世界は、摩訶不思議なことで溢れている。例えば、現世で死亡した私に、神の集合体とやらがチートを与えてウマ娘の世界に放り込む、などだ。三女神の妨害をしたいというのは百歩譲って問題ない(問題しかない)が、個人の力で何ができると思ったのだろうか。それに、ウマ娘をしていた1人のプレイヤーとして、そのストーリーを捻じ曲げることはしたくない。つまり、チートがあるが、日本のレースに出る気はない、そういうことだ。
だが、転生者あるあるにある通り、私は孤児だ。そして、ウマ娘は人間以上に燃費が悪い。人間ですら餓死する孤児がいるというのに、ウマ娘ならどうだろうか。そう、人間よりも早く死ぬのである。ただ、人並みに燃費を抑える事自体は可能だ。ただ、そんなふうに育ったウマ娘が勝てるほど、レースの世界は簡単じゃないらしい。まぁ、チートのせいで余程のこともなければ体は怪我しないし、かってに体格もできていく。つまり、常に栄養失調気味の食事でも勝てるという事だ。
まぁ、私は現在5歳で、レースには一切出れないのだが。それにしても、レースというものに興味を持つことができない。いや、できないわけじゃないだろう。ただ、元が人間であるがために持つことができないだけだ。ただ、一着の賞金には夢があるな。たった数分ちょっとの全力で、数千万から数億が稼げる。まぁ、その数分の全力を出し尽くすこと自体が難しいし、何より辛い。だから、ほかのウマ娘はトレーナーと共に、トレーニングをするのだろう。あいにく、私には必要ないが。だが、夢を見るくらいならいいだろう。何もしてくれない孤児院の中でゴミみたいな飯を貪るよりかは幾分かましだ。これを食うくらいなら腐った肉やらにんじんやらの方が絶対に美味しい。なんせ、メリットが腐ってないくらいしかないからな。それにしても、ほかのウマ娘は何をしているのだろうか。それと、競バ場に行きたい。こんなゴミの掃き溜めみたいなところにいるよりかはましだろう。それに、馬券が当たれば一発逆転、一攫千金だ。一銭たりとも孤児院にいれてやる気はない。そもそも、孤児院より路地裏にいた方が環境がいいからな。
あれから少し経った。数え年だが、今年で8歳なはずだ。今は生活の場を路地裏に移している。あの孤児院は1人2人いなくなったって気づかないだろう。それどころか、喜ぶだろうな。なんせ、食費が減るんだからな。にしても、孤児院よりいい暮らしをしている。トタン屋根のバラック小屋だが、かなり雨漏りするあの孤児院よりかは、雨漏りいないこっちの方が環境はいい。それに、電気も通ってる。水も公園の水道から綺麗なのが流れてくるし、公園にはトイレもある。ダンボールもそこそこある。火は私が木で起こせるし、炊き出しもある。自衛隊はほとんど来ないが、彼らが出してくれる炊き出しはかなり美味い。さすが税金って味だ。まぁ、ほぼ払ってないが。それでも、大事な食糧だ。私1人とは言え、未だにお腹いっぱいまでご飯を食べたことはない。それを知って仕舞えば、後戻りできなくなる。その気持ちが、おかわりを阻止する。そのくせ、体つきは並のウマ娘以上にいいからな。これもチートのおかげだろう。収入源はアマチュアレースと闇レースだ。アマチュアレースの一着景品は流石にお金ではないが、食料や靴、蹄鉄など豊富だ。食糧以外は大事な備品として取っておく事にしている。闇レースの1着賞金は、さすがプロレースほどは出ないが、それでも一回で10万は手に入る。これでなんとか生活をつなぐ。と言ってもアマチュアレースは月2回。闇レースは月1回しかないからかなり節約しても、貯金なんてできないし、する場所もものもない。銀行なんてもってのほかだ。それに、学校にもいってない。給食費はかなり出費としては痛いからな。それなら炊き出しを食べに毎日数キロ走る方がいい。適度な運動にもなるしな。にしても、私以外のウマ娘はこの路地裏にはほとんどみかけない。やはり、捨てる親はどうかしてるのか、捨てざるおえないのかのどちらかだろう。まぁ、捨てることは全面的に悪いが。それにしても、ダンボールは結構暖かいんだな。
今日初めて競馬場に行った。興冷めだよ。優勝バ投票権はあったが、投票するだけだった。緑のやつが強いって聞いたことがあるから、緑のやつに突っ込んで1着単勝当てたのに、とんだ出費だ。どうやら、こっちの世界じゃあてたところで金はもらえないらしい。明日からまた炊き出し生活だ。せっかくある程度生活が整ってきたところなのに。まぁいい、最悪、物を盗れば食いつなげるはずだ。そうならないよう、努力はするが。にしても、こっちの世界にもアホはいるらしい。私が孤児で学校に行っていないウマ娘だからか、石を投げてもいいと思ってるらしい。一度投げ返したことがある。当たりはしなかったが、石が壁にめり込んだ。当たってたら即死だろう。死んでなくても、2度とまともに生活できなくなるな。まぁ、そりゃそうか。馬の力、ましてやチートパワーで増加してるんだ。これくらいどうてことはないだろう。やり返せないのでうざいが、最悪、気絶させてやれば問題ないだろう。まぁ、多分力加減ミスって殺しちまう気もするが。それから、中坊のガキがなんかしようとしてきたから軽く一発殴っておいた。学生証を見るにどうやら高校生らしい。飛んだアホもいたもんだ。まぁ、転生者って言うイレギュラーがいる時点でいないわけがないか。
ああくそっ。やるんだったらもっと徹底的にやるんだった。ああ、クソったれ。次は2度と立ち上がれねぇようにしてやる。ああくそっ。もう意識が……。
路地裏から炎が上がる。どこからともなく出火した炎は、一瞬でその場にあった可燃物を焼き尽くした。ダンボールは激しく燃え、靴の化学繊維が溶けて異様な匂いがする。蹄鉄は変形し、もう二度と使い物にはならないだろう。燃え上がった炎は、そこにあった生活をわずか数十分で灰塵に帰した。
今作も行き当たりばったりで作成される予定です。不定期更新なのでご注意を。