本来は一本にまとめるつもりでしたが、長くなってしまったので、分けることにしました。
ご了承ください。
「うっ……」
目が覚めた瞬間、私の目に入ったのは知らない天井だった。
「ここは…どこですの?」
わたくしは首を動かさず眼球だけを動かしながら自分の周囲を見渡した。部屋の中には自分以外の人間は居らず、ベットに一人寝かされていた。
造りは木造だろうか、しっかりとした造りは山小屋を彷彿とさせるが、そこまで質素な雰囲気は感じられない。どちらかというと高級感のある造りだった。
少なくとも野蛮な人間が住むような場所ではないだろう。部屋の中は隅まで掃除が行き届いている。
「ウッ!」
(お腹が痛い……暫く起き上がれないかもしれませんわね)
ベットから出ようと、起き上がる為に腹部に力を込めたが、その瞬間強烈な痛みに襲われた。
「わたくしは確か…アイゼンガルドへ修行に行って……」
ベットに寝た状態のまま、わたくしは何故この部屋で寝ているのかを思い出そうと自分の記憶をたどった。
アイゼンガルドへ修行に行き、そこで変な男と出会い、一方的に叩きのめされたところまではしっかりと覚えている。
その後の記憶は無いが、もしかしたらあの男にここまで運ばれたのかもしれない。
全くの赤の他人がここまで運んできた可能性もあるが、おそらくはあの男に運ばれたのだろうとわたくしは目星を付けた。
特に深い理由などないが、そんな気がする。
(どうやら、記憶の欠落は無いようですわね)
あの男の顔はしっかりと思い出せる。……言われた言葉も鮮明に覚えている。
『君、気配を消すのはあまり上手い方じゃないよ?』
(そうですわ。わたくし以外の気配を感じて、そこへ向かうと一人の男が修行をおこなっていて、それを隠れて見ているのがバレて……その後、わたくしの事を馬鹿にしてきたんですわ!)
わたくしが今までどれほど辛い修行を行ってきたのか知りもせず、ただ一方的に言いたいことだけ言ってきた失礼極まりない変な男。
それが悔しかったわたくしはその男に一太刀入れてやろうと、ちょっと本気で斬りかかったのだ。
別に殺すつもりは無かった……いや、ちょっとはあったかもしれないが……とにかく、わたくしはその男へ一方的に斬りかかったのは確かだ。
最初の動きを見たとき、その男はあまり強く無いと思ってしまったのだ。
スキを付けたということもあるだろうが、実際、最初の一撃は額に当たった。決して浅くは無い傷を負わせる事も出来た。
だが、そこまでだった。
突然、それまでとは比べ物にならない闘気を身に纏い、
何とか食らいつこうとしたが、無駄だった。
全力で放った必殺技も完全に見切られた上で、カウンターまで決められてしまった。
完敗だった。
(あの男……何者でしょうか? どこかで見たような記憶があるような……ないような…………)
あの男の顔は以前何処かで見たような感じもする。私はその男に関して思い出そうとした。その時。
『ガチャ』
「あっ、気が付いたんですね」
部屋の扉が開いて一人の少年が部屋の中へと入ってきた。
年齢は15歳くらいだろうか。
立派な黒髪で背丈は170前後と平均的。顔は中々に美形だった。
「本当によかった。もう2日も寝ていたんですよ」
「なっ!? 2日ですって!?」
その少年の発言はわたくしにとって予想外のものだった。
自分の感覚ではつい数時間前の出来事だと思っていた事が、2日も前の事だと知れば誰だって驚く。
わたくしは驚きのあまり勢いよくベットから飛び出そうとしたが、やはり腹筋は素直に言うことを聞いてくれなかった。
「うっ! ……」(やっぱりまだ無理ですわね……)
わたくしが体を起こそうする姿を見た少年は、慌てながらも冷静にわたくしの寝ているベットの近くまで駆け寄った。
「あぁ! 無理しちゃだめですよ! ここへ着いたときには本当に酷い怪我だったんですから!」
彼は私の傍に来ると、腹部の怪我の状態に関して話し始めた。
「内出血によって腹部の皮膚がかなり広い範囲で赤黒く変色してて……僕も父もあそこまで酷い内出血は見たことがありませんでした」
その少年は続けてわたくしが此処に運び込まれた時の状況を説明してくれた。
どうやらこの少年もアイゼンガルドで修行をするために山を登っていたらしいのだが、その道中にわたくしをおぶった男性と出会い、急遽修行を中断してその男性と共にここまで運び込んだのだという。
怪我の状態も最初に見た時は酷いものだったが、応急処置が良かったのか、今朝までには色もだいぶ落ち着いたと言っていた。
「とにかく無事に目が覚めて良かったです。お腹とか空いてませんか? もし何か食べれるのであれば、簡単な食事を持ってきまけど」
「そうですわね……何でも構いませんわ」
「了解です。それでは母に頼んで何か作ってもらいますね」
少年はそこまで言うと部屋から退出していった。
その間わたくしは窓の外を見つめながら、この場所が何処なのか推測していた。
(アイゼンガルドの麓近くにある町……ユミルでしょうか? だとするとあの少年は、ユミル男爵家の? ……いいえ。それは今考えても仕方のないことですわね)
わたくしは考えるのを一旦止めると再びベットに横になった。
(取り敢えず、このままもう少し体を休めておく必要がありますわね)
わたくしはふとベッドの脇にある窓の外へと顔を向けた。
外では白い雲が空を覆い尽くしており、その下には細かい雪が、ハラハラと舞うように地面へと落ちていった。
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「結局2日も置きっぱにしちゃったな。錆び付いてなければ良いけど」
彼女が目覚める数時間前。リョウは山に置いてきた
現在麓のユミルでは雪が降っているが、奇跡的に山の方は降ってはいなかった。
「にしても……まさか彼女がね……」
彼女を倒したあと、リョウは自分の額に付けられた傷と彼女の腹部の傷を簡単に治療した際、あることに気が付いてしまったのだ。
彼女の鎧を脱がした際に見えてしまったのだ。鎧に刻まれたとある紋章を。
そしてその紋章が持つ意味をリョウは理解していた。
「結社、(
結社、別名身喰らう蛇。大陸全土で暗躍する謎の組織。
一説によると世界の破滅を企んでいると噂されているが、真相は分かっていない。
遊撃士協会でも危険視している組織であり、中には平気で殺人を行う者も所属していると聞いている。
「あの子、そんな悪人には見えなかったけどな……」
彼女を背負ってユミルへ到着した後、リョウは念の為遊撃士協会
「そいつは恐らく鉄機隊と呼ばれる三人のメンバーの一人だろう。お前が言った特徴に当てはまる奴は一人。鉄機隊筆頭隊士、神速のデュバリィだ」
「神速のデュバリィ……」
「そいつはまだ際立った犯罪行為はしていないが、少なくない数の猟兵を殺害している危険な女だ……気絶しているのなら、そのまま
リョウは悩んでいた。
何故あの女の子が結社に加わっているのか、その理由がわからないし、そもそもリョウには彼女が悪人には見えなかった。
リョウは仕事柄これまで数多くの犯罪者と出会ってきたが、彼女が彼らと同じ存在であるとはとても思えなかった。
……というより、それ以上に
(僕は、困っている人を助けたくて遊撃士協会に入った。準遊撃士になった時も、正遊撃士になった時も、A級に昇格した時もそうだった。その思いは今も変わってない)
リョウはかつて、とある試合に遅れそうになった時の事を思い出していた。
それは、リョウが何故プロの道を蹴って遊撃士になったのか、そのきっかけとなる出来事だった。
次回からはリョウの過去の話になります。
あんまり長く書くつもりはないのですが……
もしも長くなってしまったらごめんなさい。(早くSC書けよってね。笑)
最後に、幻燈河貴さん。誤字報告ありがとうございました。
人生初の誤字報告でしたが、それだけしっかり読んでくれる人が居るのは、非常に有り難いことですね。
ではまた次回。