ああ、心ゆくまで我らの計画を見届けてくれればいいさ。我等が盟主の代理としてね」

 

「ふふっ、任せておいてよ!」

 

 カンパネルラはペコリと丁寧にお辞儀をすると、ワイスマン、剣帝の二人に対して宣言するのだった。

 

()()()N()o().()0() 道化師カンパネルラ。これより、使徒ワイスマンによる『福音計画』の見届けを始める」

 

 

 カンパネルラはニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、ワイスマンに対して計画を見届ける事を宣言した。

 

 このカンパネルラの宣言によって、リベールでの結社における活動が本格化していく事になるのだが……

 

「おっと、言い忘れる所だったが……実は、少し気になる事が一つあってね」

 

「気になる事?」

 

 ふと、ワイスマンが二人に対して()()()()()を話し始めた。

 

「実は、とある共和国人の男がリベールへとやって来たんだ」

 

「共和国人の男? 誰だ?」

 

 剣帝がワイスマンの発言に疑問を呈したが、ワイスマンは剣帝の疑問には答えず、そのまま話を続けた。

 

「数ヶ月ほど前の話にはなるのだがね。ちょっとその男の行動が気になって追手を差し向けたんだが、その時は何故か()()()()()()()()()()()()()()()だったんだ。そして、その後は何もすることなく、早急に共和国へと帰国した」

 

「森に籠もっていただけって……別にその程度じゃ何も問題無いんじゃない? それともなに? 計画の妨げになるような、大規模な罠を仕掛けてたって訳?」

 

「いや、実際にその男が滞在していた森の中に入ってみたのだが、特に怪しい物は見つからなかった。発見出来たのは虫が集っている傷んだ果物(ゴミ)だけだった」

 

 剣帝とカンパネルラは、ますます分からないという表情で、ワイスマンの話を聞いていた。

 だが、一見ふざけた内容にしか思えないこの話も、彼ら二人は真剣に聞かざる負えなかった。

 

 何故なら、この話をするワイスマンの表情から、いつも浮かべているような微笑みが()()()()()()()からだ。

 

 ワイスマンが戯れで話している訳では無いと、その真剣な表情から深く感じ取れたのだ。

 

「勿体ぶるな。いい加減その男の正体を教えてくれないか? そこまで情報を手に入れておきながら、分からんなどとは言わさんぞ?」

 

 剣帝が鋭い視線をワイスマンへとむけた。

 

 カンパネルラも口では直接言う事はしなかったが、こちらも目を細めながらその男の正体を知りたがっていた。

 そして、ワイスマンはその男の正体を二人へ伝えるのだった。

 

「君たちも名前くらいは聞いたことがある筈だよ。21歳という若さでA級に登り詰めた、共和国建国史上最強との呼び声の高い遊撃士。あまりの強さから『怪物』という二つ名を協会から与えられた男……」

 

「成る程、そういう事か」

 

「あちゃー……剣聖を餌にして怪物が釣れちゃった。って感じかな?」

 

 名前を伏せた状態での説明であっても、剣帝とカンパネルラの二人はその男の存在を瞬時に理解した。

 

「共和国のA級遊撃士。リョウ・スメラギだよ」

 

 予想外のゲストに、二人は思わず笑みを浮かべた。

 道化師は新しい楽しみが増えた事を、剣帝は不動以外の強者が現れた事に対してである。

 

「なる程な、確かに実力はあるだろう。敵として現れたのなら、あの不動や剣聖にも匹敵するだろうな……()()()()()()()()()()だが」

 

 そう、教授が言っているのは数ヶ月も前の話だ。いくら計画の準備期間中に姿を見せたからといって、この時期にまた再び現れるというのは考えづらい。

 そんな事は教授だって理解しているだろう。だが、彼はこの話を二人へと持ってきた。

 つまり、()()()()()()()()()()

 

「ああ、その通りだよ。彼は再びこの地へとやって来るよ。既に帝国方面から此方へ移動しているのを確認済みだ」

 

「フッ……」

 

「まさに予想外のゲストだね」

 

 リョウ・スメラギ。

 

 その名前は、兵揃いの身喰らう蛇においても一目置かれる存在だ。

 

 なにせ昨年の前半に共和国で発生した、連続誘拐事件を解決した立役者である。

 

 悲惨な事件ではあったが、警察と協力して事件解決に奔走し、多くの子どもたちの命を救った英雄だ。

 

「そいつに関しては取り敢えず頭の片隅には入れておく……行くぞ、カンパネルラ」

 

「りょうかーい! ……益々愉しい計画になりそうだね? 教授?」

 

 剣帝とカンパネルラは、ワイスマンに対してそれぞれ一言づつ言葉を残していくと、そのまま基地内へと入っていった。

 

「益々愉しい。か……ふふっ、それは私の言葉だよ? カンパネルラ……」

 

 そう小さく呟いたワイスマンの声は、二人の耳に届くことはなかった。




 久し振りに書いたので、やはり若干文章が拙いですかね。笑

 それではまた次回。

拳で抵抗する男という設定。増やしてほしい? 減らしてほしい?

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