少し長くなりましたが、取り敢えず過去編は一旦終わります。
幻燈河貴さん、誤字報告ありがとうございます。
「俺もね、昔は目指してたんだ」
「えっ?」
「世界チャンピオンだよ。でも、俺の階級は激戦区でね。アマ時代に優勝したのもさっき言った大会だけで。その後も俺なりに頑張ってたんだけど……結局プロテストで落ちて……」
その遊撃士がどの階級で戦っていたのかは今でも分からない。だが、体格からしておそらく中量級だったのだと思う。
中量級の規定体重は六十〜七十八。(ジュニアはまた違うのだが今は置いておく)この数字を見れば分かると思うが、この階級は一般成人男性の平均的な体重と重なる。
つまり、最も人が集まりやすい階級だ。
拳闘術は武術として見れば弱いのでアマチュアから初める人は少ないが、一獲千金を目指して直接プロになる者は多い。
その人数があまりにも多い為、実力不足な者を守るという意味も兼ねてプロテストを設けているのだが、そこで長年続けていたアマ出身者が落ちる事も少なくない。
つまり、
「俺のプロテストの相手は拳闘術歴三ヶ月の奴だった……そいつに打ち負かされた日、俺はグローブをリングに吊した」
「それで遊撃士に?」
(それでプロを諦めて遊撃士の道へ? でも、拳闘術が実戦で殆ど役に立たない事はこの人も知ってるはず)
「いや、最初は指導者になろうと思ってたんだ。自分の夢を後輩に託そうとね……だけど、そんなある日俺はあの子と出会ったんだ」
「あの子?」
それは、その遊撃士がプロテストに落ちて半月程立った頃。 首都で
その遊撃士は、先程の僕と同じ様な目に会っていた少女を助けた事が、自分が遊撃士として活動していく切っ掛けになったのだと話してくれた。
その子は薄暗い路地裏で謎の男達に囲まれ、絶体絶命の危機に陥っていたそうだ。
そして、先程の僕と同じく救出した後、その子から「ありがとう」と一言いわれた事で、胸の奥に引っかかっていたモノが取れた感覚があったらしい。
「今思い返しても、単純だなって思うよ。でもね……やっぱり嬉しかったんだ……
「あっ……」
その時、僕の頭の中で何かがキラリと光った気がした。
(そうか……拳闘術は魔獣や他の武術と比べれば弱いけど、
「それで思い切って遊撃士になってみたんだけど……これがまた大変でね。やっぱり拳闘術だけじゃあ勝てないから、こうやって導力銃の扱いを覚えたりもして……でもね、
その時目の前の遊撃士が見せた笑顔を、僕は一生忘れることはないだろう。
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「おっ! あったあった! 無事みたいだな!」
子供の頃の感傷に浸りながら山道を登っていた僕だったが、暫く歩いていると二日前に山頂へ置きっぱなしにしていた
少し雪を被ってはいたが、特に錆びや傷等は見当たらず、二日前と変わらず同じ場所に置いてあった。
「ははっ、傷んでる箇所も無いし……よかった」
僕は相棒に素早く跨がると、そのまま山道を下っていく。
「あの人、今は何処で何をしてるんだろう?」
あの日、無事に大会出場を決めた僕は、優勝こそ出来なかったものの、支部で例の遊撃士が色々と身の上話をしてくれたおかげで、最初に比べればかなりリラックスした状態で試合に挑めた。
「
一番大きかったのはその言葉だろう。
その言葉があったからこそ、僕はその後も大会で優勝することが出来たし、遊撃士になっても自分の力を信じる事が出来たのだと思う。
アマ
その後、遊撃士となった僕は、一度だけアルタイルで仕事があった時に支部を訪れたのだが、彼は既にその街から去ってしまったらしい。
結局、あの日以降一度も会うことが出来ていない。時々、あれは夢だったんじゃないかとも思うことがある。
(……それでもいいかな)
例え夢であっても、僕にとって恩人の一人であることは間違いないし、プロ以外の道があることを明確に示してくれた人だ。
感謝はすれど、疑うことはない。
(まぁ、遊撃士になった理由はそれだけじゃないけどね)
僕が遊撃士になった理由は、勿論それだけでじゃない。むしろ12年前の出来事はきっかけに過ぎなくて、本当の理由は別にある。
「さてと、そろそろ彼女も目が覚めた頃合いかな? …………なるべく穏便に済ましたいけどね」
僕は相棒と一緒に険しい山道を下りながら、麓の近くにあるユミルで療養している結社の構成員に対して、どのような
次回からまたユミルに戻り、デュバリィとの絡みに戻ります。
その後、本編(SC)に入っていきます。
注意事項:軌ボクの階級制度の説明。
軽量級、規定体重四十五〜六十まで
中量級、規定体重六十〜七十八まで
重量級、規定体重七十八〜九十二まで
無差別級(プロのみ)規定体重上限下限共に無し
安心してください。軌ボクに物理法則は通用しません。
頭を空っぽにして楽しみましょう。